83.帰省と口論
「じゃあユリアさん、またいずれ。今度は遊びにも来てくださいね。」
「はい、行かせて頂きます!」
「今回のダンジョン攻略、なかなか楽しかったです。」
俺はそう言うと、ドーイバイクのエンジンをかけ、ダンジョンへの帰路についた。
「ただいま!」
コントロールルーム前に着いた俺はドアを開けてそう言う。すると、ティリが、
「ご主人様! お会いしたかったです! ご無事で何よりです!」
と言いながら俺の胸に飛び込んできた。
「ティリ、心配かけちゃったか?」
「いえ! ご主人様なら大丈夫だと思っていました。でも、ご主人様がいらっしゃらないのは不安で寂しかったです。」
「そうか、ごめんな。可愛い妖精に寂しい思いをさせちまうなんて。お詫びに今日は目いっぱい可愛がってあげるよ。」
「本当ですか?」
「ティリに嘘は吐かないよ。それに、俺もティリと触れ合えなくて寂しかったから。」
「ご主人様……」
ティリはうっとりしたような顔で言う。するとその時、
『主君! 見損ないましたぞ! ユリア殿にあれだけ抱き付かせておきながら浮気とは……』
と言いながらローディアスが飛び出してきた。
「ローディアス、お前、タイミングが悪い。今出てくるんじゃねえよ。せっかくティリに疲れを癒してもらってるのに……」
そう言いながらティリを見ると、彼女の身体からは黒い魔力が噴出していた。
「どうした、ティリ? そんなに濃い闇の魔力を噴出させて。」
「ご主人様、ユリアさんに抱き付かせたんですか? イタズラと浮気はしちゃダメって言いましたよね?」
「ああ。だからイタズラもしてないし、浮気もしてない。ユリアが勝手に抱き付いてきただけだ。」
「本当ですか?」
「さっきも言ったよな? 俺はティリに嘘は吐かない。そもそもティリと一緒にいられるだけで俺は幸せなんだから。」
「そうですか。じゃあ悪いのはユリアさんですね。ちょっと殺ってきます。」
「殺害前提はダメ。俺もユリアに何回か助けられたし。」
「むー……ご主人様に抱き付いたのは許し難いですが、助けたなら仕方ありません。今回は自重します。」
「偉いぞ、ティリ。」
俺がそう褒めて頭を撫でると、ティリは黒い魔力を噴出させるのをやめて、ホワホワになった。
「あ、ご主人様、このエリートゴーストは何ですか? 新しい仲間ですか? それとも勝手についてきたんですか?」
ティリは俺が頭を撫で終えると、そう聞いてきた。
「ああ、こいつはダンジョンで捕まえてきた……」
と俺はローディアスを紹介しようとする。しかし、その時、
『リチャード、帰ったんなら言ってくれよ!』
と言いながらセントグリフがコントロールルームに飛び込んできた。すると、ローディアスが、
『セ、セントグリフ殿?』
と声をあげた。するとセントグリフも目を丸くし、
『なっ? お、お前ローディアスか?』
と驚愕に満ちた声をあげる。
『然様でございます!』
『何でお前がここにいるんだ?』
『主君であるリチャード・ルドルフ・イクスティンク殿に捕獲されたからでございます。セントグリフ殿こそ、なぜここに?』
『俺は腕が立つダンジョンマスターを見つけたからここに居候させて貰ってるんだ。』
セントグリフはそう言うと、今度は腕を組んで考え始めた。
『ん? でも待てよ。ローディアスをリチャードが捕獲したってことは、リチャードが攻略しに行っていたダンジョンって……』
「死霊のダンジョンだけど?」
俺がこう答えると、セントグリフはいきなり大きな声を出した。
『何でそのことを出発前に言ってくれなかったんだよ! 俺を連れていってくれればすぐ攻略できたはずなのに!』
「何でだ?」
『あそこは俺が一番最初に訪問したダンジョンなんだよ! トラップだって俺からすればあってないようなもんだし! ダンジョンマスターがモンスターだったから話を聞いてくれなかったんだけど、あそこのモンスターは全部分かってるし、道順も……』
「俺そんなこと知らねえし。第一、お前を連れてったら確実にユリアが怖がっちまうだろ?」
『ユリア? 誰だよそれ。』
「あ、セントグリフさんはご存知ありませんでしたね。ユリア・エステル・ローレライさんはご主人様のパーティメンバーです。綺麗な方ですよ。」
『また女の子か……リア充は爆発しろ! 爆ぜて散れ!』
「五月蝿い、黙れ。喋るな、触れるな、近付くな。」
『またそれか! なんでお前は俺に対してだけコメントが辛辣なんだよ!』
「お前じゃない、リチャード・ルドルフ・イクスティンクだ。ニートの幽霊にお前などと呼ばれる筋合いはない。」
『だからニートじゃない! 幽霊だから職に就けないんだって前に言っただろ!』
『妖精殿、主君はいつもああなのですか?』
「種族名で呼ばないでください。私の名前はティリウレス・ウェルタリア・フィリカルトです。エリートゴーストのような雑魚以下の超低級モンスターに種族名で呼ばれる筋合いはありません。」
『ぬうっ……流石は主君に仕えている方……喋り方が主君と同じとは……』
「そんなの当たり前です。この世界に並び立つ者など誰1人としていないご主人様にお仕えさせて頂いているんですから。」
ティリはそう言うと、どや顔をして胸を張る。どんなポーズでもティリは可愛いな。見ているだけで癒される。
「可愛い……すごく可愛い……」
『主君、なぜあの妖せ……ゲフンゲフン、ティリウレス殿にベタ惚れなのですか?』
「モンスターには分かるまい。ティリの可愛さ、健気さはこの世の何よりも価値があるということが。」
『答えになっておりませんが……』
「俺の言葉の意味が分からないなら黙ってろ、ローディアス。」
俺はそう言ってローディアスを睨むと、ティリの頭をナデナデする。ティリの顔が一瞬で蕩けた。
「ご主人様、今のナデナデは何のナデナデですか?」
ティリは蕩けた顔のまま俺にそう聞く。
「嫌か?」
「嬉しいですけど……何でナデナデして頂けたのか……」
「ご主人様が妖精を可愛がるのに理由がいるのか? 敢えて理由をつけるなら、『俺がティリを可愛がりたかったから』だ。」
「ご主人様……ご主人様ぁ!」
ティリはそう言うと、俺に飛びついてきた。それを抱きとめると、怨恨にまみれた声が。
『……リア充は爆発しろ……リア充は爆発しろ……』
「おい、セントグリフ。五月蝿いから黙れ。」
『嫌だね。何でここのダンジョンはリア充ばっかりなんだよ! リチャードとティリちゃんとか、ルキナスとルーアちゃんとか!』
「知らねえよ、んなもん。お前だってリア充したいならキャトルと仲睦まじくすればいいじゃないか。」
『俺はリーン以外と関係を持つ気は無い!』
「面倒臭い男だな……」
俺はそう言いつつ、ティリを撫でる。撫でて撫でて撫でる。ティリがどんどんホワホワになっていく。やっぱり可愛いな。
「ご主人様。」
「ん? どうした?」
「明日までずっと一緒にいて良いですか? 具体的には、ずっとくっついているってことなんですけど……」
「構わないけど、何でいきなりそんなことを?」
「妖精がご主人様に甘えるのに理由がいりますか? 敢えて理由をつけるなら、『私がご主人様に甘えたかったから』です。」
「本当可愛いな、ティリは。」
俺はそう言いながら、横目でセントグリフを見る。あいつの顔からは表情というものが消えていた。絶望に支配されている。
「ティリ、わざと言ったのか?」
「そうですよ? ご主人様に愚痴や文句を必要以上に垂れ込む不届き物には、これくらいやって然るべきです。」
『ローディアス、今夜は一晩中俺の愚痴に付き合って貰うからな。これ以上リチャードに垂れ込んでものらくら躱されそうだし、その前にリチャードに鬱陶しがられて見放されたら俺はもう生きていけないから。』
『セントグリフ殿は既に死んでいるような……』
『それはどうでも良いだろ。』
そう言うと、セントグリフはローディアスの首根っこを捕まえ、引きずるようにしてコントロールルームを出ていこうとする。俺はそれを見ながら、【住人の部屋(中)】を設置し、
「セントグリフ、ローディアスに愚痴垂れ込むなら今設置した部屋でしてくれ。」
『了解。2人のイチャイチャの邪魔はしないよ。』
『し、主君! 某を見捨てるのですか?』
「仕方ないだろ。きっと為になるお話をして貰えるさ。もしかしたら頭脳面のエリートになれるかも。良かったな。」
『良くありません! お助けをおおおおおおおお!』
ローディアスは叫びながら空中で引きずられるように連行されていった。
「さて、じゃあダンジョン整備をするかな。」
「ご主人様、しばらくゆっくりされた方が良いと思いますよ。お疲れの顔をなさっています。」
「んー……そうか。じゃあ今日は整備はやめてゆっくりしよう。」
俺はそう言うと、ダンジョンコアに手を触れ、
「総員、今日は体を休めるように。」
と命令を送り、ティリを可愛がりながらくつろぐのだった。
【ダンジョンステータス】
ダンジョン名:友好獣のダンジョン
深さ:150
階層数:15
モンスター数:403
内訳:ジャイアントモール 10体
キングモール 10体
メタルモール 29体
ジェネラルメタルモール 1体
ウルフ 55体
ソイルウルフ 15体
ファイアウルフ 13体
ウォーターウルフ 12体
メディックウルフ 1体
ポイズンウルフ 1体
イルネスウルフ 1体
ハルキネーションウルフ 1体
フライングウルフ 1体
アースウルフ 20体
フレイムウルフ 20体
アクアウルフ 20体
プレデターラビット 2体
アシュラベアー 1体
キラーバット 10体
ビッグワーム 25体
ジャイアントワーム 25体
ビッガースネイク 30体
レッドスワロー 12体
フレイムイーグル 5体
イートシャドウ 10体
ハンターシャドウ 1体
シノビシャドウ 2体
アサシンシャドウ 2体
エリートゴースト 1体
ムクロノハオウ 1体
ハイパースパイダー 5体
ナイトスコーピオン 5体
ブルースパロー 25体
ブルースワロー 10体
ウォーターホーク 1体
ウォーターホーンオウル 2体
ウォータークジャク 3体
ラングフィッシュ 10体
友好条約締結者
リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)
レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)
住人
リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)
ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)
ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)
ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)
キャトル・エレイン・フィラー(吸血鬼、従業員)
セントグリフ・クレイティブ・カール(幽霊)
【リチャードのステータス】
リチャード・ルドルフ・イクスティンク
種族:人間
職業:ダンジョンマスター、魔術師
レベル:199
スキル:鑑定眼(Lv6)
剣術(Lv7)
鎌術(Lv6)
槍術(Lv15)
杖術(Lv33)
体術(Lv5)
狙撃(Lv4)
話術(Lv2)
幸運(Lv6)
疾走(Lv7)
壁走(Lv7)
隠蔽(Lv2)
非表示(Lv2)
罠解除(Lv4)
武器造形(Lv3)
全属性魔法(上級)
念話
降霊
影潜
無詠唱
毒属性無効
呪属性無効
聖属性無効
邪属性無効
地属性無効
闇属性無効
火炎無効
技能:炎剣(魔法剣)
炎槍(槍)
称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)
大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)
スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)
龍を討伐せし者(物理耐久力、回復力大上昇)
破壊神の破砕腕(物理攻撃力大上昇)
称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)
氷炎の支配者(氷、炎属性の攻撃力大上昇)
霊の天敵(霊族モンスターへの攻撃力小上昇)
瘴気喰らう者(瘴気系の悪影響中減少)
気高き守護者(防御魔術の威力小上昇)
称号収集家助手(称号獲得率中上昇)
ウェポンメイカー(武器造形成功率中上昇)
影の支配者(闇属性魔術の威力中上昇)
嵐神の加護(風、嵐属性の威力大上昇)
強奪者の素質(倒した相手のスキル、称号奪取率小上昇)
邪を祓いし者(浄化属性魔術の威力中上昇)
神獣との契約者(戦闘勝率大上昇)
スキル収集家助手(スキル獲得率中上昇)
栄誉の強奪者(倒した相手のスキル、称号奪取率中上昇)
トラップブレイカー(罠解除成功率中上昇)
称号収集家(称号レア変化率小上昇)
魅惑の微笑み(異性の魅了率小上昇)
主の上に立つ者(配下の命令遵守率中上昇)
ダンジョンを攻略せし者(ダンジョン攻略成功率小上昇)
所持武器:アイアンナイフ(N、鉄製のナイフ)
ウィンドナックル(R、風属性物理攻撃可能)
ソウル・ウォーサイズ(SSR、死霊系に特効)
ドラゴンスレイヤー(SSR、全属性対応)
神秘の破砕銃(UR、神秘の聖銃の上級武器)
烈火の神槍(LR、黒迅の魔槍の炎属性特化上級武器)
七星の宝石杖(GX、七属性の威力大上昇)




