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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第5章:マスターと依頼

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112/200

side ティリ 訓練と最高のご褒美

「ご主人様は働きすぎです! 今日から3日間、絶対に体を酷使するようなことはやめてください! 約束ですよ!」


 私は、ご主人様が【死霊のダンジョン】を攻略して帰ってきた次の日の朝、腕を押さえて少し顔をしかめているご主人様にこう言いました。


「こんなのはただの筋肉痛だろ。湿布でも貼っておけば治るって。」

「じゃあ、私の忠告を無視して今日も体を酷使なさるんですか?」

「そんな訳ないだろ。ティリがせっかく俺の為を思って言ってくれたんだからな。ご忠告通り、3日間はゆっくりするよ。絶対に体は酷使しないと約束する。」


 ご主人様がそう約束してくださったので私は安心。しかし、その後に続いたご主人様の言葉は、


「じゃあ、ちょっと出てくる。」


 でした。


「え? ちょっと待ってください! 何で外に行こうとするんですか!」

「外に行っちゃいけないのか?」

「ダメとは言いませんけど……理由によります。何をしに行こうとしているんですか?」

「狩り。」

「狩猟対象の生物は何ですか?」

「ファイヴヘッド・アナコンダだよ。」

「はい、却下決定です! 外に行っちゃいけません! コントロールルームでおとなしくしていてください! 今ならマッサージ付きですから!」


 私はそう叫んでご主人様を引き留めました。ファイヴヘッド・アナコンダはフェリアイルステップで最も危険なランクCのモンスター。時にはアシュラベアーとも互角に渡り合う程の強さを秘めた、イレギュラーな単体戦力です。しかしご主人様は、


「あんなのちゃっちゃとやって終わりだよ。頭を5つ同時に落とせばいいんだろ?」


 と涼しい顔で言いました。


「ダメだって言ってるじゃないですか! あのモンスターは危険です! 普通ソロで戦うような相手じゃないんですよ!」

「そりゃそうだろうけど、俺は普通じゃないから。」

「それでも危ないです! 体を酷使しないってさっき仰ったじゃないですか! あれは嘘なんですか? 私に嘘を吐いたんですか?」

「何言ってるんだよ、ティリ。俺がティリに嘘を吐く訳ないだろ。あの程度の・・・・・モンスターとやり合うくらい、体を酷使するうちには入らない。軽い運動だよ、軽い運動。」

「ファイヴヘッド・アナコンダは凶暴且つ狡猾なモンスターなんですよ! 脳が5つあるから知能もそれなりにありますし、もし囲み込まれたりしたら……」

「転移して帰ってくるよ。」

「……やっぱりダメです! そもそもご主人様は平和主義者ですよね? 何で罪のないファイヴヘッド・アナコンダを狩ろうとするんですか?」


 私はご主人様の性格を突いて狩りをやめさせようとしました。しかしご主人様はどこ吹く風。


「今、フェリアイルステップではファイヴヘッド・アナコンダがかなり増えているんだ。だから間引きしないとあそこの生態系が狂ってしまうんだよ。」


 うわあ……とうとうハチャメチャ理論を展開し始めました。生態系は循環してすぐに均衡状態に戻るから無闇に手を加えない方が良いのに……


「自然には自然のルールがあります! それに、ご主人様が本気で魔法を使ったらフェリアイルステップ全域が灰燼に帰しかねません! 私を助けると思っておやめください! それでもやめないと仰るなら私は今ここで、ご主人様の目の前で自害します!」


 私はそう言うと、URウルトラレアアイテム、【燐光の短剣】を取り出しました。するとご主人様は目をすがめ、


「鑑定。」


 と呟くように仰り、その後目を丸くしました。まあ、【燐光の短剣】はかなり凄い武器ですからね。因みに、ウィンドウに出ている鑑定結果は、


【燐光の短剣】 アイテムレアランク:URウルトラレア

新月が光を取り戻した瞬間の光をミスリルに注ぎ込むことによって生まれる聖なる輝きを宿した短剣。持ち主に応じて大きさが自動で変わる。小さかろうが大きかろうが破壊力に違いはなく、扱えるだけの技術があればドラゴン種であろうと屠ることができる。自らを振るえるものにしか扱われない。


 です。


「……んー、脅しに屈したみたいで釈然としないけど、ティリが俺を心配して言ってくれてることはよく分かったから、今回は自然に任せるよ。」


 ご主人様はそう言うと、私をナデナデしてくださいました。


「でも、ストレス溜まってるんだよな……魔力も有り余ってるし、何かこう、スカッとしたいんだけど……」


 ご主人様はナデナデを続けながらそう呟き、少し考える仕草をなさいました。そして、そのまま10秒程経過したところで、目を輝かせて私にこう言いました。


「そうだ、ティリ。訓練に付き合ってくれ!」

「え? 私がですか? 私など100億人集まってもご主人様の足元にも及ばないので、訓練の相手としては不適格だと思いますが……」

「俺はティリに付き合って貰いたいんだ。まさかご主人様のお願いを無視する妖精なんていないよな?」

「うう……ご主人様はズルいです……別にやりたくない訳じゃないですけど……」

「じゃあ付き合ってくれ。」

「せめて、何か私にメリットをください。その方がモチベーションが上がって本気になれますから。」

「分かった。じゃあ、模擬戦で俺に勝てたら、これから毎日20回『好きだよ』って言ってあげると約束しよう。これがティリへのメリットでいいな?」


 ご主人様のこの言葉に、私は俄然やる気を出しました。


「勿論です! 喜んで訓練のお相手をさせて頂きます! 約束は約束ですよ、ご主人様!」

「ああ。じゃあ訓練場に向かうか。」


 そう言うと、ご主人様は私を肩に乗せて訓練場に向かわれました。



「焼き払え! 【フレイムバースト】!」

「消えろ! 【アクアトピア】!」

「爆ぜろ! 【ファイアボム】!」

「消えろ! 【アクアトピア】!」

「貫け! 【フレイムランス】!」

「消えろ! 【アクアトピア】!」


 10分後、私とご主人様は激しい魔法対決を繰り返していました。ご主人様は炎属性の魔法しか使っていないので、私の適性属性である水で対応できています。でも、ご主人様は私が風属性にも適性があることを知っているので、恐らく炎を使っているのは、風属性を使わせないという意味もあるのでしょう。


「なかなかやるな。アクアトピアの威力も上がってるし。」


 ご主人様が褒めてくださったので、私は一瞬模擬戦中だということを忘れかけました。しかし、ご主人様に毎日『好きだよ』と言って貰う為には勝たなければなりません。私は、


「包んで弾けろ! 【テンペストボム】!」


 と叫んで、嵐の魔力の籠もった球を飛ばしました。これはルキナスさんが知っていた魔法で、風属性の上位互換である嵐属性の中級魔法です。使うのは初めてでしたが正確に作動したらしく、緑色の弾がご主人様にぶつかりました。途端にそこで竜巻が発生し、ご主人様をあっという間に呑み込みます。普通の人なら死んでしまいそうですが、そこは流石ご主人様。ローブが少し破れてはいましたが、肉体に特にダメージは無いようです。


「嵐属性か。でもティリ、まだまだ甘い。この位の威力を出せなきゃ俺には勝てないぞ。」


 ご主人様はそう言うと、手を思いっ切り振りました。すると、何もなかったはずの手の平から緑色の球体が飛び出し、私に激突。それが私が使ったのと同じテンペストボムだと気付いたのは、竜巻に巻き込まれて気絶する寸前でした。



「おーい、ティリ。」


 20分後。私はご主人様の声で目を覚ましました。ドールハウスのベッドに寝かされています。ご主人様が運んでくださったようです。慌てて起き上がろうとすると、ご主人様は私の額を押さえて起き上がるのを阻止しました。


「まだ寝てろ。肉体的なダメージは全快させたけど、疲れは抜けないからな。」


 そう言うとご主人様は私の耳元に口を寄せ、


「ティリ、大好きだよ。」


 と仰いました。


「はにゃっ? ご主人様、いきなり何を?」

「ボーナスだよ。これから俺が次に街に行く用事ができるまで、毎日俺とずっと一緒にいることを許可する。我が儘も言いたい放題だ。俺の迷惑にならなければ、だがな。ダンジョン整備とか新モンスターの召喚とか階層追加とかもしたいから、すぐにゆっくり可愛がってあげる時間はとれないけど、これだけは覚えておいてくれ。」


 そう言うと、ご主人様は私の目をしっかりと見据えて、


「ティリは俺の全て、俺にとって勝利の女神だ。ティリの笑顔を守る為なら、俺は何だってする。ティリのいない世界なんて、俺にとって意味はない。俺はティリが大好きなんだ。この世界の誰よりも。」


 と、とっても嬉しいことを言ってくださいました。


「ご主人様……」

「ティリ、いつも迷惑かけてごめんな。だけど、俺のことを嫌いにならないでくれ。」


 ご主人様が少し不安そうな顔で仰ったので、私はその不安を打ち消せるように自分にできる最高の笑顔でこう言いました。


「ご安心ください、ご主人様! 私がご主人様を嫌いになるなんてありえません! 私もご主人様のこと、世界で一番大好きですから!」

という訳で、大変長らくお待たせしましたが、お馴染みティリの閑話です。

ここで皆様に感謝のメッセージを!

総合評価が2000ポイントを超えました!

これも、読んでくださっている皆様のおかげです。本当にありがとうございます!

最近私事で忙しかったのですが、今日で一段落つきましたし、皆様をお待たせせずに話を続けられるよう、これからも頑張ります。

温かく見守って頂けたら幸いです。

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