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最強平凡B級冒険者ヤドルのフィーラル王国魔物事典  作者: 滝川 海老郎


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4 D ワイルドウルフ

 魔物「ワイルドウルフ」は「野生のオオカミ」という意味だ。

 いやオオカミはもともと野生だという意見はもっともだけども、動物とモンスターを区別するためにそう呼ばれている。

 文句は旧統一帝国に言ってほしい。


 ワイルドウルフは森や平原に生息している。主食のホーンラビットがいる地域には、だいたいいると思えばよい。


 オオカミとはイヌの祖先と考えられている野生種だ。

 四足のケモノで、肉食である。


 ワイルドウルフは成獣で体長が1メトルくらい。大きな個体で2メトルぐらいであろう。

 2メトル級に会ったら絶望的だと思ってほしい。


 1匹のリーダーとメンバーによる群れを形成し、一般的には単独行動はしない。

 リーダーには絶対服従である。

 獲物を狙う狩りにおいても、チーム戦を得意とする。


 リーダーはたいてい体の一番大きなオスで、メンバーには他のオスとメスがいる。

 繁殖では、主にリーダーがメスを囲い、一種のハーレムを形成する。

 他のオスもメスに気に入られれば繁殖に参加することもある。


 このようにチーム単位の社会性を有している。

 チームは数匹から20匹程度の集団を作る。

 思考力、知能もそれなりの高さがある。

 しかし人語や言語を話すほどではない。人間でいうところの5歳児程度とされる。

 しかし老齢のワイルドウルフは「賢狼けんろう」といい、非常に頭がいいという伝承もある。また人語を解するとされる。


 攻撃力も爪と噛みつきにより、かなり高い。

 特に牙、犬歯が発達している。首や胴を食いちぎられると、致命傷を負うことも少なくない。また手足を失うものも多い。

 町の近くにも出没することがあり、初心者キラーの名をほしいままとしている。


 特に狩りは、ターゲットのうち群れからはぐれた弱そうな個体から、各個攻略していく戦闘スタイルで、冒険者たちも一番弱いもののから、順次集団で襲いかかられ、気がついたら全滅しているような状況になりやすい。


 モンスター全体でみれば、ワイルドウルフ単体はまだ強い方ではないが、群れは一般的な人間からしたら十分な強さだといえよう。


 ホーンラビットなどを解体するとき、もたもたしていると、血の匂いを嗅ぎ分けてワイルドウルフが集まってくることがあり、危険である。

 基本のキであるが、魔物を倒したあとは素早く解体処理し、すぐに移動するのが鉄則とされる。

 その点、アイテムボックス持ちがいるとまるごと持ち帰れるため、たいへん重宝するという。


 ワイルドウルフ肉は、固く独特の臭みがあり、あまり食用には適さないものの、食べられている。

 どこかの地方では、この臭い肉にたくさんのハーブを入れて臭み消しをした煮込み料理があるという。

 残念ながら筆者は現物にはたどり着けなかった。

 この肉の価値は、ホーンラビットがいるため、それよりも安価で流通することもあるが、絶対量が少なく、庶民すらあまり口にはせず、貧民の食事を豪華にする役割にすらならない。


 ワイルドウルフの干し肉は、あれば奴隷の遠征時の食料として、しばしば選択される。

 フィーラル王国では粗末な食事という意味で「(奴隷には)ワイルドウルフの干し肉でも食わせる/食わせておけ」という定型句がある。

 王都での肉類の食糧事情は深刻で、しばしば下級市民ではこのワイルドウルフの干し肉を我慢して食べる状況になりつつある。

 さいわい、リクウミウシやマイマイ、オオダンゴムなども食べることができるのがせめてもの救いだろう。


 歯、特に牙である犬歯、爪などは、金属の刃の代わりに加工品にされる。

 骨や内臓は捨てられている。


 毛皮は、ホーンラビットよりもかなり丈夫で、さまざまな毛皮、革製品に加工される。

 特にマントや大型のバッグ、靴などに重宝している。

 普通のワイルドウルフは灰色であるが、たまに銀色をしたものがおり、シルバーウルフといって高級品の証である。その毛皮は貴族が寵愛しており、高値で取引される。


 ワーウルフという狼人族がいる。しかし彼らは普通のオオカミの系統であり、ワイルドウルフとは無関係という立場である。

 もちろんホーンラビットと兎人族と同様に共食いとはみなされていないし、神聖視などもない。


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