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進化の系譜  作者: 数貴
一章 はじめて神様に願う時
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無視!?

 目の前を覆っていた壁はジグソーパズルを崩すように多角形の形をした綺麗な岩に切り取られポロポロと壁が崩れ落ちていく。

 全ての壁が崩れて半数が壁は崖に落ちていた。

 壁の奥に見えるのは草木や花。ただし花びらが黒く茎は緑ではなく乳白色の透明感のあるガラスのような色合いがはかなくも見えた。扉の奥は暗闇ではなく花の色が映える青い世界であった。

「開いたし帰ろうか」

「えぇ?!」


 私の言葉に反応したのはセインだったが他の二人もどうかしたのか?と言う表情を見せていた確かに冒険の入り口に到着してからこれから問う言う流れではあるのだが。


「神域の探索はなぁ…他国の私が首を突っ込む物ではない気はする」


 三人とは違い私は生まれも育ちも此方ではなく依頼のみの関係でもある。それだからこその問題も発生する可能性がある、深くは考えてはいないのかも知れないが徹底的に不安要素は排除するに限る。


「本音は?」


 そんな本音とか言われたら特別上手い言動では返せはしないがついで出てきてしまいそうな思考が停止したように答えてしまった。


「時間がかかるし疲れる」

「そんな正直に言わないでください」


 探索依頼で定めた期間が二週間でだったが明日には丁度二週間となる。自ら定めた物ではあるが予定通りに進めるのが癖にもなってしまった私には予定外行動などの雰囲気に合わせた行動が苦手である。


「個人的な目的は達成してるしな。それに神域は探求は未知な部分が多すぎてっと言うのもあるからね」


 私自身の目的は壁の強度、陥没の危険性。遺跡自体の耐久力は神器である以上壊れる事がほとんど無くそれで支えているのでめったなことでは崩れる事もない。

 それに神域の探索については歴史上には特異点を除いて少人数での攻略は不向きである。千や万の冒険者、探求者、研究者を集めて屍を築くほどに道ができると断言するほど認知はされてはいます。

 例え死ぬ可能性が高くとも挑戦や夢などの欲望は自制は難しく、高級な宝があるロマンを求める者たちはこの世界には多くいる。


「確かに良いことばかりではないかもしれませんけど勿体無いよ」


 セインは口惜しいように更に言葉を挟む。これまで順調とは言いがたいがこの遺跡に関しての探究に慣れ過ぎているせいか口調も怖い物知らずのような大雑把になっていた。

 

「少なくともここまでやれば君達の成果としてこの遺跡を押さえれるからな。実際問題としては神器をこれ以上関わりたくない」

「意味深な言い方しますね」


 意味深な言い方ではなく関わりたくない言い方だ。


「神器はほとんど呪いだ。貴重さゆえに狙われて、強力なゆえに使われて、そして所有する者は囚われる」


 神器は能力とともに世界に知られている。ただし所有者は一部を除いて入れ替わりが激しくまた個人で所有となれば奪い合う事が常である。


「なるほど。まあここまで来れば後は何でもどうにでもなるかもしれませんし、未知の宝物だから興奮もしてましたけど冷静に考えてたら命は一つですからねもう少し慎重に考える事も大事かもしれません」


 納得したようにアルロンが崩れた壁の岩で手遊びしながら意見した。


「んー…ではこのままサイリス公爵へ報告しましょうか?」


 セインは諦めたように次の考えにシフトしていた。


「自分は構いませんよ。そう言った噂は聞いてはいましたから一時的にでも所有した人から話を聞いたら躊躇ちゅうちょしますよ」

「フェルミナはどうだ?」

「大丈夫です」


 最近はずっと従順に従っているが正直気味が悪いぐらいだ。良い意味で物事に対して姿勢が変わり熱心になった。


「そっか助かるよ。とは言っても君らはこの街の人間だろうから今後探索には借り出されるだろうがな」

「褒賞貰ってしばらくはのんびり過ごしますよもう」


 肉体的にはさほど疲れない遺跡日数を重ねるごとに暗闇の中で動くことに精神的に疲れが見えていたアルロンが方の力が抜けているように両手を下げて猿のようにぶらぶらとだらけながら話に加わった。


「どれ位もらえるのでしょうね?気にはなってはいたんですけど明確な目安がないのでわからないんですよね」


 神域自体の発見数が少ないせいもあるがそれに見合う額と言うのが一般には想像できない人が多く、また冒険者は即物的な物か金銭のいずれかを報酬としてもらう事が常だが、実際にお宝と言えるのを発見した者たちのそれを対価とした報酬は莫大であるとでしか褒賞規定においても記載されてはいない。


「普通の人が半生過ごせるぐらいか節約すれば一生賄えるぐらいはもらえるとは思うよ」


 とは言え例が無くはない。その答えを知っている私は簡単に答えた。


「へぇ…多すぎません?!」

「最低一人当たりそれぐらいだとは思うぞ。うちの国では発見者に金貨五百枚ずつは配ってたし」

「いやいやいや。そんな金貨どこから出てくるんですか?」


 頭を左右に振りながら否定的な意見を出してきた。もっともな意見だけどもお金を集めれるからこその貴族や国王である。集め方は人間性にもよるけどね。


「んー国の象徴みたいな物にできるからな。神器あれば大抵の敵国も寄って来ない。安寧を金に買えるとなるともっとあっても良いぐらいだぞ?」


 神器の性質にも差はではするが理解ができない物は何者にも恐怖になる。


「それにこの街を中心に周辺領土で王を作ると言う話が出てるわけだろ。神器があれば他国も認めるざる得ないし。今一番欲しいだろうな貴族達は」

「こんなコソコソやらせてたのはそのせいですか」


 確かにコソコソはしてはいるがそれが貴族というものだと納得してもらいたい、逆に普通の平民は隠れながら商売をしている人はあまり見ないはずだ。


「いや実際サイリス公爵もペンター侯爵もそこまでは考えてなかっただろうが突いた先は大当たりだっただけだ、彼らにそこまでの能力も名声はないからな。ここの利権は更に上で自分を支援しているやつに交渉物として扱うんとは思うぞ。つまりはだ、この街の催事も関わりたくはないだから帰ろう。なっ?」

「はい」


 クスッと笑みを浮かべて返事をしたフェルミナだった。彼女がどう言う人物かをすっかり忘れていた。なぜだろうあまり良い事は言ってなかったはずだがそれとも彼女自身が父親に苦労しているのかなどと思考した。 


「これからどうするんですか?」


 もう終わったつもりでいるセインは剣からも手を離して荷物をまとめていた。


「地図を完成させるよ。もう二、三日後には終わるさ」


 次のことをやるにしてもまずは地図作成を終わらせたい。


「もうすぐですね。終わったら教えてくださいよ、盛大に一緒に飲みましょう」

「いいですね」


 次に盛大に飲むのがこの街では最後かもしれないな。



※※※


「お帰りなさい」


 彼らと別れて宿屋まで帰宅した私が目にしたのは一階のテーブルカウンターでシャインでそれより一回りからだが小さい子供をいじりながら待っていた。


「なんだか久しぶりな感じだな」


 遺跡に潜る前なのでおよそ二週間弱ほど別れて以来である。


「そうだよねー。暗い所で引きこもってる人がいたから暇してたよ」

「仕事させてよ。あれ?君は確か案内してくれた子か」


 シャインの隣に座っていて此方に向いているのに気がついたがこの街に最初に着いたときに銀貨を渡した子供だった。


「お久しぶりです。ソウと言います姉さん共々よろしくお願いします」


 姉さんと言う割には顔は似てはいないがソウと言う子供の頭を撫でているシャインはなんだか幸せそうにも見える。


「あれ知り合いだったんだ」

「あぁ友人のイルミス・ロックだこちらこそよろしくな」


 自己紹介を簡単に済ませてソウに握手を求めた。ソウはわずかに自分自身の手を眺めてから握手に答えた。


「友達だったら何で名前知らないのよ」


 何でだろうな。であった時は特に名前を交わしてはいなかったが名前なんて知らなくても仲良くはなれるよね。


「そんなこと言われてもなあ」

「ですねえ」


 私と少年は二人してなにかに納得し同意をしていた。別段何も考えてはいなかった。


「それで二人してなんで待っていたんだ?」


 シャインは一緒に飲むだけかもしれないがソウに対して特に用と言う用がないようにも感じる。


「ソウ君が会いたいって言ってたから案内したんだけど。知り合いだったからもうやることないかも」

「何か用だったのかソウ君?」


 二度ほどしか会っていない子供に用件があるとは考えにくいのだけれども。


「いえ用という訳ではないですけど―――。一度見ておきたかったんですよ」


 ソウ君はチラッと横目でシャインのほうを向いた。


「あー…そういう事か」


 関係を知りたいって事か、何と言うか小さな用心棒って所か。


「そういう事です」

「なーんで二人で納得してるかな~」


 納得してないのはシャインだけだ。とは口には出せなかった。

 まあどうでもいいか。


「何か食べるか?奢るよ」

「ありがとうございます。ここのチーズは絶品ですけど食べましたか?」

「無視?!」


 食事中の男二人が踊り子の女性に耳を引っ張られる姿があったらしい。


※※※


 シャインはソウと孤児院へ家族のように仲良く帰っていった。そして私は二階の部屋へ戻りベットでため息を一つついて腰を下ろした。


「おいエロ野郎」


 けれど寂しく響いた声に対してこの部屋には誰もいない。


「さっさと出てこい変態が」


 何もない空間から滑車の形をした銀色の軌跡が刻みだしてその中央からゆっくりと足から頭までの見た目は人間の形をしていた女性が出てきた。

 白と銀の服をまとい金と銀の矢の二本を腰につけて背中からは純白の羽と何者かが突然に部屋に着地をした。

 どう見ても天使またはそれに近いものでありとても生命体とは思えないほどの恐怖の視線に刺され、黄金色をした腰まである髪の毛には直視できないほど輝かしく、全てを魅了するような肢体であった。

 ただしこの部屋の借主は畏怖する存在の彼女を嫌悪しながらぞんざいな言葉を投げ打っていた。


「仮にも魔神に向かって変態はないんじゃないの?」

「自称がなに言ってる?常に人を覗き見してる奴が変態じゃなかったら何だよ」

「私なりの愛だし良いじゃん」


 腰に手を当ててまるで困ってないような顔で困ったような表情をわざと見せている。


「寝てる間に人を襲おうとした奴とは思えない台詞だな」

「気にしないで。後襲ってないから寝込みで私を表現しようとしただけだから」

「何が違うんだよ」

「寝込みを襲うのが変態で。愛を表現するのは神聖なことなんだよ」


 彼女の見た目は神聖さ、触れられぬものとして扱わなければないないほどの例外的な存在は感じてはいるが私にとっては関係がない。


「神聖な変態か」

「ロックが私のものになるなら変態の汚名もかぶっても良いよ?」

「もういい―――。こんな事話したいわけじゃない」


 こんなこと言いたくてこいつを呼んだのではない。嫌悪していたとしても他に相談できる奴はいなかったからだ。


「判ってるわ。やっぱり今回の件について?」

「あぁそれだ、もう変えれないのか?」


 変えたい事がある。でも彼女の答えは知っている。

 だけど逃げ道があるのなら何にでもすがりたい。こういった心象も悟られたくはないが最悪よりかはましだ。


「変えれるよ?ただ遂行しない場合どうなってしまうか、ロックのほうが良く知ってるでしょ」


 知っている。過去にそれは経験をした。


「判ってはいるがな。本当にどうにもならない?」

「思ったとおりはならない。ただやった通りの事が起こるだけよ」


 やった事が起きるのも知ってる。そして結末は悪化するだけだ。


「仕方ないことか…。理解は出来ていても納得は十五年たった今でも出来ないな」

「そんな顔しないで私のロック。貴方は自由よただ世界が不自由なだけ、貴方は悪くはないだって貴方は世界の救世主なんだもの」


 落ち込んでる俺の首筋を優しく触れてくるが、あんたに触れられるのはとにかく嫌だ。すぐに離れるように手をはじく。


「お前の物でもないし救世主じゃないってお前らのほうが知ってるだろ」

「そうだったわね救世主であり。そして犠牲者であるロック。これから更に犠牲者を増やすことになるけど私はずっとずっと傍にいる。安心して私だけはいつになっても味方よ」


 白き羽の天使の風貌をしていても俺にとってはただの悪魔だ。こいつが俺の未来を変えた。こいつが俺を救った。こいつらが俺を犠牲にした。

 ここでまた犠牲者を増やすのか?今回聞きたいのはそれだけだった。


「ここでの犠牲者は―――」

「えぇ残念だけど」


 とても残念そうな顔には見えないなお前の顔は。

 座りながら自分の手を組み頭をうなだれておでこにコツコツと組んだ手を当てながら深いため息をついた。


「はぁーあ…何でこんな事しなきゃならないのだろうな」


 これからやる事に向けてか、今までやってきた行いなのかはわからないがどうしていいかわからない鬱憤がたまっていた。


「知ってるでしょう?」


 わかってる知っているさ。


「希望がないんだな」


 俺は希望を取り戻す。

 世界を救うの英雄譚は私の事ではない。

 この話は俺の犠牲譚であるただそれだけの話だ。


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