36 C ワイルドボア
イノシシの魔物であるワイルドボアだ。
命名は以前の、ワイルドウルフとワイルドディアと同じ系統だろう。
このように、命名方法は過去の種を参考に名付けられることがよくある。
まず普通のイノシシが1メトルだとして、このイノシシは最大3メトルぐらいになる大型種だ。
鋭い日本の牙は大きく、とても目立つ。
彼らはこの牙が大きいオスほどモテると言われており、遺伝的に大きく立派に進化して生きたと推定されている。
毛皮は太い毛で全身覆われ、ごわごわしている。
茶色い毛に白い線が子供のころは入っていて、ウリ坊と呼ばれるのは、イノシシと共通している。
次第に白い線は消えていき、代わりに黒いラインと濃い茶色になっていく。
メスの個体についても、牙はそれなりに立派だが、オスほどではない。
体はずんるりむっくりしており、四足歩行で、鼻が出ているのが特徴的だ。
よく泥浴びをするのが好きで、日向ぼっこなどもするのんびりした風景もみることができる。
一方、人を襲うときは、猪突猛進というように、突撃してくる習性があり、牙に引っかかるとかなり深い傷を負うことになるので、頑張って避けよう。
基本的には一直線に向かってくるので、よく見極め、横に避けることが重要だ。
森のある地域には広く分布しており、ベアなどよりもよほどよく見かける。
ワイルドディアが逃げる専門なのに対して、このワイルドボアは向かってくる習性があるので、エンカウント率が高いという事情もある。
さて、その肉だが、普通に豚肉の系統で、かなり美味しい。
薄切りにした肉を塩胡椒を振って、フライパンで炒めるだけでも、かなり美味い。
肉を一口大に串に刺した、ボアの串焼きも北部の森林地帯ではよく食べられる。
北部の都市の露店では定番商品なので、見かけることもあるだろう。
ただし、たまに宗派によっては禁忌のオーク肉を、ワイルドボア肉だと偽って販売しているものがある。
オーク肉は全体的にはワイルドボアよりも深い旨味があり、美味しいので、黙認されているが、あまり気分がいいものではない。
教会も規制強化をするかどうかで長年悩んでいるが、今のところ特に動きはない。
ブロック肉になってしまうと、判別が難しく、取り締まりそのものが機能しない可能性があるため、難航しているそうだ。
森林地帯でしばしば冒険者を襲うことで、その肉は一定量が常に冒険者ギルドに持ち込まれる。
これを見越して、ジャーキー業者がいくつも存在しており、王都にボアのジャーキーを出荷している。
近年の王都の食肉の流通量の低下に、一定の歯止めがかかる優良事業であり、王国も補助金や技術指導などを行い、品質の向上と生産量の増加を後押ししている。
オーク肉による偽装問題はあるものの、オークのほうが倒すのが難しいといった点もあり、おおむね現状を楽観視している意見が多い。
このジャーキーは王都の中流階級に主に消費され、食事情が厳しい下流民にまでは行き渡らないが、もっと供給が増え、値段が下がるのであれば、違う未来もあるかもしれない。
一方で、皮は毛を取り除いた後、靴や鞄など頑丈な用途へ主に使用される。
ウシ系よりも安価で、一定の数が入荷することが保障されている材料なだけに、産業の一角とまでになっている。
大型の牙も、細く研ぐとナイフの形になる。この護身用ナイフは貴族が儀礼的に腰につける風習があり、誰もが装備するものとして普及している。
一方で、冒険者ギルドにはあまり回ってこないため、一部の冒険者からは不満があるようだ。
非金属のナイフはスライム狩りや一部の酸や腐食性のある攻撃をするモンスター狩りでは重要度が高い。
このワイルドボアの牙のナイフは比較的安価であるために、初心者冒険者たちは貴族の見栄のために使用されていることに怒りを感じるようである。
北部では骨の活用について肥料にすることが多いが、近年「豚骨スープ」の開発が行われており、その臭いから敬遠する人もいる一方、その濃厚な旨味に虜になる人が続出していると聞いた。
一度飲んでみたことがあるが、確かに臭いものの、味は確かに一定の価値があるように思う。
特に、寒い冬の北部は冷える。屋台で肉串の横で、あの独特のスープが売られていると、ついつい飲んで体を温めたくなる。
このスープの話は俺が理解していることからも明らかで、王都にも聞こえてきており、王都でもラビットの骨を輸入して、せめて塩だけのスープに加えて改良し、深みのあるスープを提供できないだろうかという話がある。
どこから骨を入手するのか、すでに農業用の肥料としても使われており、こちらは需要とバランスが取れているので、横から取るのは問題があると一部では言われており、難航している。
なんにせよワイルドボアはかなりの部位で、多方面の産業を支えている重要な資源に位置づけられている。




