閑話:青いスキル、赤い称号
「ご主人様、もう朝ですよ。お起きになってください。」
ある朝、ティリの声で俺は目を覚ました。ここで『あと5分』とかいうとアクアトピアをぶちかまされるので、体も起こす。
「今日は寝起きが良いですね、ご主人様。」
「ああ、何かスッキリと目覚められた。いつも目覚ましありがとう、ティリ。」
俺が礼を言うと、ティリは頬を真っ赤に染めた。いつ見ても可愛い。
「やっぱりティリはいつも可愛いな。俺の自慢の助手だよ。」
「か、揶揄わないでください!」
更に真っ赤になって、ティリは俺をぽかぽかと叩く。
「揶揄ってなんかいないよ。ティリが可愛いのは事実なんだから。」
「はにゃああああ……」
ティリが蕩けた。ホワホワだ。いつまでもこうして和んでいたいと思うが、最近はダンジョンを放ったらかしにし過ぎていたので、そういう訳にもいかない。
「ティリ、ダンジョン整備しながらでもいいなら可愛がってあげるから、付いて来てくれ。」
「はい! かしこまりました、ご主人様!」
俺が声をかけると、ティリは『可愛がられて喜んでいる妖精』の蕩けた顔から『頼もしい秘書妖精』のきりっとした顔になり、俺の肩にフワリと飛び乗った。俺はそれを確認すると、コントロールルームへと向かうのだった。
「んー、まず新しいモンスターを召喚するかな。お試しで3種くらい。」
俺は【shop】を開き、モンスター欄をスクロールしながらそう呟く。
「大きめの奴と、中くらいの奴で……」
俺はそう言うと、風属性の猛牛、ハリケーンバッファローと土属性の装甲生物、グリプトアルマジロを5体ずつ、更に人間大の水属性昆虫、リトルドラゴンフライを30体召喚。そして、現在の最下層である第15階層の最深部に、アクアウルフに命令して大きめの池を作らせ、その中にリトルドラゴンフライを配置。ハリケーンバッファローとグリプトアルマジロは適当に配置した。
「こんな感じでいいかな。」
俺が配置を終えて呟くと、ダンジョンコアが青く輝いた。
「お、新機能の解放か?」
ウィンドウを見ると、そこには、
【ダンジョン内に四大元素モンスターが揃いました。スキルの実、称号の実召喚システムを解放します。】
という表示が。
「スキルの実に称号の実? そんなのがあるのか……」
俺はそう言いつつ【shop】のアイテム欄を開き一番下までスクロール。するとそこには、
スキルの実(武器スキル) 500DP
スキルの実(能力スキル) 500DP
スキルの実(魔術スキル) 500DP
スキルの実(特殊スキル) 500DP
スキルの実(レアスキル) 5000DP
スキルの実(激レアスキル) 10000DP
称号の実(小上昇称号) 1000DP
称号の実(中上昇称号) 10000DP
称号の実(大上昇称号) 20000DP
が追加されていた。
「ティリ、この実について何か知ってるか?」
「はい、スキルの実は食べることによってスキルを習得することができる果物で、外見は青いリンゴです。どんなスキルが入手できるかは運次第ですが、レアスキルや激レアスキルは出にくいと言われています。」
「レアスキルとか激レアスキルとかついてるけど?」
「……多分、ダンジョンの召喚システムなので、普通とは違うんだと思います。」
「ん? ちょっと待って。普通とは違うって……この実は外界にもあるものなのか?」
「はい。スキルの実はスキルの樹という樹木に実るものです。スキルの樹は実をつけてから3日経つと、大地に流れる魔力に乗ってどこかに移動してしまうという特性があり、世界に1本しかない貴重な樹木。1年のうち3日しか現れない上、どこにいつ現れるかも全く分からないので、実を1個でも入手出来たらそれは3億ゴルドのくじに当たる程の強運と言われています。称号の実の方は外見が赤いリンゴなだけで、その他はスキルの実と同じです。」
「ふーん。じゃあ、今回はそういう超級レアアイテムが召喚できるようになっちゃったって訳だな?」
「そうなりますね。」
「……うちのダンジョンといい俺といい、何でこんなに規格外なんだよ……」
俺は頭を抱えたが、システムが解放された以上は使わないと勿体ないので、スキルの実(能力スキル)を1つ召喚し、鑑定してみる。
【スキルの実(能力スキル)】 アイテムレアランク:UR
食べることにより能力スキルを入手できる果物。どんなスキルが手に入るかはランダム。既に所持しているスキルと被る場合もある。1日に2個以上食べると腹痛になる。
「URってレアリティ高すぎるだろ……」
俺はそう呟きながらもスキルの実をかじってみた。すると、ダンジョンコアが青く光り、
【ダンジョンマスターがスキルの実を食べました。スキル【全言語理解】を解放します。】
と表示された。名前から察するに、恐らく全ての言葉が分かるスキルなのだろう。そう思っていると、ティリが、
「ええっ? 全言語理解?」
と驚愕に満ちた声をあげた。
「どうした、ティリ。」
「全言語理解っていうのは人語のみならずモンスターや植物の言葉も分かるという最高峰の伝説級激レアスキルなんです! スキルの実でこんな凄いのが手に入るなんて普通はあり得ないんですよ! やはりご主人様は凄いです……」
「うわ……マジかよ……」
俺はティリとは対照的に一瞬顔をしかめたが、すぐに思い直した。ダンジョンマスターとしてこれ以上有用なスキルは無いと思ったからだ。何せモンスターと意思疎通ができるんだからな。
「ご主人様、せっかくですしスキルの検証をしてみましょう!」
「検証? どうやって?」
「私がこれからモグラ語で話しかけますので、ご主人様はその意味を汲んで人語で返事をしてください。じゃあ、話しかけますね。」
ティリがそう言うので、俺は慌てて【全言語理解】を発動させた。それを確認すると、ティリは、
「クウ! クククウクク! ククウクウクククウ!」
とモグラ語を喋る。すると、俺の脳内にティリの声が人語で聞こえてきた。
『ご主人様、これからもずっとずっと、私はご主人様を一途にお慕い申し上げます! ご主人様も、これからもずっとずっと、私を愛してくれますか?』
嬉しいことを言ってくれる。こんな質問、答えは決まっているのにな。
「当たり前だろ、ティリ。俺の恋愛対象はティリ以外に存在しないんだから。」
こう言うと、ティリは俺に抱き付いてきた。
「ご主人様! 嬉しいです! 大好きです!」
「俺もだよ、ティリ。」
俺はそう言うと、ティリをそっと抱きしめる。規格外で良かったと、初めて思った瞬間だった。
【ダンジョンステータス】
ダンジョン名:友好獣のダンジョン
深さ:150
階層数:15
モンスター数:443
内訳:ジャイアントモール 10体
キングモール 10体
メタルモール 29体
ジェネラルメタルモール 1体
ウルフ 55体
ソイルウルフ 15体
ファイアウルフ 13体
ウォーターウルフ 12体
メディックウルフ 1体
ポイズンウルフ 1体
イルネスウルフ 1体
ハルキネーションウルフ 1体
フライングウルフ 1体
アースウルフ 20体
フレイムウルフ 20体
アクアウルフ 20体
ハリケーンバッファロー 5体
グリプトアルマジロ 5体
プレデターラビット 2体
アシュラベアー 1体
キラーバット 10体
ビッグワーム 25体
ジャイアントワーム 25体
ビッガースネイク 30体
レッドスワロー 12体
フレイムイーグル 5体
イートシャドウ 10体
ハンターシャドウ 1体
シノビシャドウ 2体
アサシンシャドウ 2体
エリートゴースト 1体
ムクロノハオウ 1体
ハイパースパイダー 5体
ナイトスコーピオン 5体
リトルドラゴンフライ 30体
ブルースパロー 25体
ブルースワロー 10体
ウォーターホーク 1体
ウォーターホーンオウル 2体
ウォータークジャク 3体
ラングフィッシュ 10体
友好条約締結者
リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)
レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)
住人
リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)
ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)
ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)
ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)
キャトル・エレイン・フィラー(吸血鬼、従業員)
セントグリフ・クレイティブ・カール(幽霊)
【リチャードのステータス】
リチャード・ルドルフ・イクスティンク
種族:人間
職業:ダンジョンマスター、魔術師
レベル:199
スキル:鑑定眼(Lv6)
剣術(Lv7)
鎌術(Lv6)
槍術(Lv15)
杖術(Lv33)
体術(Lv5)
狙撃(Lv4)
話術(Lv2)
幸運(Lv6)
疾走(Lv7)
壁走(Lv7)
隠蔽(Lv2)
非表示(Lv2)
罠解除(Lv4)
武器造形(Lv3)
全属性魔法(上級)
念話
降霊
影潜
無詠唱
全言語理解
毒属性無効
呪属性無効
聖属性無効
邪属性無効
地属性無効
闇属性無効
火炎無効
技能:炎剣(魔法剣)
炎槍(槍)
称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)
大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)
スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)
龍を討伐せし者(物理耐久力、回復力大上昇)
破壊神の破砕腕(物理攻撃力大上昇)
称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)
氷炎の支配者(氷、炎属性の攻撃力大上昇)
霊の天敵(霊族モンスターへの攻撃力小上昇)
瘴気喰らう者(瘴気系の悪影響中減少)
気高き守護者(防御魔術の威力小上昇)
称号収集家助手(称号獲得率中上昇)
ウェポンメイカー(武器造形成功率中上昇)
影の支配者(闇属性魔術の威力中上昇)
嵐神の加護(風、嵐属性の威力大上昇)
強奪者の素質(倒した相手のスキル、称号奪取率小上昇)
邪を祓いし者(浄化属性魔術の威力中上昇)
神獣との契約者(戦闘勝率大上昇)
スキル収集家助手(スキル獲得率中上昇)
栄誉の強奪者(倒した相手のスキル、称号奪取率中上昇)
トラップブレイカー(罠解除成功率中上昇)
称号収集家(称号レア変化率小上昇)
魅惑の微笑み(異性の魅了率小上昇)
主の上に立つ者(配下の命令遵守率中上昇)
ダンジョンを攻略せし者(ダンジョン攻略成功率小上昇)
所持武器:アイアンナイフ(N、鉄製のナイフ)
ウィンドナックル(R、風属性物理攻撃可能)
ソウル・ウォーサイズ(SSR、死霊系に特効)
ドラゴンスレイヤー(SSR、全属性対応)
神秘の破砕銃(UR、神秘の聖銃の上級武器)
烈火の神槍(LR、黒迅の魔槍の炎属性特化上級武器)
七星の宝石杖(GX、七属性の威力大上昇)




