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7ブレス<<< オレはオレの女を守る!

「うへぇー。

派手にドンぱちやってるなあ!」


トレーラーの助手席からドア窓に身を乗り出してうっかり大きな声で叫んでた。

頭から足先までフルアーマータイプのノーマルギアに身を包んだやつらが近接戦闘やら撃ち合いやらしてる。

フルアーマータイプのギアはアストロスーツと同じ外気に触れないように圧縮酸素シリンダーを装備しているやつ。


「フレイムクリスタルキャニオンでバトルなんて怖いんですよ?」

「ほんとだよな。

谷が深くて落ちたらなかなか上がってこられないし」


「落ちた先にさらに深い谷があったりするんですよ?

どこまで底があるか行ったことのあるヒトはいないらしいんですよ?」

「こんなところでやり合いたくないよなあ」

「珍しくアナがまともなこと言ってるんですよ?」


このエリアは炎の水晶で構築されてる峡谷だ。

谷は複雑な構造で迷ったら二度と戻ってこれないかもしれない。


「オレはいつもまとも!」

「こんな峡谷の端っこで資源の奪い合いなんてみみっちいんですよ」

「確かに。

あちこちにある大鉱山てすっげぇでかいんだよな?

そこに行けば資源の取り放題なんだろうなあ」

「見つかったら奴隷ですよ。

間違っても行ったらダメなんですよ」


「行かないよ。

おいおい、オープンタイプのパワードギアなんかもいるぞ?

肌がでこぼこに硬質化してる……なにかの鉱物か?

あいつマテリアル系のドラゴンだ!」


オレたちが装着しているノーマルギアは力仕事なんかをアシストするものだけど、パワードギアは戦争にも利用されるくらいの装備だったりする。

そして酸素マスクの供給を必要としないドラゴンはソウルの充満した外気でも問題ないからフルアーマータイプの装備を必要としない。

ていうかリベレイションするのに邪魔。

オレのノーマルギアは攻撃にも転用できるように改良したものだ。


「それにあのマークは……おっさん傭兵集団のスクラッパーにじじばばギャングの老霊会じゃないか?

血の気が多いなあ」


「カントリー同士の戦争なんかに協力するバカと爪弾き年寄りの盗賊集団ですよ?

アナはヒトのこと言えないんですよ?」

「それってオレのこともバカって言ってる?」


「気のせいですよ?

きっとシェルター同士のナワバリバトルですよ?

傭兵だって仕事のない時は採集しないと食べていけないんですよ?

せっかくここまできたけどユグドラシルフォレストに行きましょうよ?」


「ええ?

時間をかけてここまできたのに?

あっちはロックリザードの大繁殖で金になりにくいじゃん。

ここは危険だけど炎の水晶はいい金になるだろ?」


クリスタルの峡谷にはフレイムクリスタルと呼ばれる水晶が採集できる。

質の良いものは化石燃料やバイオマス燃料に比べて少量でも持続して高エネルギーを得られる貴重な鉱物資源だ。

カントリードームやシェルタードームの維持には欠かせない。

だけど峡谷はいろんな意味で危険だからそんなに人気の採集エリアじゃないんだよな。


「アナの言う通り、燃料がもったいないことになっちゃうよ。

それにいまからじゃ日が暮れちゃうって」

「そうなんですよ?

どうしましょうよ?」


運転席のキャリーの発言で悩むオフィリア。

荷台には仲間たちが不安そうな顔で待ってる。

見ればほかの2台のトレーラーに乗るみんなも不安そうだ。


「稼がないと飯食えないしローンも払えないしなあ」

「だけどみんなを危険な目に合わせたくないんですよ?」

「こういう時サクラコがいるとキッパリどうするか決めてくれるんだけどなあ」


「アーレは世話焼きのサクラコにベッタリなんですよ?」

「はは。近くにいないとアーレが大泣きしちゃうんだよ。

サクラコのやつ困ってたよな?

やつらに見つからないように離れたところに採集に行ってみるか。

とりあえずオレ一人で行ってくる」


このエリアもだだっ広い。

やつらのトレーラーも視認できるところにはない。

偶然、出くわしただけだ。


「アナだけじゃかなり心配なんだけど」

「かなりじゃなくて絶対なんですよ?

だけどうちのエースにお願いするしかないんですよ?」


「キャリーもオフィリアもひどい!

オレだけじゃそんなに心配!?」


「アナはバカなんだから当たり前じゃん」

「そうですよ?

バックパックに半分でも採集できればいいんですよ?」


「二人してバカ認定しなくてもいいのに!

ぐすっ!

みんなはここで待機していてくれ。

峡谷に足を踏み入れるんじゃないぞ?

なにかあったらすぐに戻るからな。

オフィ、みんなを頼む」


「「気をつけて(ですよ?)」」


インカムを装着してから四角いバックパックを背中に背負う。

オレの身長よりでかいけど丈夫で軽い樹脂でできてるから問題ない。

ギアポーチを身に付けてても問題ない構造になってるけど、ノーマルギアを使う時はバックパックをおろさないといけない。

みんなは発見されにくくなるようにここ専用の迷彩シートをトレーラー3台に被せてる。

峡谷の入り口でみんなを待たせて出発だ。




「うしっ!

けっこう採集できたな!」


ドンぱちの音を聞きながらフレイムクリスタルをバックパックに放り込んでいく。

普通はちょっとずつを時間をかけて採集するもんだけど運よく連続で見つけられてもうそろそろいっぱいだ。

その度にバックパックの上げ下ろしもめんどくさいし。


「さてと。んじゃあそろそろ戻るかな」


バックパックを背負ってきた道を戻っていく。

少し離れたところで相変わらずバトルを続けている両陣営。

まだるっこしい戦いしてるな?


「戦ってないで協力でもすりゃいいのに」


そうは言ってもプライドばっかり強くてお互いに譲り合うことはないだろうし。

だから戦争なんて起こるんだよな。

そんなんじゃ腹は膨れないぜ。

横目に戦いを見ながら峡谷のてっぺんを渡り歩いてく。

ここなら離れてるしそうそう見つかんないだろ。


「あれ? もしかしてあれって……」


目を凝らす。

オレの視力はいい。

遠くてもしっかり見える。

バックパックを背負ったアストロスーツにヘルメットを装着した姿。

透明なフェイスシールドから覗く桃色の瞳に桃色の髪。


「シルヴィア!?」


おっさん傭兵集団スクラッパーのパワードギアを装着したやつ一人とノーマルギア二人に追いかけられてる。

いまにも捕まりそうだ。

峡谷のクレバスをぴょんぴょんと飛び越しながら走ってる。


「荷物を狙われてるんだ!

あいつレア採集するって有名だからな。

きっとシルヴィアだってバレたんだ!」


オレの大好きなシルヴィアを放っておけるわけがない!

バックパックを急いで下ろす。


「リベレイションしてる暇はないぞ!

ノーマルギアコネクト!」


ドラゴン化は少し時間がかかる。

脳波認証でぼろっちいノーマルギアが起動する。

接続する瞬間は気持ち悪いから好きじゃない。

腰と背中、おしりの上に装着しているギアポーチから装甲が展開して腕、脚、頭に一瞬で装着された。




「追いかけてこないで!?」

「シルヴィア!

レアもん寄越せば追いかけねえよ!」

「あげるわけないでしょ!?

うちの子たちがお腹を空かせてるんだから!」

「じゃあ追いかける!」

「こないでー!」


「お前らはおとなしくバトルでもしてろー!」


シルヴィアを追いかけるノーマルギア一人の頭に拳を叩き込む。

普通は殴ったくらいじゃびくともしない透明なフェイスシールドにビシッとヒビが入った。

悲鳴をあげて応急処置のテープを取り出すけどコロコロと転がして追いかけてる。

まあ死ぬ前になんとかするだろ?


「てめえ誰だ!?

邪魔すんじゃねえっ!

うわ! めちゃくちゃかわいい!

めちゃくちゃでっかい!」


オレの顔と胸を交互に見てるし。


「え? 照れちゃうなあ♪

アナってんだ!

オレのシルヴィアにちょっかいかけるやつは許さねぇ!」

「オレのじゃない!

礼は言わないわよ!

助けてくれてありがとう!」

「思いっきり言ってるし!」


「ふざけたこと言ってんじゃねぇ!

ドラゴンソウルリベレイション!」


パワードスーツを着たやつがドラゴン化していく。

ゴツゴツした金属の肌に変質していく。

こいつも鉱物かなんかのマテリアル系だ。


そんならオレも!


「ドラゴンソウル! リベレイション!」


ビキニタイプのアーマードスーツに覆われてない素肌から硬質のとげとげした物質が生えていく。

クリムゾンレッドの長髪の間から金色のつのがメキメキと2本伸びていく。

金色の瞳も変質して銀河のように輝く。

胸がぷるんとでかくなる。


シルヴィアを追いかけた罪を償わせてやる!



☆次回<<< オレの胸がゆれて邪魔!

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