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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第3章:マスターと街

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25.領主と領主とリチャード

「すみません、領主様とお会いしたいのですが。」


 領主の館に着くと、やはり門の前にはハルバード兵がいたので、俺はそう言う。


「目的は?」

「えっと、友好条約を締結する為です。」

「友好条約? そう言えば、見慣れない顔をしているな。名前は?」

「リチャード・ルドルフ・イクスティンクです。」

「リチャード・ルドルフ・イクスティンク?」


 ハルバード兵は少し考えるような仕草をした後、急に青い顔になって、


「り、リチャード・ルドルフ・イクスティンク様だったとは! これは大変失礼致しました! ば、執事バトラーをお呼びしますので、少々お待ちください!」


 と言い、腰を90度近くまで折ると、


「ルカ、ルカ!」


 と館に向かって叫んだ。すると、扉からアサンドルで会ったノアさんにそっくりな執事が出てきた。


「ルカ・クルー・レインと申します。」

「ルカ、この方はあの・・リチャード・ルドルフ・イクスティンク様だ。来賓室へご案内し、丁重におもてなしせよ。」

「はい、かしこまりました。ではリチャード様、妖精様、こちらへ。」


 ルカさんはそう言って俺たちを来賓室へ案内してくれた。



「こちらが来賓室でございます。」


 ルカさんがドアを開けてくれ、俺たちが入ると、そこには予期せぬ人物がいた。


「おや、ディックではないか。私より先にアサンドルを出たはずなのに、なぜ今になってここに?」

「え、リックさん?」


 なんとそこにいたのは、アサンドル領主のリック・トルディ・フェインさんだった。


「俺はここに来る途中に道に迷っちゃいまして。」

「……ディック、アサンドルからヤスパースなど、ほぼ一本道だぞ。一体どこをどう間違えたら道に迷える? 迷おうと思っても迷えないほど簡単だが。」


 俺はルキナスさんと同じことをリックさんにも言われて恥ずかしくなった。


「そ、それは別にどうでもいいじゃないですか! それより、リックさんこそどうして?」

「私は定期報告だ。ついでにルカにも会いたかったしな。元気そうで何よりだ。」

「はい。リック様もお元気そうで。兄はどうですか?」

「ノアはいつも通りさ。相変わらず頼りになる。」

「ああ、ノアさんとルカさんは兄弟だったんですか。」

「はい。私はここで、兄はアサンドルで執事をやらせて頂いております。」

「成程。あ、そういえば、俺が名前を言った時に警備兵の人の態度が急に変わったんですが、何でか分かります?」


 俺がこう聞くと、リックさんは事も無げにこう言った。


「私が話したからな。リチャード・ルドルフ・イクスティンクなる人物が来たら、面倒なことはつべこべ言わずにさっさと来賓室に通した方が身の為だ。なにせ、妖精を屈服させる程の魔力の持ち主。機嫌を損なったらその場で挽肉にされてもおかしくない、とな。」

「なんでそんな物騒なこと言ったんですか! 俺は平和主義者ですよ!」

「その位言っておいても問題はあるまい。それに、ディックはそのおかげでここにすぐ来られたのだろう?」

「まあ、それはそうですが……ってか、ディックはやめてくださいって言いましたよね? リチャードって呼んでください!」


 こう俺が言った時、来賓室のドアが開いて髭を蓄えた男性が入って来た。


「おお、リック氏。もう定期報告の時期ですか。」

「ああ、レオナルド。」

「ん? ルカ、そちらの方は?」

「警備兵のイライズ様から既に連絡があったかと思いますが、こちらの方はアサンドルと友好条約を締結なさったとある国の大使、リチャード・ルドルフ・イクスティンク様にございます。」

「おお、貴殿がリチャードさんですか。私はこのヤスパースの領主、レオナルド・モンテュ・フォーカスといいます。以後よろしくお願いします。」

「ああ、これはどうもご丁寧に。リチャード・ルドルフ・イクスティンクです。」

「レオナルドよ、挨拶はその位で良かろう。それより定期報告だ。」

「おお、そうですね、リック氏。ルカよ、客人に紅茶をお出しし、下がれ。」

「はい。」


 ルカさんがそう言うと、俺たちの前に湯気の立つ紅茶が出現した。魔法で出したらしい。目にも止まらぬ早業だった。


「では、失礼致します。」


 ルカさんは一礼して出て行った。


「レオナルド、ここの防音は完璧だな?」

「ええ。どのような魔法であってもこの部屋の中の会話は一切漏れないように造ってあります。元々ここは来賓室ではなく密談室ですから。」

「そうであったな。では報告を始める。アサンドルの穀物収穫量は前年同月より20%増加した。今年は天候不順も無く、非常に良い状態だったからな。」

「そうですか。ではいつも通りその中の20%をこちらに回してください。こちらからは高純度の鉄で作成した農具を回しますので。」

「またヨーゼフ氏に造らせるのか?」

「発注しても悪い事は無いでしょう。それに、彼よりいい造形の出来る鍛冶師は恐らくいません。」

「まあ、そうであろうな。では続きだ。アサンドルは、このリチャードの領地と友好条約を締結した。今回の報告は以上だ。」

「ん? リック氏、今貴殿は『リチャードの領地』と言いましたね? リチャードさんは大使ではないのですか?」


 このレオナルドさんの言葉に、リックさんは硬直。そしてこちらにアイコンタクトを送って来た。謝罪の念が込められている。


「条約を破るのは国際法違反ではないのでしょうか? ご主人様の情報を漏らさないというのは条約の内容にもあったはず。断罪されても文句は言えませんよ。ではペーストになって……」

「止めろ、ティリ。遅かれ早かれ言うことになるんだから。」


 俺はそう言うと、レオナルドさんに向き直り、


「では改めて。俺はリチャード・ルドルフ・イクスティンク。大使ではなくダンジョンマスターです。」


 と正直に言った。


「……ダンジョンマスターですか。なかなか面白い冗談を……」

「レオナルド、冗談ではないのだ。リチャードはダンジョンマスター。これは事実だ。だが、それでありながらも友好条約を締結しにわざわざ危険な地上に足を運んでいる。これがどういうことか分かるか?」


 リックさんのこの言葉に、レオナルドさんは少し考えるような仕草をし、


「地上に来るメリットなどリチャードさんにはほとんどない。しかしそれを承知で地上に来たということは、それだけの覚悟をもって地上に来た、ということですね?」

「その通りだ。」

「リックさん、そこから先は俺が。ということで、俺たちのダンジョンと友好条約を締結して貰えませんか?」


 俺はそう言うと、契約書とダンジョン情報の書かれた羊皮紙の束を渡す。レオナルドさんはそれに目を通すと、サインをし、拇印を押してくれた。


「これで、条約締結でいいですか?」

「ええ。ありがとうございます。」


 俺はそう言うと、【コピー】で契約書を増やし、一枚をレオナルドさんに渡した。


「俺の用件は以上です。契約書とダンジョンの情報はくれぐれも他の人に見せないようにしてくださいね。」


 俺がそう言うと、レオナルドさんは、


「お待ちください、リチャードさん。」


 と俺に言った。


「何ですか?」

「このダンジョン、名前が無いですね。なぜです?」

「ああ、このダンジョンまだ認知されてないんで。侵入者も3人しかいませんし。」

「成程。」


 レオナルドさんはそう言うと、少し首をひねってから、


「ダンジョンの名とは、どのようにして付くのですか?」


 と聞いてきた。


「ティリ、どうやって付くんだ?」

「…………」

「ティリ、まさか……」

「はい。説明をし忘れていました……」


 ティリがまた例のセリフを言いそうなので、俺はその前に言った。


「嫌いにならないし、捨てないから、説明して。」

「かしこまりました。ダンジョンの名は、外からどのように呼ばれているか、一般的に定着した名で決まります。しかし、私たちのダンジョンは、侵入者がダンジョン外に出て名を広める、ということはしていないので名前が無いんです。」

「らしいです。レオナルドさん。」


 そう言うと、レオナルドさんは、


「リチャードさんのダンジョン、ベースは魔狼族基本モンスターのウルフ、最強モンスターはジェネラルメタルモール、そしてダンジョンマスターは友好的。これを踏まえて、【友好獣のダンジョン】と名をつけるのはどうでしょう?」


 と言ってきた。


「友好獣のダンジョン? いまいちインパクトに欠けるような……ティリはどう思う?」

「とってもいいと思います! ご主人様の友好的、平和主義なところがしっかり表現されています!」

「そうか……リックさんはどうです?」

「私は何でもいい。別に私が口を出すべきものでは無かろう? ディックのダン……ゲフンゲフン、リチャードのダンジョンなのだから、リチャードが決めろ。」

「そうですね……それじゃ、友好獣のダンジョンで決定します。ありがとうございます、レオナルドさん。」


 俺がお礼を言うと、レオナルドさんは首を振った。


「いえ、私は特にお礼を言われるようなことはしておりません。では、これからもよろしくお願い致します、リチャードさん。」

「はい、レオナルドさん。」


 俺はそう言うと、レオナルドさんと握手を交わしたのだった。


「ではレオナルド、私は帰るぞ。」


 俺たちの握手が終わると、リックさんはそう言い、出て行った。俺も、


「あ、では俺も用事があるのでこれで失礼します。」


 と言い、続いて領主の館を出た。さあ、いよいよルキナスさんの友人探しだ!

 

ダンジョン名:友好獣のダンジョン

深さ:120

階層数:12

モンスター数:220

    内訳:キングモール      10体

       メタルモール      29体

       ジェネラルメタルモール  1体

       ソイルウルフ      15体

       ファイアウルフ     13体

       ウォーターウルフ    12体

       アースウルフ      20体

       フレイムウルフ     20体

       アクアウルフ      20体

       ジャイアントワーム   25体

       ビッガースネイク    30体

       フレイムイーグル     5体

       ハンターシャドウ     1体

       シノビシャドウ      2体

       アサシンシャドウ     2体

       ハイパースパイダー    5体

       ナイトスコーピオン    5体

       ウォーターホーク     1体

       ウォーターホーンオウル  2体

       ウォータークジャク    2体


友好条約締結者

リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)

レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)


住人

リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)

ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)

ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)

ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)



著者コメント


 という訳で、ようやくダンジョンの名前が決まりました。ダンジョン名は書き始めた時から決めていたのですが、なかなか出せる時期が見つからず、遂にこんな数の話を書いてからになってしまいました。

 これからも頑張って書いていきますので、お付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。

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