91.3回戦 vs暗殺者 投擲と刀術
「では、これより魔術師リチャード・ルドルフ・イクスティンクと暗殺者シェル・エイダ・フローラの交流戦を行います。魔術等の使用に制限はありません。また、召喚獣の使用は3体まで。どちらかが気絶するか、ギブアップするまで続きます。では両者とも、相手を奮い立たせる言葉を!」
バミックさんがコールする。3回戦の相手は、軽装で華奢な少女だった。キャトルよりも若く……というか、幼く見える。
「ハーイ、お兄さん。私はシェル。ジョブは暗殺者だけど、今まで人を殺したことはないし、これからだって殺す気はないわ。今日は楽しみましょう♪」
そう言ってパチッとウィンクするシェル。観客席に微弱な闇の魔力を発する存在を感知したが、それは今は無視だ。
「全力でかかって来てくれ。じゃないと面白くないからな。」
俺はウィンクを返す。観客席の闇の魔力が強くなったが、これも無視だ。
「先攻はシェル選手。では、始め!」
試合開始のコールが響く。シェルは、投擲専用の投げナイフを取り出した。
「さて、お兄さん。これを避けられるかしら?」
そう言うや否や、こちらに向けていくつもナイフを投擲してくるシェル。なかなかの練度だが、避けられないほど速くはない。【フライ】を使用して躱した。
「へー、お兄さん空飛べるんだ。ちょっとビックリ。でもね、もうナイフ迫ってるよ?」
シェルは笑みを浮かべてそう言う。すると突然、俺の背中に痛みが走った。先程シェルが投げたナイフが刺さったらしい。
「んふふ♪ ナイフが追尾するなんて思ってなかったでしょ? 痛みで気が散ると魔法は使えないっぽいし、すぐ落ちちゃうわね。」
勝ち誇った感じの口調で言うシェル。なんかイラついたので、俺は口調を変えることにした。
「黙れ、小細工しかできない能なしの小娘が。」
俺はそう吐き捨てると、【ハイヒール】を使用して傷を塞ぐ。ナイフは抜け、地面に向かって落ちていった。どうやら刺さった後はもう追尾できないらしい。
「えっ? 何で魔法が保てて……」
「お前のような小娘に教える義理はない。」
俺はそう言いつつ、無詠唱で【フレイムウォールコーティング】を発動。そして、地面に降りると一気にシェルに肉薄してその小柄な体を投げ飛ばした。咄嗟に受け身は取ったようだが、ダメージは入ったな。
「むー……乱暴な人は嫌い。」
「奇遇だな。俺もお前みたいな凶暴な女は大嫌いだ。」
「なっ? 誰が凶暴ですって?」
「貴様だ、小娘。いくら可愛く見た目を取り繕ったところで、本来の貴様の性格は隠せていない。貴様のような雑魚とやり合うくらいなら、試合を放棄して秘書と仕事していた方が1000不可思議倍マシだ。」
俺はそう言い放つと、地面に落ちたままのナイフを粉砕。そして、
「悪いがここからは本気で行かせて貰おう。【サモン・ムクロノショーグン】!」
と叫んでムラマサを召喚した。
『貴公、召喚の命により参上いたしました。』
「ムラマサ、お前の愛刀を少し貸してくれ。」
『貴公の望むままに。』
ムラマサは鞘に入ったままの腐乱の太刀を恭しく俺に差し出してきた。俺はそれを受け取ると、
「【レプリカディヴィジョン】!」
と増殖属性魔法の呪文を唱える。すると、腐乱の太刀の柄から新しい太刀が生まれるように出てきた。腐乱の太刀の禍々しいオーラを放つ漆黒の太刀。腐乱の太刀のレプリカだ。
「よし、できた。サンキュー、ムラマサ。」
俺はムラマサに本物の腐乱の太刀を返す。
『貴公の役に立つことこそ我が喜びでございます。』
ムラマサはそう言うと、急に、
『刀術武技Lv159スキル、【抜刀無限斬撃】!』
と叫んだ。すると、キィンと甲高い音が鳴り、地面に何かが落下。見ると、それは真っ黒に染まりバラバラになったナイフだった。
「完全に不意打ちだったはずなのに……なんで分かったのよ!」
シェルが悔しそうに地団駄を踏んでいる。そういえば、今は模擬戦の途中だったな。
「こいつは刀術の達人だからな。お前のナイフ如き、簡単に弾けるんだよ。」
俺はそう言いながら、ムラマサに目配せする。ムラマサは心得たとばかりに頷くと、姿を消した。
「さて、じゃあやらせて貰おうか。」
俺は【疾走】を発動させてシェルに肉薄すると斬撃を加えようとしたが、ギリギリで躱された。俺は追撃するが、全て紙一重で躱される。
「お兄さん、刀は闇雲に振り回したって当たるものじゃないのよ♪」
シェルは余裕を取り戻したのか、揶揄うように言ってくる。
「そんなことは知ってるよ、小娘。それよりもお前、周囲にもう少し気を配った方が良い。【振り向けば奴がいる】んだからな!」
「えっ?」
シェルは慌てて振り返る。その瞬間、【振り向けば奴がいる】の効果が発動。俺はシェルの真後ろにワープした。
「なんで急に?」
シェルは驚きに満ちた声をあげる。それに対して俺は何も反応せず、
「刀術武技Lv1スキル、【峰打ち】!」
と叫んで刀の背でシェルを打った。
「くうっ……」
シェルはよろめき倒れたが、まだ気絶には及ばず、すぐに立ち上がるとナイフを逆手に構えた。
「あの程度じゃまだ私は倒れないわ……痛みは何倍にもして返してあげるわ、お兄さん!」
怨嗟の念が籠もったような声でそう言うシェルに俺はこう返した。
「滑稽だな、小娘。お前、もう詰んでるんだよ。」
俺がこう言うと、突如として彼女の後ろに身の丈2mを超える骸骨の鎧武者が出現。シェルが気付いた時にはもうムラマサの刀の背がシェルの首筋に打ち込まれていた。
「あうっ……」
シェルは呻いて地に倒れ伏す。そして彼女は、もう勝てないと悟ったような表情で敗北の言葉を口にした。
「ぎ、ギブアップします……」
「シェル選手、ギブアップ! 勝者、リチャード・ルドルフ・イクスティンク!」
バミックさんがコール。会場が拍手に包まれる。
「お兄さん、何でこの骸骨さんが後ろに……引っ込めたんじゃなかったの?」
「ああ、あれは演出だ。こいつは引っ込んだんじゃなくて、【影潜】で隙を窺ってたんだよ。」
俺は種明かしをする。そう、ムラマサは引っ込んだふりをして一瞬で影に埋没し、俺がシェルを引き付けている間に決定打を叩き込んだのだ。
「【影潜】持ちなんだ……凄いモンスターを使役してるのね……」
シェルはそう言いながら立ち上がると、砂を払って会場を後にした。レナさんが駆け寄ってくる。
「リチャード選手、4回戦進出おめでとうございます!」
「ありがとうございます。」
「シェル選手の実力はどのように感じられましたか?」
「技術はありましたがまだまだ未熟、ですかね。でも、ナイフの扱いには目を瞠るものがありましたから、伸びしろも十分あると思います。」
「初めて傷を負われましたが、それについては?」
「俺もまだまだ未熟ってだけですよ。慢心することなく、これからも頑張ります。」
「本当におめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「以上、リチャード選手の勝利インタビューでした。」
レナさんは脇へ戻る。俺はムラマサをソウル・ウォーサイズに引っ込めると、ゆっくりと歩いて観客席へ向かうのだった。
【ダンジョンマスターが刀を使用しました。刀術スキルを解放します。】
【ダンジョンマスターのスキル数が30に到達しました。称号【スキル収集家】を入手します。】
【ダンジョンマスターが刀術武技を使用しました。刀術スキルをレベルアップします。】
【リチャードのステータス】
リチャード・ルドルフ・イクスティンク
種族:人間
職業:ダンジョンマスター、魔術師
レベル:218→223
スキル:鑑定眼(Lv6)
剣術(Lv8)
刀術(Lv2)
鎌術(Lv6)
槍術(Lv16)
杖術(Lv34)
体術(Lv6)
狙撃(Lv5)
神将召喚(Lv1)
話術(Lv3)
幸運(Lv6)
疾走(Lv7)
壁走(Lv7)
隠蔽(Lv2)
非表示(Lv2)
罠解除(Lv4)
武器造形(Lv3)
全属性魔法(上級)
念話
降霊
影潜
無詠唱
全言語理解
毒属性無効
呪属性無効
聖属性無効
邪属性無効
地属性無効
闇属性無効
火炎無効
技能:炎剣(魔法剣)
炎槍(槍)
混合武技:豪炎の激情(炎)
水流の乱舞(水)
荒れ狂う疾風(風)
猛毒の抱擁(毒)
浄化の閃光(光)
称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)
大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)
スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)
龍を討伐せし者(物理耐久力、回復力大上昇)
破壊神の破砕腕(物理攻撃力大上昇)
称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)
氷炎の支配者(氷、炎属性の攻撃力大上昇)
霊の天敵(霊族モンスターへの攻撃力小上昇)
瘴気喰らう者(瘴気系の悪影響中減少)
気高き守護者(防御魔術の威力小上昇)
称号収集家助手(称号獲得率中上昇)
ウェポンメイカー(武器造形成功率中上昇)
影の支配者(闇属性魔術の威力中上昇)
嵐神の加護(風、嵐属性の威力大上昇)
強奪者の素質(倒した相手のスキル、称号奪取率小上昇)
邪を祓いし者(浄化属性魔術の威力中上昇)
神獣との契約者(戦闘勝率大上昇)
スキル収集家助手(スキル獲得率中上昇)
栄誉の強奪者(倒した相手のスキル、称号奪取率中上昇)
トラップブレイカー(罠解除成功率中上昇)
称号収集家(称号レア変化率小上昇)
魅惑の微笑み(異性魅了率小上昇)
主の上に立つ者(配下の命令遵守率中上昇)
ダンジョンを攻略せし者(ダンジョン攻略成功率小上昇)
名付け親見習い(ネームモンスター強化率小上昇)
微笑みの紳士(異性魅了率中上昇)
神将との契約者(戦闘時負傷率大減少)
微笑みの貴公子(異性魅了率大上昇)
スキル収集家(スキルレア変化率小上昇)
所持武器:アイアンナイフ(N、鉄製のナイフ)
ウィンドナックル(R、風属性物理攻撃可能)
ソウル・ウォーサイズ(SSR、死霊系に特効)
ドラゴンスレイヤー(SSR、全属性対応)
神秘の破砕銃(UR、神秘の聖銃の上級武器)
烈火の神槍(LR、黒迅の魔槍の炎属性特化上級武器)
七星の宝石杖(GX、七属性の威力大上昇)
著者コメント
ダンジョンに変化が起きていないので、ダンジョンステータスをお休みすることにしました。尚、これ以後のステータス表示は変化が起きた時にどちらかを載せる、というスタイルになります。ダンジョンとリチャードに共に変化が起きた場合は勿論両方載せます。




