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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第2章:マスターと対人関係

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閑話:深夜の教会と告白

「ティリ、起きてるか? そろそろ行こうと思うんだけど。」


 俺は深夜、小声で声をかけた。


「はい。起きてますよ。」

「んじゃ、行くか。」


 俺はベッドから抜け出した。ほぼ同時にティリもドールハウスの窓から飛び出す。


「それにしても、ルーカスさんが言ってた話したいこと、って何だろうな。」

「うーん……私としては一つ心当たりがありますよ。」

「え? 何?」


 ティリは勘が鋭いところがあるので、本当に分かっているのかもしれない。そう思って聞いたのだが、


「ふふふ、それは秘密です♡」


 と言われてしまった。ダンジョンマスター権限の行使や強く命令して聞き出すことも可能ではあるが、それでは面白くない。何より、それではティリに俺が猜疑心さいぎしんを抱いていると勘違いされるかもしれない。ティリにそんな奴だ、と勘違いされるなんてのは死んでも嫌なので、俺は聞かないことにした。



「お呼び出しですね。約束を守って頂けて、嬉しい限りです。」


 教会入り口の魔法陣から出てきたルーカスさんは開口一番そう言った。


「約束は守る為にあるものですからね。それより、話したいことって何ですか?」


 俺がそう聞くと、ルーカスさんの目がキラリと光った。


「いきなり聞いてくるとはなかなか度胸がありますな、リチャード殿。小生とあなた方は会ってからまだ1日も経っていないのですよ? 小生があなたに不利益を与えるように作り話をしろと命じられていて、その見返りとして先払いで裏から金を貰っている、などといったことは考えないのですか?」

「あなたは魔族とはいえ神官じゃないですか。少なくとも、自分の事を『小生』と謙遜する程謙虚であり、このダンジョンに同居人がいることに対して『神の思し召し』と言ったあなたがそんな人ではない、と俺は信じていますから。」

「信じて頂けるのはいいことなのですが……」


 ルーカスさんは少し口ごもった。


「ん? どうされました?」

「いや、リチャード殿がダンジョンマスターであるというのが信じられなくなってきまして……ああ、勿論リチャード殿のことを疑っているということでは無く、なぜリチャード殿がそこまで他人を信用できるのか、不思議に思ったのです。ダンジョンマスターは言ってしまえば引き籠り。人を信用できない者が多いのです。小生も何度か襲われたことがありますし……」

「ああ、そんなことですか。簡単な話ですよ。他のダンジョンマスターどもがどんな考え方であろうが、俺は仲間を絶対的に信用するんです。故に、仲間が信頼している者は、俺が信頼するに値する。ルーカスさんは、俺の仲間であるルキナスさんとルーアちゃんが信用し、俺も信用して結婚式を任された。そして、それをやり遂げてくれた。ということは、あなたは俺が信用できる人だ。そういうことです。」


 俺が事も無げにそう言うと、ルーカスさんは目を丸くした。


「やはり、同居人がいることといい、考え方といい……リチャード殿は規格外ですな。」


 そう言うとルーカスさんは一度息継ぎをし、話し始めた。


「では、話をもとに戻して、小生が何を話したかったか。それは……」

「それは?」

「リチャード殿、あなたには恋い焦がれている者がいるでしょう?」


 ルーカスさんはそう問いかけてきた。場を沈黙が包む。その沈黙を破ったのはティリだった。


「ご主人様が恋い焦がれている人なんているはずありません!」

「ティリウレス殿、叫びたい気持ちも分かりますが、今は少々お静かに。小生はリチャード殿に問うているのです。リチャード殿、いますね?」

「……ええ。一年以上前から、ある一人の女性に恋をしています。気持ちを伝えることはできていませんが。俺が何をしてあげられるのかも分からず、何をすれば心から喜んでくれるのかも分からない。でも、彼女を俺だけのものにしたい、とそう思っています。」


 俺はきっぱりとそう言い切った。


「やはりそうでしたか。思ったとおりです。では、これをお使いください。」


 ルーカスさんは黄色い石のついたペンダントを俺に渡してきた。


「これは、【恋慕情の確認石】という名のマジックアイテムです。恋い焦がれている相手の名を思い浮かべながらこの石に魔力を流し、この石が美しく輝けば両想いである、ということが分かるのです。怖いかもしれませんが、やってみてください。」

「はい。」


 俺はドキドキしつつ、その黄色い石に触れて魔力を流す。すると、その石はパアアアアアッとまばゆい光を発した。それを見て、ティリは絶望的な顔になり、地面に墜落した。俺は慌ててティリを抱き上げると、ルーカスさんに向き直り、聞く。


「ルーカスさん、これは……」

「間違いなく両想いですな。おめでとうございます。」


 そう答えると、ルーカスさんはティリにもこの石を差し出した。


「先ほどの反応から察するに、ティリウレス殿はリチャード殿のことを慕い、恋をしているのでしょう?」

「……はい。」

「ならば、これで確認してみてはいかがか? リチャード殿の名を口に出して、告白の言葉を紡ぎながら魔力を流せば、真偽は間違いなく出る。」

「どうせ光らないでしょうけど……分かりました。」


 ティリは絶望の表情のままフラフラと石に近付き、触れると、


「私は、この世界の誰よりも、ダンジョンマスター、リチャード・ルドルフ・イクスティンクのことを愛しています!」


 と叫んだ。すると、石は先ほどと同じく、パアアアアアッっと明るく輝いた。まあ、ティリの事を想いながら魔力を流した俺はこうなることは分かっていたが、口に出して言って貰えると嬉しさも一入だ。


「え? え? な、何で……」

「リチャード殿が恋い焦がれていたのはティリウレス殿だった、ということですよ。間違いなく両想いですな。おめでとうございます。ということで、小生が話したかった内容、それは、今晩リチャード殿とティリウレス殿の結婚式を開いてはどうか? ということであります。」

「マジですか?」

「マジです。」

「俺はオールOKなんですけど、ティリは……」


 俺がティリに目を向けると、ティリはクルクルと空中をアクロバティックに飛び回ってハイテンションに喜びまくっていた。


「ご主人様と両想い! ご主人様と結婚できる! 幸せ幸せ!」

「……問題は無いようですな。」

「ええ。そうですね。ティリ、じゃあ結婚式しようか。」

「はい! あ、でも……指輪が……私は用意していたんですけど……」


 ティリはちょっと困った顔で俺を見る。


「おいおい、俺が持ってないとでも思ってるのか? もう準備はしてあるんだよ。」


 俺は懐から指輪を取り出す。ティリの指のサイズに合わせた特注品だ。


「え? じゃあ……」

「そういうこと。今すぐ結婚しよう!」

「はい、ご主人様!」


 こうして、俺とティリはルーカスさんの前で結婚の宣誓をし、結ばれた。


 こんな幸せな夜、ダンジョンマスターになってから初めてだな……

ベタな展開ですが、お楽しみいただけたら幸いです。

読者の皆様方のブックマーク、評価、感想、とても励みになっております。これからもクオリティダウンしないよう頑張る心持ちでありますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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