なるほどお祭りかな?
誤字脱字などの修正は一話ずつやっていきます。報告等は最新話の後書きなどで行います。
私は神に挑んだ。
神とは絶対であり頂きであり敬愛するべきものでありそして存在するものではない。
ゆえに私は挑戦者であり到達者であり非凡と比喩される者である。
そして神の愛を受けて存在を許されている人であった。
おぉ!神よ私はただ見たかった
がむしゃらに知りたかった
私が、人が、生命が神の子であるならば全存在の親である神を…
故に会いたかった、会って認めて貰いたいだけなのだ。
なぜならあなたの子であるから誰よりも愛が欲しかったのだ。
私の神の想いは偽りなどでは決してない。
私は神に出会った。
何もない真っ白の空間に唯一つの神座があった。
そこには唯一つ神と言う存在が目の前に確かにいると感じられる。
未だに神に届かない距離で片膝をつき頭を下げて唯一つの願いを述べた。
「神に敬愛の慈悲があるのでしたら神の子である私に拝謁のお許しを…」
命を削るように言葉を、他のすべてを犠牲にしてこの理のために私は生まれてきた。
その報いをこの願いを遂げさせてください。
そして許されないのであれば神の手で殺してください。
神に殺されるのであれば存在を認めてもらえること同義である。
目の前は未だに白である。
頭を深く下げ神の言葉を果ても無く待ち続ける。
ほんの僅かに懐かしい気配を感じた。
そして私の願いは叶う。
確かに神座から存在が動く気配がした。
そして私に近づいてくるのが判る。
あぁ私の願いが叶う!
私を存在あるものだと!
私にとって永久にでも長かったこの距離は今やっと…やっと……。
私の目の前に神がいる。
手を伸ばせば届いてしまう距離にある。
絶対者である神が届いてしまう。
私は涙を流していた。
白い地面のような真っ白な空間にこぼした液体は溶けて無くなっていく。
これらはすべて私からの愛であり、私にとっての全てである。
あぁ僅かでもいい…頭を上げさせてください。
そして神は言葉をただ一言発した。
「ありがとう」
私はこのために人として生きてきた 。
神には私への愛があった。
感慨深い感情に心が燃え尽きてしまいそうになる。
そして唯一つの変化が起きた。
真っ白な空間には赤い、真紅の液体が私の頭の上から落ちてそして白い空間に吸い込まれていった。
いったい何が起こっているのか、私は反射的に頭を上げてしまった。
そこには人がまるで自分で剣を持ち自分で心臓の箇所を突き刺していたように見えた。
目の前にいる人はこれを待っていたかのように笑っていた。
私は言葉にならない声で叫んだ。
確かに今まで神であった存在はそこにいたそう感じていた…いたはずだった。
人は私の腕へと落ちてきた。掴んだ体は温かく目の前に居る存在は私と同じ人であった。
その神であった人は言葉を紡いだ。
「私の世界は理全ては私の見た夢
貴方が見ているその目は何も写してはいない
すべての存在が私の目で在るように私は貴方であるように
私が神であるのならばみなが神である
貴方が人であるのなら私も人である
我々は一つである
一つであった私
全知全能の神など存在しない
なぜなら私を知らないから
君なら私を知っている
貴方が私の知らない存在なのだから
私が求めていたものは恒久の愛
私が求めているのは永遠の進化
私は理を創る一つの存在
貴方は神になる
神は今創生され全ての存在は一つではなくなった全てに愛を
全てに進化を」
真っ白な空間が人の血肉を得て全ての世界を作り出した。
※※※
複数の貴族が集まって一つの都市が出来上がった。
私達の誰かがこの土地の王になるそうやって街が集合した土地である。
山を削り平地として石道を敷き、木を切り倒し家を建て、商いをするために商人を増やし、王となるために民を求め、国を守るために堅固な城壁を造った。
そうやって出来た街ストリアは百年たったいまでも王は決まってはいない。
大きい街を囲むだけはあって目の前にある城壁は小さいコケなどは生えてはいるが真新しく二十メートルほどの壁はまるで巨人のような威圧感を想像させ厚みのある白の壁は立派な一つの芸術とも見れた。
私は徐々に街へと近づいて行くと城門の前にいる鉄の全身鎧を着ている兵士に声をかけられた。
「通行証を拝見いたしますのでその場で待機してください。所持してない場合は身分を証明するものもしくは所持品の全て一時的に押収後に駐屯所へ連行する。」
慣れたように話しかけてくる兵士。他にも止められている人がいた馬車に麦を積んでいる商人、今まで冒険から帰ってきた体力自慢達、外の畑から帰ってきたクワを抱えた農民達などもいた。
「通行証は持ち合わせていませんが紹介状と身分を証明するものはあります」
「紹介状は私が拝見しても?」
貴族からの紹介であった場合は一兵士としては見る事はできないと言う配慮ではあるが目の前にいる若い男性を兵士からすればその可能性は低いだろうと軽く答えている。
「そうですね紹介状はストリア住んでいるペンターさんに渡したいのですけど、とりあえずは冒険者カードで身分を確認してもらってもいいですか?私がこちらに来ると言っていたのですけど」
少し驚いたように兵士はこちらを見て手渡されたカードを見た。
「なるほどこれは失礼を…確かに二つ名は地図でイルミス=ロックさんですね。」
「いえ安心いたしました。以前の街では半月ほど拘束されてしまいましたからそれに比べれば…いい街ですよ」
いつもの事だと言うように今だ入ってもいない街を褒め答えて苦笑をにじませる。
兵士は申し訳なさそうな顔をするが私の笑いに釣られてか納得したような笑いを見せた。
「ようこそストリアの街へ。ぜひ楽しんでください」
兵士に労いの言葉を掛けられながら城門をくぐり目の前には人々が潤っている雰囲気の歓喜と賑わいがあった。
(なるほどお祭りかな?)
「ストリア名産の甘くて瑞々しいキープの実はいかがですか~?」
「お兄さん!豚の丸焼き焼いたんだおひとつ食べていきなよ!」
「まいど~また薬を買うとき売るときはうちによってね」
「ミエル魔法研究録第六書の一片!もちろん本物だよ、ただし値段は張るがな!」
城門から入ってきた人を待ち構えていたように多様な露店商達が来る人々に声を掛けていた。
呼びかけられた人たちも面白そうだと露店を覗いたり、道の真ん中で立ち止まったり、曲芸を見せて商売をしているギャラリーが沸いたりとこの道を越えれるか不安になるほどの人の数、声の数であった。
「はー…こりゃまいったな」
手であごをこすりながらどうしたものかと多種多様の街並みに困ったように呟いた。
ふと気がつくとイルミスの足元を引っ張っている小さい木かごを持った少年に目が向き、こちらを考えを見据えた言葉をかけてきた。
「よかったらストリアの街の案内をいたしましょうか?近道もありますよ?」
「それは助かるなぜひ頼むよ」
随分と都合が良いタイミングが良い。
そうやって安心した私に向けて少年は手のひらを差し出してきた。
なるほど小銭稼ぎかと納得してポケットから三枚ほど銅貨を取り出して少年に差し出した。
銅貨を見て笑顔になった少年は豚の丸焼きをしていた商人に行ってくるねと言い銅貨を2枚商人に渡して1枚をかごの中に入れているのが見えた。
まだ十歳も満たない様な子供がお金を稼いでいるのに驚いたがよくよく見れば豚を食べている人に子供達が道案内やストリアの名産、人名の情報教えるよなどと話しかけていた。
焼き豚が餌になってる…どうでも良い思考をめぐらせていた。
商人にとっては私達が豚か。
「お兄さんぼーっとしてどうしたんですか。それでどちらに案内いたしましょうか?」
「あぁペンターさんのお宅に頼む。この街の中心にあるとは聞いてはいるけど大まかにしかわからなくてね」
少年はわずかに驚いた表情を見せた後に少し悩んだように答えた。
「わかりました中心街には案内いたしますが、私の知っているその名前の方でしたらこの街にとって重要な方ですので見ず知らずのお兄さんをペンターさんの家まで案内する事は…えぇどうしましょう」
なるほど少年ながら商人ってことだな。
貴重な情報と言うわけでもないが著名な人物の居場所をわざわざ怪しく見える私に教えるという事はそれ相応の対価を欲しているのだろう、巾着のような財布から少し汚れがある銀貨1枚を取り出してそれを右手に持ったまま少年に話しかけた、
「私はこれを昔から肌身離さずに持ち歩いて古くはなってはいるがとても大切なものだ、これを君に親愛の証として受け取ってもらいたい」
少年は銀貨に目線が集中してこちらを見てはいなかった。
「そ…そこまで言わせたらな受け取らないとは不義理になりますね。それでは友人の証としてこの街の中心地にある素敵な場所に案内をさせていただきます」
大人と子供が喋り終えた後に耐えていた口元が緩みつい笑顔になっていた。