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進化の系譜  作者: 数貴
一章 はじめて神様に願う時
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やっぱり黒か

 ゆっくりと先が見えない暗闇をロープを頼りにゆっくりと降下していく。エーテルを込めながら魔法のロープを伸ばしながら進んでいる。


「何も見えないな」


 ようやく足が着いたがすでに上を見上げても日の光がほぼ入ってこないので上にいる三人を呼ぶ前に光作り出す事にした。セインに渡したのと同様の白い魔法瓶を取り出してコルクを開き自分の手の平にうっすらと光る液体を数滴たらした。手の平には原祖魔法に必要な構築式をその液体で書いていく。円を作りその円を割るようにして雷のようなギザギザ四本線が円をはみ出すまで描がいた。

 

「ウィル頼む」


 手の平には静電気の様な光がパチパチと瞬き構築式を中心に帯電しているように見える。

 そこから更に電気を帯びた球体が手の平から這い出るように四つ生まれ宙へと浮かんだ。五、六メートルほどの周囲に球体の精霊から光が発生した。

 それに続けて手早くギフトを発動させる。


『私は貴方であり貴方は私ではない―――』


 サイズは私の顔よりも小さいひし形の黒い結晶が生まれた。都市ではないのでギフトの能力も低下するが無いよりかはましではある。少なくとも結晶の色によって何の属性の影響が大きいかが判明するのだ。


「やっぱり黒か」


 いつまでも上の三人を待たせるわけにもいかないのでロープを何度か引っ張り合図を送るとすぐにこちらへと降りてきた。セインが最後に降りてきて黒い結晶が目に付いたのか私に尋ねた。

 

「その黒いのは何?」

「あぁギフトだ」

「こんな簡単に見せて良いのか?」

「簡単も何も二つ名のせいでちょっと調べたら自分のギフトなんてすぐわかるからね」

「名前が売れてるのも考え物ですねえ」


 とは言え今回ギフトは見るぐらいしかできないまでに能力が低下しているのであまり役には立たない。


「見えてもこう暗いとな・・」


 周囲を見渡してみるが暗闇で先が見えない壁もどこにあるかはまだ把握が出来ない、地面も特にはどこにでもあるような石造りをしていた。確かに地上にはどこにでもあるが地下にまるで道のように整備されているのは多少おかしかった。遺跡の通行路なのかな?


「とりあえず先に進もう目印踏まないようになアルロンは闇精霊と対話を試しながら進んでくれ」


 ぼんやりと光る魔法瓶の白い液体を少しずつ垂らしながら進んで行く。


「私は?」


 フェルミナが特にする事はない、名前が売れていると言われて思い出したこいつの事は知っている。人選に文句をつけたいところだがぞんざいに扱っても私はともかくほかの二人が困る可能性がある。


「目視で警戒してくれ」

「他には?」

「前と後ろを定期的に見て他の三人が無事か定期的に知らせてくれ」


 正直余計なことをしないでくれればそれでいい。しばらくそのまま歩き進んでいくと道が暗闇で途切れていた。適当な石を拾いその暗闇に向けて軽く落とすように投げた。

一秒、二秒、三秒、…そして六秒目でコツンとごくわずかに小さく音が響いた。


「想像以上に暗いですねこれは」

「あぁそれに思ったより深い。光を照らしても一切底が見えないのがな」


 セインが体を乗り出して光っている小盾を途切れた穴へと向けていた。


「このまま途切れた道を沿って行こう」


 そのまま更に奥へ奥へと進んで行く先が見えない不安もあるがそれ以外まったく敵も罠も何もないと言うのが気がかりでもある。するとしばらく幾つかの分岐を通りながらついに壁まで突きい当たった。歩いてきた道の左右ともいつの間にか崖になっていて正面の壁にはびっしりと文字が刻んであるが我々が日常に使っている文字ではなくアルロンとセインは何が書いてあるのかさっぱりだと首を傾けていた。


「あれこれエニキア神聖文字?これが扉なの?」


 フェルミナが目の前の壁のような扉に触りながら久しぶりに喋ったが今回の問題は文字についてである。文字は教会の聖典に記されている文字のことで教会の教えを学んだものはある程度は理解することができるはずだ。


「読めるの?」


 アルロンが訊ねたが何か考えたように答えた。


「いえスラングが多くて私にはちょっとイルミスさんなら正確に読めるんじゃないですか?」


 フェルミナに試されている気しかしない。そこまで私を怪しんでいるなら選任された時に拒否をしてもらいたかった。まあ答えますけど。

 三人ともこちらを向いているが思惑はそれぞれ別なのは顔を見ればわかりやすかった。


「重要そうなのだけ言ってくぞ…超越者の肉体の墓所…扉の封印は理に帰属する…訪れるのは恒久の勝利者、久遠の不死者、進化の守護者、法律の創造者、魂の簒奪者、奇跡の人間、神の調律者あとは風化してるのかよく読めないな修復士呼んでからだな」

「よく神聖文字なんてご存知ですね」


 フェルミナからしたら更に怪しさが増したようだったがその言葉を遮るようにセインが訊ねた。


「そうでどうやったら入れるのですか」


 場所が墓所とわかったのでこの規模の墓ならばすぐ傍に宝物が捧げられている可能性が高いからだ。


「普通に開ける条件がたぶん封印した奴に解いて貰うか、条件にある人物がいれば開くとは思うけどたぶんそれは無理だね」

「開けれないと?」

「いや普通にあけるのが無理なだけで壊して開けるか封印を魔法で強制排除させるか別の道を探すかいくらか方法がある」

「なるほど…それでどうしますか?」


 判断を仰いではいるが今すぐ動きたいような意志ひしひしと感じる。


「他の道を探そう、まだ初日だこれの壁を壊すにしろ周囲の強度の問題もあるし封印の度合いもまだわからない、強制的に解くと呪いを受けたりする可能性も高いしここは一先ずは他のところをしらみつぶしに探索してからにしよう」


 少し不満があるようだったが前もって調査だと言っておいたおかげか反抗されること無く納得をしてくれた。


「まあ恐らくここが遺跡の入り口のだろうからここに戻ってくるだろう。今日のところ別ルート探索と地質採取をいくらかやってから戻ろう、封印を解くのに準備も欲しいし神聖文字で書かれてた内容も詳しく調べたい」

「そうですね確かに準備は必要ですね」


 封印を解いてしまってからもしかしたら魔物が大量にうごめいているかもしれない、穴を開けた所から街まではさほど離れてなく危険が自分達だけではなかったらと考えると雇い主に一報が必要にはなる。単に魔物だけならば問題は余りないが封印されるほどの強力な敵が入っている可能性も出たからだ。


「私は残りますので他の人は別のところ調べてください」


 フェルミナが早く封印を解いて宝物を一番に拝みたいのか独断行動を申し出てきた。


「駄目だ」

「そっちはどうせ道を歩くだけじゃないですか」


 嫌な予感はしてはいたがここでの口論は無意味すぎる。せっかくのパーティーを組んでいる意味がなくなってしまう。


「わかったじゃあなぜこの扉から離れないか意見を言ってくれフェルミナ」


 子供をあやすような言葉遣いにムッとしたのかフェルミナの口調が早くなっていた。


「餓鬼扱いしないでよ。じゃあ言うけど敵がいないし罠もたいしたのがないただの暗いハイキングに来たわけじゃないの二つ名か知らないけど強くもない奴からあれこれ言われたくない」

「予めいったと思うけど今回は調査だ。別に向上心は認めてやっても良いけど英雄譚が好きなら騎士にでもなってくれ」

「うるさいなぁ、調査はあんたの仕事でしょう私には関係ない」

「イルミスさん本当に申し訳ない」

「セインさんが謝る必要はないどうせ人選は違う人が選んだりしたのでしょう」

「えぇその通りですが…」

「こうなっては仕方ないです一度戻ってフェルミナを抜かして今後は三人で行きましょう」

「うざったいなあ別にあんたはあんたで勝手に調べてればいいじゃない、こっちはこっちで勝手にやるから」


 余りに反抗的な態度にアルロンも口を開いていた。


「フェルミナいい加減にしろ」

「黙ってアルロンは関係ないでしょう。こいつは私に見るだけで何もするなって馬鹿にしてるでしょう」

「フェルミナそれは自分のことをしゃべらないからじゃ」

「こんな胡散臭い奴に自分の情報流すほうが馬鹿なのよ」


 パーティーとしての信頼関係が破綻した以上早々に帰ろうと考えた。


「もういい四人とも私に掴まれ転移で上まで戻る」

「何勝手に決めてるの!」


 私に子供をあやすのは無理みたいだ。


「君にはまだ人と組むのが早かったそれだけだ…フェルミナ・サイリス嬢」


 サイリスとはこの街の有権者であり、私にとってはこの街の完成した地図を受け渡す重要な相手でもあるのだが。


「何だ知ってるのなら話早いじゃないじゃああんたは黙ってさっさと進むわよ」


 どう言えば良いのかさっぱりだもう知らない。


「フェルミナ・サイリス・フォン=リスタ公爵家の三女、少し賭けをしようか」

「賭け?」

「ここをハイキングと言ったなら君はここから一人で帰れ目印も置いて来たし迷わず帰れるだろう何事もなく帰ってきたなら私は貴方の命令に絶対服従しよう」

「なにそれ?面白い事言うけど賭けにならないわよ」


 フェルミナは微笑を浮かべてこちらを見下しているような目を向ける、さすがにここまで馬鹿にされたとなったら各国の二つ名持ちに対しても失礼だ。


「口だけなら誰でも言える、まずは実行しろ怖いならやめても良いがな」

「良いわよやるわよ」

「先に言うけど這いずり回って出ることになる、それでも良いな?」

「馬鹿にしすぎでしょう?跪く準備でもして待ってなさい」


 セインとアルロンにこちらに私の手を取るように促す。


「そうかまっすぐ帰れれば二刻かからないぐらいだ。じゃあな」


 言葉を告げ終えた瞬間に三人はその場から消えた。消えたのは三人だけではなくイルミスが召喚していた光の精霊も同時に消えて暗闇になって残されたのはフェルミナと目印として分岐点ごとに液体を点けて来たわずかな蛍の光ほどの光量であった。



 転移により魔法のロープを固定した木まで戻ってきた。ただアルロンはどうしたものかと悩んだ顔をしている。


「イルミスさん良いんですか相手は公爵家の娘ですよ?」

「危険になったら転移であちらまで飛ぶから安心しろ、こういうのが一番早いからな別に死にはしないさただ…」

「ただ?」


 口の端を吊り上げて悪い顔で開いた。少し痛い目を見てもらわないとこちらの割に合わないからな。


「今頃驚いているかもな」


 アルロンがさらに頭を抱えた。セインを見ると少し笑っていた彼から見てもフェルミなの行動はおかしな物だったのだろう。


「ひどい事してる気になってきました」


「そしていっちゃ何だが公爵家ごときが私に逆らえると思うなよ」


 発言後にはしばらくの間があり同時に私とセインが大きく笑った。


「ははははっ」

「あれ笑って大丈夫なのこれ?」


 セインは若い魔族アルロンにしみじみ教えるように言葉を発した。


「アルロン今後の教訓として言うが二つ名持ちに逆らっては駄目だぞ」


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