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42話・全て打ち明けた夜

 裁判のあと、わたしはアイギスに全てを打ち明けた。アイギスはわたしがお世話になった事と裁判で代理騎士を務めてくれたことに対するお礼がしたいと言って、スワンヘルデ城にハインツとハンスを招いてくれた。ヘリオスは裁判の結果もあり、立場がないのか速攻敏腕宰相を連れて帰国して行った。

 宰相も裁判がこんな形で終結したのでプロポーズの件は諦めたらしい。ヘリオスに引きずられる様にして帰国してくれてわたしは清々した。彼も子猫に変身するわたしを大切にしてくれたが、傾城ちゃん生活はちょっときつかったしね。パパちゅっちゅ生活から解放されて良かった。

 晩餐の席には上座からアイギスとリアン司教、そしてわたし、向かい側の席には、ハインツとハンスが席についていた。今夜のメニューは、この地方では当たり前のように食されている雑穀入りの薄切りパンに、クラムチャウダーのようにハマグリのような貝の入ったクリームのスープ。そして馬鹿デカイ海老を茹でたものにガーリックソースのかかったもの。付け合わせのサラダ。品数は少ないが

馬鹿デカイ海老が結構な量があるので、一匹でわたしなんかはお腹が膨れてしまう。

「ハンスどの。ハインツどの。この度は僕の裁判の件だけではなく、姉上のことまでお世話になりありがとうございました。どうぞお好きなだけこの城に滞在して行って下さいね」

「我々はたまたまこちらのマリカ嬢と知り合いまして、マリカ嬢のなにかお助けになればと思ったまでのこと。そう畏まらないで下さい。アイギス公子さまの無実が証明されて良かったです。ねえ。ハインツ」

「ああ。プーリア教皇さまが大層御心配されていたから、お喜びになるだろう。なあ司教?」

 んんん? この三人って知り合いだったの? なんだか三人の関係が読めないんだけど。アイギスを伺えば彼も不思議そうな顔をしていた。 

「それにしてもハインツが神騎士だなんて知らなかったわ。どうして隠してたの?」

「別にマリカには聞かれなかったからな」

 馬鹿デカイ海老にナイフを入れながら、ハインツが言った。

 まあ。確かにそうだよね。だけどまさか女性嫌いでぎゃあぎゃあ騒いでいた男が、神騎士と呼ばれる様なスーパーな男だとは思わないじゃない?

「そういえばハンス。あの薬って一時逃れのものなの? わたしはまた明日の朝には猫の姿に戻っちゃうのかしら?」

「それは…」

 なぜかハンスが司教を伺う。リアン司教がハンスに変わって応えた。

「その薬はあなたにかけられた魔法を打ち消すものです。もう猫の姿になることはないでしょう」

「本当ですか? 良かったぁ」

 喜ぶわたしの目の前でハインツがうな垂れていた。

「‥ということは、俺はもうヒメには会えないんだな…」

「あら。わたしには会えるじゃない」

 落胆するハインツを慰めるように言えばはあ。と、さらに深いため息をつかれ落ち込まれた。そんなにヒメに惚れてたのか…

 でもごめん。もう猫になる気もないから。他をあたってね。ハンスを見れば苦笑された。

「あの薬は司教さまのものだったのですね?」

 わたしは自分の姿が元に戻ったのはハンスがあの時、わたしに飲ませてくれた水のおかげだと思っていた。それでハンスに効果のほどを聞いたわけだけど、彼がリオン司教に何か言いたそうにしていたのを見て司教が関与していたのだと分かった。

「はい。ハンス魔導師から話を伺ってわたしのもっている薬で対応できるかと思いまして」

「ありがとうございました。おかげさまで元の姿に戻ることが出来ました」

「神さまの思し召しですよ。わたしはただそれにお手伝いをさせて頂いたまでです」

 わたしがお礼を言えば無事に元に戻られて良かったです。と、奥ゆかしい表情で司教はほほ笑まれた。それは小春日和のように心のなかが満たされてゆくような温かな笑みだった。

「これで俺たちもお役御免かな」

「そうですね。ハインツ。そろそろヴァルツベルグ皇国に向かいましょうか?」

 わたしと司教を見ていたハインツが淋しそうに言う。彼らはわたしの為にこの国に滞在してくれていた様なものだ。わたしは申しわけなく思った。

「ごめんなさい。ふたりはわたしの為に足止めさせていたようなものよね?」

「いや。そんなことはない。この旅は道楽みたいなものだからな。きみと会えて楽しかった。改めてきみに会いに来るよ」

「わたしもふたりに会えて楽しかったわ。今までありがとう。ふたりが傍にいてくれたから、卑屈にならないでいられたわ。ふたりはわたしの命の恩人よ」

 わたしはふたりに感謝した。ふたりはわたしがどうして猫の姿になったのか、その理由にはふれないでいてくれた。わたしは本当なら死んでいたかも知れないのだ。

「姉さま。おふたりが命の恩人ということは、まさかあの晩…」

 アイギスがわたしが失踪した当初の夜に思い当たったようだ。


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