116.蒼玉と加護
「うーん……」
20分後、ウンディーネはまだ悩んでいた。
「いい加減決めてくれないか? それとも、四肢全部斬り落とされたいのか?」
「いえ……それは……」
「ああ、そういうことか。四肢はどこも欠損したくないんだな?」
俺のこの言葉に、ウンディーネは目を輝かせた。
「は、はい! そうです!」
ウンディーネは希望を見つけたように俺を見る。そこで俺は悪魔の笑みを浮かべると、残酷な言葉を突き付けた。
「そうか。だが俺は言ったはずだぞ。『この俺を怒らせたからには、五体満足でいられると思うなよ』と。」
「そ、そういえば……」
「だが、お前は四肢を欠損したくない。となったらもう斬り落とせるところは1つだけだな。」
俺はドラゴンスレイヤーを鞘から抜くと、抜身の剣を彼女の目の前に突き付け、
「首を刎ねられたいってことだろ? お望み通りにしてやるよ!」
と叫んで大きく振りかぶった。しかし、その時。
「ご主人様! やめてください!」
ティリが必死の形相で俺を止めた。
「ティリ、何で邪魔をする? 俺はお前を傷つけようとした奴に断罪の裁きを下そうとしているだけなんだが。」
「それでもダメです! こんな精霊の返り血を浴びてご主人様が穢れるのは嫌なんです! それに、これを殺したら正気に戻ったご主人様が罪悪感を感じてしまいます!」
「ティリウレス、止める理由が私の身を案じていませんよね?」
「なんであなたなんかの身を案じる必要があるんですか? 私はご主人様にお仕えするのが務めです。あなたはご主人様と何の関係性もないんですから、私があなたを守る理由なんか一埃もありません。ただ、平和主義であるご主人様が生命体を殺すと罪悪感を感じてしまわれるから、それをさせないように説得しているんです。」
「そうか。俺のことを心配してくれてありがとな、ティリ。」
俺はドラゴンスレイヤーを鞘に納めるとティリを抱きしめ、頭を撫でる。ティリはホワホワに蕩けた。可愛い。いつまでもこうしていたい。
「うう……惚気るなら私を解放してからにしてくださいよ!」
「五月蝿いな。今せっかくティリと和んでるんだから黙っていてくれ。」
俺はそう言いながら、解除属性魔法【リセット】を使用して、ウンディーネを拘束していた氷を溶かした。
「ほら、解放したぞ。」
「えっ、いいんですか? 五体満足でいられると思うなって……」
「あれは元々本気じゃない。」
これは本心だ。ティリを傷つけようとしたのは許し難いが、先に喧嘩を売ったのはティリだからな。
「ところでウンディーネ、何でこれが欲しいんだ?」
俺は勝手にポケットに入った迷惑物品である【神聖の珠:蒼】を取り出してそう問いかける。
「くださるんですか?」
「俺には必要のないものだからな。寧ろ邪魔なだけだし、特殊称号とかいう無駄なものまで手に入って……」
「と、特殊称号を無駄なもの呼ばわりなんて……あなた、特殊称号がどんな効果を持つか知らないんですか?」
「知らん。興味もない。」
「特殊称号は通常の称号より効果が高く、【蒼玉の守護者】は所持者の全能力を大上昇させ、水属性、氷属性に対する耐久力を50%上昇させます。【海龍王殺し】は所持者の龍系モンスターへの攻撃力を5%上昇させ、その所持を所持者が認めると【ドラゴンキラー】の称号を入手させます。」
「龍系への攻撃力5%上昇に【ドラゴンキラー】か……それは良い効果だな。」
俺は久々に新しく入手したものに感謝した。龍系に対して強くなれる、それはリーンのダンジョンである【ドラゴンの巣窟】に侵攻された場合に恐らく最も有効なものだ。
「で、それはそうとなぜこれが欲しい?」
「それは神聖なる水の宝珠なのです。リヴァイアサンの持つその宝珠は海から離す訳にはいかない。ですからお譲り頂きたいのです。」
「そうか。なら俺が持ってるよりお前が持ってる方が良いだろうな。」
俺はウンディーネに【神聖の珠:蒼】を渡そうとする。しかし、その前にティリに阻まれた。
「ご主人様! タダで渡しちゃダメです!」
「なんでだよ。これを持っていたって俺にメリットはないんだから、より必要としている人に渡す方が良いだろう?」
「それはそうかもしれませんが、それを入手なさったのはご主人様です! それを渡す場合は、正当な対価を貰うのが筋ですよ!」
「それもそうだな。じゃあウンディーネ、何でもいいから取引という形で何か俺にくれ。」
「何でもいいんですか?」
「ああ。そもそも俺は何か欲しい訳じゃないしな。ただ、ティリが納得していないから取引という形にしたいんだ。」
「……ティリウレスは良い主を持ったものですね。では、これを差し上げます。」
ウンディーネは手をパンッと叩く。すると、その両手から水色の光球が出現した。それは俺の上まで来ると、弾けて光の粒子となり、俺に降り注ぐ。
「【四大精霊:水の加護】です。これにより、私とあなたは契約したことになり、私はあなたに応じて力を貸すと誓ったことになります。これが私が支払う対価、でいいですか?」
「ティリ、どうだ?」
「ウンディーネの加護であれば、十分【神聖の珠:蒼】に見合う価値です。良いと思いますよ。」
「そうか。じゃあウンディーネ。これはお前にやる。」
俺は【神聖の珠:蒼】をウンディーネに渡す。しかしその時、また予想だにしなかったことが起きた。何と【神聖の珠:蒼】が急に俺の手から離れ、俺とウンディーネの間で2つに分裂したのだ。俺は慌てて鑑定。すると……
【神聖の珠:蒼】 アイテムレアランク:GX
海の破壊神として恐れられる海龍、リヴァイアサンの核である宝玉。神秘的な蒼い輝きを持つ。魔力を注ぐことでリヴァイアサンを召喚できる。それ以外の能力は未知。所持者に【水属性無効】【氷属性無効】のスキルと【蒼玉の守護者】の特殊称号を与える。伝説に謳われし【神聖珠】の1つ。
【リヴァイアサンの魂】 アイテムレアランク:GX
海の破壊神として恐れられる海龍、リヴァイアサンの魂の籠もった宝玉。神秘的な蒼い輝きを持つ。魔力を注ぐことでリヴァイアサンを召喚できる。所持者に【水属性無効】【氷属性無効】のスキルと【蒼玉の守護者】の特殊称号を与える。
……名前が変わっただけでほとんど変わっていない。というか、これも持ってる時点で【蒼玉の守護者】入るのかよ。
「ウンディーネ、こっちも持って行ってくれ。」
俺は【神聖の珠:蒼】を手に取って微笑んでいるウンディーネに声をかけるが、彼女は首を横に振った。
「いいえ、それはできません。私が必要としていたのは【神聖の珠:蒼】のみ。それ以上の物を頂く訳には参りません。」
「変なところで律儀になりやがって……」
俺は目に殺気を込めてウンディーネを睨む。すると彼女は、
「……で、では私はこの辺りで失礼させて頂きます! またどこかでお会いしましょう! あとティリウレス、たまには【水の精の冷衣】を着てくださいね!」
と言うや否や、空気に溶けるようにして消えてしまった。
「クソッ、逃げたか……」
俺は忌々しげに毒づくと、その場に残った【リヴァイアサンの魂】を手に取り、この日2度目の盛大な溜息を吐くのだった。
【ダンジョンマスターが【海龍王殺し】所持を自覚しました。称号【ドラゴンキラー】を入手します。】
【ダンジョンマスターがウンディーネと契約しました。称号【四大精霊との契約者Ⅰ】を入手します。】
【リチャードのステータス】
リチャード・ルドルフ・イクスティンク
種族:人間
職業:ダンジョンマスター、魔術師
レベル:295
スキル:鑑定眼(Lv7)
剣術(Lv9)
刀術(Lv2)
鎌術(Lv6)
槍術(Lv16)
杖術(Lv34)
棍棒術(Lv5)
体術(Lv6)
投擲(Lv2)
狙撃(Lv6)
釣術(Lv1)
自動回復(Lv3)
神将召喚(Lv1)
話術(Lv5)
幸運(Lv7)
疾走(Lv8)
壁走(Lv8)
隠蔽(Lv3)
非表示(Lv3)
罠解除(Lv5)
武器造形(Lv4)
支援強化(Lv1)
全属性魔法(上級)
念話
降霊
影潜
無詠唱
全言語理解
毒属性無効
呪属性無効
聖属性無効
邪属性無効
地属性無効
闇属性無効
水属性無効
氷属性無効
火炎無効
技能:炎剣(魔法剣)
炎槍(槍)
捨て身タックル(体)
混合武技:豪炎の激情(炎)
水流の乱舞(水)
荒れ狂う疾風(風)
猛毒の抱擁(毒)
浄化の閃光(光)
称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)
大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)
スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)
龍を討伐せし者(物理耐久力、回復力大上昇)
破壊神の破砕腕(物理攻撃力大上昇)
称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)
氷炎の支配者(氷、炎属性の攻撃力大上昇)
霊の天敵(霊族モンスターへの攻撃力小上昇)
瘴気喰らう者(瘴気系の悪影響中減少)
気高き守護者(防御魔術の威力小上昇)
称号収集家助手(称号獲得率中上昇)
ウェポンメイカー(武器造形成功率中上昇)
影の支配者(闇属性魔術の威力中上昇)
嵐神の加護(風、嵐属性の威力大上昇)
強奪者の素質(倒した相手のスキル、称号奪取率小上昇)
邪を祓いし者(浄化属性魔術の威力中上昇)
神獣との契約者(戦闘勝率大上昇)
スキル収集家助手(スキル獲得率中上昇)
栄誉の強奪者(倒した相手のスキル、称号奪取率中上昇)
トラップブレイカー(罠解除成功率中上昇)
称号収集家(称号レア変化率小上昇)
魅惑の微笑み(異性魅了率小上昇)
主の上に立つ者(配下の命令遵守率中上昇)
ダンジョンを攻略せし者(ダンジョン攻略成功率小上昇)
名付け親見習い(ネームモンスター強化率小上昇)
微笑みの紳士(異性魅了率中上昇)
神将との契約者(戦闘時負傷率大減少)
微笑みの貴公子(異性魅了率大上昇)
スキル収集家(スキルレア変化率小上昇)
リジェネゲッター(自動回復の回復率小上昇)
称号コレクター(称号レア変化率中上昇)
支援されし者(支援系魔術の効果小上昇)
豪炎を制する者(炎属性の攻撃力大上昇)
誇り高き守護者(防御魔術の威力中上昇)
ゴブリンの天敵(ゴブリン系モンスターへの攻撃力小上昇)
ソウルハンター(捕獲した魂の忠誠率小上昇)
釣り師(釣術スキル獲得、話術スキルレベル1上昇)
ドラゴンキラー(龍系モンスターへの攻撃力大上昇)
四大精霊との契約者Ⅰ(契約精霊の属性の攻撃力小上昇)
特殊称号:海龍王殺し(龍系モンスターへの攻撃力5%上昇)
蒼玉の守護者(全能力大上昇、水、氷属性耐性50%上昇)
所持武器:アイアンナイフ(N、鉄製のナイフ)
ウィンドナックル(R、風属性物理攻撃可能)
ソウル・ウォーサイズ(SSR、死霊系に特効)
ドラゴンスレイヤー(SSR、全属性対応)
神秘の破砕銃(UR、神秘の聖銃の上級武器)
烈火の神槍(LR、黒迅の魔槍の炎属性特化上級武器)
七星の宝石杖(GX、七属性の威力大上昇)




