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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第7章:マスターと海

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115.水の四大精霊

「どうした、リチャード。浮かない顔をして。せっかくあの海の破壊神を倒したのだから、もっと喜んだらどうだ?」


 俺の心の内を知らないリックさんは俺にこう言ってきた。確かに俺だって本当は喜びたいのだが、それよりも特殊称号のことが気にかかって仕方がない。


「……俺は疲れたので、休憩がてらティリを可愛がります。ちょっと魔力を消費しすぎました。リックさんたちがいると可愛がりに集中できないので、すみませんがしばらく降りてこないでください。」


 なんか答えとしては食い違っているような気とかなり失礼なことを言っている気がするが、そんなことを考える程の余裕はない。俺は一足先に船に降り立つと、ティリを捕まえる。


「ティリ、俺を癒してくれ、頼む。」

「かしこまりました、ご主人様! 私はご主人様の勇姿が見られて、とっても嬉しかったです! お返ししますね!」


 ティリは最高の笑顔を浮かべると、抱き付いてきた。疲れが抜けていく。特殊称号の不安は拭いきれないが、ティリの癒しパワーは最高だ。流石ティリ、この世で最も可愛くてその場にいるだけで尊崇されるべき最高級の存在なだけのことはある。


「ティリ、最高だよ。」

「お褒め頂き光栄です! もっとご奉仕しますね! 【ビッグ】!」


 ティリは魔法を唱えて140cmまで大きくなると、俺の肩を揉み始めた。凝りがほぐれていく。


「どうですか、ご主人様?」

「ああ、気持ちいいよ、ティリ。」

「ふふ、ご主人様の弱いところは全部知ってますから♪ もっと気持ち良くして差し上げます!」


 ティリは後ろから俺にギュッと抱き付いた。不安感はまだ完全に拭い去れないが、これは嬉しい。努力が報われた感じだ。ゆっくり和んでいると、


「あらあら、神聖なる海の上で大胆ですこと。超常の力を持つ者は行動1つ1つも普通ではないのかしら?」


 突然、女性の声が聞こえた。リリーのものではない。バッと船上を見回すと、甲板の端に水色の長い髪をした女性が立っていた。顔は端正に整っており、可愛いというより美人といった感じだ。


「誰だ、お前は。」


 俺は神秘の破砕銃を手に取り、その女性に向けた。彼女からは強者特有のオーラが放たれており、プレッシャーを感じる。何より、海のど真ん中で急に出現したという時点で、只者ではない。


「私にあなた方に対する敵意はありません。ですから、その銃を降ろして頂けませんか? この通り、私は丸腰です。武器を向けられた状態では、私が真実を話しても曲がって伝わる恐れがありますし。」


 女性は銃を向けられているというのに穏やかな表情で語りかけてくる。確かに彼女は丸腰だ。俺だけ武器を持つというのも不公平だろう。だが、油断させてズドッということもあり得ない訳ではないので、警戒は解かない。第一、この女性と話したらティリが嫉妬する可能性が高いしな。


「分かった。但し、そこから俺に1歩も近付くな。」

「随分用心深い方ですね、あなたは。私に敵意はないと言っているではないですか。」

「いきなり船上に現れた奴を信用できるほど俺は平和ボケじゃない。そもそも、お前は誰なんだ。」


 俺が語勢を強めて問うと、女性は目を細めた。


「人に名前を聞くときは自分から、と子どもの頃教わらなかったのですか?」

「生憎俺は記憶喪失なもんで、そんな教育を受けた覚えはないな。それに、ここに乗り込んできたのはお前だろう。訪問時に名を名乗るってのは最低限のマナーだ。」

「……正論ですね。分かりました。では私から名乗りましょう。私はウンディーネ。この世界を司りし四大属性のうち水に属する最上級精霊です。」

「へー、ウンディーネ、ね。」


 俺はこの女性を完全に信用している訳ではないので、こっそりと鑑定を発動。しかし、結果は……


???

エラーメッセージ

※スキル【鑑定眼】がスキル【隠蔽】により妨害されました。


 だった。【隠蔽】のスキルは俺も持っているので効果は知っている。同レベルの鑑定眼スキルの効果を無効化でき、取得条件及びレベルアップ条件は不明。俺はダンジョン攻略時に【非表示】スキルと一緒に入手した。


「残念ですが、今のあなたの鑑定眼では私のステータスは見通せませんよ。」

「じゃあ信用する訳にはいかないな。」

「本当に疑り深いですね、あなたは。情報を見られれば信用して頂けますか?」

「まあ、それはそうだが。」

「では、見せて差し上げましょう。スキル【隠蔽】封印。」


 自称ウンディーネは手の平を自分に向けてそう言った。すると、彼女の手から青い光球が飛び出し、彼女自身に吸い込まれた。


「私のスキル【隠蔽】を一時的に封印しました。これで見られるでしょう。」

「そうか。じゃあ、鑑定。」


 俺はもう1度鑑定を発動。すると……


ウンディーネ

種族:精霊

職業:四大精霊(水)

レベル:???

スキル:???

技能:???

混合武技:???

称号:???

状態:???

体力:???

魔力:???

筋力:???

耐久:???

俊敏:???

抵抗:???


 見えたことは見えたが、?マークばかりだった。


「……ほとんど分からないんだが。」

「私がウンディーネだ、ということは分かったのではありませんか?」

「確かにウンディーネで、水属性の四大精霊だってことは分かったが……まあ、それでいいや。」


 隠蔽を封印しても見えないのでは仕方ない。情報を見せると言った以上、非表示で隠している可能性は低いし、何よりレベル、技能、混合武技、状態は非表示スキルでも隠せないからな。


「では、信用して頂けたということで単刀直入に言わせて頂きます。先程あなたが入手した、【神聖の珠:蒼】を頂けませんか?」


 ウンディーネがそう言った瞬間、俺の後ろにいたティリが魔法を放った。


「【テンペストボム】!」


 ティリの手から緑色の光弾が飛び出し、それがウンディーネに命中。暴風がウンディーネを包み込む。しかし、効果時間が過ぎてその暴風が消え去った時、ウンディーネは無傷だった。服さえ傷付いていない。彼女は大袈裟に嘆息するようなジェスチャーをすると、ティリに語り掛ける。


「ふざけているのですか、ティリウレス? あの程度の嵐で私を殺せるとでも?」

「あの程度であなたが死ぬ訳がないって分かっている上で撃ったんですよ。あれは威嚇です。」

「結構な魔力を消費したと思いますが?」

「あの程度じゃ1割も減少していません。私だって日々成長しているんですから。300年前とは違います。」

「不敬ですよ、ティリウレス。【水の精の冷衣】を授けた恩を忘れたのですか?」

「それはそれ、これはこれです。ご主人様が入手したものを寄越せ、などという不逞の輩には惨たらしい死を与えて然るべきです。」


 ティリは威嚇する猫のようにフーフーと鼻息を荒くしている。どうやら300年前にも会ったことがあるらしいが、今のティリは敵意ビンビンだ。セリフも怖いし。


「ティリ、知り合いか?」

「ウンディーネとは凡そ300年前、私が長期休暇を取って諸国行脚していた時に会ったことがあるんです。その時は結構話が合って、ウンディーネは自分にしか作成できないLRレジェンドレアアイテム、水の精の冷衣を私に授けてくれました。」

「へー。でもティリ、今までそんなの着たことないよな?」

「水の精の冷衣は透き通っている上冷たいので、私としては極力着たくないんです。お腹を壊すかもしれませんし、ご主人様にそんなはしたない格好をお見せすることはできません!」

「いつまで惚気ているつもりですか、ティリウレス?」


 ウンディーネが見かねたように声をかけてくる。すると、ティリは言い返した。


「下賤な水の精は黙っていてください。」


 このセリフにはウンディーネも黙っていなかった。一気に周囲の気温が下がっていく。


「この四大精霊の私に向かって下賤ですって? あなた、誰に対して口を聞いているか分かっているのですか?」

「下賤な水の精霊ウンディーネです。」

「また言いましたね! もう許しません! 【ゼロケルビン】!」


 ウンディーネが叫ぶ。すると、彼女の身体から冷気が噴出した。何もしなければ俺もろともティリは氷漬けになるだろう。ま、何もしない訳ないけどな。


「【サークルバリア・モード・ミラー】!」


 俺の呪文により、輝く光の膜が俺とティリを包み込む。この輝きはあらゆる攻撃を威力5割増しで跳ね返す。それがたとえ神の攻撃だろうが、四大精霊の攻撃だろうが。


「きゃあああああっ!」


 ウンディーネの悲鳴が響く。流石四大精霊、咄嗟の判断で腕をクロスさせて顔を庇っていたが、顔以外はすべて透き通るような氷に包み込まれている。


「ううっ……まさか私の攻撃を跳ね返すなんて……」


 ウンディーネは何とか氷から脱出しようともがくが、氷にはひび1つ入らない。


「無駄だよ。お前はティリにバカにされて、感情の昂ぶりにより余剰と見なされる程強い怒りが湧き上がった。その溢れ出た感情は魔力に変換され、その状態で魔法を使ったもんだから、普段より威力が高かったんだろう。で、それの威力を5割増しで跳ね返されたんだから、お前は脱出不可能。当然だ。」


 俺は論理的に言ってウンディーネに近付く。


「お前、よくも俺の大事なティリに危害を加えようとしてくれたな……」

「ひっ……」


 ウンディーネは引きつった顔で後ずさろうとするが、凍りついている足を動かすことはできない。


「この俺を怒らせたからには、いくら四大精霊であろうと、五体満足でいられると思うなよ。さて、どこが良い? 四肢のうちどれかを欠損させるだけで済ませてやる。これは選択させてやるよ。」

「…………」

「答えないってことは全部欠損しても構わないってことだな?」


 俺がドラゴンスレイヤーを抜いてウンディーネの右肩に向けて振り下ろそうとすると、彼女は慌てて、


「え、選びます、選びます! えっと……」


 と考え始めた。まあ、どうせ選択する気はないのだろう。俺も逆の立場だったら思案で先延ばしにするしな。


「うーん……足より腕の方がまだ……でも腕を欠損すると魔法が……うーん……」

「おい、さっさと決めろ。」

「そんなすぐには決められませんよ。私の今後に……」

「こっちはそれ程気が長くない。決めないなら四肢纏めて斬り落とす。」

「残忍すぎますよ! いい人なら……」

「ティリは兎も角、俺はいい人じゃないんでな。四肢のうち1つでいいって言ってやってるんだからとっとと決めろ。」


 ウンディーネは眉を寄せ、ティリに視線を向けるが、ティリはどこ吹く風。ガン無視だ。


「うう……なんでこんな目に……」

「お前がそんな目に遭ってるのはお前が魔法を撃ったからだろ。そんなこともわからないほど頭が弱いのか。四大精霊が聞いて呆れるな。」


 俺はそれだけ言うと、また悩み始めたウンディーネを見て盛大に溜息を吐くのだった。

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