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現代編・奇跡の再会章:三月二十八日の奇跡

いつもお読みいただきありがとうございます!

1637年12月31日、原城の最終決戦——。

120%のオーバークロックと次元の亀裂の果てに散ったアーシュアンと四郎。


今回から物語は、現代の日本へと舞台を移します。

17世紀の歴史ハックを駆け抜けた二人の「時空を超えた約束」は、どのような結末を迎えるのか?

鮮やかなワインレッドのGT-R(R32)とともに紡がれる、奇跡の現代編開幕です!

ぜひ最後まで楽しんでいってください!

一、 奇跡の目覚めと、ワインレッドのGT-R

病院の白い天井と、規則的な心電図の電子音が、林宇軒(アーシュアン)の視界と意識を現実に引き戻した。

あの1637年12月31日、原城での次元の亀裂から吹き荒れた光の濁流——。

120%のシステムオーバークロックによって時空を超えたアーシュアンの魂は、現代の日本で交通事故に遭い、集中治療室(ICU)で意識不明の重体となっていた彼の肉体へと、奇跡的に収束・帰還を果たしたのだ。

「宇軒……! 宇軒……っ! よかった、目覚めてくれて……!」

台湾から駆けつけた両親が、涙を流してアーシュアンの手を握りしめていた。

医師も「奇跡としか言いようがない」と目を見開く圧倒的な回復力でリハビリを終えたアーシュアンは、数ヶ月後に無事退院を迎えることとなった。

退院後、アーシュアンは事故の保険金とこれまでの蓄えを合わせ、ずっと憧れだった一台のスポーツカーを購入した。

——日産スカイラインGT-R(BNR32)。カラーは、深みのある妖艶なワインレッド(AH3:レッドパールメタリック)。

「時貞(四郎)……僕たちの絆は、時代も次元も超える。絶対に僕が君を探し出す……!」

あの原城の冷たい風の中で交わした最後の約束。胸元の長玉ペンダントに触れながら、アーシュアンはワインレッドのGT-Rのエンジンスイッチを回した。直列6気筒ツインターボエンジン(RB26DETT)が重厚で澄んだサウンドを轟かせ、彼を「約束の地」へと誘う。

台湾の両親からは「事故を起こしたのだから、早く台湾に帰国しなさい」と強く心配されていた。アーシュアンは帰国を受け入れつつも、一つだけ強い条件を提示した。

「3月28日までに、やり残した大切な用事があるんだ。それが終わったら、必ず一度台湾へ帰るよ」

愛車となったR32 GT-Rは、帰国中の間、信頼できる地元のショップに一時的に預かってもらう手配を整えた。準備を終えたアーシュアンは、奇跡を信じて熊本・天草の地へとアクセルを踏み込んだ。


二、 三月二十八日、須賀無田海岸の奇跡

一六三八年三月二十八日——史実において原城が落城し、天草四郎時貞が命を落としたとされる宿命の日。

二〇二六年の三月二十八日。春の暖かな日差しが降り注ぐ天草・須賀無田(すがむた)海岸に、ワインレッドのR32 GT-Rが静かに停車した。

潮騒の音と、ウミネコの鳴き声。アーシュアンは車を降り、砂浜へと踏み出した。海風が彼の黒髪を揺らす。胸元のペンダントが、太陽の光を受けてうっすらと緑色に温もりを帯びていた。

(ここに……いるはずだ。君の魂が、僕を呼んでいる……!)

砂浜を歩き、海を見つめていたその時——。

——ピカッ!!!!

突如として青空を切り裂くように激しい稲妻が閃光を放ち、アーシュアンの目の前が一瞬、真っ白に染まった。

「っ……!?」

激しい光の残像と潮風が通り抜けた、直後。

「……あの、すみません」

背後から掛けられた、可憐で透き通るような声。

アーシュアンの心臓が、跳ね上がるように大きく脈打った。

振り向いた視線の先に立っていたのは、春風に黒髪をなびかせた一人の少女だった。現代の街並みの中で異彩を放つその姿——それは、四百年前のあの原城最終決戦の火の海の中で身に纏っていた、血と煤(すす)に塗れた当時のままの着物姿。そして男装の頭巾を脱ぎ捨てた、あの日の記憶そのままの時貞(四郎)であった。

少女の胸元には、血の痕に混じって、アーシュアンとおそろいの「対の長玉ペンダント」が優しく眩い緑の光を宿している。

「 時貞……!!」

「アーシュアン……? ああ……やっぱり……! 逢えた……本当に逢えた……っ!!」

血まみれの着物の裾をなびかせ、時貞は目からボロボロと大きな涙の粒を零しながら、なりふり構わずアーシュアンの胸へと飛び込んできた。

「探したよ……何百年待っても、あなたを見つけるって誓ったから……っ!」

「僕もだよ、時貞……! 約束通り、君を見つけに来たんだ……っ!」

二人は強く、強く抱きしめ合った。血と硝煙の匂い、そして涙の温もり。数百年の時と次元を隔てた悲しい別れが、今、春の天草の海で「奇跡の再会」として報われた瞬間であった。


三、 大江教会への驚きと祈り、お寿司と新しい洋服

再会の歓喜に震える二人は、ドライブへ向かうためGT-Rへと向かった。

血と煤に汚れた着物のまま乗ることに戸惑う時貞に対し、アーシュアンは「気にしないでいい、君が無事でいてくれたことが一番なんだから」と優しく微笑むと、車内に積んであった大きなブランケットを助手席のバケットシートに丁寧に敷き詰め、彼女を優しくエ宿へ導くようにエスコートした。

重厚なRB26エンジンのサウンドに包まれながら最初に立ち寄ったのは、天草の丘の上に佇む大江教会(大江天主堂)だった。

ワインレッドの車体が丘の坂道を登り切り、青空に映える白亜の美しい教会堂が眼前に現れた瞬間——助手席の時貞は息をのみ、目を丸くして立ち上がらんばかりに驚愕した。

「あ……アーシュアン……っ!? これ、は何……!? こんなにも大きくて美しいお堂が……隠れることもなく、堂々と天に向かって建っているの……!?」

四百年前、幕府の厳しい弾圧のもと、暗い竹林や小さな隠れ部屋で怯えながらデウスへの祈りを捧げていた彼女にとって、眩しい太陽の光を浴びてそびえ立つロマネスク様式の聖堂は、まるで夢か幻のようだった。

「そうだよ、時貞。今の日本はね、誰もが自由に信じるものを祈っていい、平和な時代なんだ」

「誰も……お咎めを受けずに……? 嘘みたい……ああ、デウス様……っ!」

溢れ出る感銘の涙をぬぐいながら、時貞はアーシュアンの手をぎゅっと握りしめ、静かに聖堂内へと足を踏み入れた。

色鮮やかなステンドグラスから差し込む七色の光の下、血と煤に塗れた着姿の時貞とアーシュアンは並んで膝をつき、深く手を合わせて祈りを捧げた。

「四百年前の戦いで散っていった仲間たちが、どうか天国で安らかでありますように……。そして、私たちがこうして平和な現代で巡り会えた奇跡に、感謝を……」

祈りを終えて見上げた時貞の表情は、長年の苦難と運命の重荷から解き放たれ、洗いたての空のようにすっきりと晴れやかだった。

聖堂を出て車へ戻ろうとしたその時——

——ぐぅぅ〜〜〜っ。

静かな境内に、可愛らしくもはっきりとしたお腹の虫の音が響き渡った。

「あ……っ!」

時貞は両手でポンとお腹を押さえ、耳の先端まで真っ赤にして恥ずかしそうに下を向いた。

「ご、ごめんなさい……! 1638年の原城からそのまま飛ばされてきたせいか……急にお腹が……」

アーシュアンは思わず吹き出し、愛おしさに胸をあたたかくしながら優しく笑った。

「ふふ、当たり前だよ。さあ、何か美味しいものを食べに行こう! 天草はね、お魚がすっごく美味しいんだ」

アーシュアンは彼女の肩に大きめのウインドブレーカーを羽織らせて血まみれの装束を隠すと、天草市内にある落ち着いた地元の寿司店へと車を走らせた。個室へ案内されると、時貞の前に運ばれてきたのは、天草の海で揚がった新鮮な車エビや鯛、マグロが美しく光る握り寿司の盛り合わせだった。

「これが……『お寿司』……? 宝石みたいにきれい……」

箸を握り、おそるおそる一握りを口に運ぶ時貞。次の瞬間、彼女の瞳がキラリと輝いた。

「んんっ……! おいしい……っ! お魚がプリプリで、シャリがふわっとしてて……こんなに美味しい食べ物、生まれた初めて食べたよ……!」

ほっぺたを落としそうなほど幸せそうな笑顔で、次々とお寿司を口へ運ぶ時貞。江戸時代にはなかった贅沢な味覚に目を輝かせる彼女の姿に、アーシュアンの心は温かな幸せで満たされていった。

お腹いっぱいお寿司を堪能したあと、二人はブティックへと移動した。現代のフェミニンで可憐な春物のワンピースやニットを選び、フィッティングルームで照れくさそうに着替える時貞。「アーシュアン、似合うかな……?」と頬を染めて照れる彼女の愛くるしい姿に、アーシュアンの胸は再びキュンとときめくのだった。


四、 原城跡でのすれ違い(宮本碧との再会)

新しい洋服に着替え、髪を整えた二人は、思い出の詰まった島原の原城跡へとGT-Rを走らせた。有明海のきらめく海岸線を、ストレート6とタービン音の心地いいサウンドを響かせながら、ワインレッドのボディが滑らかに加速していく。---

四百年前の惨劇が嘘のように、今の原城跡は穏やかな海風が吹き抜け、青空が広がる静かな史跡公園となっている。二人は手をつなぎ、かつて命を懸けて守り抜き、涙の別れを交わした城跡の景色を目に焼き付けていた。

その時、原城跡の駐輪場から、地鳴りのような重低音の排気音を響かせて一台の大型バイクが滑り込んできた。

鮮烈なカワサキのライムグリーンが太陽に眩しく輝く『Ninja ZX-10R』。

バイク事故による長期昏睡状態から奇跡の完全復活を果たした青年——宮本碧(あおい)が、導かれるようにヘルメットを脱ぎ、革ジャン姿で坂道を歩いてきた。

木漏れ日が差し込む石畳の道。

手を繋いで歩いてくる二人(アーシュアンと時貞)と、前方から一人歩いてくる碧。

ふと、三人の距離が数メートルに縮まったその瞬間——。

『ドクン……!』

雷に打たれたような衝撃が、三人の全身を駆け巡った。

心臓が跳ね上がるほどの激しい鼓動。全身の毛穴が逆立つような【かつて刃を交えた激しい記憶】と【懐かしさ】が交錯し、三人は思わずその場にピタリと立ち止まった。

「……こんにちは」

碧は戸惑いながらも目の前の二人を見つめ、どこか吸い寄せられるように言葉を漏らした。

「……こんちは」

あまりの圧倒的な存在感とデジャヴに息をのんでいた時貞だったが、無意識のうちに天草方言の可愛らしい訛りを残した声で挨拶を返した。

すれ違い、互いに振り返ることなく歩き出す三人。

アーシュアンと時貞は顔を見合わせ、引きつった苦笑いを浮かべながら、四百年前の激闘の重みを噛み締めて静かに立ち去ったのだった。


五、 帰りの機内と、時貞の驚き声

二人は熊本、そして福岡へと九州自動車道を爽快に駆け抜けた。

福岡に到着したアーシュアンは、両親との約束を守るため、愛車のR32 GT-Rを信頼できる地元のショップへ一時的に預けた。

「大事に預かってください。僕の宝物なんです」

「お任せください。またお迎えに来るのを待っていますよ」

ショップの店主に愛車を預けたアーシュアンは、時貞とともに福岡空港へと向かい、台北行きのチャイナエアラインに搭乗した。

離陸した機体が雲海の上へと登っていく中、窓の外を眺めていた時貞が、ふと思い出したようにアーシュアンの袖を引いた。

「ねえ、アーシュアン。……さっきの原城跡でのすれ違いのとき、どうしたの? 二人とも急に固くなって……」

アーシュアンはジュースを一口飲んでフッと優しく笑うと、時貞の耳元で小さく囁いた。

「……あのライムグリーンのバイクに乗ってきた男、誰だか分かった?」

「え? ううん、すごく背が高くて格好いい人だったけど……」

「あれ、宮本碧だよ」

「……え……?」

一瞬、時が止まったように固まる時貞。

「ええぇぇぇーーっ!?!? あの時の剣豪の……っ!?」

静かな機内に時貞の素の驚き声が響き渡り、周りの乗客がいっせいに振り返る。

顔を真っ赤にして慌てて口を押さえる時貞と、それを見て楽しそうに笑うアーシュアン。

「両親に挨拶をしたら、またすぐ日本に戻ってこよう。今度は預けてあるGT-Rで、日本中をドライブしようね」

「うん! ふふ、楽しみ……! アーシュアンとなら、どこへだって行けるよ!」

四百年の時を超えた運命の絆と因縁は、平和な現代の空の上で、爽やかで温かい笑顔とともに結ばれたのであった——。


(現代編・奇跡の再会章・完)

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

四百年の時を超え、現代の天草・須賀無田海岸でついに巡り会えたアーシュアンと時貞。

大江教会での祈り、初めての「現代のお寿司」、そして……あの原城跡で巡り会ってしまった「あの男」とのすれ違い。

血と硝煙の世界から、平和で優しい現代へ。

驚きつつも素直に現代を楽しむ時貞(美少女)の可愛らしさと、二人の絆を感じていただけたら嬉しいです!

【読者の皆様へお願い】

「二人の再会に感動した!」「GT-Rカッコいい!」「宮本碧とのすれ違いに痺れた!」と思っていただけましたら、ぜひページ下部の【★★★★★評価】やブックマーク、いいね(ハート)で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!

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