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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第6章:マスターと冒険者②

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86.交流戦へのお誘い

「……はい?」


 俺は思わず素っ頓狂な声をあげた。


「聞こえなかったか? 交流戦に参加して欲しいのだ。報酬なら出すぞ。参加だけでも。」

「いや、その前に交流戦ってどういうことですか?」

「ああ、話していなかったか。実は、星持ちギルドになると、そこで一番強い冒険者を決めなければならない、という非常に面倒臭い規定があるのだ。それで、今回交流戦を開くことになってな。」

「俺はギルドメンバーじゃないんですけど。」

「リチャードは冒険者登録したのがここだから、ここの冒険者のようなものだ。ギルドの規定でもそうなっている。因みに、分かっていると思うがここにいる魔術師の中で最も高ランクなのはリチャード、お前だ。」

「…………」


 俺は絶句した。まさかこんな面倒なことになるなんて思っていなかったからな。


「魔法剣士や魔銃使い、射手や重戦士、治癒術師なども参加することになっている。ついでにユリアも出場するぞ。」

「えっ? 私もですか?」

「当たり前だろう。お前はウェーバーギルドで最も高ランクの大探索者シーカーだ。ギルドメンバーだから強制参加だぞ。参加すれば報酬は出る。悪い話ではないだろう? 一般人は観戦しに来るから名も売れるぞ。無論無様な負け方をすれば嘲笑と罵倒の対象になるが。」


 あっさりとヴェトルさんは言う。


「まあ、俺は別に参加しても構わないんですけど、ティリは置いて行かなきゃダメですか?」

「手助けは禁止だから流石に肩に乗せてという訳にはいかないな。だが、うちのギルドメンバーがその妖精に故意に触れた場合はその場でペーストになるだろう?」

「そんな生温い訳ないじゃないですか。灰すら残さず消し飛ばしますよ。墓だって作らせません。」

「……まあ、命を落とすことは確実な訳だ。そこで、それについては既に特別措置を用意してある。これだ。」


 ヴェトルさんはチケットのようなものを取り出した。


「特別観戦席を20席準備したのだ。ここは普通の観戦席の3倍の値段だが、お前には特別に5席分無料で支給する。そのうちの1つを妖精用にすればいい。その他の席は連れて来たい友人を座らせるもよし、お前が座るもよし、他人に売るもよしだ。まあ、参加者の席は別に用意してあるが、お前はその妖精と離れたくないだろう? だったら観客席に座れば一緒にいられるぞ。」

「お気遣いいただきありがとうございます。じゃあ参加しましょう。」


 俺は参加を決めた。丁度力試しにもなるしな。


「本当か! 助かる。」

「助かるんですか?」

「ああ、実は一つ星ギルドになるのには費用が掛かるのだ。簡単に言えば、初期投資だけで使用料は無料といったところだが、その初期投資が高すぎてな。交流戦で観戦料を集めないとギルド経営そのものがにっちもさっちもいかなくなるのだ。死霊のダンジョン攻略主要人物であるお前が参加してくれれば、多少観戦料を高くしても見たがる人間が増えるだろう。そうすれば、観客が増え、収入が上がる。そうなれば、経営破綻は免れる。即ち、お前はこのギルドの救世主だ!」


 そう言うと、ヴェトルさんは机の上に会ったベルを鳴らす。すぐにレナさんがコバルトを連れて入って来た。


「お呼びですか、マスター?」

「うむ。今すぐポスターを刷れ。ダンジョン攻略時間世界記録保持者のリチャードが交流戦に出場するという旨の文章と、リチャードの写真を載せて。」

「了解しました。何枚でしょうか?」

「取り敢えず1000枚で頼む。」

「はい。大至急刷ります!」


 レナさんはそう答えると、コバルトを置いて部屋から駆け出していった。


「また救世主か……」

「リチャードさん、他にも救世主って呼ばれたことがあるんですか?」

「ええ。詳しい事情は守秘義務があって言えないんですが、とある街の経済を立て直すのに一役買ったことがありまして。その時に『街の救世主だ』って。」

「やっぱり凄いですね、リチャードさんは。もう完全に英雄クラスじゃないですか。」

「英雄なんて、俺はそんなガラじゃないですよ。な、ティリ。」

「はい! ご主人様は英雄なんて雑魚同然のクラスに留まるようなお方ではありません!」

「そういう意味で言ったんじゃないんだけどな。」

「じゃあどういう意味なんですか?」

「俺は『ティリのご主人様』であれば他の称号なんかいらないんだよ。ティリを可愛がっていられて、ティリにご主人様ご主人様って慕って貰えれば、俺はそれでいい。」


 俺はそう言うと、ティリの頭をいつもよりも念入りに優しく撫でる。ティリがホワホワに蕩けた。いつも以上に可愛く見える。


「はにゃああああああ……」

「リチャード。私の前でイチャイチャするのはやめて貰えないか? 妻と娘の顔がチラつくのだが。」

「そんなこと言って、ヴェトルさんは別居も離婚もしてないじゃないですか。4つ年下のお嫁さんと可愛い5歳の娘さんが家で待っていてくれるんでしょう?」

「なっ……なぜ知っている?」


 本当は【リードハート】だが、そんなことは教える必要が無い。


「企業秘密です。」

「お前は個人だろう。」

「じゃあ個人秘密です。秘密が多い方が魅力的、って言うじゃないですか。」

「……それは女に限ったことのような気がするが、まあいい。交流戦は5日後、場所はこのギルドから転移する異空間闘技場だ。13時から開始で、受け付けは10時からだ。12時50分までに入場と席の確保を済ませておくように。以上だ。」

「了解です。」

「要件はこれだけだ。ではお前たちは帰れ。それと、優勝した場合は賞金100万ゴルドが手に入るぞ。」


 そう言うと、ヴェトルさんはさっさとドアを開け、俺たちを外まで案内してくれた。


「遅刻するなよ。特にリチャード。」

「俺はそんなズボラじゃありません。じゃあ失礼します。」


 俺はそう言うと、ユリアと別れてギルドを後にする。そしてウェーバーの教会に行き、転移でダンジョンに戻るのだった。

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