13 D ワイルドディア
静かな森の住人、シカ型魔物それが「ワイルドディア」だ。
命名は完全に、ワイルドウルフと同じノリだろう。
普通のシカ、ディアだっているが、比較して小さい。
魔物のワイルドディアは、魔石があるという点が決定的に異なる。
見た目は、どう見てもシカだ。
目が赤く、光って見える点は、明らかに異なっている。
普段は目は黒いらしいが、人間が見たときは警戒色で赤くなると言われている。
短い体毛に全身覆われ、背中は茶色に白い斑点、腹側は白い。
細めの体躯に細い手足は偶蹄類のそれだ。牛よりも体も首も細い。
跳ねるように移動する点もシカらしい。
二対の木の枝のような角が特徴的で、メスの角は小さい。
シカは草食性で、もっぱら葉っぱを好む。
下草を食べるのが一般的で、この手のディアがいるからこそ、森の中が草だらけにならず、見通しがある程度保たれているという説があるくらいだ。
草の多い森で生息しており、草原に出てくるのは稀なようだ。
もちろん砂漠や荒野には住んでいない。
オス同士は繁殖期になると、メスを競って角をぶつけあって喧嘩をする。
激しくぶつかると、傷つけあったり、最悪の場合、死亡することもあるという。
角の攻撃力は先端が丸い癖に高く、冒険者でもそこそこ苦戦する。
弓矢で気づかれる前に仕留めるが定石ではあるが、剣で戦う冒険者も普通にいる。
ただし、普通に逃げ足が速く、仕留めれるかは、運しだいだ。
場合によっては、逃げずに襲ってくることがあるので、その隙を見て叩くのがセオリーである。
風属性であり、風の支援魔法により、自分たちの俊敏力を上げて逃げると言われている。
さすがモンスターというだけはある。
一度逃げられたら、ほぼ再戦は無理なので諦めて、別の個体を探すのを推奨する。
肉は普通に鹿肉で、美味しい。
オーク肉は脂身があるが、ワイルドディアはほとんどが赤身肉で、そのさっぱりした旨味が、一部の愛好者が好んで食べるほどだ。
貴族の晩餐にも、ワイルドディアのローストは、定番中の定番料理だそうだから、偉い人々であれば、口にする機会も多いだろう。
ワイルドディアにはベリーソースをかけて食べるのが定番で、何回か食べたことがあるが、絶品だった。
皮は珍重され、毛皮としてそのまま利用されることも多い。
フィーラル王国西部ではワイルドディアの皮を一頭まるまる壁に飾る風習がある。
フィーラル王国北部のマッカラサン地方に広がる森には、鹿人族が暮らしている。
最大都市は二万人規模であり、獣人種の町としては最大規模だ。
その鹿人族は、ワイルドディアにも似ているが、特別視はいっさいされておらず、普通にワイルドディアもモンスターとして狩るし食用にもする。
ディアに対しては、豚やオーク、ゴブリンなどと比べても、差別意識は低い。
獣人そのものへの差別は若干あるものの、火種になるほどではないようだ。




