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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第5.5章:閑話集&解説集①

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閑話:ダンジョンマスターの頃(side セントグリフ)

『はあ……』


 友好獣のダンジョン、住人の部屋(中)の中で居候の幽霊にしてリーンの兄、セントグリフ・クレイティブ・カールは溜息を吐いた。その音を聞きつけたのか、リチャードが来て部屋に入る。


「どうした、セントグリフ。辛気臭い顔をいつにもまして辛気臭くして。」

『お前はちょっとは心配とかできないのか、リチャード?』

「心配して欲しいのか?」

『別に心配して貰う程のことじゃないけど、ちょっとぐらい気の毒そうな顔をするとかさ、何かこう……』

「何で溜息を吐いてるんだか分からない状態じゃ、心配したくても心配できないだろ。理由を言えば心配してやれるかもしれない。」


 こうリチャードが言うと、セントグリフは驚いたように目を見開いた。


『リチャードが正論を言えるとはな、驚いたよ。』

「シバくぞお前。」

『冗談だって。じゃあ理由を話そう。ちょっと過去の話になるけど……』


 そう前置きをすると、セントグリフはぽつぽつと語り始めた。


              ☆  ☆  ☆


 リーンの兄だって言ってるから分かると思うけど、俺は昔【ドラゴンの巣窟】のダンジョンマスターだったんだ。いつからかは覚えてないけど、結構長いことやってたんだよね。ダンジョンマスターは、リチャードみたいに最初からダンジョンを製作するマスターと、ムラマサみたいに自然発生型ダンジョンのコアを入手してダンジョンマスターになる後付けタイプと2種類あって、俺は前者だった。前者のダンジョンマスターはマスターになったときに記憶を失ってるみたいで、ダンジョン付き妖精に教えて貰わないとダンジョンの作成はできない。で、普通はティリちゃんみたいにずっとダンジョンにいてくれるんだけど、あそこのダンジョン付きの妖精は俺にダンジョンの作成を教えてくれてからすぐいなくなっちゃったんだよね。まあ、俺にはリーンがいたから寂しくなかったけど。記憶は無くても、リーンが俺の血の繋がった妹だってことだけは直感的に分かったんだよね。それは兎も角、俺はそれからダンジョンマスターとして仕事してたんだけど、ずっと疑問に思ってた。何でダンジョンマスターが必要なのかって。リチャードもそう思わないか? 別に俺たちは地上に何かしらの害悪を与えてるわけでも何でもないのに、何で無関係な奴らに命を狙われ続けなきゃいけないんだ、そもそも何で戦わなきゃいけないんだ、って。俺は戦うのも嫌で嫌でしょうがなかったけど、俺の命とリーンを守る為だって自分に言い訳し続けてた。でもある日、リーンに聞かれたんだ。


「なんで兄上はいつもそんなに嫌そうな顔をしながら戦われるのですか?」


 俺はそんなに嫌そうな顔をしてるつもりは無かったんだけど、やっぱり嫌だっていう感情が顔に出てたみたいなんだ。何せリーンが気付くぐらいだから。まあ、それは兎も角、俺は戦うのが嫌なんだって答えた。そうしたら、何で戦うんだって聞かれたから何かを守る為って言った。そして、続けて、


「リーン、たとえ何があっても、絶対に戦いに心を呑まれちゃいけない。俺の心も、リーンの心も、本当は戦いたいなんてこれっぽっちも思っていないんだ。何かを守る為に戦うなら良い。でも、戦うことそのものは目的じゃないんだよ。自分の大切なものを守る、それが本当の戦いの意義だ。それを忘れてしまったら、ただの殺戮者になってしまうからね。」


 って言ったんだ。リーンは不思議そうな顔をしてたね。言った意味が分からないって感じで。無理もないけどね。で、それから2年程経った頃、俺は死んだ。結構あっさりだったよ。一撃でやられたからね。あの日、何かやたら強い人間が来て、うちのドラゴンが10体以上殺された。このままだと俺たちは何の抵抗もできずに殺される。直感的にそう思った俺は、リーンにダンジョン作成の仕方とウィンドウの操作について教えて、ずっと前からつけていたダンジョンコアとダンジョンウィンドウの操作法を書いたノートもリーンにあげて、俺は自分で打って出た。リーンだけでも守る為に。結果、俺は死んだ。油断してる隙にレッディルが奇襲を仕掛けてそいつを追い払ってくれたんだけど、リーンはそれからどこかちょっとおかしくなっちゃって、人間を殺すことに執念を注ぐようになった。俺がもうちょっと強ければ、ああはならなかったんだろうけどね。


              ☆  ☆  ☆


「お前さ、この間からなんかおかしいぞ。過去を考えて何になるんだ。」

『何にもならないことは百も承知だよ。だけど考えちまうんだよ。この間の俺の祥月命日の時からなんか憂鬱でさ。』


 そう言うと、セントグリフはまたハーッと溜息を吐く。


「あー、もう! ウザい、暗い! んなこと考えたって無駄だろ!」

『そんな急に怒鳴らなくたっていいだろ?』

「良くないな。お前を見てるとイラつくんだよ。」

『どんな風にだよ?』

「ネガティブなクズを見てるみたいで。物事はもっと前向きに考えないと面白くない。お前が死んだおかげで俺はお前と会えた訳だし、リーンだってお前が死んだおかげで戦いを忌避せずに過ごせてるのかもしれない。もしお前が生きてたら、俺はお前と会えなかったし、リーンだっていつまでもお前に執着してお前が死んだ瞬間に後を追うように自害してたかもしれない。少なくとも、そこまでネガティブに考えることは無いだろ。」


 そう言うとリチャードはセントグリフの腕を掴んで引っ張る。


『どこへ連れて行こうとしてるんだ?』

「訓練場だ。」

『まさかまた俺に攻撃魔法を撃ちこみまくる気か? だったら遠慮させて貰う!』


 セントグリフは怯えた顔でそう言う。それに対して、リチャードは爽やかな笑みを浮かべて答えた。


「違う違う。今回は逆だ。お前が俺に攻撃魔法を撃ちこみまくるんだよ。」

『そんなことをしたら俺はティリちゃんに殺されるだろ?』

「死んでるお前のことはもう誰も殺せねえよ。それは兎も角、変なことをうだうだ考えちまうんなら他のことをやってストレス発散するのが最高だ。俺ならそう簡単には死なないし、防御もできる。思う存分俺にぶつけろ。俺に昔の後悔話をして意味もなく2人そろって不愉快な思いになるよりずっと健康的だしな。お前の下らねえトラウマの払拭の為なら、いつだって付き合ってやるから。だからうだうだ思い悩んだりするな。」


 リチャードの思いやりに溢れた言葉にセントグリフの心が震える。


『リチャード……』

「泣くほど感動することじゃねえだろ。友人を助けるのは当然だ。さあ、訓練場へレッツゴー。」


 そう言うと、リチャードはセントグリフを半ば引きずるようにして訓練場へ連れていくのだった。



 ……尚、この後セントグリフはリチャードに攻撃魔法を撃ちこみまくっている所をキャトルに目撃され、勘違いを正すために2時間ほどリチャードと共に状況を説明しなければならない状況に陥ったのだが、そのことはセントグリフとリチャードの心の内を鑑み、ここでは割愛する。

リクエスト頂きましたリーンとセントグリフの過去話、完了です。リクエストくださりました方(プライバシー保護の為、名前は出しません)、本当にありがとうございました!

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