買い出し紀行
「ご馳走様でした!」
「有難うございました!」
数分後、食べ終わったメンバーは、奢ってもらった諸先輩方へ一礼した。
「いや、今回だけだよ…我々も裕福では無いし…」
豊田さんら先輩方は、少し淋しい笑顔でかぶりを振った。
「さて…この後どうする?」
伸びをしながら、豊田さんが言う。
「飲みにでも行くんですか?」
キイチローが訊ねる。
「いやいや、店に飲みに行くのは金がかかるからね。うちにウイスキーがあるから、飲みたければそれ飲んでもいいよ。」
ウイスキー。ビールとかカクテルをすっ飛ばして。いきなり大人の響きだ。
「まあ飲み食いしたいものは途中で買えばいいさ。普段は、飲みメインじゃなく、ただ集まってだべって、漫画読んだり描いたり遊んだりしてるんだけどね。」
「面白そう…行きます!」
「私も!」
即答するキイチローとヨーコ。酒でも入ったかのようなテンションだ。とは言え、鈴木も行きたい気持ちは同じだった。
「僕も行きます…エミッチは?」
「まあみんな行くなら、私も行こうかな…」
結局、みんなで行くことになった。
少し離れた豊田さんの家まで歩く途中、皆でコンビニに寄る。すぐに酒を買いに走るキイチロー。飲みに行くんじゃないんだぞ、とたしなめる豊田さん。とりあえずどの菓子にするかとはしゃぐ女子たち。鈴木は静かに350ミリ缶のビールとチューハイを一本ずつとポテチを一袋カゴに入れた。
「あれ、鈴木っち、それで終わり?」
500ミリ缶6本パックとサラミとのしイカを手にしたキイチローが言った。
「あのな、まだそんな飲んだことないんだから…」
「そっか…鈴木っち、真面目だなあ…」
変な感心の仕方をする。
「そうなんだ、意外だねえ。」
言いながら、ヨーコがカクテルの瓶とチョコ系菓子を幾つか入れる。
「そうねえ、飲みそうに見えるけどねえ。」
今度はエミッチが赤ワインを一本とチーズを入れる。
「…やるねえ、エミッチ…」
ワインなど飲んだことのない鈴木が言うと、
「いや、私ワイン以外苦手なのよね。ビールって苦いし、チューハイとかカクテルはジュースとしか思えないし…」
あっけらかんと語った。
「こらこら君達、飲むのはほどほどにね。」
言いながら、豊田さんがお茶を一本とウイスキーを追加する。…何だか、みんな凄いな…。鈴木は少し遠い目をしてたたずんだ。