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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第2章:マスターと対人関係

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17.初めての介抱

「え? この子が、ルーアちゃんなんですか?」

「間違いありませぬ、リチャード殿。この少女は私が若き頃に契った獣人、ルーア・シェル・アリネですな。」


 俺は鑑定をしてみる。


獣人(小型イヌ種)

名前:ルーア・シェル・アリネ

状態:全身火傷 意識不明 危篤


「本当だ……すぐ治療しないと!」


 俺は急いで1瓶の上級回復薬を獣人の子……ルーアちゃんにかけた。すると、ルーアちゃんの身体がキラキラと輝く光の粒子に包まれた。そして、その粒子が消えてから再び鑑定すると、状態の欄から命の危険を表す文字は消え、代わりに【睡眠】という文字が入っていた。


「ふう、どうやら命は助かったみたいです。今は眠っている状態ですね。無理に起こすのも可哀想ですし、このままにしておきましょう。あ、それとルキナスさん。」

「何でしょう、リチャード殿。」

「ルーアちゃんを見ておいてもらえますか?」

「リチャード殿は何をなさるのだ?」

「ダンジョンの管理を。介抱したくない訳じゃないですけど、いきなりナイフで頸動脈切られたりしたらたまらないので。」

「ルーアはそのようなことはしないと思いますが……まあ、念には念をという言葉もありますしな。了解した。リチャード殿はお気になさらず。」


 そう言うとルキナスさんはルーアちゃんを抱き上げて自分の部屋へと運んでいった。


「ご主人様、なぜ介抱をなさらないのですか? 先程ルキナスさんに仰った理由は口から出まかせですよね?」

「え? そんなことは……」

「私の読心術を舐めないでください。そもそも、目を泳がせまくっておいて言い訳しようとするのは無謀です。」

「へー、目って泳げるんだ。俺は泳げないのに。」

「話をはぐらかそうとしても無駄です。私はご主人様のしようとしてることも、ご主人様の気持ちも全部分かるんですから!」


 そう言ってティリはどや顔になり、空中で胸を張った。どこに威張る要素があったんだ?


「兎に角、ごしゅじ……」

「リチャード殿! ルーアが目覚めましたぞ!」


 ティリの声にルキナスさんの叫びが被った。ティリはなんか泣きそうな顔になっている。仕方なく俺は、


「あの子を介抱するのはルキナスさんが適任だ。そもそも、許婚いいなずけを他の奴に看病させるのはなんか嫌じゃないか?」


 と問いかけのような感じで言った。


「それでああ言ったんですか?」

「そうだよ。それと、俺もティリの看病をルキナスさんにさせたくはないし。」


 俺はティリの耳元でそう囁いた。ティリは少しキョトンとした後、頬を真っ赤に染める。


「兎に角、そういうことだ。じゃあ、ルキナスさんの部屋に行くぞ。」


 俺はそう言うと、まだ真っ赤な顔をしているティリを肩に乗せ、ルキナスさんの部屋に入った。


「目覚めたんですね。」

「ええ。こちらのベッドに運んだらすぐ。まだ少し混乱しているようですが。ルーア、私が分かるか?」

「えっと……どこかで会ったような……ううっ! 頭がグラグラする……」

「記憶が混乱してるみたいですね。」

「そうだな。ルキナスさん、話をしたいんで、アレやってもいいですか?」


 もはや俺たちの間で、『アレ』と言えば1つしかない。


「怪我人にぶちかますのはどうかと思いますが……もう治っていますし、死ぬ事も無いですからな……別に構いませぬぞ。」

「じゃあ、遠慮なく。ティリ、一緒にやるぞ。」

「はい! ご主人様!」


 俺とティリは声を合わせて、


「「アクアトピア!」」


 と叫んだ。俺がよく朝にぶちかまされている量の倍以上の水がルーアちゃんに降り注ぐ。


「あびゅあびゅあびゅあべべびゃびゃべびゃ!」


 ルーアちゃんは奇声を上げ、水が止まるとキョロキョロと首を回す。そして俺と視線が合うと、顔を青ざめさせた。そして一言。


「わ、わ、私は美味しくないですよ? 私を食べたらナンチャラウイルスとかで食中毒になっちゃいますよ? 食べない方が良いですよ?」


 俺は草原の肉食獣か? ウルフとかなら兎も角、なんで普通の人間である俺に怯えるんだよ。


「食べないから、そんなに怯えない。落ち着いて落ち着いて。ほら、深呼吸。」

「その通り。ルーア、私が分かるか? 私がルーアを食べると思うか?」


 ルキナスさんがルーアちゃんの顔を覗き込みながら言った。ルーアちゃんは顔をルキナスさんの方に向けると、目をまん丸に見開いた。そして、


「る、ルキナスお兄ちゃん?」


 と言った。


「お、お兄ちゃん? ルキナスさん、あなた獣人だったんですか?」

「いえ。私は人間ですぞ。ルーアは昔から私を兄のように慕っておりまして……それでお兄ちゃんと呼ぶように……ルーア、その呼び方は止めなさい。」

「その前に……ここどこですか? お兄ちゃん。」

「止めろと言っているのに……」

「ルキナスさん、落ち着いてください。別にいいじゃないですか。俺が説明しますから。」


 俺はそう言うとルーアちゃんの方に向き直り、


「ここはフェリアイルステップに存在するダンジョンの最深部、コントロールルームだ。」


 と言った。すると、ルーアちゃんは一瞬硬直。そして、


「え? じゃあ私は、ダンジョンマスターに捕まった? ダンジョンに入っても無いのに?」


 と混乱した声を上げる。


「ダンジョンマスターは非道って聞いたことがある。嫌な奴とかいうレベルじゃないって……ルキナスお兄ちゃんも捕まってるんだ……でも縛られてないから動ける。じゃあ、戦える!」


 そう言うや否や、ルーアちゃんはナイフを取り出すと、俺に躍りかかった。


「覚悟!」

「うおっ、危ねえ!」


 間一髪で俺はその頸動脈を狙った一撃を避けると、ねじれた杖を手に取り、叫んだ。


「コンフォート!」


 途端に、ルーアちゃんに緑色の光が降り注ぐ。ルーアちゃんの動きが止まり、少しずつ落ち着いていく。光が消えると、ルーアちゃんはナイフをしまい、俺に向かって頭を下げた。


「あの……すみません。急に斬りかかったりして。」

「いや、いいよ。怪我してないし。」


 俺がこう言うと、ティリが叫んだ。


「良くないです! 下手したら殺されていたかもしれないんですよ!」

「でも、今回俺は怪我してない。だったらいいじゃないか。」

「ダメです! ご主人様はお優しすぎます! この雌犬に上下関係というものを思い知らせないと!」

「雌犬とか言うな! 失礼だろうが!」

「いいえ、リチャード殿。ルーアにはけじめというものをしっかり思い知らせなければなりませぬ!」


 なぜか許婚であるはずのルキナスさんまでもがそう言う。


「ティリもルキナスさんは一旦落ち付いてください。俺はルーアちゃんに聞きたいことがあるので。」


 俺はそう言うと、ルーアちゃん


「君さ、なんでフェリアイルステップに来たんだ? レーザーホースの蹄を回収していたみたいだけど。」


 と聞いた。すると、ルーアちゃんはハッとした顔をした。


「それはクエストの為です! 先日父が倒れまして、20万ゴルドの上級回復薬を注射しないと死んでしまうんです。でもお金が無くて、それを買う為に何とかお金を稼ごうと思って……」


 そしてルーアちゃんは経緯いきさつを話した。何とかお金を稼ごうとウィキュシャリア大陸で頑張ったこと。上手くいかなくてゴーンドワナ大陸に渡ってきたこと。そして割が良いクエストがあると噂のホイジンガギルドのメンバーになったこと。そこまで言った時、ルキナスさんが声を上げた。


「何? ルーア、お前ホイジンガギルドのメンバーになったのか?」

「何か問題でもあるんですか、お兄ちゃん?」

「あそこのギルドマスターはとんでもない守銭奴であるぞ! レーザーホースの蹄を回収していたことから察するに、お前が受諾したクエストは報酬5万ゴルド以上の蹄50個回収クエストであろう?」

「そうですけど……」

「5万ゴルド『以上』だぞ! どんなに多く取ってもあそこのギルドマスターは5万ゴルドしか報酬を渡さん!」

「え? で、でも、あんなに優しかったのに……」

「お前が使えなければ奴隷にでもして売り飛ばそうとかいう考えを巡らせつつ、表面上は爽やかに振る舞っていたのだ。あそこのギルドマスターは信用してはならん!」

「でも……じゃあどうやってお父さんを……」


 そう言って泣き出すルーアちゃん。俺は召喚してあったもう1つの上級回復薬を取り出した。


「これが必要なのか?」


 俺はルーアちゃんの目の前に瓶を突き出して言う。


「そ、それは上級回復薬! そうです! あの、無理なお願いだということは分かっているんですが……それを頂けませんか?」

「ルーア、それはさすがに厚かましい。そもそも、問答無用で斬りかかっておいてそれは……」

「いや、そんな事は無いですよ。条件次第ですけど。」


 俺は事もなげにそう言った。


「な、何でもしますからその上級回復薬を譲ってください! お願いします。」

「分かった。じゃあ……」


 俺が条件を言おうとすると、その前にティリが言った。


「ご主人様の靴を舐めなさい!」

「分かりました!」


 ルーアちゃんは何の躊躇いも無く言われた通りのことをしようとした。俺は慌てて足を引く。


「おい、ティリ! 意味無いことをさせるな!」

「え? そういうことを言おうとしていたんじゃないんですか?」

「俺はそんな鬼畜じゃない! 改めて条件な。このダンジョンに住むこと、ルキナスさんと結婚すること。この2つを今すぐ誓えるなら、上級回復薬は譲る。」


 俺がこう言うと、ルーアちゃんはすぐに誓った。


「はい! 私、ルーア・シェル・アリネはただいまよりこのダンジョンに住まいを置き、ルキナス・クロムウェル・モンテリューと結婚することを誓います!」

「よし、合格。」


 俺はそう言うと、ルーアちゃんに上級回復薬を渡し、充実機能から【自由移動転移陣】を選択して設置。


「そこの転移陣の上に乗って行きたい所を念じれば行けるから。ただ、2時間経ったら強制的にここに戻らされるから、そこは注意な。」

「はい! 御恩は一生忘れません!」


 そう言うと、ルーアちゃんは転移陣に乗り、転移して行った。


ダンジョン名:‐‐‐‐‐‐

深さ:100

階層数:10

DP:494万8000P

所持金:1億ゴルド

モンスター数:220

    内訳:ジャイアントモール  10体

       キングモール     30体

       ウルフ        40体

       ソイルウルフ     20体

       ファイアウルフ    20体

       ウォーターウルフ   20体

       ビッグワーム     25体

       ジャイアントワーム  30体

       レッドイーグル     5体

       イートシャドウ     5体

       ハンタースパイダー   5体

       ハイスコーピオン    5体

       ブルースパロー     5体

侵入者数:3

撃退侵入者数:2


住人

リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)

ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)

ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)

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