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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第6章:マスターと冒険者②

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84.郵便配達

「ご主人様! 朝ですよ!」


 ある朝、ティリの声で俺は目を覚ました。毎日毎日、健気なことだ。


「おはよう、ティリ。」


 俺は体を起こすと、そう挨拶をする。


「はい、おはようございます、ご主人様。」

「今日はどうする? ナデナデで良いか?」

「はい!」


 ティリが笑顔で頷いたので、俺はティリを肩に乗せてナデナデをしてからコントロールルームへ向かう。ティリはまだ眠いらしくドールハウスに戻った。すると、俺が椅子に座った瞬間、ダンジョンコアが激しくフラッシュし、


【南、ヤスパース側より人間が一名接近中です。】


 と表示された。


「誰だろう……ヴォルケイノ、見てきてくれ!」


 俺はダンジョンコアを通してヴォルカニックイーグルのヴォルケイノに指示を下す。すると、視界共有ウィンドウが開き、そこにケインさんが映った。今日はドーイバイクに乗っていない。


「何だ、ケインさんか。じゃあお迎えしよう。」


 俺はそう呟くと、これから目の前に出てくるものの背中に乗って欲しいという旨を書いた手紙をバーンイーグルに運ばせた。ケインさんはモンスターが手紙を運んできたことに驚いたようだが、手紙を読むと頷いたので、俺はシルヴァを迎えに送った。



「リチャードさん、お迎えをくださってありがとうございます。」


 コントロールルームに着いたケインさんは開口一番こう言った。


「いや、お客ならおもてなしするのは当たり前です。敵でも味方でも。行先へと案内するのが礼儀です。」


 俺は紅茶を淹れて彼の前に出しながら意味深な笑みを浮かべてそう言う。ケインさんは紅茶を1口呑むと、


「初めてリチャードさんのダンジョンに来ましたけど、このダンジョン難易度高すぎませんか? 僕はシルヴァ君に運んで貰ったから平気でしたけど、横道も無数にあるし、沼だの落とし穴だの奇襲してくるでっかいミミズだの人型のサソリだの冷気を出すクモだの……こんなダンジョンは見たことありません。攻略できる人なんかいないんじゃないですか? そもそも伝説のモンスターであるエンペラーモールがいるなんて……規格外すぎますよ。」


 と言ってきた。まあ、確かにうちのダンジョンは色々規格外だからな。


「規格外なのは認めますけど、攻略させる気なんか一埃もありませんからね。攻略されたら俺死にますし。」

「ダンジョンマスターは大変ですね……」

「ええ。大変なんですよ。ところで、郵便物でもあるんですか?」

「ええ。ユリアからです。」


 そう言ってケインさんは斜め掛けにしていた鞄から封筒を取り出す。


「ユリアからですか?」


 俺はそう言いながら封筒を受け取り、開けて中の手紙を開く。そこにはこう書いてあった。


【前略 リチャード・ルドルフ・イクスティンク様

 突然のお手紙申し訳ありません。あなたのパーティメンバーのユリア・エステル・ローレライです。今回は、ウェーバーギルドのマスターであるヴェトル・カリス・ティグルが依頼があるから連絡を取って欲しいと言ったので、お手紙を書かせて頂きました。どうやら、先日のダンジョン攻略を本部に報告したところ、その功績が認められて一つ星ギルドになったそうです。それで、ギルドに名前を付けることが許されたので、私たちに名付け親になって貰えないかという依頼です。私たちがA+ランクにランクアップすることも正式に決定しましたので、ランクアップ手続きも兼ねるということで、ウェーバーまで来て頂けませんか? ダンジョンマスターであるにも関わらずダンジョンを攻略し、慣れない街で気を遣いまくってお疲れだとは思いますが、よろしくお願い致します。

 不一 あなただけのユリア・エステル・ローレライ】


「……ケインさん。」

「はい、何ですか?」

「ユリアって、名前の前に『あなただけの』ってフレーズをつける癖があったりしますか?」

「そんな癖はありませんよ。ユリアは強くて優しい人を好きになりやすいんで、そういう人に猛アプローチを仕掛けるっていう癖ならありますけど。」

「猛アプローチっていうのは……」

「抱き付いたり、抱き付いたり、抱き付いたりです。」

「…………」

「リチャードさんのことが相当お気に入りなんでしょう。」

「こういうアプローチはやめて欲しいんですけど……惚れ薬とか無闇に抱き付くとか……」

「惚れ薬はいくら頼まれても絶対に作りませんから、その点は安心してください。まあ、ユリアのことに関して僕はあまり介入したくないので、その点はリチャードさん自身で解決して頂きたいです。ユリアのお気に入りから外れるのは相当苦労すると思いますが。」


 ケインさんがこう言うと、突然ドールハウスの窓がバンッと音を立てて開き、そこからティリが飛び出してきた。


「なんて人でしょう! 私からご主人様を奪おうとし、気に入って頂いて然るべきご主人様を気に入るなんて傲慢なことを……うう……」

「ティリ、そんなに殺気立つな。血圧上がっちゃうだろ。あと、あんなに激しく開けたらドールハウスの窓壊れちゃうから。」

「しかし……」

「コンフォート。」


 俺の呪文により緑の光がティリに降り注ぎ、昂ぶった感情を押さえていく。ティリは何とか落ち着いてくれた。


「で、リチャードさん、どうしますか? 街へ行きたくないなら僕が断っておきますけど。」

「いや、良いです。行きますよ。あのギルドと関係性を深めておけば、後々有利に働くかもしれませんし。」

「そうですか。まあ、ギルドのことは兎も角ユリアの言ってることなんて放置しても構わないと思いますけど。ティリちゃん優先なら街に行かなくてもいいんじゃないですか? そもそも、ティリちゃんが街へ行くとユリアが逝く危険性も上がりそうですし。」

「ティリはそんな非常識な子じゃありません。確かにちょっと俺に執着が強くて、忠誠心も旺盛ですけど、街中で高威力且つ殺傷能力の高い魔法をぶっ放したりなんて……」


 俺はここまで言った時、彼女が街でウォーターボムを放った時のことを思い出した。


「そう言えばティリ、1回セクストゥム・ド・ゲイルとかいうバカ貴族にウォーターボムをぶっ放したよな?」

「え? そんな記憶はありません。あったとしてもそんな忌まわしきことに脳のリソースを割くのは勿体ないので、既に抹消しました。」

「そうか、抹消したのか。自白ありがとう。まあ、アイツとのことに関しては不可抗力っぽいところもあったし、俺もあの傲慢な態度にはかなりイラついたから別に構わないけど。」


 俺はそう言うと、ティリをナデナデする。ティリは一瞬でホワホワになった。


「本当にリチャードさんはティリちゃんが大好きですね。ま、兎に角街へ向かわれるんでしたら今すぐが良いですよ。今行けば日が暮れるまでには帰ってこれますし。」

「そうですね。じゃあ今から転移陣でウェーバーへ向かいます。ケインさんはどうします? またシルヴァに送らせましょうか? それとも、転移陣使います?」

「あ、じゃあ転移陣って方でいいですか? 転移ってしたことないので。」

「了解です。」


 俺はそう言うと、ケインさんを転移陣に乗せ、ヤスパースへ送り届ける。そして、キャトルに外出する旨を伝えると、コバルトを異次元倉庫に入れ、転移陣でウェーバーの教会へと向かうのだった。

第6章開始です!

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