18話・十年ぶりの対面
「ようこそお越しいただきました。ブラバルト大公…」
「これは叔父上、お久しぶりです。なかなか我の招きに応じてもらえず寂しく思っていたところにこちらのミランダ伯の舞踏会に叔父上が参加されると聞いたのでわざわざかけつけた次第ですよ」
恐縮するミランダ伯爵の言葉にかぶせる様にして意気揚々とヘリオス王が身を乗りだしてきた。おそらくミランダ伯爵は自国の王ヘリオスに舞踏会のことを聞きつけられて、拒むことが出来なかったのだろうと思われる。委縮したようにその場に縫い付けられていた。彼の心情を思うと同情しか湧かなかった。
「きみも忙しいだろうに、それはわざわざ済まなかったね」
臙脂色の服にごてごてとした金飾りをつけた趣味の悪い服に身を包んだヘリオスは養父の嫌味には動じてないようでわたしに目を向けた。わたしは扇子を開いて顔を隠す。彼に十年前に召喚した娘だとばれやしないかと内心ドキドキだった。
「叔父上もお人が悪い。待ちかねました。さあ。今宵こそは叔父上自慢のそちらのマリカ嬢をご紹介頂けますよね?」
舞踏会に招かれた貴族たちがわたしたちの様子を伺っていた。ひそひそと囁く声が聞こえてくる。
「国王陛下自ら舞踏会に出向いて来られるなんて。よっぽどブラバルト公女さまにご執心のようですな」
「あら。公女さまは養女とはいえ、国王さまとは従兄妹の間柄でしょう? 今までお会いする機会はなかったのかしら?」
「公女さまはなんでも人見知りが強くて城の奥で過ごされていたようで、大公さまと公子さまにしかお顔を見せないらしい」
「やはり噂通りなのですね。奥ゆかしい御方だ」
また噂が独り歩きしてる。わたしはうな垂れたくなったがとりあえずは目の前の危険な男を回避せねば。と、思う。
「今宵はゆっくり従兄妹同士で今まで会えなかった分、語りあおうではないか? マリカ嬢?」
ヘリオスは十年前とは違う猫なで声で誘って来る。わたしは扇子の内側で呆れていた。彼は覚えてないのだ。十年前、自分が召喚して捨てた子供を。その子供に関心を持つなんて彼はどうしてしまったのだろう。気が狂ってるとしか思えない。
わたしは養父に嫌々と首を振った。
「娘はこの通り極度の人見知りでしてわたしが同伴でないと嫌がるのです。陛下の前では緊張して一言も話せないと思いますよ」
「そんな。従兄妹同士なのに。そう警戒しなくてもいいじゃないですか。マリカ嬢」
わたしは口を引き結んだ。頑なな態度にヘリオスも関心が薄れたらしい。そこへちょうどよくミランダ伯爵がおずおずと口を挟んで来た。




