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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第2章:マスターと対人関係

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16.初めての恐怖

「あ、そう言えば……」

「どうなさいましたか、ご主人様?」

「いや、何で草原に冒険者が頻繁に来るのかな、と思ってさ。」


 俺はそう言った。最初に来たルキナスさんたちパーティは草原にモンスター討伐に来ていた。そしていま接近中の獣人の子も、今は草原で6本足の馬を狩って、蹄を回収している。頻繁というには少ないが、それでも草原に来ているというのは紛れもない事実だ。


「ああ、今ホイジンガのギルドで出ているクエストは、草原のモンスターの素材回収しかないのです。」


 ルキナスさんがそう言った。


「今の時期は、モンスターのレア素材が出やすい。そして、その素材は主に貴族が求める珍味や高級幻覚薬の材料。守銭奴と噂されるホイジンガギルドのマスターは、常に金になるクエストしか出さぬのです。」

「それでか……」

「あと3日程でレア素材ドロップの時期は終わりますから、それまでの辛抱ですぞ、リチャード殿。因みに、今の時期のレア素材は、レーザーホース、全大陸の平原に生息する6本足の馬の蹄ですな。この1週間はレーザーホースの蹄から高級幻覚薬の主成分となる【ヘルケル】という名の物質が100%の確率で入手できるのです。通常は0.001%しか入手できないのですが。」

「だからですか……まあ、あと3日なら我慢するかな。」


 俺はそう言いながら、視界共有ウィンドウを確認する。獣人の子は人間では到底出すことができない程の速度で駆け、レーザーホースの前に回り込むと口から出される熱線をヒラリと躱してナイフを相手の喉に突き立てる。一撃必殺でレーザーホースは地面に倒れ、少しピクピクと足を痙攣させた後、動かなくなった。


「速い……なかなかの熟練者だな……」

「これほどの速さでレーザーホースを討伐できるのならば、Cランク相当の実力がある、と考えられますな。かなりの力量ですぞ。ウルフ10体程度、1分も掛けずに蹴散らすでしょう。」

「獣人って怖いな……」


 俺はそう呟くと、再びウィンドウに目を向ける。獣人の子は今度は5つ頭のヘビを相手取って戦っている。獣人の子の手の中にあったナイフが一瞬揺らめいたかと思うと、次の瞬間にはヘビの頭が4つ宙を舞っていた。頭はすぐに再生したが、ヘビは慌てたように背を向けて逃げていく。


「うおっ、あのヘビもソロで撃退か……」

「あの速さ、只者ではありませんね。あのファイヴヘッド・アナコンダすら退散させるなんて……」

「ヤバいな……ダンジョンに突っ込んでこられたらきつい……今の戦力じゃ負けるかもしれないし……」


 俺は少しネガティブな発言をした。その間にも獣人の子はレーザーホースを撃破。そしてその子が、倒したレーザーホースの蹄に腰から抜いたナイフの刃をあてた、その時だった。


 ――グワアアアアアアアアアー!


 突如として凄まじい轟音が響いた。慌てて辺りを見回す獣人の子。そしてその目が上空を捕らえた時、彼女の表情は凍りついた。レッドイーグルを上昇させると、視界共有ウィンドウに真っ赤な体の巨大な生物が映った。体はヘビのように長いが、立派な鉤爪がついた脚と大きな翼を持つ、まるでドラゴンのようなモンスターだ。


「な、何だこいつは……」

「これは……まさかレッドワイヴァーン? なぜ神速の龍種がこんなところに?」


 俺の呟きにルキナスさんの慌てたような声が被った。


「レッドワイヴァーン? それ、何ですか?」


 この俺の問いには、ティリが答えた。


「ワイヴァーンは、ドラゴン族に分類されるモンスターで、ランクはA+です。モンスターはCランクから+、無印、-に区分されますので、ワイヴァーンはAランクモンスターの中でも強者の方に入ります。ドラゴン族の中で考えると戦闘力はそれほど高くはありませんが、それでもほとんどのモンスターにとっては充分な脅威。また、ドラゴンの中で最も速く飛ぶことができます。また、口から様々な種類のブレスを吐くことができ、その属性は身体の色によって決まります。赤なら炎、青なら氷、緑なら風、茶色なら砂、金なら光、黒なら闇といったようにです。今回は赤いので、炎のブレスを吐きますね。その破壊力は凄まじく、街を一個壊滅させるほどとも言われています。」

「リチャード殿! あの咆哮から察するに、奴は今腹を空かせているはずですぞ! 逃がさなければレッドイーグルなどあっという間に丸呑みにされてしまう!」

「え? しかし今レッドイーグルを逃がしたらこのダンジョンにドラゴンが突っ込んでくるんじゃ……」

「あいつは大きすぎてこのダンジョンには入ってこれません! だから大丈夫です!」


 俺の言葉を遮ってティリが言った。そして、ティリはダンジョンコアに手を触れて、


「サブマスター権限による命令権を行使します! レッドイーグル! 緊急退避!」


 と叫んだ。レッドイーグルは急いでダンジョンの中に逃げ込む。それとほぼ同時に、


「グワアアアアアアアアアー!」


 と凄まじい咆哮が再び聞こえ、一瞬遅れてゴオオオオオオーとブレスの音が聞こえる。ダンジョンの中に炎は入ってこないようだが、熱波や衝撃は伝わるようで、入り口近くにいたウルフ数体と先ほど逃げ込ませたレッドイーグルは衝撃波で吹き飛ばされた。慌てて鑑定すると、状態の欄に【怪我】と出ているものの、命に別条は無いようなのでほっとする。しかし、さっきの獣人の子が心配だ。先ほど吹き飛ばされたものではない、別のレッドイーグルを向かわせると、そこにはレーザーホースの死体をくわえて飛び立とうとしているレッドワイヴァーンとうつぶせに倒れている獣人の女の子の姿があった。鑑定したいが、ダンジョンの外なので鑑定ができない。そんなことを考えているうちにレッドワイヴァーンは去り、そこには倒れている獣人の子だけが残された。意識は無いようだ。この子を助けるべきか放っておくべきか考えていると、彼女の近くの草むらがガサガサと揺れ、そこから頭が5つあるヘビ型のモンスターが出てきた。ファイヴヘッド・アナコンダだ。このままでは獣人の子が食われてしまう。俺は咄嗟に、


「キングモール!」


 とダンジョンコアに手を触れて叫んだ。するとその途端、ファイヴヘッド・アナコンダが3m程吹き飛ばされ、ファイヴヘッド・アナコンダがいたところが陥没。そして、そこからキングモールが出てきた。


「フシャアアアアアアアアアー!」

「…………」


 ファイヴヘッド・アナコンダが5つの口を大きく開けて威嚇するが、キングモールは無言。その姿は小物など目でもないといったような、王者の風格を感じさせた。


「フシャアアアアアアアアアー!」

「…………」


 ファイヴヘッド・アナコンダの威嚇のような鳴き声が再度出される。が、キングモールはそんなことなど意に介さず、巨体に似合わない俊敏な動きでファイヴヘッド・アナコンダに急接近すると、前足をブンッと振るった。たったそれだけで、ファイヴヘッド・アナコンダは再び吹き飛ばされ、5つの頭のうち3つを失う。頭はすぐに再生されてしまったが、もう戦意は喪失しているようで、こそこそと逃げていった。俺はそれを見届けてから、


「キングモール、そこの獣人の女の子を背中に乗せて、コントロールルームまで運んでくれ!」


 と命じた。


「え? ご主人様、あの子を助けるつもりですか?」

「そうだけど? 命は大切だろう。誰であろうが命は大切だって。」

「危険です! ご主人様はお優しすぎます!」

「確かに俺は平和ボケかもしれないけど、目の前に助けられる命があるなら救っておきたい。それが俺の心情だ。」

「うう……ご主人様がそう言うなら別にいいですけど……」

「危ないって思ったら、ティリが助けてくれるだろ? ティリを信頼してるからこそ、俺はあの子を助けようと思えるんだ。だって、あの子が目覚めていきなり襲ってきても、ティリが対応してくれる。そうだろ?」


 こう言うと、ティリは目を潤ませた。


「ご主人様、そこまで私を信頼して……?」

「ああ。」


 俺がそう答えた時、キングモールがコントロールルームに獣人の子を乗せてやって来た。


「ああ、運搬ご苦労、キングモール。」


 頭を撫でてやると、キングモールは嬉しそうにクゥーと一声鳴き、獣人の子を降ろすとダンジョン内へ戻って行った。その子を運んでスプリングベッドに寝かせると、ルキナスさんが声を上げた。


「る、ルーア? ルーアなのか?」



ダンジョン名:‐‐‐‐‐‐

深さ:100

階層数:10

DP:494万8000P

所持金:1億ゴルド

モンスター数:220

    内訳:ジャイアントモール  10体

       キングモール     30体

       ウルフ        40体

       ソイルウルフ     20体

       ファイアウルフ    20体

       ウォーターウルフ   20体

       ビッグワーム     25体

       ジャイアントワーム  30体

       レッドイーグル     5体

       イートシャドウ     5体

       ハンタースパイダー   5体

       ハイスコーピオン    5体

       ブルースパロー     5体

侵入者数:3

撃退侵入者数:2


住人

リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)

ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)

ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)

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