88.観客増員、冒険者増員、宿泊客増員
「あの席はどうしようが俺の勝手、ってヴェトルさんこの前言いましたよね? ってことは、その席の上の空間もどうしようが俺の勝手なんじゃ?」
ダンジョン総出で街に出ることが決まった4日後、ウェーバーギルド、【グリフォンの光翼】のカウンターで、俺はマスターのヴェトルさんにこう言った。今、俺はセントグリフとティリと一緒にセントグリフを観客として俺たちが座る席の上を浮遊させる許可を貰おうとしている。
「確かにどうしようがお前の勝手だとは言ったが、その上の空間までは考えていなかったのだ。しかも、まさか幽霊を連れてくるとはな……」
そう言って苦笑いするヴェトルさん。その視線はセントグリフをしっかりとロックオンしている。
「ヴェトルさん、目が怖いです。」
「そんな事はないだろう。昼間に知り合いが幽霊を連れてきて、椅子の上を浮遊する観客として受け入れろ、などと言ってきたら普通はこのような反応をすると思うぞ。」
「まあ、反応云々は兎も角、こいつはいても構いませんよね?」
「……この幽霊が観客になるのを認めなかった場合は、お前が出場を棄権するんだろう? 開催は明日だというのにこんな状況で棄権されたら大損害を被る。このギルドは破滅だ。もとよりこちらに損のない話でもあるから、問題はない。」
【ダンジョンマスターが要求を通しました。話術スキルをレベルアップします。】
ヴェトルさんの了承の返事とレベルアップ報告が同時に聞こえた。俺は脳内音声は無視し、ヴェトルさんに言葉を返す。
「じゃあ、OKってことでよろしくお願いします。」
俺はヴェトルさんに頭を下げると、ルキナスさんとルーアちゃんとキャトルが冒険者登録をしている2階に向かった。
「能力鑑定の結果でランクを決定させて頂きました。ルキンドさんはAランク、ルーンさんはB-ランク、キャトルさんはE-ランクです。これで問題なければギルドカードを発行致しますが、よろしいですか?」
「構いませぬ。」
「大丈夫です。」
「私も大丈夫です。低ランクなのは分かっていたので……」
2階に着いた俺たちの耳に、こんな会話が届いた。取りあえず冒険者登録は済んだようなのでホッとする。話を通してはおいたが、若干不安だったからな。
「ルキンドさん、ルーンちゃん、キャトル。」
「リチャード殿。セントグリフ殿の交渉は成功したのですか?」
「ええ。あの席は俺の自由、即ちその上の空間も俺の自由、と言って強引に論破しました。」
「相変わらずということですな。ああ、そう言えば私は大魔術師の称号を入手しましたぞ。」
「あ、私も一級剣士の称号を入手しました。」
「私は冒険者になりました……雑魚ランクですけど……」
「いいじゃないか、キャトル。最初はみんなそんなもんだ。」
「お父様曰く、吸血鬼は生まれた時から強い種族らしいです……つまり私は平均以下です……生まれてきてすみません……」
キャトルが沈んでいく。ちょっと止めないとヤバいことになりそうだな。
「キャトル、自己卑下はそこまでにしろ。さもないと公開処刑するぞ。」
「どうぞご自由になさってください……このような存在意義の無いダメ吸血鬼は処刑されるべきです……」
「あー、クソッ! 面倒臭い! 【コンフォート】! 【スリープ・ドリームモード・スーパー】!」
俺がこう唱えると、キャトルは安心した顔になってすやすやと眠り始めた。
「荒業ですな、リチャード殿。」
「これも俺のいつも通りですよ。」
俺はルキナスさんにそう答えると、
「【サモン・センジュベアー】!」
と唱えてベアゴローを召喚。キャトルを背負わせた。
「さて、じゃあ宿を探しに行きます。ルキンドさんたちはどうします? 街をうろつくとバレたりする危険性も高まりますけど……」
「私の言うべきことはリチャード殿の好きになさるがよい、ですな。」
「私はマスターの言うことに従います。」
「じゃあルキンドさんたちはここにいてください。ベアゴロー、何かあったら全力で3人を守れ。」
俺はそうベアゴローに指示。そして、
「【この街で最もリーズナブル且つサービスが行き届いているホテルを知っている】で【サーチ】!」
探索魔法【サーチ】でいい宿を知っている人を調べ、その人たちに聞き込みをしに行った。
「ここ、だな。【麒麟の館】っていうのは。」
宿を知っていた人は93人。そのうち80人が言ったのがこの【麒麟の館】だった。ドアを押すと、ドアベルが鳴り、奥から角を生やした女性が出てきた。
「いらっしゃいませ。宿屋【麒麟の館】へようこそ。私は当宿の従業員統括部長、輝魔族のフェノー・トリア・リアテイルと申します。」
「どうも。連泊をお願いしたいんですが。」
「お客様は冒険者ギルドなどに所属していらっしゃいますか? 明日からウェーバーの1つ星ギルドである【グリフォンの光翼】で交流戦が行われますので、冒険者ギルド所属者の方は、ギルドメンバーでなくとも優先的に宿泊できるようになっています。」
「そうなんですか。俺は魔術師で冒険者です。この子は所属してませんが。」
「あ、妖精の方は相部屋で大丈夫なら問題ありません。」
「それなら大丈夫です。元々相部屋のつもりでしたから。」
「では、ギルドカードの提示をお願いします。」
「どうぞ。」
俺がカードを出すと、フェノーさんは目を丸くした。
「ブラックカード……しかもA+ランクの大魔術師様ですか!」
「ええ、まあ。」
「ご宿泊は大魔術師様と妖精様のお2人だけでしょうか?」
「いえ。あと4人います。」
「では、7階の701号室~705号室の5部屋をお取りしておきます。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「はい。リチャード・ルドルフ・イクスティンクです。」
「はい、確認致しました。では、こちらが鍵になります。」
フェノーさんは、俺に鍵を渡してきた。
「はい。じゃあ4人に伝えてくるので、早速なんですが鍵を預かってください。」
「了解いたしました。行ってらっしゃいませ。」
フェノーさんの声を背中に受けながら、俺は【麒麟の館】を後にした。
「という訳で、宿は【麒麟の館】になりました。料金は俺が払いますので、安心してください。因みに、部屋は俺とティリが相部屋で、あとは1人1部屋ずつとってあります。」
『俺の分もあるのか?』
「ああ。」
『リチャードが気を回してくれるなんて珍しいな。』
「俺だってそういう時はある。別に代償とかを払って貰う気は毛頭ないから安心しろ。」
『そこは信用してるさ。』
「ならいい。」
俺がセントグリフにこう言って会話が途切れた時、レナさんが話しかけてきた。
「あの、リチャードさん。」
「はい。何ですか?」
「交流戦の開催日は明日です。」
「それならヴェトルさんに聞きました。」
「そうですか。でしたら、遅刻しないようにしてくださいね。」
「俺はそんなズボラじゃないですよ。」
「とはいえ、ずっとダンジョン暮らしでは体内時計が狂っている可能性が高いです。12時50分まで受け付けをしていますけど、くれぐれも遅れないでくださいね。遅刻は棄権と同じ扱いになりますので、うちのギルドが信用を失い、経営破綻します。」
「大丈夫ですよ、俺はユリアじゃないんですから。」
俺はそう答えると、
「じゃあルキンドさん、ルーンちゃん、キャトル、セントグリフ。宿だけ確認しておこう。」
と声をかけ、4人を連れて宿へと向かうのだった。
「フェノーさん。」
「お帰りなさいませ。そちらの方々が他4人の宿泊者様ですか?」
「はい。」
「私は当宿の従業員統括部長、フェノー・トリア・リアテイルと申します。以後お見知りおきを。」
「魔術師のルキンド・クロムウェラー・モントスと申します。」
「軽戦士のルーン・シェリア・アリアネーゼです。」
「冒険者のキャトル・エレイン・フィラーです。」
『幽霊のセントグリフ・クレイティブ・カールだ。』
「かしこまりました。ルキンド様、ルーン様、キャトル様、セントグリフ様ですね。7階の701号室~705号室の5部屋をお取りしてあります。お好きな部屋へどうぞ。こちらが鍵になります。」
「ありがとうございます、フェノーさん。」
俺は701号室の鍵を受け取る。ルキナスさんたちもそれぞれ鍵を受け取った。
「それじゃ、明日の午前11時まで自由行動で。」
俺はそう言うと、ティリと一緒に701号室へと向かうのだった。
【ダンジョンステータス】
ダンジョン名:友好獣のダンジョン
深さ:170
階層数:17
モンスター数:628
内訳:ジャイアントモール 10体
キングモール 10体
メタルモール 9体
コマンダーモール 1体
ハードモール 29体
エンペラーモール 1体
ウルフ 10体
ソイルウルフ 22体
ファイアウルフ 25体
ウォーターウルフ 25体
ウィンドウルフ 21体
クロウウルフ 12体
アースウルフ 15体
フレイムウルフ 13体
アクアウルフ 12体
ヒールウルフ 1体
トキシンウルフ 1体
シックウルフ 1体
ディズルウルフ 1体
ウィングウルフ 1体
マッドウルフ 20体
バーンウルフ 20体
アイシクルウルフ 20体
ハリケーンバッファロー 10体
トルネードバッファロー 5体
グリプトアルマジロ 10体
アタックアルマジロ 5体
プレデターラビット 10体
ハンターラビット 2体
センジュベアー 1体
キラーバット 10体
メイジバット 10体
ビッグワーム 10体
ジャイアントワーム 25体
ビッガースネイク 25体
ポイズンサーペント 30体
レッドスワロー 10体
レッドイーグル 12体
バーンイーグル 4体
ヴォルカニックイーグル 1体
イートシャドウ 10体
ハンターシャドウ 2体
シノビシャドウ 3体
アサシンシャドウ 2体
トラップシャドウ 3体
スナイパーシャドウ 1体
サムライシャドウ 2体
キラーシャドウ 2体
クレバーゴースト 1体
ムクロノショーグン 1体
ハンタースパイダー 10体
フリーズスパイダー 5体
ハイスコーピオン 10体
ソルジャースコルピ 5体
リトルドラゴンフライ 10体
ドラゴンフライ 30体
ブルースパロー 10体
ブルースワロー 25体
ウォーターホーク 3体
ウォーターホーンオウル 2体
ウォータークジャク 2体
ウォーターファルコン 3体
アイシクルホーク 1体
アイシクルオウル 2体
アクアクジャク 3体
ラングフィッシュ 10体
ダートヌート 10体
友好条約締結者
リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)
レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)
住人
リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)
ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)
ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)
ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)
キャトル・エレイン・フィラー(吸血鬼、従業員)
セントグリフ・クレイティブ・カール(幽霊)
【リチャードのステータス】
リチャード・ルドルフ・イクスティンク
種族:人間
職業:ダンジョンマスター、魔術師
レベル:200
スキル:鑑定眼(Lv6)
剣術(Lv8)
鎌術(Lv6)
槍術(Lv16)
杖術(Lv34)
体術(Lv6)
狙撃(Lv5)
神将召喚(Lv1)
話術(Lv2→Lv3)
幸運(Lv6)
疾走(Lv7)
壁走(Lv7)
隠蔽(Lv2)
非表示(Lv2)
罠解除(Lv4)
武器造形(Lv3)
全属性魔法(上級)
念話
降霊
影潜
無詠唱
全言語理解
毒属性無効
呪属性無効
聖属性無効
邪属性無効
地属性無効
闇属性無効
火炎無効
技能:炎剣(魔法剣)
炎槍(槍)
混合武技:豪炎の激情(炎)
水流の乱舞(水)
荒れ狂う疾風(風)
猛毒の抱擁(毒)
浄化の閃光(光)
称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)
大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)
スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)
龍を討伐せし者(物理耐久力、回復力大上昇)
破壊神の破砕腕(物理攻撃力大上昇)
称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)
氷炎の支配者(氷、炎属性の攻撃力大上昇)
霊の天敵(霊族モンスターへの攻撃力小上昇)
瘴気喰らう者(瘴気系の悪影響中減少)
気高き守護者(防御魔術の威力小上昇)
称号収集家助手(称号獲得率中上昇)
ウェポンメイカー(武器造形成功率中上昇)
影の支配者(闇属性魔術の威力中上昇)
嵐神の加護(風、嵐属性の威力大上昇)
強奪者の素質(倒した相手のスキル、称号奪取率小上昇)
邪を祓いし者(浄化属性魔術の威力中上昇)
神獣との契約者(戦闘勝率大上昇)
スキル収集家助手(スキル獲得率中上昇)
栄誉の強奪者(倒した相手のスキル、称号奪取率中上昇)
トラップブレイカー(罠解除成功率中上昇)
称号収集家(称号レア変化率小上昇)
魅惑の微笑み(異性魅了率小上昇)
主の上に立つ者(配下の命令遵守率中上昇)
ダンジョンを攻略せし者(ダンジョン攻略成功率小上昇)
名付け親見習い(ネームモンスター強化率小上昇)
微笑みの紳士(異性魅了率中上昇)
神将との契約者(戦闘時負傷率大減少)
微笑みの貴公子(異性魅了率大上昇)
所持武器:アイアンナイフ(N、鉄製のナイフ)
ウィンドナックル(R、風属性物理攻撃可能)
ソウル・ウォーサイズ(SSR、死霊系に特効)
ドラゴンスレイヤー(SSR、全属性対応)
神秘の破砕銃(UR、神秘の聖銃の上級武器)
烈火の神槍(LR、黒迅の魔槍の炎属性特化上級武器)
七星の宝石杖(GX、七属性の威力大上昇)




