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K大漫研物語  作者: 北村 功至郎
始まりの日
2/21

その名はキイチロー

「あ、そ、そうです。」

唐突に現れたこの存在感のあり過ぎる男に気押されながら、鈴木は答えた。

「おお、やはり見学か。…名前は?」

「あ、私は鈴木健二と言います。」

「そっか、俺は清水貴一郎。よろしく。」

清水と名乗るこの男は軽く頭を下げた。鈴木も返した。

「…で?何でここに入部希望するのかな?」

好奇心で少し目を輝かせている彼に対し、鈴木は言った。

「漫画が描きたいからです。」


 そう、ここ二〇一号室は、このK大学漫画研究部の例会の場所なのであった。鈴木の目的とは、この漫研の例会を見学し、入部するか否か決めることであった。

「はっはっはっ、そりゃ明快な答えだ!」

鈴木の答えがあまりに当たり前であったから、清水は笑った。

「…それで、この部は普段どんな活動をしてるんですか?」

清水の笑いをあまり意に介さず、鈴木は聞いた。

「ああ、それ?それについては…あちらに聞いてくれ。…豊田さーん!」

清水が大声で呼ぶと、奥の方から長身の男がつかつかと歩いて来て、言った。

「こらこらキイチロー、君も説明を受ける立場なんだから、混乱させないの。」

「はは、すいません。」

そこまで聞いて初めて鈴木は理解した。今までその大きな態度から先輩だとばかり思っていたこの男は、実は鈴木と同じ新入生であると。

「いや、悪い悪い。待ってる間、暇でさ。それに、教室に入って来る人にノーリアクションという訳にもいかないでしょ?」

全く悪気がなさそうに彼は言った。鈴木は心中「こいつは…」と思った。


 二人は「豊田さん」から活動の説明を受けた。この、一際背が高く実直そうな先輩の説明は至ってシンプルであった。活動は週二、三回の例会。その場での活動内容は自由。言い換えると全く決まっていない。決まっているのは、一定の部費と、年に二回部誌を発行すること、文化祭では何らかの展示を行うこと。部誌すら、描くか否かは個人の自由なのであった。

「…まあ、全くの自由ということですね?」

「…まあ、そういうこと。」

豊田さんはまとめた。

「…面白い、全くの自由という所が…」

何だか知らんが盛り上がっているキイチローを尻目に、鈴木は少し引き始めていた。漫画を自由に描くというのはいいが、こいつと同じ団体に属するのは何だか、とっても、面倒臭そうだ…。


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