108.魔爪の土竜と魔牙の猛犬と魔翼の猛禽
「鑑定!」
単なるでかい穴だと思ったが、俺は念の為に穴の奥に向けて鑑定眼を発動させる。すると……
ダーククロウモール ランクC
名前:‐‐‐‐‐‐
保有魔力:17739/1000000
称号:なし
スキル:魔爪(爪に魔力を込められるスキル)
黒熱線(爪から闇のレーザーを放てるスキル)
高速掘削(土を高速で掘ることを可能とするスキル)
状態:正常
体力:20000
魔力:6000
筋力:9000
耐久:8300
俊敏:14000
抵抗:550
謎のモンスターのデータが見えた。俺は先ほど敵意ナシアピールの為に地面に置いた武器を集めながらルキナスさんに質問する。
「ルキナスさん、ダーククロウモールって知ってますか?」
「ダーククロウモール? いえ、聞いたことがありませんな。恐らく新種でしょう。しかし、モールということは土竜族モンスターでしょうな。」
「うちのモール部隊となんか違うんですかね? 名前的に闇属性っぽいですけど。」
俺がこう呟いた時、ルキナスさんの足元の地面にひびが入った。
「【カムバック・ヒア】!」
俺は空間属性魔法でルキナスさんを強制的に移動させる。すると、その数瞬後にそのひび割れから黒い光線が4本伸びた。それは洞窟の天井にぶち当たり、大きな抉り傷を刻む。
「助かりました、リチャード殿。恐らく今の光線が攻撃でしょうな。」
「そうですね。多分スキル欄にあった闇のレーザー……【黒熱線】です。あれ食らったらどんな感じになりますかね?」
「当たった瞬間即死でしょう。天井の抉り跡から見て取れるように、あの光線の威力は尋常ではないでしょうからな。闇魔力の方は光属性魔力を纏えば相殺できるとは思いますが。」
「あー、それいいですね。じゃあ、それでいきましょう。【ライトメイル】!」
俺は光属性魔法で自分の周りに光の鎧を作る。この魔法は大抵の闇属性魔法や闇を含む攻撃を相殺できる。俺の魔力量があればあの程度の威力しかない闇のビームは相殺できる。ルキナスさんも同様に呪文を唱えて光の鎧を纏った。と、その時。
「ピュイイィィ!」
ヘルウィングが急に鳴いたかと思うと、その口から小さな黒色の球体を飛ばしてきた。それは俺たちの光の鎧に触れると、跡形もなく消滅。
『おい、なんで攻撃して来た?』
地獄語でこう問いかけると、ヘルウィングは頭を垂れ、
『闇を相殺できるか、【暗闇弾】を撃たせて頂きました。万が一に備えて当たらないように微調整はしましたが、驚かせてしまい申し訳ありません。』
と柔らかいソプラノ系の声で答えてきた。
『こやつは心配性なのだ。大目に見てやってくれ。』
ヘルハウンドもヘルウィングの援護射撃。実際怪我などはしていないので、俺は特に咎めたてする気はない。
『次回から先に断れよ。』
『はい、申し訳ありません。』
ヘルウィングは反省しているようなので、俺は視線を外し、周囲の生体反応を広範囲に渡って探ることができる【ライフサーチ】を発動することにした。しかし、そこで1つ問題が。【ライフサーチ】の対象にダーククロウモールを設定したいのだが、これは1分間の平均鼓動数が分からないとそれを対象設定できないのだ。
「仕方ない。【データサーチ】!」
俺は世界のアカシックレコードにアクセスし、ダーククロウモールの平均鼓動数を調べた。しかし、結果は、
【分かりません。】
つれない返事。世界の全てが分かっている訳ではなく、個人情報などには弱いデータサーチでは、ダーククロウモールの鼓動数を調べることはできなかった。仕方ないので俺は、近縁種であろうキングモールの平均鼓動数で探索する。当然もの凄い量の生体反応が引っかかるが、俺は精神を集中して闇の魔力を探す。しかし、上手く見つからない。
「あー、もう面倒臭えっ! 【クリティカルシールド】! 【アラウンドフレイム】!」
俺はいい加減嫌になって来たので、荒業で探し出すことにした。即ち、ヘルハウンド、ヘルウィング、ルキナスさんを防護壁で包み、七星の宝石杖を地面に突き刺してそれを媒体とし、俺ごと地面を炎で包み込んだのだ。
「リチャード殿!」
「大丈夫です! 俺は【火炎無効】を持っているので!」
ルキナスさんの声に、俺は炎の熱量を上げながらそう叫び返す。そして、そのまましばらく炎を維持していると、
「ググググウウウ!」
と地の底から響くような、何とも形容しがたい鳴き声が聞こえ、先程空いた穴から真っ黒な何かが飛び出してきた。鑑定すると、それはダーククロウモール。
「ようやくお出ましか。手間かけさせやがって。」
俺はアラウンドフレイムとクリティカルシールドを解除し、
「先手必勝! 【ライトニングレーザー】!」
と叫んでレーザー光線を放った。そのレーザーはダーククロウモールに向かって勢いよく突き進み……
「グウウウウ!」
ダーククロウモールの爪から放たれた黒色のレーザーによってあっさりと相殺された。
「なっ?」
俺は思わず驚きの声を漏らす。まさかあの強靭なフィジックスイーターすら穿つライトニングレーザーを相殺するとは……あのビームは予想以上に危険だ。
「グウウウウウ!」
ダーククロウモールは威嚇のような鳴き声を上げ、俺たちを睨みつける。なかなかに気力の籠もった視線。射すくめられるような感覚を覚え、背筋に寒気が走る。
「まさかランクC如きのモンスターに対して寒気を感じるような事態になるとはな……」
俺はそう吐き捨てると、七星の宝石杖をしまい、ドラゴンスレイヤーを構える。そして、光属性と聖属性を付与すると、
「剣術武技Lv6スキル、【サクリファイス・スラッシュ】!」
と叫んでダーククロウモールに斬りかかった。俺の体力、魔力、気力の15%を犠牲にし、光と聖の籠もった輝く剣が金色のオーラを纏う。そして、そのオーラは見事にダーククロウモールを捕らえた。
「グウウウウウウ!」
ダーククロウモールの絶叫が洞窟を震わせる。これで決まったか、と思ったが、どうも様子がおかしかった。奴の目はまだ俺をしっかりと見据えているし、そもそもさっきの絶叫も苦しむ断末魔というよりも怒りの咆哮に近かったような気がする。
「グウウウウ!」
そしてその予想は正解。奴の爪から闇の熱線が俺めがけて伸びてきた。躱そうとしたが失敗し、俺はその衝撃で吹き飛ばされ、洞窟の壁に激突。ライトメイルのおかげで闇エネルギーは相殺できたが、勢いまでは打ち消せなかったようだ。
「くうっ……」
俺は何とか立ち上がろうとするが、右脚に激痛が走り、うまく立ち上がれない。どうやら骨折してしまったらしい。それほどまでに熱線の衝撃は強力だった。
「リチャード殿! 【ライトエッジ】!」
ルキナスさんが光の刃を放ってダーククロウモールを牽制しようとしてくれるが、奴は爪でいとも簡単にそれを防ぐ。そして、俺の方へ一直線にかかって来た。そして俺の前で溜めを作り始める。
「まずい……【セイントキャノン】!」
至近距離で放った聖の砲弾がダーククロウモールを直撃。奴の身体を抉った。しかし、その身に穴を穿たれても奴は倒れない。溜めを大きくしている。俺は魔術を放った直後であり、術後硬直と反射エネルギーにより、どう頑張っても動くことは不可能。当たり所が悪かったら死ぬかもしれないな。俺がそう思いつつ、何とかドラゴンスレイヤーを頭上に上げて防御姿勢を取った、次の瞬間。
「グウウウウウ!」
ダーククロウモールの叫びが響いた。さっきまで攻撃する気満々だったダーククロウモールがひっくり返っている。そして、その陰には……
『受けた恩は返す!』
ヘルハウンドがいた。彼の牙からは猛毒と思われる濃い紫色の液体が滴っている。更に、
『尖羽根、です!』
ヘルウィングも羽を飛ばして攻撃してくれた。毒と闇の効力は闇属性であろうダーククロウモールにも抜群なようで、奴はひっくり返って悶えている。そして、その間に、
「よし、治った!」
自動回復(Lv3)と【リジェネゲッター】の相乗効果、更に【龍を討伐せし者】の回復力上昇によって、足の骨折が治った。益々人外じみてきているが、今はどうだっていい。俺は更に【ウルトラヒール】を使用してダメージを全快させ、ダーククロウモールに杖を向けた。
「さて、よくもまあ手間をかけさせてくれたな。一方的にやられる恐ろしさ、その身に刻み込んでやる!」
俺は目に憎しみを込めながら悪意に満ちた嗤い顔を浮かべる。
「器用なことをしますな、リチャード殿……」
ルキナスさんが若干呆れたように言ってくるが、今回は無視する。
「【ダークフレア】!」
俺が叫ぶように唱えると、杖のルビーとオニキスが輝いた。そして、杖から噴出した黒い炎がダーククロウモールを包み込む。炎闇二重属性の魔法、ダークフレアは黒い炎で対象を包み、更に対象に効果を及ぼしている毒物の効果を増幅させる、という性質を持っている。
「グウウウウウ!」
ダーククロウモールは激しく鳴き、体を必死に動かして炎を消そうとするが、炎は益々激しく燃え上がるばかり。しかもヘルハウンドとヘルウィングの毒に冒されているのだから、結果は自ずと分かる。
「グウウウゥゥゥ……」
段々と鳴き声が弱まり、苦しむような響きを伴い始めるが、俺は無視。容赦などするつもりはなかった。やがて奴の鳴き声は完全に聞こえなくなった。俺は生体反応を確認するが、もうこの洞窟内にダーククロウモールの反応は無かった。俺はいつものようにソウル・ウォーサイズを取り出してダーククロウモールに突き刺す。すると……
【Cランクモンスター、ダーククロウモールの魂を捕獲しました。】
【ダンジョンマスターが新種モンスターの魂を捕獲しました。称号【ソウルハンター】を入手します。】
捕獲報告と忌まわしき機械音声。また称号かよ。
「仕方ないでしょう、リチャード殿。」
「ルキナスさん、サラッと心を読まないでください。」
俺はそう言いながら、無詠唱で【レジェンドヒール】を使用し、ヘルハウンドとヘルウィングの怪我を回復させた。
『戦闘中は助けて貰ったからな。この程度では礼にならないかもしれないが、黙って受け取っておいてくれ。』
『いや、我らは恩を返したのみ。これは新たな恩として受け取ろう。そして受けた恩は返す。』
『どうやってだ?』
『汝が望むならば、我らは汝に使役される存在となろう。』
『……言っていなかったが、俺はダンジョンマスターだ。俺に使役されるってことは、ダンジョンに来る冒険者たちと戦う、常に命の危険に晒される、ってことだ。それでもいいのか?』
『ダンジョンは我らにとって最適な住処だ。マナも瘴気も豊富であるしな。』
『そうか、じゃあこれからよろしくな。』
『うむ。』
『ところで、勝手にこっちで話が進んだがお前はそれでいいのか、ヘルウィング。』
『私はヘルハウンドさんに従います。もとより彼が言い出さなければ私が言い出すつもりでしたし、あなたに使役されるということに異存はありません。』
ヘルウィングも納得しているなら構わないな。
『よし、じゃあ付いて来てくれ。』
俺はそう声をかけると、
「【サモン・ダーククロウモール】!」
と唱えて捕獲したばかりのダーククロウモールを召喚。そして、
「俺たちをフェリアイルステップのダンジョンまで運んでくれないか?」
と言うと、ダーククロウモールはゆっくりと頷いた。乗ってみると、毛は硬いが掴みやすい。
「じゃあ、よろしくな。」
俺はダーククロウモールを撫でてそう言った。ダーククロウモールはまた頷き、ゆっくりと進み始める。こうして俺たちは新しい仲間を手に入れ、ダンジョンへの帰路につくのだった。
【ダンジョンステータス】
ダンジョン名:友好獣のダンジョン
深さ:170
階層数:17
モンスター数:631
内訳:ジャイアントモール 10体
キングモール 10体
メタルモール 9体
コマンダーモール 1体
ハードモール 29体
ダーククロウモール 1体
エンペラーモール 1体
ウルフ 10体
ソイルウルフ 22体
ファイアウルフ 25体
ウォーターウルフ 25体
ウィンドウルフ 21体
クロウウルフ 12体
アースウルフ 15体
フレイムウルフ 13体
アクアウルフ 12体
ヒールウルフ 1体
トキシンウルフ 1体
シックウルフ 1体
ディズルウルフ 1体
ウィングウルフ 1体
マッドウルフ 20体
バーンウルフ 20体
アイシクルウルフ 20体
ヘルハウンド 1体
ハリケーンバッファロー 10体
トルネードバッファロー 5体
グリプトアルマジロ 10体
アタックアルマジロ 5体
プレデターラビット 10体
ハンターラビット 2体
センジュベアー 1体
キラーバット 10体
メイジバット 10体
ビッグワーム 10体
ジャイアントワーム 25体
ビッガースネイク 25体
ポイズンサーペント 30体
レッドスワロー 10体
レッドイーグル 12体
バーンイーグル 4体
ヴォルカニックイーグル 1体
ヘルウィング 1体
イートシャドウ 10体
ハンターシャドウ 2体
シノビシャドウ 3体
アサシンシャドウ 2体
トラップシャドウ 3体
スナイパーシャドウ 1体
サムライシャドウ 2体
キラーシャドウ 2体
クレバーゴースト 1体
ムクロノショーグン 1体
ハンタースパイダー 10体
フリーズスパイダー 5体
ハイスコーピオン 10体
ソルジャースコルピ 5体
リトルドラゴンフライ 10体
ドラゴンフライ 30体
ブルースパロー 10体
ブルースワロー 25体
ウォーターホーク 3体
ウォーターホーンオウル 2体
ウォータークジャク 2体
ウォーターファルコン 3体
アイシクルホーク 1体
アイシクルオウル 2体
アクアクジャク 3体
ラングフィッシュ 10体
ダートヌート 10体
友好条約締結者
リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)
レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)
住人
リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)
ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)
ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)
ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)
キャトル・エレイン・フィラー(吸血鬼、従業員)
セントグリフ・クレイティブ・カール(幽霊)
【リチャードのステータス】
リチャード・ルドルフ・イクスティンク
種族:人間
職業:ダンジョンマスター、魔術師
レベル:288→289
スキル:鑑定眼(Lv6)
剣術(Lv9)
刀術(Lv2)
鎌術(Lv6)
槍術(Lv16)
杖術(Lv34)
棍棒術(Lv5)
体術(Lv6)
投擲(Lv2)
狙撃(Lv6)
自動回復(Lv3)
神将召喚(Lv1)
話術(Lv4)
幸運(Lv7)
疾走(Lv8)
壁走(Lv8)
隠蔽(Lv3)
非表示(Lv3)
罠解除(Lv5)
武器造形(Lv4)
支援強化(Lv1)
全属性魔法(上級)
念話
降霊
影潜
無詠唱
全言語理解
毒属性無効
呪属性無効
聖属性無効
邪属性無効
地属性無効
闇属性無効
火炎無効
技能:炎剣(魔法剣)
炎槍(槍)
捨て身タックル(体)
混合武技:豪炎の激情(炎)
水流の乱舞(水)
荒れ狂う疾風(風)
猛毒の抱擁(毒)
浄化の閃光(光)
称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)
大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)
スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)
龍を討伐せし者(物理耐久力、回復力大上昇)
破壊神の破砕腕(物理攻撃力大上昇)
称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)
氷炎の支配者(氷、炎属性の攻撃力大上昇)
霊の天敵(霊族モンスターへの攻撃力小上昇)
瘴気喰らう者(瘴気系の悪影響中減少)
気高き守護者(防御魔術の威力小上昇)
称号収集家助手(称号獲得率中上昇)
ウェポンメイカー(武器造形成功率中上昇)
影の支配者(闇属性魔術の威力中上昇)
嵐神の加護(風、嵐属性の威力大上昇)
強奪者の素質(倒した相手のスキル、称号奪取率小上昇)
邪を祓いし者(浄化属性魔術の威力中上昇)
神獣との契約者(戦闘勝率大上昇)
スキル収集家助手(スキル獲得率中上昇)
栄誉の強奪者(倒した相手のスキル、称号奪取率中上昇)
トラップブレイカー(罠解除成功率中上昇)
称号収集家(称号レア変化率小上昇)
魅惑の微笑み(異性魅了率小上昇)
主の上に立つ者(配下の命令遵守率中上昇)
ダンジョンを攻略せし者(ダンジョン攻略成功率小上昇)
名付け親見習い(ネームモンスター強化率小上昇)
微笑みの紳士(異性魅了率中上昇)
神将との契約者(戦闘時負傷率大減少)
微笑みの貴公子(異性魅了率大上昇)
スキル収集家(スキルレア変化率小上昇)
リジェネゲッター(自動回復の回復率小上昇)
称号コレクター(称号レア変化率中上昇)
支援されし者(支援系魔術の効果小上昇)
豪炎を制する者(炎属性の攻撃力大上昇)
誇り高き守護者(防御魔術の威力中上昇)
ゴブリンの天敵(ゴブリン系モンスターへの攻撃力小上昇)
ソウルハンター(捕獲した魂の忠誠率小上昇)
所持武器:アイアンナイフ(N、鉄製のナイフ)
ウィンドナックル(R、風属性物理攻撃可能)
ソウル・ウォーサイズ(SSR、死霊系に特効)
ドラゴンスレイヤー(SSR、全属性対応)
神秘の破砕銃(UR、神秘の聖銃の上級武器)
烈火の神槍(LR、黒迅の魔槍の炎属性特化上級武器)
七星の宝石杖(GX、七属性の威力大上昇)




