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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第7章:マスターと海

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111.交渉と水龍

「で、リリー。うちのダンジョンと交渉ってのは?」


 俺はリリーに問う。彼女はリックさんが出したジュースをクピッと一口飲むと、


「えっと、単刀直入に言わせて頂きます。我らがアトランティスと同盟を結んで頂けないでしょうか?」


 と少し恐縮した様子で言ってきた。


「同盟? どんな内容だ?」

「例えば、冒険者が来て戦力が足りないときにお互い戦闘モンスターを貸し合ったり、お互い侵略をしなかったり、お互い貿易をしたりです。」

「つまり、お互いに助け合うってことか?」

「はい。」

「そのくらいなら別に結んでも構わないんだが、そっちは海の中なんだろ? うちにいる水中棲息可能モンスターなんてラングフィッシュ、ダートヌート、リトルドラゴンフライの3種しかいないし、そっちから借りてもこっちのダンジョンには水場なんて申し訳程度にしかないから……」

「あ、それは大丈夫です。アトランティスの中では普通に呼吸できるようになっていますから。それに、こっちにいるのも水中棲息種ばっかりって訳ではないんです。そんなに数は多くないですけど、陸上棲息種もいるんですよ。ホーンラビットとか。」

「でも主力は水中棲息種だろ?」

「それはそうですけど、うちの水中棲息モンスターたちはスイリュウ様の能力付与によって空中でも水中と同じように動けるので問題ありません。」


 ちょっとどや顔をするリリー。まあ、空中で動けるなら問題ないな。


「じゃあ、戦力的な所は問題ないとして、次。もしダンジョンが他のダンジョンの侵攻を受けた場合はどうする?」

「その場合は、モンスターを最大で半数貸し出しです。但し、返り討ちにして相手のダンジョンに侵攻する場合は、第三者が介入してこない限り協力はしません。あくまで防衛の為ということです。」

「よし、それも問題ない。じゃあ最後。貿易ってのは何をやり取りする?」

「ショップで売っている物でも売っていない物でも、何でもです。お互いで交渉して双方が納得する金額でやり取りします。それと、DPをやり取りする場合は10DP=1ゴルドのレートで、変動はしません。」

「そうか。了解した。ところで、まさかダンジョンボスを貸し合ったりはしないよな?」


 俺がこう聞くと、リリーは慌てた様子で首を縦に振った。


「勿論です! そちらのダンジョンボスである伝説のモンスター、エンペラーモールをお借りするなど恐れ多いこと……」

「ならいい。ちょっと同居人に確認するから待っててくれ。」


 俺の言葉にリリーは頷く。それを確認し、俺はディスプレイ・パールを取り出すと、魔術を流してルキナスさんに連絡をした。ディスプレイが浮かび上がり、そこにルキナスさんとルーアちゃんが映る。


「ルキナスさん、聞こえますか?」

『はい、リチャード殿。何かありましたかな?』

「ええ。水中のダンジョンの妖精であるセルキーに同盟を結んでくれって頼まれているんですけど、何か意見ありますか?」

『私の答えは決まっております。リチャード殿の好きになさるが良い、ですな。ダンジョン運営はリチャード殿の一存でお決めになられるのがよろしいでしょう。』

「やっぱりそれですか。じゃあルーアちゃんは?」

『私の答えもいつもと同じです。私はマスターの言うことに基本異論は挟みませんから。』

「ルーアちゃんも異論無し、ってことだね。じゃあさ……」

『キャトルちゃんとセントグリフさんにも聞いてくればいいんですよね?』

「いや、キャトルだけで良い。セントグリフは元ダンジョンマスターだからこういうのには慣れてるだろうし、そもそも居候だから事後報告で構わない。」


 俺がこう言った時、ディスプレイに移っていた部屋のドアがバンッと開き、セントグリフがルキナスさんの部屋に入って来た。


『リチャード! 何で俺だけ除け者なんだよ!』

「お前に聞いたら面倒なことになりそうだからだ。」

『なんでそう決めつける?』

「五月蝿い、黙れ。喋るな、触れるな、近付くな。」

『この毒舌野郎が!』

「お前のその反応が面倒臭いことになると物語ってるじゃないか。ってか、暇ならキャトルに意見があるか聞いてきてくれないか?」

『もう聞いてきたよ。『リチャード様の選択が間違っているはずがありませんので、私はそれに従うまでです!』って、めっちゃ目をキラキラさせて心酔した感じで言ってた。』

「……なんでお前は俺の話の内容が聞こえてるんだ?」

『龍族は聴力が優れてるんだよ。』

「そうか。了解した。じゃあな。」

『ちょっと待て! 俺の意見を聞け!』

「仕方ないな。聞いてやるから言え。」

『俺は賛成。以上だ。』

「いやに素直だな、セントグリフ。頭でも打ったのか?」

『なんでそうなるんだよ!』

「冗談だ。じゃあ、全員賛成ってことで。」


 俺はそう告げると、ディスプレイ・パールの通信を切り、リリーに向き直った。


「全員OKってことなんで、同盟は結べる。契約書とかはあるか?」

「はい。ダンジョン同士の契約に使われる、特別な羊皮紙です。」


 そう言ってリリーが出してきた羊皮紙には、同盟の内容が書いてあり、最後の署名欄には【スイリュウ・ウェット・ウォーター代理人 リリー・ベル・フィオネ】という名が記入されていた。彼女はナイフで自分の親指を少し斬り、血判を捺すと契約書を俺の方に向ける。


「お手数ですが、署名と血判をお願い致します。」

「了解。」


 俺はリリーが渡してきた羽根ペンで【リチャード・ルドルフ・イクスティンク】とサインし、ナイフで親指を斬ろうとした。しかし、その時。


 ――ザバアアアアアアアァー!


 何か巨大なものが自ら出てくるような音がした。


「何だ、今の音。リリー、分かるか?」


 俺がこう聞くと、


「いえ、音だけではちょっと……」


 とリリーは首を横に振った。すると、それまでずっと黙っていたリックさんが、


「……この雰囲気はヤツ・・のものだ。」


 と呟き、甲板に向かって駆けだした。俺たちはそのリックさんの声にただならないものを感じたので、急いで後を追う。そして、甲板に出るとそこには……


「ギャオオオオオオー!」


 と凄まじい咆哮を上げる1頭の龍がいた。


「やはり出たか、リヴァイアサン……」

「リヴァイアサン? リリー、こいつはアトランティスのモンスターか?」


 俺がそう聞くと、リリーは青ざめた顔で首を横に振り、


「いえ……あの龍、リヴァイアサンは水属性のモンスターの中でも最強クラスの力を持つ者でして……スイリュウ様が最も警戒しているモンスターです……」


 と答えた。戦闘力に最も秀でた種族である龍族のダンジョンマスターすら警戒するモンスター、それは間違いなく、海で出会う最大の脅威だった。

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