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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第5.5章:閑話集&解説集①

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閑話:幼児化ティリウレス

「おーい、ティリ。いい加減起きた方が良いぞ。具合でも悪いのか?」


 ある日、俺はティリがなかなか起きてこないのでドールハウスに向かってこう声をかけた。すると、ドールハウスの窓が開きティリが出てきたが、何かがおかしい。いつものようにスイスイ飛んでくるのではなく、何だかフラフラしているのだ。


「どうした、ティリ? やっぱり具合でも悪いのか?」


 俺は心配して声をかけたが、ティリは無言。これは明らかに変だ。いつもならすぐに返事をするのだから。と、そう思っていると、ティリは急に地面にビタンと墜落した。そして、


「ふえええええん!」


 と大声で泣き出してしまった。


「ティリ、どうした? 大丈夫……じゃないよな。待ってろ、今すぐ治癒するから。」


 俺はそう言いながら駆け寄り、ティリに七星の宝石杖を向けて【ウルトラヒール】を使おうとした。しかし、ティリは俺が杖を向けたのを見るや、


「ふえええええええええん!」


 とますます大きな声で泣き出した。絶対におかしい。俺は鑑定眼を発動させてティリのステータスを確認。すると、1つの項目に目が留まった。それは、


状態:幼児退行


 だ。


「幼児退行? どういうことだ?」


 俺は首を傾げた。人の精神を幼児状態まで退行させる魔法は時間属性や幻惑属性の上級に確かに存在する。だが、俺はそんなものを使っちゃいない。それに、俺以外のダンジョンの住人は時間属性や幻惑属性に適性が無いので、まず使えない。そもそも使う理由も意味も無いしな。


「なんで急に幼児退行なんて……今までこんなことなかったのに……」


 俺はそう呟きながら、七星の宝石杖をしまい、屈んでティリの頭をナデナデする。すると、ティリは泣き止んだ。そして、覚束ない足取りで俺に近付くと、俺の手に乗り、腕をよじ登って肩の上、いつもの定位置につく。


「ティリ、何かあったのか?」


 こう聞くと、ティリは俺の首に寄りかかり、


「ごしゅじしゃまが、ゆめでわらひにまほーをかけまひた。」


 と舌っ足らずな声で言った。


「それは夢だろ。現実には何もないのか?」

「にゃにもにゃいれしゅ。ごしゅじしゃまがにゃんかしたのれしゅか?」

「いや、俺は何もしていない。というか、ティリは自分の今の状況が分かってるのか?」

「よーじたいこーしてるれしゅ。」

「分かってるのかよ。なんで急に退行したんだ?」

「それはわからないれしゅ。」

「じゃあ、なんて墜落しちゃったのかは?」

「それもわからないれしゅ。でもいたかったからないたのはわかりましゅ。ちょくじょーてきになっちゃってるれしゅ。」

「直情的に、か……何があったんだろう……」


 俺は考えを巡らせる。するとティリが、


「ごしゅじしゃまがわらひをかわいがってくれないからこうなったれしゅ! きっとそうれしゅ!」


 と言った。


「どういうことだ、それ。」

「ごしゅじしゃまがいくらいってもわらひをかわいがってくれないから、わらひがよーじじょーたいにたいこーしちゃったんれしゅ! そうにきまってるれしゅ!」

「決まってないと思うけどな……どうすれば治るか分かるか?」

「ごしゅじしゃまがわらひのよーぼーにこたえてくれたらなおるとおもいましゅ。」

「要望って……嫌な予感しかしないんだが。」

「なんでれしゅか! わらひはへんなことをおねがいするつもりはないれしゅ! ただ、ギューってしたりナデナデしたり『好きだよ』とかいったりしてほしいらけれしゅ!」

「ティリは俺に可愛がって貰えればそれでオールOKなのか?」

「なんでそんなあたりまえのことをきくれしゅか?」


 キョトンとした顔をするティリ。


「ごしゅじしゃまはせかいいちのごしゅじしゃまれしゅ。そのごしゅじしゃまにかわいがっていただけるのがしこーだとおもうのはへんれしゅか?」

「変じゃないけど、俺に可愛がって貰うのが至高っていうのはちょっと理解が……」

「じゃあきゅーきょくれしゅ!」

「グレードアップさせるな! 究極とかマジでやめろ!」


 俺がこう言うと、ティリは、


「うわあああああああああん! ごしゅじしゃまがおこったぁ!」


 と言ってワンワン泣き出してしまった。俺は慌てて取り繕う。


「怒ってないよ。怒ってないから泣き止んで。ほら、可愛がってあげるから。」

「ごしゅじしゃまがわらひをナデナデしてくれるまでぜったいになきやまないれしゅ。うわあああああん。」

「いや、もう既に泣き止んでるだろ。ナデナデくらいならいくらでもするけどさ。」


 俺はご要望の通り、ティリをナデナデする。しばらく撫でていると、ティリはパタッと倒れて眠ってしまった。


「結局何だったんだ……?」


 俺はこう呟く。すると、ティリがムクリと起き上がって、


「おはようございます、ご主人様!」


 といつもの調子で俺に挨拶。


「ティリ、戻ったのか?」

「戻った、ですか? 何からです?」

「幼児退行から。」

「幼児退行ですか? 夢でも見ていらっしゃったのでは? 私は幼児退行なんてしてませんけど。今起きたところですし。」

「え? しかし現に今…… いや、何でもない。」


 俺は追及をやめることにした。覚えてないんじゃどうしようもないしな。


「ティリ、今日はティリを可愛がることを優先したいから、ダンジョン整備はお休みしてもいいか?」


 俺はティリにこう聞く。因みに、これは布石だ。幼児退行の原因が本当に俺の可愛がり不足だとしたら、また退行してしまうかもしれないしな。まあ、あれはあれで可愛かったが、泣かれるのはちょっと困るし。


「別に構いませんよ。明日お仕事すればいいんです。でもご主人様から言いだしてくださるなんて珍しいですね。何かあったんですか?」

「最近ずっと外にいて、ティリと一緒にいられなかったからな。たまには俺から言ってもいいだろ?」


 俺はそう言って微笑むと、ティリの可愛がりを開始する。幼児退行の謎はわからなかったが、幸せな1日だった。

お待たせして申し訳ありません……

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