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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第5章:マスターと依頼

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81.局長と奇妙なステータス

「さあ、どうぞ。」

「ああ、ありがとうございます。」


 ケインさんは俺とユリアを家に上げると、3秒後に湯気の立つ紅茶を人数分持って来た。


「あの、ケインさん、何でこんなに紅茶を淹れるのが早いんですか? 何か仕掛けでも?」

「いえ、そんなのはありません。火水二重属性魔法の【ホットウォーター】を使って淹れてるから早いんですよ。昔はこれで淹れるとよくルキナスに怒られましたけどね。」

「ルキナスさんにですか?」

「ええ。ルキナスは紅茶のことになると目の色変えますからね。『もっと茶葉のことを考えろ! お前は紅茶が何たるかを何も分かっていない!』って、閻魔か鬼なんじゃないかってくらいの形相でいつも僕のことを叱ってました。」

「ルキナスさんの紅茶好きは筋金入りですからね……」


 俺はそう言うと、溜息を吐いて紅茶を一口飲む。するとユリアが、


「ルキナスさん、か……優しい人だったな……」


 と呟いた。


「え? ユリアさん、ルキナスさんのことを知っているんですか?」

「はい。まだ私が駆け出しのD+ランクだった頃、ルキナス・クロムウェル・モンテリューさんという魔術師の方に助けて頂いたことがあるんです。ウルフ3体の討伐クエストだったんですけど、魔境山の中のウルフの群れを統率していたファイアウルフに襲われて、死を覚悟したことがあったんです。その時ファイアウルフを追い払って、私を助けてくれたのがルキナスさんで……ホイジンガギルドで依頼達成率9割越えの凄い人だったらしいです。もう行方不明になっちゃったみたいですけど……リチャードさんこそ、ルキナスさんを知っているんですか?」

「ええ、色々ありまして。」

「ユリア、そういえば、あの頃も惚れ薬惚れ薬って五月蝿かったよね。」

「ケイン! ダメ! それは言っちゃ!」

「ユリアさん、バレてないとでも思ってたんですか? 俺にユリアさんが惚れ薬を使おうとしてるってこと。」

「え? 何で知ってるんですか?」

「隠し事を見破る魔法ぐらい使えます。まあ、惚れ薬使ったところで俺の心を変えることはできませんけどね。」

「どういうことですか?」

「惚れ薬っていうのは抵抗力1万越えの人には効かないんです。そして、見たから覚えてると思いますけど、俺の今の抵抗力は1万3000です。」

「ムラマサと戦ったから、上がっちゃったんですか?」

「世界が終わったみたいな絶望的な顔はやめてください。それと、深さ99で俺は既に抵抗力1万でした。どちらにしろ、ダンジョンに入る前でなければ俺に惚れ薬を使っても意味が無かったんですよ。」


 俺はそう言い切る。すると、ユリアは見る見るうちに青ざめた。


「急にどうしたんですか?」

「……怒ります?」

「なんでそう思うんですか?」

「私はリチャードさんの心のことなんかちっとも考えずに、ただ私が幸せになりたいってだけで惚れ薬を使おうとして……」

「そんなの当たり前ですよ。みんな人より自分を優先してしまう傾向にありますから。完全に他人のことを考えられる人なんかいたら、それは聖人か精神異常者ですって。それに、俺はそんな些細なことで怒ったりしません。」

「本当ですか?」

「前にも言いましたが、俺はほとんど嘘は吐きません。」


 俺はそう言うと、紅茶を飲み干す。すると、その時ケインさんが、


「あ、そうだ、リチャードさん、気になることって何だったんですか?」


 と聞いてきた。


「あ、真の目的を忘れるところでした。ケインさん、ステータス見せて貰ってもいいですか?」

「ステータス? 別に構いませんけど、どうやって?」

「ああ、俺は鑑定眼を持ってますから。」

「そういうことですか。どうぞ。」


 許可を得たので、俺は鑑定。すると、結果は……


ケイン・アッド・ラッシュ

種族:人間

職業:郵便局長、薬剤師

レベル:170

スキル:弓術(Lv21)

    狙撃(Lv15)

    調合(Lv118)

    氷属性魔法(上級)

    治癒属性魔法(上級)

    重力属性魔法(上級)

    速度属性魔法(上級)

    空間属性魔法(上級)

    全属性魔法(中級)

    解呪

    解毒

    毒耐性

    恐怖耐性

技能:雷迅射(弓)

   多属性弾(魔銃)

   音速貫通(アサルトライフル)

称号:一級薬剤師(薬剤調合成功率小上昇)

   大薬剤師(薬剤調合成功率中上昇)

   超級薬剤師(薬剤調合成功率大上昇)

   懲りない男(恐怖耐性値中上昇)

   交通事故のプロフェッショナル(交通事故発生時被害率大減少)

   称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)

   誇り高き狙撃手(狙撃攻撃急所命中率大上昇)

状態:正常

体力:25000

魔力:100000

筋力:9900

耐久:8000

俊敏:9000

抵抗:12000


「れ、Lv170……?」


 俺は絶句した。どう考えても郵便局員のステータスじゃない。だが、名前は確かにケインさんだ。


「リチャードさん、どうかなさいましたか?」


 ケインさんは俺の絶句理由に気がついていないようだ。しかし、俺が説明しようとしたその時、


 ――ジリリリリリリリリ!


 と激しくベルの音が鳴った。


「何ですか、これ?」

「あー、郵便局強盗です。たまにお金盗りに来るんですよ。全く、来客中だってのに……」


 ケインさんはそう悪態をつきながらも立ち上がると、棚からアサルトライフルと弓を取り出し、続けてレッグホルスターを装着。そして、そこにアサルトライフルを入れると、矢筒を背負って玄関から外に出た。そこにはガラの悪い男が10人程。それぞれが斧や剣などで武装している。


「ヤスパース郵便局へようこそ。」


 ケインさんはその男たちに笑顔を向けると、頭を下げる。


「御用は何ですか?」


 ケインさんがそう問うと、男たちの中で一番ガタイの良い男がケインさんに剣を向け、


「用? んなもん決まってるだろ! 有り金を全部出してこの袋に入れろ。逆らった場合はどうなるか分かってるな?」


 と下卑た笑みを零した。それを聞いた瞬間、ケインさんの目が変わった。相変わらず笑ってはいるが、目が笑っていない。冷めた色になっている。


「ああ、お客様じゃないんですね。でしたらお引き取りください。迷惑ですから。」

「ああ? テメエ、聞いてなかったのか? 有り金をこの袋に入れろって……」

「貴様らのような社会のとって害しか与えない腐った連中に渡すような金などここにはない。」


 ケインさんは男の言葉を途中で遮ると、矢筒から矢を取り出して弓につがえる。そして、


「【雷迅射】!」


 と叫ぶと矢を放った。それは男に向かって真っすぐに飛んでいく。男は剣でそれを弾こうとしたが、矢が剣に当たった瞬間、


「ぐあっ!」


 と叫びをあげ、体を痙攣させて倒れ伏した。他の男たちは何が起きたか分からずに狼狽えている。


「雷迅って言ったのに避けないんだ。話を聞いてないのはそっちだろ。」


 ケインさんはそう言うと、今度はアサルトライフルを取り出し、


「これは正当防衛だから、悪く思うなよ。【音速貫通】!」


 と言って乱射。その弾は正確に男たちが武器を持っている方の腕を貫通した。男たちは武器を落とし、痛みに呻き声を上げる。


「リチャードさん、取り敢えず拘束して貰っていいですか?」


 ケインさんは男が全員戦闘不能になったのを確認すると、俺に顔を向けてこう言ってきた。


「別に構いませんけど、何で拘束します?」

「持続力が長くて、簡単にはほどけない奴をお願いします。」


 難しい注文を付けてくるな。できるけど。


「了解です。【サンダーバインド・モード・テルティウム】!」


 俺がこう唱えると、七星の宝石杖から雷が幾筋も飛び出し、男たちにそれぞれ三重になって纏わりついた。


「雷属性の拘束魔術です。持続時間は24時間で、あれに拘束されている者が触れた瞬間、その体に100万ボルトの電流が流れるようになっています。拘束されている者以外にその効果はありませんが。」

「流石ですね、リチャードさん。じゃあ、警吏に連絡します。」


 そう言うと、ケインさんは四角い水晶を取り出し、何かブツブツと呟く。すると、10秒もしないうちに警吏が郵便局内に入ってきて、男たちをあっという間に引きずり出した。そして、そのうちの1人がケインさんに近付くと、


「犯人確保、ありがとうございます!」


 と言って、金一封を差し出した。


「いえ、お礼を言われるようなことじゃありません。」


 ケインさんはそう言いながらも、それを受け取る。警吏は敬礼すると、出ていった。


「こういうこと、よくあるんですか?」

「ええ。郵便局って結構お金があるところですからね。因みに、僕のレベルとかは、ルキナスの獣狩りに付き合ってた時とか、ああいう社会のゴミを排除してるときに上がったみたいです。」

「ああ、それで。」


 俺は納得がいった。さっきの攻撃もかなり手慣れたものだったし、ああいうことが日常的に起きているならあのぐらいのLvがあってもおかしくない。


「ケインさんって、結構凄い人だったんですね。」

「いえ、僕なんか全然。ルキナスとかユリアの方が凄いですよ。僕の弓術や狙撃なんて趣味程度のものでしかありませんし。」

「趣味でスキルレベル15に到達するような人はいないと思いますけど……」


 俺はそう言うと、異次元倉庫に収納しておいたドーイバイクを引っ張り出す。


「もうお帰りですか?」

「いえ。まだウェーバーギルドにクエストの報告に行ってないので、これから行こうと思ってまして。」

「そうですか。」

「ええ。ユリアさん、もう行けますか?」


 俺がそう声をかけると、ユリアは、


「あ、はい!」


 と言って紅茶を飲み干し、立ち上がった。


「ケインさん、紅茶ありがとうございました。」

「いえいえ。」

「じゃあ、失礼します。」


 俺はそう言うと、ドーイバイクのエンジンをかけ、ウェーバーへと向かうのだった。今回は轢かれずに済んだな、と思いながら。

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