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6ブレス<<< オレの胸はでかい!

「そうそう、適合有資格選別者ドナーライセンスゴッドチルドレンのことなんだけどさ。

略してドラゴンて言うんだ。

この世界、アーステルスは特殊な力の源があふれてる。

でもその力は普通のヒトには毒で。

大昔の、えーとなんて言ったっけ?」


サクラコが睨んでる。

怖い。

すぐに思い出すから待って。


「……そうだ!

大昔にチキュウって言われてた頃にヒトがいっぱい死んじゃうような大戦争があってさ?

アホな国のやつらがこの世界のどっかの大陸にアビスって言われる大穴を開けちまったんだ。

見たことはないけど端っこから端っこまで見えないほどのでかい大穴だってさ!

でっかいよな!」


「おおあなってなあに?」

「えーっとな?

穴は穴だよ」


「アナおねえちゃんのこと?」

「あのなあ、アーレ。

それはオレの名前だろ?

穴はこれのこと!」


壁を殴るとでかい音を立てて金属の壁にあっさり穴が空いた。

廊下が丸見えだ。


「おねえちゃんすご〜い!」


感心するアーレの笑顔がかわいい。

アーレはまだ6歳か7歳くらいの女の子だ。

正確な年齢は本人も知らない。


「アナ〜!

壁に大穴開けてどうすんのよ!

あとでちゃんと修理しなさいよね!」


オレが話したことをホワイトボードに文字として記していた乳のでかい少女が怒ってる。

ホワイトボードに書きかけだった文字がビーッと一本の線を描いていた。

オレだって文字はあんま読めないのに小さい子に字を書いてもしょうがなくないか?


「え? ああ!?

ついうっかり!

説明するより見せた方が早いだろ?」


「早いだろ! じゃない!

あちこち老朽化してるんだから壊すな!

このバカ力ドラゴン!」


「サクラコがバカって言ったあ!

バカって言ったやつがバカなんだぞお!」


乳のでかい少女、サクラコが老朽化って言った通りオレたち孤児が暮らすこのシェルターはボロボロのオンボロだ。

知らない金属でできた構造物はあちこち腐食してる。


「こ、このくらいで目に涙をためないで!?

も〜。体はバカ強いのに精神力は幼児並みなんだから!

もう14歳でしょ!」

「ふえ……またバカって言ったあ……

くすん」


「アナおねえちゃん、なきむしよわむしさんだあ。

よしよししてあげるね!」


「ぐすっ。

ありがとアーレ♪」


椅子から降りてオレの頭を撫でようと背伸びをするからしゃがんでなでなでしてもらう。

なでなでっていうかぽすぽす頭を叩かれた。

んは〜♪ うれし〜♪


「(なにこのビジュ!? アナがかわいい! 二人の姿が尊すぎる!)

アーレに慰められて喜んでる。

ほんとに子どもなんだから。

これでうちの稼ぎ頭なんだから参っちゃうわよね。

(ほんとに参っちゃう!)

ほら、続きの講義をして。

しっかり勉強できた成果を見せてね?」


「あ〜。椅子に座んな、アーレ」

「いえっさー!」


「さっきの続きな?

戦争で負けそうになった国のやつが外の世界に助けを求めようとしたらしいんだ?

勇者だか悪魔だか魔法だかをショーカンしようとしたんだってさ?

異世界だか異次元だかこことは違う世界とアーステラスを繋げる大穴を開けちまったんだって。

しかもその大穴、アビスはいまもあるし小さなアビスが新しくできることもあるんだってさ。

そんでそのアビスからとんでもないものがあふれ出したんだ。

エーテルとか魔素とかエナジーとか最初は色々と言われてたけど?

いまはソウルって言われてる。

知ってるか?」


「しらない!」


「なあ、サクラコ。

異世界とかアーステラスとかアーレ分かってるのかなあ?」

「いまはいいのよ。

ヒトに教えるとアナもしっかり再確認できるでしょ?

続けて」


「ソウルってのはな。

植物や生き物にとんでもない影響があるんだ。

でっかくなったり、変なことが起きたり進化しちゃったんだ。

そんでヒトにはすっごい猛毒だったんだ。

ほら苦い食べ物食べると、ぐええ!ってなるだろ?

あんな感じの毒でたくさんのヒトが死んじゃったんだってさ」


自分の首を絞めて苦い顔をして見せる。


「どくなの!

じゃあこんどからピーマンたべない!」

「うん、それがいいと思うな!

オレも食べない!」


「アナー?」

「ふわ!?」


サクラコの眉間が怖い!

こめかみがピクピクしてないか!?


「ピ、ピーマンは毒じゃないからちゃんと好き嫌いしないで食べろよ!?」

「アナもアーレもちゃんと食べよ〜ね〜」


「はい!」

「は〜い」


毒の前にサクラコの視線で射殺されそうだ!


「そんでそのソウルってのは普通のヒトにはよくないんだけど。

オレたちみたいにソウルを吸収できる適合有資格選別者ドナーライセンスゴッドチルドレン、ドラゴンにはとんでもない恩恵がもらえるんだ」


「おんけいって?」

「見てろよ?

ドラゴンソウル、リベレイション!」


ビキニタイプのアーマードスーツに覆われてない素肌から硬質のごつごつした物質が生えていく。

クリムゾンレッドの長髪の間から金色のつのがメキメキと2本伸びていく。

金色の瞳も変質して銀河のように輝く。


「うわあ!

赤くてかっこいい!

おっぱいおっきくなった!」


「なんでそこに注目!?」

「しょうがないんじゃない?

アナったら、リベレイションするとわたしよりも胸がおっきくなっちゃうんだから」


「あー。まあなあ」


両手でぷるんとした胸を持ち上げる。

でっかい。

立派なサクラコのたっぷんよりもおっきくなるんだよな。

バトルの時には邪魔でしょうがない。

あ……なんかオレの胸をサクラコが睨んでる?

ていうか見つめてる?

はっとした表情でサクラコが話を始めた。


「いろんなオーガニズムタイプやマテリアルタイプのドラゴンがいるけど、アナのリベレイションは見た目からしてドラゴンよね。

異世界における生物の頂点に君臨するっていう龍の姿。

伝説の最強種って言われてるけどほんとかしら?

本でしか見たことないけど本物もこんな感じなのかしらね?」


オーガニズムは生物や植物系で?

マテリアルは鉱物や無機物系だよな?


「オレは本なんて見ないから知らないよ?

ま、確かにオレは炎の龍(ファイアドラゴン)みたいだけどな。

そういうサクラコだって超レア種の一角獣ユニコーンじゃんか」


「別になりたくてなったわけじゃないわ。

あのくそ研究所のせいよ!」


「サクラコはワクチン投与でドラゴンになったんだもんな」

「思い出したくもないわ!」


「ごめん、余計なこと言っちゃった。

アーレ、これがドラゴンだ。

オレたちはソウルで死ぬことはない。

だからシェルターの外に行ける。

みんなの飯代を稼ぎに行けるってわけさ!」


「そうよ。

だからアーレはシェルターの外に行ったらダメだから。

外は普通のヒトには有害なソウルでいっぱい。

アナみたいにバカがつくほど頑丈じゃないと死んじゃうからね」


「またバカって言ったあ。

くすん」


「は〜い。

もうおそとにはいかな〜い」


アーレがしゅんとしてる。


朝方、寝ぼけ眼で宇宙ソラを眺めに行こうとした時、アーレが一人で歩いてるのを見つけた。

なんだろうとこそっとついて行ったら、勝手にシェルターから外に出ようとしていたから慌てて止めたんだ。

理由は聞いたけど教えてくれなかった。

もしかしたらカントリーの貧民街に戻りたかったのかもしれない。

親の姿を探すために。


「お利口さんにしてればいい子いい子してあげるからね♪」

「うん!」


サクラコに頭を撫でられて満面の笑顔だ。


「もしもアーレがドラゴンになったらオレと一緒に外に行こうな!」

「アナ!」


いけない。

またうっかり余計なこと言っちゃった。

アナがブチ切れ寸前だ。


「ごめん。

アーレ、ドラゴンには普通はなれないんだ。

その代わりにアーレはみんなの仕事を手伝ってくれよな。

お利口さんにシェルターで待っててくれたらお土産持ってきてやるからな♪」


「うん!」

「分かったら朝ごはんを食べに行きな。

腹減ってるだろ?」

「わかった! じゃあね!」


重い扉を開けて廊下に駆け出していった。


「アナ、ダメじゃない!

ドラゴンになるなんて話したら!」

「ごめん! うっかりしてた!」


「アナはインネイト(生まれつき)だからあんまり自覚がないのはしょうがないけどね。

適合有資格選別者ドナーライセンスゴッドチルドレンでもドラゴンになれないで死んでしまうヒトだって大勢いるんだから。

ドラゴンになるためのワクチン投与はすっごい死ぬほど痛くて苦しいのよ。

わたしだって死ぬかと思ったんだからね!

なれたとしても最悪、軍人奴隷にされるかもしれないの!

ドラゴンに憧れるようなことを言ったらダメよ!

分かってる!?」


「はい!

分かってます!

あ! もうそろそろオアシスに行かなきゃな!

今日はいっぱい稼げるといいなあ〜!

じゃあ、サクラコ!

アーレのことよろしく!

オレ、行ってくるよ!

じゃあな〜!」


「あ! こら!

話はまだ終わってない!

死なないように気をつけて!

ノーマルギアちゃんと装着しなさいよ!

ナワバリバトルに巻き込まれないようね〜!」


「オッケー!」


廊下に顔を出したサクラコに手を振って逃げるように走る。

だってお説教が始まると1時間は止まらないんだから!



☆次回<<< オレはオレの女を守る!

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