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9ブレス<<< オレは女を抱きしめる!

「落ちる落ちる落ちる〜!」


シルヴィアの叫び声。

だから早く逃げろって言ったのに。

呑気なこと考えてる場合じゃない。

そのうち谷の底に激突しちゃう。

まずはシルヴィアを確保しないと。


深紅拳の咆哮クリムゾンナックルブレス!」


拳から炎を噴射して推進力にする。

あっさりシルヴィアを抱きかかえることに成功!

入り組んだ峡谷の壁に激突しないように炎を噴射して回避する。

軌道を変えた先で穴から穴を何度もくぐり抜ける。


水晶が太陽の光を反射して谷の底をほのかに照らしてくれてるおかげで谷の底が見えた。

このままじゃ二人そろって頭から激突する!


「がんばってくれよノーマルギア!

深紅の翼(クリムゾンウイング)!」


肩と背中部分のごつごつから炎が翼のように吹き上がる。

炎で気流を操作して飛びたい技。

炎の拳も翼も大気に充満したソウルを吸収変換して発現する魔法みたいなもんだよな。

当たり前になってるけどリベレイションした姿もソウルのおかげだ。


炎の翼とは言っても飛べるってほどのものじゃないんだけどな。

ノーマルギアが変形して炎の制御をほんの少しだけ手助けしてくれる。

だけど落下する二人分の体重を支えるのはしんどい!

もう気合いでなんとかするしかない!


「上がれー!」


猛スピードで落下する風を切って炎の翼を羽ばたかせる。

垂直落下から姿勢を制御してギリギリ水平飛行に持ってく!

シルヴィアを守らなきゃ!

頭と体をギュッと抱きしめる。

体のあちこちから炎を逆噴射のようにしてがんばって減速するけど!

肩が谷の底に擦れて転がる!


シルヴィアの背中のバックパックのせいで大きくバウンド。

バックパックは外れて派手に転がってく。

肩、腰、背中、谷の底を削りながら横滑りするオレとシルヴィア。

絶対に離さない!

派手に転がり始めてノーマルギアが部分的に壊れて吹っ飛んでく。

なだらかに隆起してる水晶の坂に転がって回転しながら投げ出されてまた転がる。

坂に勢いを抑えられつつなんとか止まった。


偶然谷の底に広い空間があってよかった。

じゃなきゃ激突して死んでた。

脱力して大の字になるとリベレイション、ドラゴン化を解除。

胸が少し小さくなってビキニタイプのアーマードスーツだけになる。


「ぶっはー!

死ぬかと思った!

シルヴィア! 生きてるか!?」


「こ、怖かったの……」


腕枕状態のシルヴィアが頭をふるふるしながらオレにしがみついてる。

瞳からあふれる涙がヘルメットの透明なフェイスシールドを濡らしていた。

かわいい!

このシチュエーションはうれしい!


「よしよし。

がんばったな!

さすがオレのシルヴィア!

大好き!」


せっかくのチャンス、抱きしめ返しながらヘルメットをなでなでする。

アストロスーツのせいでシルヴィアの柔らかい感触もなにもあったものじゃなくて悲しい。


「わたしはアナの女じゃないんだけど?

わたしよりも年下のくせに生意気なんだから。

でも助けてくれてありがとう。

礼は言わないわ」


「言ってるよな!?

涙目でも安定のシルヴィア!

ところでなんだこれ?」


寝転がったまま見上げる。

フレイムクリスタルキャニオンの底の底。

大きな空間の中に年代物の小さなドームが佇んでいた。

だけどオレたちのシェルターみたいに腐食したりしてない。

見たことのない金属。


「シェルターだわ」

「シェルター? 確かにそうだな?

こんなとこに?

古そうだけどどこもピカピカしてるぞ?」


「ロストテクノロジーの遺物かしら?

初めて見たわ。

だけど数百人程度しか入れなさそうな大きさ。

なんの施設かしら?」


「ていうか、オフィリア!

通信は……インカムが壊れてる!

落ちた時か!

みんなを助けに早く上に戻らなきゃ!

……どうやって!?」


シルヴィアを抱えたままガバッと起き上がる。


「きゃ!

ギアも壊れちゃったし、わたしのアストロスーツは生命維持機能と筋肉補助機能だけよ。

とてもあんな高いところまで上がれないわ」


見上げても上の方なんて微かにしか見えない。


「どんだけ深いんだよ!?

早くしないとみんなが捕まっちゃうよ!」


爆撃の音がかすかに聞こえる。


「それに酸素シリンダーだっていつまでも持たないだろ!」


「まだ数時間は大丈夫だし、そうは言ってもどうにもできないわよ。

そうね。

地上に遠く離れたシェルターだもの。

ホバーバイクとかないかしら?

どこかに地上に上がるエレベーターとかあるかもしれないわ」


「そっか!

探してみよう!」


シルヴィアのバックパックを回収して壊れていないことを確認。

探索するとシェルターの入り口があっさり見つかる。

ロックもされてなくて簡単に入ることができた。



「おおー!

格納庫だ!

だけどなんにもないぞ!」


電源が生きてたみたいで明かりをつけられた。

入り口は狭かったけど中に入るとかなり広い。


「軍事施設みたいね?

あっちに大きいハッチがある。

新世紀後に起きた世界大戦の時のもの?

もしかしてフレイムクリスタルキャニオンが形成される前からあったのかしら?

それとも発見されないようにこんなところに建設したの?

なんにしてもとっても古いものよね?」


広い格納庫を急ぎ足で観察しながら二人で進んでいく。


「新世紀って?」

「あなたそんなことも知らないの?」

「そりゃ貧民街育ちだし?

勉強なんてしねぇもん」


「この星が地球と呼ばれていた頃に世界を滅ぼすほどの大戦があって、その時にバカな国と科学者のせいで死にいたる毒素、ソウルを放出する異世界と繋がったことは知ってるわよね?」


「それならこないだアーレに教えた!」

「アーレって誰?」

「うちの新入り。まだちっさい女の子。

なんにも知らないんだ」

「なんにも知らないおバカさんのアナが教えたの?」

「シルヴィアがバカって言ったあ。

サクラコに教わったから少しは知ってるもん。

くすん」


「相変わらず泣き虫ね?

あなたとサクラコってほんとに仲良いわよね?」


シルヴィアの目が細くなって睨んでる。


「シルヴィアだってさっき泣いてたじゃん。

あれ? もしかしてやきもち?」


「あんな目に遭えば誰だって泣くわよ!

やきもちなんてアナに焼くわけないわ。

アビスと呼ばれる世界の大穴を開けた出来事はアナザーフォールって言われてる。

その後に起きた技術革新を契機に旧暦アンノドミニを捨てて新世紀暦ネオンジェネシスを採用したのよ」


「へー。そんなん意味あるのか?

少しくらい焼いてくれてもいいのに」


「焼くならパンがいいわ。

滅亡を免れた人類が手に手をとって生きていけますようにって当時の指導者たちが決めたそうよ。

だけど人類を収容するドームは一つじゃ足りない。

次々建設されるドームはやがてカントリーと呼ばれる独立自治体を形成していった」


「おお! カントリーってそうやってできたんだ!」


「やっぱり知らないじゃない。

胸にばっかり栄養がいってるのね。

そして数少ない資源を確保するためにカントリー同士で争いを始めた。

結局、二度と起こさないと誓ったはずの世界大戦が再び起こったのよ。

せっかく造った新世紀なのにね。

破壊と再生、そんなことを繰り返していまがあるのよ。

そしてこのシェルターは新世紀後の技術、いまではロストテクノロジーとなった技術で建設されたものだと思うの」


「ふーん。そうなんだ?

でもしばらく大きな戦争なんて起きてないよな?」

「さすがに学んだんでしょ?

だからカントリー法なんてものを立法して協定と不可侵の条約を形式上結んでるんじゃない。

それでも領有権争いで小競り合いが起きてるわよね。

最近じゃ争いの規模が大きくなってる。

また大きな戦争が起きてもおかしくないわ」


「やだねえ大人たちは。

みんなで仲良く笑って楽しく協力すればいいのにさ」

「あなたみたいにバカばっかりだったらいいのにね?」


「またシルヴィアがバカって言ったあ。

オレ泣くぞ。

ぐっすん」


みんなしてオレのことバカバカ言うんだもんなあ。

オレ悲しくて胸が萎んじゃう。

途中、下へ降りる階段も見つけたけど、この階をすべて確認することにした。

そろそろ格納庫の端の方にたどり着く。


「褒めてるのよ?

それよりあれ見て」


「ん? あれってまさか?

おお! ギアじゃないか!」



☆次回<<< オレ、気持ちよかった!

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