4ブレス<<< オレの女がかわいい!
「みんなおはよ〜」
食堂に入って挨拶すると女の子たちが口々に返事をくれる。
中にはわざわざオレのとこまでやってきてほっぺにちゅ〜してくる女の子もいる。
お返しに頭をなでなでする♪
みんな元気そうだ。
総勢98人。
下は7、8歳くらいから上は18歳くらい。
みんないろんなタイプのアーマードスーツを着た女の子だ。
だけど、オレたちドラゴンみたいに素肌の露出は多くない。
リベレイションしないから素肌じゃ不安だし、上にシャツやズボンを履いてる子もいる。
みんなと一緒におんぼろシェルターで暮らしている。
部屋もそうだけど食堂も倉庫も格納庫もどこもかしこも腐食していてボロボロだ。
一体どれだけ昔に建てられたのかも知らない。
「朝飯は……今日もオートミールのごっちゃ煮かあ」
「たまにはちゃんとしたご飯が食べたいわよね〜」
「しょうがないじゃない!
お金がないんだから!
アナとサクラコはたっぷり食べるんだよ!
もっといっぱい稼いでね!」
スタイルむちむちのクイネラが元気に声をかけてくる。
厨房をまかされてる女の子の一人だ。
カウンターにトレイを持ってくと大盛りにした一皿をのせてくれた。
オーツ麦とクズ野菜にクズ肉を煮た塩スープ。
「あんがとな、クイネラ」
「どういたしまして!
もっといろんな食材があったら美味しいものを作れると思うんだけどね!」
サクラコと並んで席について「いただきます」。
もちゃもちゃを口に入れる。
「うまいことはうまいんだけど……」
「もっちゃりした食べ応えはやっぱり飽きるわ。
昨日採集した資源とロックリザードが少しでも高く売れるといいわね?」
「うちで肉の加工ができればいいのになあ」
「加工する機械だって高いのよ。
食事が終わったらカントリーに行きましょう」
「分かったあ」
「二人ともおはようですよ」
「「オフィよ〜」」
二人してオフィリアにひらひらと手を振る。
「オフィじゃなくておはようですよ?
二人とも朝からあざとかわいいですよ?
ジャンク屋に行くんですよね?
燃料がそろそろ無くなるので注文してくださいよ。
買い出しもお願いしますよ?」
「せっかく稼いでも出費がバカになんないわよね?
でもまあロックリザードもそこそこいい値で売れるでしょ」
「いまオレのことバカって言った?」
「話し聞いてた?
バカじゃないの?」
「やっぱりバカって言ったあ。
ぐすん」
「すぐ泣くな!」
「はいよ。300万」
ジャンク屋の冷蔵倉庫で枚数を数え終えたいかついおっさんがカウンターに札束を置く。
その札束を凝視するサクラコと運送係の双子かわいいキャリーとネシティ。
二人はトレーラーの運転手をすることが多い。
「ええ!? それだけ!?」
「悪いなサクラコ。
見ての通りロックリザードが大量に入荷しちまって値崩れしてんだ。
他の資源はあんまりいいもんなかったしな」
解体されたロックリザードが吊るされて冷え冷えに冷やされてる。
オレも寒いんだけど。
「そんなあ」
「それにこんがり焼きすぎだ。
アナ、もっと出力調整できるようにするんだな」
「アナのせいか!」
「へへ。ごめん」
「お前らから請け負った仕事も終わったし、常連のよしみでこれでも色をつけてんだぜ?
最近はどこも景気が悪くてよお。
シルヴィアみたいにレアもん持ってきてくれたら高く買い取るぜ?」
「それができれば苦労はしないわよ」
「あいつも一人じゃ危ないだろうによくがんばるよなあ。
そうそう、カントリー同士のオアシスの取り合いやシェルター同士のナワバリバトルが増えてるからな。
お前らも気をつけろよ」
ユグドラシルフォレストのようなオアシスは資源を採集できる貴重なエリアだ。
どのカントリーも領有権を主張しているし、シェルターによる不法な採集もあったりする。
オレたちのことだけど。
「ええ!?
そうなの!?
しばらく食事の量を減らすようかしら?」
「食いもんぐらいしっかり食えよな。
期待はしないがいつでも持ち込んでくれよ」
「少しは期待しなさいよね!
ふん!」
「300万て少ないのか?」
「全然少ないわよ!
うちは98人もいるのよ!
食費だけじゃなくてシェルターの維持費にトレーラーの燃料費にノーマルギアや酸素シリンダーの供給装置だってメンテナンスしないといけないんだから!
こないだ完成したばっかりのあれのローンだってたんまり残ってるし!
それにみんなにお小遣いだってあげたいし!
わたしもおしゃれなアクセサリーが欲しい!
アナもわたしもお小遣いなしね!」
「え!?
ほんとに!?
せっかくカントリーにきたからピーチグミ買いだめしようと思ったのに!
え〜! やだ〜!
この世の終わりだ〜」
しゃがみ込んで地面にのの字を描く。
「どんだけ落ち込むの?
あんたほんとにグミ好きね?
……い、いいわよ!
グミくらいなら買ってあげるわよ!
その代わりしっかり稼ぎなさいよね!」
「ほんと! わ〜い!
サクラコ優しい〜!
あんがとな!」
飛び上がって万歳。
はぎゅっと抱きついてほっぺにちゅ〜する。
「ふへ♪
も〜。しょうがないわね?」
「お前ら商売になんねぇからこんなとこでいちゃつくんじゃねぇよ。
他の客の視線をちったあ気にしろよな?」
「うぎゃ!?
キャリー、ネシティ、必要な買い出しお願いしてもいいかしら?
わたしはアナと一緒にお土産を買いに行ってくるから。
みんなで先に帰ってて」
「期待したほど収入がなかったんだしお土産ならみんな我慢できるからいいよ」
「わたしもいらないし〜」
大事な資源を運ぶ運送係のキャリーとネシティはみんなに信頼されてるしっかり者だからこういう時は遠慮しがちだったり。
「ダメよ!
みんな毎日がんばってるんだから!
あんまりいいものは買えないけどご褒美の一つも用意してあげなきゃ!
心配しないで大丈夫!
任せて!
(わたしの貯金から少し足せばちょっとくらいいける!)」
「サクラコ……」
「優しい〜!」
「オレたちの女神様〜!」
「うぎゃ!?
三人して抱きつかないで!?」
「だからいちゃつくなって言ったろ?
燃料だったらシェルターまでタンクローリーで運んでやるよ。
諸々うちで買うなら安くしとくぜ」
「ごめんなさい!
そしてありがとう!
いかついけどイケメン!
二人とも、あとはよろしく!
行くわよアナ!」
「うん♪」
「わ〜い♪
ピーチにグレープにストロベリーにホワイト♪
グミがいっぱ〜い♪
うっれしいなあ♪」
「よかったわね。
みんなのお土産もそこそこ買えたし帰りましょうか」
「サクラコは自分の買えたのか?」
「わたし?
わたしはいいわよ。
欲しいものなんてないし」
「でもアクセサリー欲しがってたじゃん」
「アナのくせによく覚えてたわね?
高くてとても買えないからいいのよ」
「あのさ。こんなんでよかったらもらってくれるか?」
おずおずと腰をくねっと小さな袋を差し出す。
「(かわいい! なんでそんなに恥ずかしそうにするの!?)
なにこれ?
開けていい?」
「もちろん」
「これって、ブレスレット?」
「ガラス玉でできた子どものおもちゃだけどな」
一応サクラコの青い瞳とクリーム色の髪に合わせてみた。
「うそ……アナってばお金持ってたの!?
貯金なんて考えたこともない全部使っちゃうおバカさんのくせに!」
「サクラコがまたバカって言ったあ。
オレだってちょっとくらいはあるんだよう。
ぐす」
実はほかにも買ってたりする。
安物だけど。
「ああ!? ごめんね!
そっか……
えへへ、そっか。
あは♪
そっかあ♪
にひひ♪
ありがとねアナ♪」
満面な笑顔でルンルンご機嫌のサクラコがかわいいな!
「どういたしまして!
んじゃあ、帰るか!」
トレーラーに乗り込んでオレたちのホームシェルターへと向かう。
でこぼこの整備されてない道を進む。
周りを見るとオレたちのシェルターほどじゃないけどぼろっちい建物が並んでる。
ジャンク屋もオレたちが買い物をしたストリートマーケットもカントリーの端っこにある。
カントリーの中でも貧しいヒトたちが暮らす貧民街。
場合によってはオレたちよりも貧しいかもしれない。
「サクラコ! 止めろ!」
「どうしたの?
あ! なによあいつら!」
急ブレーキをかけてトレーラーを停めるサクラコ。
カギはしっかり抜いて二人で急いで向かう!
☆次回<<< オレは女を口説く!