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ダンジョンマスター with 妖精 ~ひたすら型破り~  作者: 紅蓮グレン
第5章:マスターと依頼

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79.カミングアウト

「あ、あの、リチャードさん。」


 ドーイバイクで街に向かう帰路の途中、後部座席に座るユリアが俺にこう声をかけた。


「何ですか?」

「あの、ダンジョン攻略に成功したら、帰りがけに【龍を討伐せし者】を入手したときの詳しい状況を教えてくださるって言ってましたよね?」

「ああ、そう言えばそんな感じのこと言いましたね。あんまり面白い話じゃないですけど、聞きたいですか?」


 こう聞くと、ユリアは食い気味に、


「是非聞かせてください!」


 と言ってきた。


「ついこの間、俺の居住区の近くにミニスタードラゴンとレッドワイヴァーンが来たんです。燃やされたりしたらたまらないので戦って叩き落したら、【龍を討伐せし者】って称号が。」

「え? じゃあつまり、リチャードさんは2体のドラゴンに単身で勝利なさったんですか?」

「まあ、そうですね。俺が本気で暴れても死なない相手なんてそうそういないので、丁度いいストレス発散になりました。」


 俺がこう言うと、ユリアは目をキラキラさせ始めた。


「どうかしましたか?」

「いえ、リチャードさんは凄いなあって思いまして。あの、他にもスキルや称号を教えて頂けませんか?」

「別に構いませんけど、多すぎるんで言うのは面倒臭いんですよね。」

「じゃあ、教えてくれないんですか?」

「教えないとは言ってませんよ。こういうのは見てもらった方が早いですから、見てください。」


 俺はそう言うと、ドーイバイクを止めてユリアの方を向く。そして、ユリアの肩に手を置くと、


「【ジョイントリー・スキル】!」


 とスキル共有の呪文を唱えた。


「これでユリアさんは今から10分間、俺のスキルを使えるようになりました。これで鑑定すれば分かります。」

「どうすれば鑑定できるんですか?」

「鑑定って言えばいいんです。対象を目視しながら。」

「わ、分かりました。鑑定!」


 そうユリアが唱える。すると、俺の身体から文字が浮かび上がった。共有中なので、俺にも見えるのだ。俺の持っているスキルや称号にはユリアが知らないものが多いらしく、珍しそうにあれこれ聞いてくる。俺はそれを1つ1つ丁寧に説明。いくつも説明して俺が疲れてきたその時、ユリアは???に目を留めた。


「リチャードさん、この???は何ですか?」

「ああ、それは非表示スキルで隠してるんです。ちょっと他人に見られると厄介になりそうなやつなんで。」

「何なんですか?」

「スキルは全属性魔法(上級)、称号は龍を討伐せし者、ステータス値は魔力値です。」

「何で魔力値も隠してるんですか?」

「桁違いだからです。見られたら危険人物扱いされますし。」


 俺はそう言うと、職業欄以外の非表示を解除する。すると、ユリアは目をまん丸に見開いた。


「ええ? り、リチャードさん、魔力がこんなに?」


 そう言ってユリアが指さす魔力値は1億を超えている。


「ああ、ムラマサ撃破と攻略時の大量レベルアップで1億の大台に乗りました。こんなにいらないんですけどね……」

「やっぱりリチャードさんは凄いです……」


 そう言ってうっとりした顔をするユリア。


「ありがとうございます。じゃあ、もうこれでいいですか?」


 俺がこう聞くと、ユリアは俺のステータスにもう1度目を通し、


「あと1つだけいいですか?」


 と言ってきた。


「どうぞ。」


 俺が許可すると、ユリアは少し安心したような顔をして、


「何でリチャードさんは、職業欄の非表示を外さないんですか?」


 と聞いた。やっぱりそこに来たか。


「その理由を知りたいんですか? それとも非表示で隠されている俺の職業を知りたいんですか? はたまた、どっちでもないんですか?」

「リチャードさんの職業が知りたいです。」

「本当に、俺の職業が知りたいんですか?」

「はい。」

「知ってしまったら、もう戻れませんよ。それでも尚、俺の最大の秘密を欲しますか?」

「はい。」

「興味本位ではないですよね?」

「勿論です。」

「じゃあ、最後にもう1度確認しますよ。俺の隠された職を知った時点で、ユリアさんは普通には二度と戻れません。もしかしたら、俺との関係性まで危うくなるかもしれない。加えて、もし誰かに話したりした場合は、いくらユリアさんでも俺は容赦しません。俺の情報を漏らした場合、俺はユリアさんと敵として認識し、灰すら残さず消し飛ばします。それだけ重要な秘密です。そうなっても後悔しないだけの覚悟がある、とそう認識していいんですね?」

「はい。」

「分かりました。そこまで本気なら、俺も本気で答えます。俺の全てを見ていいですよ。」


 俺はそう言うと、職業欄のダンジョンマスターにかけてあった非表示を外した。


「え? だ、ダンジョンマスター?」

「ええ。俺はフェリアイルステップに存在するランクCダンジョン、【友好獣のダンジョン】のダンジョンマスターです。」

「私が調査に行ったあそこの? じゃあなんで私をプレデターラビットから助けてくれたんですか?」

「人を助けるのに理由がいりますか? ユリアさんは俺の敵じゃない、あの時本能的にそう思ったんです。この人なら、俺のありのままの姿を、『1人の人間の俺』として受け入れてくれるんじゃないか、と。」

「なぜそう思えたんですか?」

「あなたが純粋だったからかもしれませんし、あなたが騙されやすいからかもしれません。また、全く別の理由があるのかもしれません。ですが、確実に言えること、それは、俺は仲間を絶対的に信じる、ということです。俺は元々平和主義ですから。ダンジョンマスターやってはいますけど、奪い奪われる生活なんて嫌じゃないですか。俺は、俺と俺の仲間を傷つける奴ら以外には友好的なんです。」

「リチャードさんがダンジョンマスターだって知っている人は、他にいないんですか?」

「ケインさんは知ってますよ。」

「えっ、ケインが?」


 ユリアは驚いた声をあげた。


「ええ。俺のことを知ってるのはケインさん、ヨーゼフさん、ヤスパース領主のレオナルドさん、アサンドル領主のリックさん、後はキャトルとうちのダンジョンの同居人2人と1体、そしてティリです。」

「そんなにたくさんの人が……」

「俺は地上を侵略しようだの、ダンジョンの領地を広げようだの、そんなことを考えてはいません。ダンジョンの防衛はしますけど、人を無闇に殺したりはしませんし。」


 俺はそう言って薄く微笑む。


「リチャードさんは平和主義者なんですよね?」

「ええ。」

「なら受け入れられます。私はいくら強くて優しくても、殺戮を好んだりする人と仲良くはできません。でも、平和主義のリチャードさんとなら、これからも一緒に頑張れると思うんです。」

「良かった。ユリアさんは俺を受け入れてくれるんですね。」

「はい。」

「じゃあ、いつでも遊びに来てください。モンスターたちには襲わないように言っておきますから。」

「ありがとうございます。」


 ユリアはそう言うと、


「これからもよろしくお願いします。」


 と、右手を差し出した。


「こちらこそ。」


 俺たちは、ドーイバイクの上で握手を交わす。


「じゃあ、またウェーバーに向かいます。」

「あ、ちょっと待ってください。」

「何ですか?」

「ヴェトルマスターに報告する前にケインに会いたいので、先にヤスパースに言って頂いてもいいですか?」

「構いませんよ。俺も丁度ヨーゼフさんとケインさんに会いたいと思っていたんで。」


 俺はそう言うと、ドーイバイクのエンジンをかけ、ヤスパースに向けてまた砂漠の上を走り出すのだった。

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