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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第2章:マスターと対人関係

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22/200

18.初めての過去話

「ご主人様!」


 ルーアちゃんがいなくなった後、コントロールルームでティリが言った。


「何だ? ティリ。」

「何だ? じゃないです! 何であんな簡単な条件で上級回復薬を渡しちゃうんですか! もっと色々命令できたはずなのに!」

「何でって……急いでただろ? ちんたらしてたらルーアちゃんのお父さん死んじゃうかもしれないし。」

「あの娘のことはまだよく分かってないんですよ! もしかしたらさっきの行動や話は全部演技で、あれを売り払って逃げるつもりなのかもしれないのに! しかも、このダンジョンに住まわせるのはギルドマスターから遠ざける為、ルキナスさんと結婚させるのも幼い頃からの想いを果たさせる為じゃないですか! ご主人様はお人好しすぎです! もし裏切られたら……」

「大丈夫だって。ルーアちゃんはルキナスさんの許婚だろ?」

「だからって……ダンジョンコアを盗られたりしたらそれこそ大変なことになるじゃないですか!」

「コアを持ち出そうとしたら魔力供給が途絶えて転移陣で転移できなくなるし、モンスターたちから逃げ切るなんてまず無理だから、そんな無謀なことはしないでしょ。それに、仲間は無条件に信じるもの。それとも、ティリは俺の事を無条件に信じられないのか?」

「あっ……」


 ティリはハッとした顔をして黙り込んだ。


「俺が言いたいことが分かったか? 俺がもし人を疑い抜くような性格だったら、俺もティリを邪魔者扱いしたダンジョンマスターどもと同じで、ティリのことを絶対的に信用する事は無かっただろうな。無条件に仲間は信用できる、その信念があるから俺はティリのことを最初から大切な存在として見られるんだ。あ、勿論ルキナスさんもですよ。」

「私もリチャード殿とティリウレス殿は大切な友であり、仲間であると思っておりますぞ。クリスやケビンのようにうわべだけの付き合いではないと。」

「俺もそう思ってます。だから、仲間の信頼する相手は即ち俺が信頼できる相手。そういうことだ。」

「でも……」


 まだ何か言いたそうなティリに、俺は止めの言葉を言った。


「この言葉の意味を汲み取れず、仲間を信用しきることが出来ないのなら、ティリはもう俺の仲間じゃない。配下でもない。俺は仲間を信じられない奴を仲間としては見られないからな。」

「うぅ……それは……」


 ティリは泣きそうな声になった。可哀想だが、仲間を信頼できないのでは俺が仲間として認定できる気がしないからな。


「でも、やっぱりご主人様はお優しすぎます。非情にならないと生きていけないことの方が多いんですよ……私はずっとずっとそういう世界で生きてきましたから……どうしても疑ってしまうんです……」

「昔のことは忘れろって言ったろ、ティリ? 俺は今お前がどういう考えなのかを知りたいんだ。お前は仲間を疑わず、心の底から信頼しきることはできるか?」

「ご主人様もルキナスさんも、私は信頼しております。この言葉に偽りはありません。」

「なら、その信頼するものが信頼するもの、即ちルーアちゃんは信頼するに値するだろ?」

「……はい。」

「ティリが裏切りを心配する気持ちも分からなくはない。それが俺の身を案じて言ってくれているのも理解している。でも、ルーアちゃんが裏切るのは確定事項じゃないんだし、裏切られたら二度と信頼しなければいいだけの話だ。」

「確かにそう仰るのを聞いていると……」

「だろ? だから、今はルーアちゃんを信じてやれ。」

「はい!」

「よし、いい返事だ。」


 俺はそう言ってティリの頭を撫でた。ティリは顔を緩ませる。やっぱり可愛い。そう思いつつティリを愛でていると、


「クッ……仲良しは良いことですが、釈然としませんな……リチャード殿、このようなことを申し上げるのは甚だ不本意なのですが、その行動は敢えて私に見せつけるようにしていらっしゃるのですかな?」


 というルキナスさんの怨恨のこもったような問いが聞こえた。


「ルキナスさんまで何を……別にそういう意図はありませんよ。」

「ならばよろしい。」


 ルキナスさんは俺の一言で納得したらしく、丸テーブルの椅子に座って紅茶を飲み始めた。


「あ、そういえばなんですが、ルキナスさん。」

「はい。何ですかな?」

「ルーアちゃんって、どんな子だったんですか?」


 俺のこの問いに、ルキナスさんは少し考えるような素振りを見せ、


「気弱な子でしたな。」


 と答えた。


「じゃあ、ルーアちゃんとは、どんな風に契ったんですか?」

「話すと長くなるのですが……」


 そう言いながらもルキナスさんは説明してくれた。それはこんな話だった。


              ☆  ☆  ☆


 私が獣人の大陸、ウィキュシャリア大陸を訪れたのは、私がまだ13の頃。両親に先立たれた私は魔術師の修行に出ようと、父の形見の魔法の杖と母の形見のペンダントのみをもって、ウィキュシャリア大陸に向かったのです。ウィキュシャリア大陸には魔族の住むルロリーマ大陸程ではないですが、それでも危険なモンスターが数多く棲息している地域。この大陸ならば魔術のレベルアップに適当であろうと見当をつけて私はウィキュシャリア大陸に行き、森で野宿をしながらモンスター狩りを続けました。そんなことを続けていたある日、私は10体のモンスターに囲まれたイヌ種の獣人を見つけました。その獣人はモンスターが襲いかかってきているというのに何の抵抗もせず、ただプルプルと震えています。私は慌てて魔術を放ち、モンスターを追い払いました。そして、獣人になぜ抵抗しなかったのかと聞くと、こう答えました。


「私なんかが攻撃しても、あのランクのモンスターを倒せるわけがないので……」


 この答えは私を怒らせるのに十分なものでした。私はその獣人を怒鳴りつけました。やる前から諦めるなど、バカのすることだ。敵わないと思っても最後の最後まで抵抗しろ。運が良ければ、実力がついていれば、あらゆる要素が絡めば勝つことだってできる、と。すると、その獣人の目に光が戻りました。そして獣人は、生きる道を教えてくれた私に恩を返すと言って、私を家に泊めてくれたのです。私はそれを恩と感じ、次の日からその獣人と狩りをして修行をすることにしました。分かっていると思いますが、この獣人がルーア。狩りを始めて半年もすると、ルーアは腕を上げて自信を付け、気弱なところが無くなりましたな。その時に私はルーアのご両親から結婚話を持ち掛けられ、いずれ、時が来たらと答えました。そして更に2年程厄介になった後、私はルロリーマ大陸に渡ると告げました。ご両親もルーアも難色を示しましたが、私がルーアと結婚するまで死ぬような事は無いと言うと、納得してくださいました。私はウィキュシャリア大陸に別れを告げ、ルロリーマ大陸で2年修行。そして、この人族の大陸であるゴーンドワナ大陸へと戻って来たという訳です。


              ☆  ☆  ☆


「成程。それでですか。」

「ええ。ルーアは私を慕ってくれましたし、私もルーアを親愛を持って見ることができました。私のパートナーはルーアしかいないと確信しましたな。」


 ルキナスさんはしみじみと呟いた。


「そこまで想ってるんですか……さすが、お兄ちゃんと慕われているだけの事はありますね。じゃあ、やっぱり結婚したいですか?」

「……まあ、そうですな。ルーアが今でも私を受け入れてくれるのならば、ですが。」

「大丈夫ですよ、きっと。じゃあ、早速準備しましょうか。ルーアちゃんが戻ってくる前に。善は急げって言いますし。」


 俺はそう言うと、充実機能からある施設を選択して設置し、その後5000DPずつ支払って結婚式セット(新郎用)と結婚式セット(新婦用)を召喚した。


「これで準備完了。あとは、ルーアちゃんが帰ってきたときに本当の気持ちを聞けばOKですね。そもそもあの条件はどのくらい父親のことを思ってるか確かめる為のものだったから本気じゃないですし。本音言えばダンジョンに住んだ方が安全だと思うんですけどね。俺はルーアちゃんの不利益になるようなことをしようとは思いませんし。」


 俺はウィンドウの前に座って、ルキナスさんにそう微笑みかけた。

ダンジョン名:‐‐‐‐‐‐

深さ:100

階層数:10

DP:493万8000P

所持金:1億ゴルド

モンスター数:220

    内訳:ジャイアントモール  10体

       キングモール     30体

       ウルフ        40体

       ソイルウルフ     20体

       ファイアウルフ    20体

       ウォーターウルフ   20体

       ビッグワーム     25体

       ジャイアントワーム  30体

       レッドイーグル     5体

       イートシャドウ     5体

       ハンタースパイダー   5体

       ハイスコーピオン    5体

       ブルースパロー     5体

侵入者数:3

撃退侵入者数:2


住人

リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)

ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)

ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)

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