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12話・わたしは用済みですか?

「あの。ここはどこ?」

 ふたりにわたしの声が聞こえてなかったのかと思い、もう一度訊ねてみると、王子さまが部外者のお前は黙ってろと言わんばかりに睨みつけて来る。その瞳は氷のように冷たくわたしは竦み上がった。その瞬間、この王子さまには逆らわない方がいいと悟り手にしたぬいぐるみにすがり付く。

「はあ。どうも失敗したようですね。ヘリオス王子」

 ナイルと呼ばれたお兄さんは、ひょうひょうとした口調で王子様に応対していた。ぬいぐるみの影から伺ってるわたしに気がつくと、可笑しそうにほほ笑む。こっちのお兄さんはそう悪い人ではないみたい。だと、わたしは思っていた。

「はあ? 失敗しただと? ずいぶんと暢気だな。我が仕事を中断してまでお前に付き合ったのはこんな珍獣を呼ぶ為じゃないぞ。まさかお前これが運命の女だと言わないよな? こんな幼女に用はない。即刻返してこい!」

 王子さまはイケメンなのに口は相当悪そうだ。

なんて残念な王子さまだろう。しかも他人を指さすなんて。ひどい。

 そんなんじゃお里がしれますよ。って、ママのおばあちゃんは口がすっぱくなるくらいに他人を指さしていけないと注意してた。

 王子さまは人を指さしちゃいけませんって教わってないのかな? 

 わたしが心の中で毒付いてると、険しい現実に引き戻された。

「それは無理ですよ。ヘリオス王子。一度こちらの世界に召喚したからには、すぐには戻せません」

「我はいらないぞ。こんな未発達な幼児。夜伽の相手にすらならないだろうが。お前が責任もって連れて行けよ。お前の子供にしたらどうだ?」

「それは困ります。僕には一応、聖職者ですし…」

 ヘリオス王子はわたしをナイルに押し付けようとしていた。なんだかそれは捨て猫の押し付け合いのようで見ていて不快だった。

「役立たずな奴だな。例のプーリア教皇国では美しい聖巫女を召喚して教皇の側に侍らせているというではないか。実に羨ましい。この国の貴族の娘は食い飽きたからな。そろそろ別の次元の女を手に入れたい。と、思ってお前に頼んだというのに。我が望んでる運命の女は綺麗で胸とお尻が大きく腰がくびれたボンッ、キュっ、ボンの三拍子揃った美少女だ。こんな貧相な娘ではない」

「あんた。最低ですね」

 確かに最低だ。と、わたしはナイルに内心同意したくなった。彼の言ってる意味はさっぱり分からなかったけどわたしを馬鹿にしてるのは明らかなようだ。

「いいから次を呼べ。次。つぎっ」


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