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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第7章:マスターと海

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122.起きる理由、落ち着く理由

「……ード様……チャード様……」

「んん……」


 微睡みの中、誰かの声が聞こえてくる。女の子の声ではあるが、ティリの声ではない為、俺は起きる必要はない、と判断する。すると……


「ご主人様! もう朝ですよ!」

「おわっ!」


 いつものティリの声が耳元で響いた。驚いて覚醒する俺を、ティリはくすくすと笑いながら見ている。


「ふふ、ご主人様のリアクション、いつもより大きいですね。」

「ティリ、いつ起きた?」

「んーと……2時間くらい前ですかね。」

「2時間何してたんだ?」

「持って来ていたハチミツを食べて、少しうとうとして、リリーフィッシュと遊んで、うとうとして、リリーさんが起きたので少しお話して、後はご主人様の寝顔を眺めてました。ご主人様の寝顔、いつもより無防備で可愛かったです。」

「比率は?」

「5:2:3:2:8:100くらいですね。」

「ほとんど俺の寝顔じゃないか!」

「だって、ご主人様の寝顔が可愛かったんですから、仕方ないじゃないですか。それとも、ご迷惑でしたか? 私に寝顔を見られるのはお嫌ですか?」

「いや、別にいいんだけど……」

「じゃあいいじゃないですか。はい、論破です!」


 ティリは強引に話をぶった切った。寝起き状態とはいえ、ティリに舌戦で負けるとは……と思いながら、俺はバリアを解除する。


「リチャード様は私の声掛けでは全然お起きにならなかったのに、ティリウレスさんの声掛けだとすぐにお起きになるんですね……私の声は無意識下でシャットアウトでもしていたんですか?」


 人間形態になっているリリーが少し呆れたように言ってくる。


「お前の声掛けは聞こえていたが、ティリの声ではないから起きる必要はないと判断した。それまでの話だ。」

「……ティリウレスさんは良いですね、こんな素敵なご主人様に毎日可愛がって貰えるなんて。」

「……リリーさん、今回は許容しますが、今の台詞はご主人様を誘惑しているとも取れますので、不用意な発言は控えた方がいいですよ。死にたくなければ。ニッコリ。」


 リリーの少し危険な発言に対し、ティリが底冷えするような気迫のこもった言葉を発した。リリーの周囲の水の温度が下がったのか、それともただ単に怖かったのか知らないが、リリーがブルブルと震えている。


(ティリ、今のは流石にヤバいと思うぞ。)

(いいじゃないですか、このくらい。昨日コントロールルームまでさっさと案内してくだされば私はご主人様とイチャイチャできたのに、なかなか案内してくれなかったんですから。ささやかな仕返しです。)

(魔力量とかその他諸々の違いを考えろ。ティリの方が確定的に強いんだから、少しくらい発言は手加減してやれ。)

(むー……)


 ティリとテレパシーで話したが、ちょっと怒っているらしく、返事は芳しくない。そこで俺は、切り札を切った。


(今度3日間我が儘し放題にしてあげるから。)


 瞬間、彼女の目が輝いた。身体から膨大な光の魔力が放出され、周囲のリリーフィッシュたちが慌てたように岩陰に逃げ込む。


(本当ですか? 嘘吐いたら針1阿僧祇本呑まなきゃいけないんですよ? 死んじゃいますよ?)

(千本だろ、そこは。阿僧祇ってのは……)

(10の56乗です。)

(いや、それは分かってる。けど、針をそんなに集められないだろ。)

(じゃあ、1恒河沙本で。10の52乗だからきっと……!)

(恒河沙でも無理だって。ま、俺はティリに嘘を吐かないから、大丈夫。だから落ち着きなさい。)

(かしこまりました。)


 ティリは素直になった。それと同時に光魔力の放出も収まる。


「あの、リチャード様? そろそろ次の階層に行っても……」


 ここでリリーが話しかけてきた。どうやらこの階層にももう興味を惹かれるようなものはないらしい。


「ああ、悪かった。行けるぞ。」

「では、そこの転移陣に乗ってください。」


 リリーが指し示したのは、今までとは違う金色の魔法陣だった。


「ちょっと待て、何で金色なんだ?」

「あ、次の階層はからしばらく陸上棲息種がいる階層になりますので、それを示すためです。」

「侵入者にバレやすくするメリットがあるのか?」

「あ、転移陣は誰かが『指し示す』という動作に連動して光り出すので、それまでどこにあるか分からないんですよ。だから、バレる心配はほぼありません。仮に指さされたとしても、光の色が変わってるから次階層からモンスターが変わってる、なんてわかる人は少ないでしょうし、問題ありません。」

「でも指さされたら光るとなると、転移陣を使われるんじゃないか? 俺たちだって転移できてるんだし。」


 俺はティリと転移陣に乗り、陣を指でなぞりながら疑問を呈する。すると、リリーは事もなげに、


「私がいつも唱えているから分かっているとは思いますが、識別番号とか言わないと転移は発動しないので、それが分からない侵入者には転移陣使えません。」


 とのんびりした口調で言うと、徐に転移陣に乗り、


「転移発動。目標、深さ51。識別番号、B5F1-RBFB-03。」


 と唱える。今回も無事転移は発動したようで、周囲の景色が一変した。周囲に水もなくなっている。


「第6階層、草原エリアです。ここからしばらくの間、水棲モンスターではなく陸上棲息モンスターがいるエリアになります。船の上でもお話ししましたが、この階層にいるのはホーンラビットです。」


 リリーは胸を張ってそう宣言するのだった。

恒河沙、阿僧祇は共に実在する単位です。この上にも、那由多、不可思議、無量大数という単位が存在しています。因みに、那由多、不可思議はこの小説内でも1度ずつ使用されています。興味を持った方は探してみてください。答えは活動報告の方に書いておきます。

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