80.武器当てと伝説超越
「じゃあユリアさん、郵便局で。」
俺はそう言ってヤスパースの入り口でユリアと別れると、ヨーゼフさんのガートン鍛冶屋へと向かった。すると、中から声が聞こえてきた。ヨーゼフさんの声と、聞いたことが無い男の声だ。
「さあ、答えは出たか?」
「……よし、決めた! これはマシンガンだ!」
「違う、ハズレだ。」
「クソッ、また外したか! だが、今度は絶対当ててやるからな!」
「いつでも来い、待っているぞ。」
そう言いながら、鍛冶屋からヨーゼフさんとアサルトライフルを持った男が出てきた。ヨーゼフさんはご機嫌な顔、対してアサルトライフルの男は渋面だ。
「ヨーゼフさん、何をしているんですか?」
俺が近付いて声をかけると、ヨーゼフさんはご機嫌な笑みのまま振り返った。
「おお、リチャード殿か。いや、実はLRの武器の製造に成功したのだ。」
「LR? 凄いじゃないですか!」
「まあ、凄い事ではあるのだが……」
「歯切れが悪いですね。何かあったんですか?」
「威力がありすぎるのだ。よって、扱えるのは恐らくリチャード殿かルキナスくらいではないかと……」
「ルキナスさんは兎も角、俺のことはそんなに過大評価しないでください。で、今は何をしているんですか?」
「武器当てをしている。」
「武器当て? 何ですか、それ?」
「箱の中に手を突っ込み、武器に触ってその武器が何かを当てるというゲームだ。3つ全て当てられた者にLRの武器をやることになっている。」
ヨーゼフさんのこの言葉に、俺は驚愕した。
「なんでそんな危ないことをするんですか!」
「何も危険はない。ミリタリーに触り慣れている人間でも分からないような難しい物ばかりだからな!」
「本当ですか? 鑑定眼持ちがいたら見破られちゃうんじゃ?」
「いや、絶対に見破られん。何せ武器が入っているのは、あの黒箱なのだ。」
そう言ってヨーゼフさんは3つ並んでいる黒い箱を指さす。
「あれを鑑定すれば、見破られない理由が分かるぞ。鑑定してみろ。」
「じゃあ、遠慮なく。鑑定。」
俺はそう言って箱を鑑定。結果は……
【隠蔽の黒箱】 アイテムレアランク:SR
中に入っている物の情報を完全に隠蔽する箱。箱の持ち主が認めない限り、如何なる魔術を使っても開かない。
「成程、情報の隠蔽ができる箱ですか。確かにこれなら見破られる心配はないですね。」
「うむ。」
ヨーゼフさんはそう言って頷いてから、
「そうだ、リチャード殿も1度チャレンジしてみてはどうだ? LRの武器は魔術師用だから、丁度いいかもしれんぞ!」
と誘ってきた。
「参加料とかは?」
「1回5ゴルドだ。」
「じゃあこれで。」
俺はダンジョンから持って来ていた錫貨を出し、武器当てに挑戦することにした。
「まず1つ目。この武器は何だ?」
そう言ってヨーゼフさんは隠蔽の黒箱を持って来た。
「横に穴が空いているから、そこから手を突っ込んで触ってくれ。」
「分かりました。」
俺は言われた通り、箱の中に手を入れた。あまり大きくない、ヒヤリとした物に手が触れる。どうやら銃のようだ。マシンガンにしては少し小さいが、拳銃にしては大きすぎる。サブマシンガンっぽい感じもするのだが、何かが違う。
「答えは出たか?」
「んー……PDWですか?」
「正式名で言ってくれ。」
「パーソナル・ディフェンス・ウェポンです。」
「正解だ。よく分かったな、リチャード殿。」
「1問目にしてはハードル高くないですか? PDWなんて知らない人の方が多いですよ。」
因みに言っておくと、PDWというのはサブマシンガンから派生したカテゴリに分類される、閉所での銃撃に向いている武器のことだ。
「PDWも知らんような無知な輩に武器をやる気はない。さあ、2問目だ。」
そうヨーゼフさんは切り捨てると、2つ目の隠蔽の黒箱を持って来た。次の箱はさっきの物よりかなり大きい。手を突っ込んでみると、筒のような形状の物に手が触れた。かなり大きく、殺傷能力もかなり高そうだ。これはきっと……
「ロケットランチャーですか?」
「ご名答。RPG-7と間違えるかと思ったが、よく分かったな。」
RPG-7というのは知らないので、俺はそのコメントを受け流す。ヨーゼフさんは俺の反応に少し不満そうな顔をしながらも、3つ目の箱を持って来た。
「これを当てられれば、LRの武器はリチャード殿のものだ。さあ、この武器は?」
手を突っ込むと、アボカドのような丸い形の物に手が触れた。かなり硬い。あと、ピンのような突起もある。となったら答えは……
「手榴弾ですね。」
「正解だ! おめでとう、リチャード殿!」
そう言うと、ヨーゼフさんはカウンターの上に置いてあったクラッカーの糸を引く。パーンと小気味良い音が鳴って、紙吹雪やらリボンやらが飛び出た。地味と言えば地味だが、祝ってもらえるというのは素直に嬉しい。
「さあ、これが景品のLR武器、【フィフス・ジュエルワンド】だ!」
そう言ってヨーゼフさんが持って来たのは、5種類の宝石でできている煌びやかな杖だった。
【フィフス・ジュエルワンド】 アイテムレアランク:LR
呪属性魔術の威力を上げるアメジスト、邪属性魔術の威力を上げるオニキス、雷属性魔法の威力を上げるタイガーアイ、嵐属性魔法の威力を上げるエメラルド、氷属性魔法の威力を上げるアクアマリンの計5種類の宝石を使用して作られた宝石杖。所持者に【五属性耐性】というランダムで5つの属性に耐性を持てるスキルを与える。
「凄い武器ですね。流石LR。あ、ところでこの杖、融合させてもいいですか?」
「構わん。それはもうリチャード殿のものだからな。」
ヨーゼフさんの了承を取れたので、俺はヒールフレイムの杖とフィフス・ジュエルワンドをクロスさせ、
「【フュージョン】!」
と呪文を唱えた。すると、途端に2本の杖は融けるように形を変えて混ざり合い、融合して一本の虹色に輝く杖になった。俺は早速鑑定。
【七星の宝石杖】 アイテムレアランク:GX
呪、邪、雷、嵐、氷、炎、治癒の七属性の威力を引き上げる、激レア宝石杖。所持者にこの杖で威力が引き上げられる7つの属性への適性を与え、更に所持者が取得している耐性スキルを無効スキルへと引き上げる効果を持つ。また、所持者が【杖術】のスキルを所持している場合はそのスキルレベルを15引き上げる。
「アイテムレアランクが上がった……しかも凄い効果が……」
「これで防衛力も上がっただろうな。改めておめでとう、リチャード殿。」
そう言うと、ヨーゼフさんは俺に鉛貨5枚を渡してきた。
「これは?」
「ああ、武器当て挑戦料金の釣り銭だ。あの時錫貨1枚で支払われたからな。釣りを渡すのを忘れていた。」
「ああ、そういえば1回5ゴルドでしたっけ。」
俺は武器当ての前にヨーゼフさんがそう言っていたことを思い出しながら言った。
「では、リチャード殿。これからも【ガートン鍛冶屋】を贔屓に頼むぞ。」
「ええ、勿論そうさせて頂きます。」
俺はそう言うと、ユリアへのお土産に【ミスリルソード(優)】を買い、ヤスパース郵便局へと向かうのだった。
【ダンジョンステータス】
ダンジョン名:友好獣のダンジョン
深さ:150
階層数:15
モンスター数:401
内訳:ジャイアントモール 10体
キングモール 10体
メタルモール 29体
ジェネラルメタルモール 1体
ウルフ 55体
ソイルウルフ 15体
ファイアウルフ 13体
ウォーターウルフ 12体
メディックウルフ 1体
ポイズンウルフ 1体
イルネスウルフ 1体
ハルキネーションウルフ 1体
フライングウルフ 1体
アースウルフ 20体
フレイムウルフ 20体
アクアウルフ 20体
プレデターラビット 2体
アシュラベアー 1体
キラーバット 10体
ビッグワーム 25体
ジャイアントワーム 25体
ビッガースネイク 30体
レッドスワロー 12体
フレイムイーグル 5体
イートシャドウ 10体
ハンターシャドウ 1体
シノビシャドウ 2体
アサシンシャドウ 2体
ハイパースパイダー 5体
ナイトスコーピオン 5体
ブルースパロー 25体
ブルースワロー 10体
ウォーターホーク 1体
ウォーターホーンオウル 2体
ウォータークジャク 3体
ラングフィッシュ 10体
友好条約締結者
リック・トルディ・フェイン(農業都市アサンドル領主)
レオナルド・モンテュ・フォーカス(工業都市ヤスパース領主)
住人
リチャード・ルドルフ・イクスティンク(人間、ダンジョンマスター)
ティリウレス・ウェルタリア・フィリカルト(妖精)
ルキナス・クロムウェル・モンテリュー(人間、魔術師)
ルーア・シェル・アリネ(獣人、軽戦士)
キャトル・エレイン・フィラー(吸血鬼、従業員)
セントグリフ・クレイティブ・カール(幽霊)
【リチャードのステータス】
リチャード・ルドルフ・イクスティンク
種族:人間
職業:ダンジョンマスター、魔術師
レベル:199
スキル:鑑定眼(Lv6)
剣術(Lv7)
鎌術(Lv6)
槍術(Lv15)
杖術(Lv18→Lv33)
体術(Lv5)
狙撃(Lv4)
話術(Lv2)
幸運(Lv6)
疾走(Lv7)
壁走(Lv7)
隠蔽(Lv2)
非表示(Lv2)
罠解除(Lv4)
武器造形(Lv3)
全属性魔法(上級)
念話
降霊
影潜
無詠唱
毒耐性→毒属性無効
呪耐性→呪属性無効
聖耐性→聖属性無効
邪属性無効
地属性無効
闇属性無効
炎属性無効→火炎無効
技能:炎剣(魔法剣)
炎槍(槍)
称号:妖精の寵愛(全魔術の威力上昇)
大魔術師(適性ある魔術の威力大上昇)
スキル収集家見習い(スキル獲得率小上昇)
龍を討伐せし者(物理耐久力、回復力大上昇)
破壊神の破砕腕(物理攻撃力大上昇)
称号収集家見習い(称号獲得率小上昇)
氷炎の支配者(氷、炎属性の攻撃力大上昇)
霊の天敵(霊族モンスターへの攻撃力小上昇)
瘴気喰らう者(瘴気系の悪影響中減少)
気高き守護者(防御魔術の威力小上昇)
称号収集家助手(称号獲得率中上昇)
ウェポンメイカー(武器造形成功率中上昇)
影の支配者(闇属性魔術の威力中上昇)
嵐神の加護(風、嵐属性の威力大上昇)
強奪者の素質(倒した相手のスキル、称号奪取率小上昇)
邪を祓いし者(浄化属性魔術の威力中上昇)
神獣との契約者(戦闘勝率大上昇)
スキル収集家助手(スキル獲得率中上昇)
栄誉の強奪者(倒した相手のスキル、称号奪取率中上昇)
トラップブレイカー(罠解除成功率中上昇)
称号収集家(称号レア変化率小上昇)
魅惑の微笑み(異性の魅了率小上昇)
主の上に立つ者(配下の命令遵守率中上昇)
ダンジョンを攻略せし者(ダンジョン攻略成功率小上昇)
所持武器:アイアンナイフ(N、鉄製のナイフ)
ウィンドナックル(R、風属性物理攻撃可能)
ソウル・ウォーサイズ(SSR、死霊系に特効)
ドラゴンスレイヤー(SSR、全属性対応)
神秘の破砕銃(UR、神秘の聖銃の上級武器)
烈火の神槍(LR、黒迅の魔槍の炎属性特化上級武器)
七星の宝石杖(GX、七属性の威力大上昇)
著者コメント
サラッと『買い』と書いてあるミスリルソード(優)ですが、あれの価格は800万ゴルドです。なお、リチャードのスキル【炎属性無効】が【火炎無効】になっているのは炎耐性が【炎属性無効】にランクアップしたことにより統合された結果です。




