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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第3章:マスターと街

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20.暇嫌いなリチャード

本日(?)3話目です。

「あー、暇だ。まあ、このダンジョン認知されてないから仕方ないとはいえ……」


 ルキナスさんとルーアちゃんが結婚してから2週間が過ぎた。侵入者は今日も0。ルーアちゃんは侵入者ではないので、実質侵入者は初日のルキナスさんパーティの3名のみということになる。せっかくのトラップの効果も全く確かめられないし、無性にイライラした気分になる。


「本当に暇がお嫌いですね、ご主人様は。」

「別に嫌いって訳じゃないけどな。やる気が出ないから好きじゃないってだけだ。」

「しかし、リチャード殿はこの間も暇だと言っておられましたが?」

「ええ。暇だ、とは言いましたよ。でも、暇が嫌いだ、とは言ってません。ここでウィンドウばっかり眺めてるのはいささか飽きてますけど。」

「マスター、暇ならケーキでも食べたらどうですか?」

「嗜好品で気を紛らわすのも限界があるんだよね……」


 俺はそう言いながら3人を見た。ティリはハチミツを食べ、ルキナスさんは紅茶を飲み、ルーアちゃんはケーキを食べている。リラックスタイムのようだ。


「あ、嗜好品と言えば炭酸水のストックが昨日切れたな。補充しておこう。」


 俺はそう呟き、炭酸水を召喚すると一口飲む。スッキリとした感覚が口の中に広がり、気分も晴れるが、そう長くは続かない。


「モンスターの進化も終わってるしな……」


 今、このダンジョンに進化していない基本モンスターはいない。保有可能魔力の低いウルフたちは勿論、比較的保有可能魔力量の高いイートシャドウですらシノビシャドウ、アサシンシャドウ、ハンターシャドウに進化している。他のモンスターたちも進化済みだ。ハンタースパイダーはハイパースパイダーに、ハイスコーピオンはナイトスコーピオンに、ブルースパローは第一進化種のブルースワローの過程をあっという間にすっ飛ばして、ウォーターホーク、ウォーターホーンオウル、ウォータークジャクになった。更に、すでに第一進化を遂げていたモンスターたちも進化した。ファイアウルフはフレイムウルフに、ウォーターウルフはアクアウルフに、ソイルウルフはアースウルフに、ジャイアントワームはビッガースネイクに、レッドイーグルはフレイムイーグルに、キングモールはメタルモールに。だが、中に一体だけ変わり種がいた。最初に進化したキングモールだ。ルキナスさんやルーアちゃんの運搬と草原での戦闘などで経験を積んだ、このダンジョンで最初に進化したあのキングモールだけは、他のメタルモールのように黒い体毛ではなく、銀色の体毛を持つメタルモールに進化した。名前はジェネラルメタルモールというらしい。それを鑑定した瞬間に、モンスターネーム機能というものが解放され、モンスターに名前が付けられるようになったので、俺はそのジェネラルメタルモールにシルヴァと名を付けた。そして、シルヴァを中心として編成したモール部隊なども作ったのだが、一向に侵入者は来ない。


「あー、もう! 暇だ暇だ暇だ!」


 叫んだってどうしようもないことは分かっている。何を言おうが暇が無くなる訳じゃないことも。でも叫ばずにはいられない。


「リチャード殿は相当鬱憤がたまっておられますな。今冒険者が来たならば、いつものリチャード殿の感情はあっという間に宇宙の彼方へと消え去り、獣のように舌なめずりしながら命を奪うでしょう。」

「ご主人様が叫ぶなんてこと自体あんまりないですからね。このまま放置しておいたら、もしかすると私たちに刃を向けるかもしれないです……」


 ルキナスさんとティリがひそひそ話を始めた。俺に聞こえているのだが、気付いているのだろうか?


「おい、ティリ。黙って聞いていれば随分と言いたい放題だな?」

「え? ご、ご主人様? 私が何を言ったと仰るのですか?」

「俺が暇つぶしとしてお前らを好き勝手に殺戮するって。」

「そ、そんなことは言ってませんよ!」

「意訳するとそうなる。」


 俺はそう言い切ると、ティリを摘まみあげて顔の前に持って来た。


「なあ、ティリ。お前のご主人様はそんなに心の狭い奴だったのか? 平和主義なはずのご主人様が暇だからって大切な仲間に刃を向けると思うか?」

「それは……しないと思います。」

「だろ? 俺は人が嫌がることはしない主義だ。もし俺が毎晩ティリに夜伽よとぎをしろって言ったらどう思う?」

「喜んでさせて頂きます! 私はこれでも妖精ですから、140cmくらいまでなら大きくなることができますし!」


 ……質問の選択の仕方が悪かった。ついでに質問の相手も悪かった。よし、ここは相手を変えよう。


「ルーアちゃん。」

「はい。何ですか、マスター?」

「もし俺がルーアちゃんに、毎晩夜伽をしろって言ったらどう思う?」

「何ですと?」


 ルキナスさんが急にいきり立った。俺の胸ぐらを掴み、グラグラと揺さぶる。


「リチャード殿! 流石に今の言葉は聞き捨てなりませぬぞ! リチャード殿は私とルーアの仲を引き裂くおつもりか?」

「違います、違いますから離してください! 仮定の話です! そもそも俺はティリと結婚してますから、ルーアちゃんには手を出しません! だから離してください! 首締まってますから! このままだと窒息死します!」


 俺が必死に(大袈裟でない)そう言うと、ルキナスさんは手を離してくれた。


「で、ルーアちゃん。どう思う?」

「えっと……マスターは私と私の父の命の恩人ですから……嫌じゃないとは言いませんけど、その、マスターが望むなら……」


 結論。うちのダンジョンには夜伽を嫌がる女の子はいないらしい。


「何で2人ともこんなに献身的なんだ……」


 俺はちょっとした恐怖を覚えた。


「それだけリチャード殿に感謝しているのでしょう。」

「感謝だけでこうなるんですか……」

「そういうものです。感謝の感情は何事にも変えがたいですからな。」


 俺はそう言い切るルキナスさんを見て溜息を吐いた。


「ご主人様、お話の続きはないんですか?」

「ないよ。人が嫌がることを俺はしないっていうことを示す為に例として話したんだから。嫌がられるどころか喜んで了承されちゃったけど。」


 俺はティリの問いに気の抜けた声でそう答えると、仕方なくウィンドウの方を向き、暇つぶしにダンジョンの整備を始めたのだった。

ダンジョン名:‐‐‐‐‐‐

深さ:120

階層数:12

モンスター数:220

    内訳:キングモール      10体

       メタルモール      29体

       ジェネラルメタルモール  1体

       ソイルウルフ      15体

       ファイアウルフ     13体

       ウォーターウルフ    12体

       アースウルフ      20体

       フレイムウルフ     20体

       アクアウルフ      20体

       ジャイアントワーム   25体

       ビッガースネイク    30体

       フレイムイーグル     5体

       ハンターシャドウ     1体

       シノビシャドウ      2体

       アサシンシャドウ     2体

       ハイパースパイダー    5体

       ナイトスコーピオン    5体

       ウォーターホーク     1体

       ウォーターホーンオウル  2体

       ウォータークジャク    2体


住人

リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)

ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)

ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)

ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)

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