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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第7章:マスターと海

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118.凍てつく眼光と訪問の課題

「えーっと、この辺りなんですけど……」


 リリーが海底の岩盤をこんこんと叩いている。彼女の話では、アトランティスの入り口は普段海底の岩盤の下にあり、その岩盤をぶち抜かないと入れないらしい。


 ――コンッ コンッ カンッ!


「あ、ここです、多分。音が違いましたね。」


 リリーはそう言いながら俺たちに離れるようジェスチャーをする。


「我が力の源、水よ。渦巻きて我が前の障害を取り払え! 【ウォータートルネード】!」


 リリーが印を切りながら呪文を唱える。すると、彼女の前に巨大な渦潮が出現し、あっという間に岩盤を打ち砕いた。もの凄い破壊力だな。海の聖なる精霊と自称するだけのことはある。


「あ、すみません。間違えました……」

「え? 間違えた?」

「はい……ここはただの岩でした。内部が侵食されて空洞になってただけみたいです……そもそも、私が一撃で壊せる程スイリュウ様が張った結界の岩盤は脆くないですし……すみません。」


 ……前言撤回。よく考えたら、俺だってただの岩盤くらいなら余裕で砕けるしな。


「それはご主人様が規格外だからですよ。普通の人は水中で岩盤を砕くなんて不可能です。」

「ティリ、サラッと心を読むのはやめてくれ。しかしまあ、面倒なことになったもんだな。」


 俺は水中であるにもかかわらず、大きく嘆息した。吐き出した空気が大きな泡となって海面へと上がっていく。俺はそれを見ながら、船上での会話を思い出していた。


              ☆  ☆  ☆


「なんでお前のサボりの言い訳の為に俺たちがアトランティスまで出向かなきゃならないんだ、この迷惑アザラシが。」

「サボりじゃないですよ! 私はあなたに釣られたんですから!」

「勝手に食いついたお前が悪いんだろう、この迷惑アザラシが。」

「私はアザラシじゃありません!」

「あー、アザラシは別名だったな。間違えて悪かった、迷惑シードッグ。」

「シードッグでもありません! というか、アザラシもシードッグも同じです! 私はセルキーですよ!」

「黙れ、迷惑海獣。俺はお前に振り回されることになってるんだぞ。」

「うう……」


 俺の反論に涙目になるリリー。面倒臭いことこの上ない。


「相変わらずディックはトラブル巻き込まれ体質だな。」

「リック氏、今更ですよ。」

「リックさん、俺はリチャードです。ディックじゃありません。」


 リックさんは未だにディック呼びをやめようとしない。これをいちいち注意するのも面倒臭いことこの上ない。


「ご主人様に迷惑をかけるとは許し難い愚行です。ご主人様、テンペストボムとテンペストトルネードの使用許可をお願いします。あの迷惑アザラシをミンチにしますので。」

「同盟の相手を挽き肉にしようとするな。」


 ティリも未だにリリーを殺そうとすることをやめようとしない。これを止めるのも面倒臭いことこの上ない。


「リチャード様、何でもしますからアトランティスに来てください! お願いします! この通りです!」


 リリーはとうとう土下座して懇願してきた。ここまでされると断りにくいが、要求をただ呑むのも嫌だな。


「まあ、アトランティスは同盟の相手だから、実地を見ておくのもいいだろう。行ってやってもいい。だが……」

「だが?」

「だが、もしもアトランティスが期待外れなダンジョンだった場合、その場で同盟を破棄し、俺は即刻帰る。それでも文句は言うなよ?」

「えっ……そ、それは……」

「黙れ、迷惑アザラシ。お前が言ったんだろうが、何でもしますって。この条件を承諾するなら、俺はアトランティスまで行く。お前のサボりの言い訳もしてやる。だが、この条件を承諾しないなら、俺はアトランティスには行かない。お前がスイリュウの逆鱗に触れようが、殺されようが、ミンチにされてハンバーグになろうが、知ったこっちゃない。さて、どうする?」


 俺はリリーを睨みつける。慈悲はない。ある訳がない。


「うう……」


 思考に入ろうとするリリーをより眼光鋭く睨む。すると、


【ダンジョンマスターが一定以上の畏怖を感じさせる視線で対象を睨みました。体術技能【絶対零度の視線】を習得します。】


 忌まわしき機械音声が脳内に響いた。そして、それと同時にリリーの腕が徐々に凍り始める。


「えっ? な、何をなさるんですか……」

「いや、別に何もしているつもりはないぞ。勝手にお前が凍り始めただけだ。」


 俺は睨むのをやめる。すると、リリーの腕を覆い始めていた氷の浸食が止まった。やっぱり睨んでいたのが原因だな。【絶対零度の視線】を勝手に発動していたんだろう。


「ご主人様、あのまま睨み続けていれば確実に凍りつかせられたのに、なぜそうなさらないのですか?」

「殺す気はないからだ。それと、アトランティスには個人的に興味がある。」

「ならさっさと折れればよろしかったのでは? ご主人様がお決めになったなら、私は異論を唱えませんよ? あの迷惑アザラシをミンチにしようともしませんし。」

「俺は自分に損害がある要求を無条件で呑むのが嫌なんだよ。頭を下げられようが、土下座されようがな。だから、条件を付けた。俺がアトランティスに行かなければ、間違いなくあの迷惑アザラシはスイリュウに酷い目に遭わされるから、条件を拒否することはできない。安全と案内人を確保し、相手の要求を果たすにはこれが一番合理的かつ簡単だ。」

「成程、流石はご主人様! では、あの迷惑アザラシがさっさと条件を呑むように私が誘導します!」


 ティリはスイスイと飛んでリリーの前まで行くと、


「私にミンチにされるのと自らの主人にミンチにされるのとどっちが良いですか?」


 と笑顔でめっちゃ怖いことを聞いた。


「ど、どっちも嫌ですよ!」

「なら、ご主人様が言った条件を呑んでください。」

「そ、それは……」

「迷惑アザラシさん、5秒以内に答えてください。選択肢1、私にこの場でミンチにされる。選択肢2、スイリュウ・ウェット・ウォーターにダンジョンの中でミンチにされる。選択肢3、ご主人様が提示した条件を呑み、アトランティスが期待外れではないということを納得して貰って、あなたが釣られた言い訳になって貰う。どれを選びますか? 5秒経過して、もし答えられなかったら、選択肢1を選んだということになりま……」

「さ、3番で! リチャード様の提示された条件を呑ませて頂きます!」


 リリーは真っ青な顔で食い気味に3番を選んだ。


「そうですか。じゃあ早速案内して貰いましょうかね。」

「は、はい。あ、でも、リチャード様とティリウレス様は兎も角、そちらの領主様方は……」

「流石にダンジョンに行くのは御免被る。害がなくとも、今行ったらオルカの釣りスポットに行けなくなるしな。」

「しかしリック氏。オルカを2人で釣るのは少々難しいですよ? リチャードさんはここで離脱なのですから。」

「あの……オルカが欲しいのですか?」


 リリーが問う。リックさんとレオナルドさんは大きく頷いた。


「うむ。あの海のギャングとは是非1度対戦したいと思っていてな。」

「でしたら、差し上げますよ。観賞用でよければ、ですが。うちの子たちはお利口なので、暴れたりはしません。」

「ううむ……我々は単純にオルカが欲しいのではなく、オルカを釣りたいのだ。観賞用のオルカを貰っても使い道がない。そもそもあんな巨獣を入れられる水槽もないしな。」

「でしたら、この次に海にいらした際、観賞用オルカを放流して頂き、私がオルカの釣りスポットまで案内する、というのはどうでしょうか? 水槽はこちらから提供しますし、ルカちゃんのエサは自動で合成されるようにしておきますから。」

「ルカちゃん?」

「あ、オルカの名前です。お利口で小さめの個体の女の子です。」

「ネームモンスターなのか……ネームモンスターはダンジョン防衛の要と聞いているが、貸し出して大丈夫なのか?」

「ルカちゃんは敏捷力の高さがウリで、攻撃力や防御力は別の子の方が高いんです。だから大丈夫です。」


 胸を張るリリー。


「これだけ言うんですから、借りたらどうですか? 次に来た時に釣りスポットに案内して貰えるみたいですし。」

「リック氏、私もそう思いますよ。今から釣りスポットに行っても釣るのは困難でしょうし、そもそもオルカがかからなかったら完全に骨折り損です。」

「ううむ……」


 俺とレオナルドさんの説得にリックさんはしばし呻ったが、


「……仕方ない。では観賞用のオルカを1頭借りることにしよう。今すぐ借りられるか?」


 とリリーに聞いた。


「あ、はい。大丈夫です。【サモン・オルカ】! 併せて【ボックスクリエイト】!」


 リリーが呪文を唱えると、彼女のプレッシャーが一気に跳ね上がった。彼女の身体から膨大な魔力が溢れ出し、海原が荒れる。


「オルカの召喚って、こんなに魔力を使うもんなのか?」

「んー、どうでしょう? 召喚魔法は習得が難しいですが、一度習得すれば適性も意外と簡単に得られますし、慣れれば消費魔力量も少なくて済みます。ボックスクリエイトも製作属性では上級に分類されますが、水槽を作る程度ならそれ程難しくないですし、中級程度の魔力消費量ですね。普通、魔力を溢れ出させる程精神集中する必要はありませんが……まあ、この迷惑アザラシはまだ未熟者なんだと考えておけばいいんじゃないでしょうか?」


 俺がふと呟いた問いに対して、ティリはスラスラと答えた。最後の一文は余計なような気がするが、まあよしとするか。


「んぎぎ……えいっ!」


 リリーが気合いを入れるように叫ぶと、水中から巨大な水槽が浮かび上がってきた。その中には、白と黒の斑模様の巨獣が。俺はそれを鑑定する。


オルカ ランクA

名前:ルカ

保有魔力:0/3000000

称号:喰い荒らす者(咬合力中上昇)

   遊泳の天才(遊泳能力大上昇)

スキル:氷魔法(水魔法の上位互換スキル)

    遊泳(遊泳能力を上昇させるスキル)

    咬合力(咬合力を上昇させるスキル)

    牙強化(牙を強化するスキル)

    悪食(捕食した相手のスキルを中確率で奪えるスキル)

    神速(移動力を上昇させるスキル)

状態:正常

体力:1000000

魔力:7000

筋力:46000

耐久:60000

俊敏:98000

抵抗:3000


 流石海のギャングと呼ばれるモンスターだ。ランクはAだし能力値も総じて高い。ネームモンスターである影響もあるのだろうが、うちのウルフ系トップのドラグオルよりも抵抗以外の値がずっと高い。


「ルカちゃんはスイリュウ様が大事に育てたモンスターで、スイリュウ様と私の言うことならほぼ何でも聞いてくれます。命令遂行順序もまずスイリュウ様、次が私ってことを理解してますし、頭もいいんです。ルカちゃん、7+3+5+8は?」

「キー!」


 リリーの質問に対してルカは一声鳴くと、何の前触れもなく大ジャンプした。その高さは目算で凡そ23m程。6階建てのビルに相当する高さだ。なかなかの跳躍力だし、答えも合ってはいる。だが……


「23mも急にジャンプさせるなよ……」


 ルカが着水した瞬間、もの凄い量の水しぶきが上がり、俺たちは例外なくびしょ濡れになった。


「あう……ご、ごめんなさいっ!」

「全く……【ホットウィンド】!」


 俺は熱風を起こし、俺たちの服を乾かしつつリリーを軽く睨む。すると、リリーの服についていた水滴が一瞬で凍りついた。


「はあ、やりにくいな。」


 俺はそう呟きつつ、徐にリックさんの方に向き直り、


「すみません、俺はここで離脱しますね。」


 と声をかけた。


「あ、ああ。お前なら問題はないと思うが、スイリュウとかいうダンジョンマスターに食い殺されんようにな。」

「お気を付けて、リチャードさん。」


 リックさんとレオナルドさんが心配の声をかけてくれる。


「ありがとうございます。じゃあティリ、リリー、行くぞ。」

「はい、ご主人様!」

「あ、はい。では、案内させて頂きます!」


 リリーは慌てたように指を動かし、甲板にルカが入った水槽を降ろすと、海に飛び込んだ。俺とティリは、空気属性魔法の【エアキープ】を発動させて空気を確保すると、その後を追って飛び込んだのだった。

【リチャードのステータス】

リチャード・ルドルフ・イクスティンク

種族:人間

職業:ダンジョンマスター、魔術師

レベル:295

スキル:鑑定眼(Lv7)

    剣術(Lv9)

    刀術(Lv2)

    鎌術(Lv6)

    槍術(Lv16)

    杖術(Lv34)

    棍棒術(Lv5)

    体術(Lv6)

    投擲(Lv2)

    狙撃(Lv6)

    釣術(Lv1)

    自動回復(Lv3)

    神将召喚(Lv1)

    話術(Lv5)

    幸運(Lv7)

    疾走(Lv8)

    壁走(Lv8)

    隠蔽(Lv3)

    非表示(Lv3)

    罠解除(Lv5)

    武器造形(Lv4)

    支援強化(Lv1)

    全属性魔法(上級)

    念話

    降霊

    影潜

    無詠唱

    全言語理解

    毒属性無効

    呪属性無効

    聖属性無効

    邪属性無効

    地属性無効

    闇属性無効

    水属性無効

    氷属性無効

    火炎無効

技能:炎剣(魔法剣)

   炎槍(槍)

   捨て身タックル(体)

   絶対零度の視線(眼)

混合武技:豪炎の激情(炎)

     水流の乱舞(水)

     荒れ狂う疾風(風)

     猛毒の抱擁(毒)

     浄化の閃光(光)

称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)

   大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)

   スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)

   龍を討伐せし者(物理耐久力、回復力大上昇)

   破壊神の破砕腕(物理攻撃力大上昇)

   称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)

   氷炎の支配者(氷、炎属性の攻撃力大上昇)

   霊の天敵(霊族モンスターへの攻撃力小上昇)

   瘴気喰らう者(瘴気系の悪影響中減少)

   気高き守護者(防御魔術の威力小上昇)

   称号収集家助手(称号獲得率中上昇)

   ウェポンメイカー(武器造形成功率中上昇)

   影の支配者(闇属性魔術の威力中上昇)

   嵐神の加護(風、嵐属性の威力大上昇)

   強奪者の素質(倒した相手のスキル、称号奪取率小上昇)

   邪を祓いし者(浄化属性魔術の威力中上昇)

   神獣との契約者(戦闘勝率大上昇)

   スキル収集家助手(スキル獲得率中上昇)

   栄誉の強奪者(倒した相手のスキル、称号奪取率中上昇)

   トラップブレイカー(罠解除成功率中上昇)

   称号収集家(称号レア変化率小上昇)

   魅惑の微笑み(異性魅了率小上昇)

   主の上に立つ者(配下の命令遵守率中上昇)

   ダンジョンを攻略せし者(ダンジョン攻略成功率小上昇)

   名付け親見習い(ネームモンスター強化率小上昇)

   微笑みの紳士(異性魅了率中上昇)

   神将との契約者(戦闘時負傷率大減少)

   微笑みの貴公子(異性魅了率大上昇)

   スキル収集家(スキルレア変化率小上昇)

   リジェネゲッター(自動回復の回復率小上昇)

   称号コレクター(称号レア変化率中上昇)

   支援されし者(支援系魔術の効果小上昇)

   豪炎を制する者(炎属性の攻撃力大上昇)

   誇り高き守護者(防御魔術の威力中上昇)

   ゴブリンの天敵(ゴブリン系モンスターへの攻撃力小上昇)

   ソウルハンター(捕獲した魂の忠誠率小上昇)

   釣り師(釣術スキル獲得、話術スキルレベル1上昇)

   ドラゴンキラー(龍系モンスターへの攻撃力大上昇)

   四大精霊との契約者Ⅰ(契約精霊の属性の攻撃力小上昇)

特殊称号:海龍王殺し(龍系モンスターへの攻撃力5%上昇)

     蒼玉の守護者(全能力大上昇、水、氷属性耐性50%上昇)


所持武器:アイアンナイフ(ノーマル、鉄製のナイフ)

     ウィンドナックル(レア、風属性物理攻撃可能)

     ソウル・ウォーサイズ(SSRダブルスーパーレア、死霊系に特効)

     ドラゴンスレイヤー(SSRダブルスーパーレア、全属性対応)

     神秘の破砕銃(URウルトラレア、神秘の聖銃の上級武器)

     烈火の神槍(LRレジェンドレア、黒迅の魔槍の炎属性特化上級武器)

     七星の宝石杖(GXギャラクシー、七属性の威力大上昇)



著者コメント

 またもお待たせする結果となったことをお詫び申し上げます。自らの不徳の致すところ、重ね重ねお詫び申し上げます。

 しかしまあ、暗い年明けなんて嫌ですので、無理にでも明るく。

 皆様、明けましておめでとうございます! 色々と至らぬ作者ではございますが、本年も拙作を、そして『紅蓮グレン』をよろしくお願い致します。


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