35ブレス<<< オレ、一人でいっちゃうな!
「たしかに……
脳波インストールで学んだ通りノアの推進装置ならいける?
だけど大気圏までよ!
宇宙を航行するための装置がないもの!」
「クインはむつかしい言葉が多くて困るんだよなあ。
タイキケンて分かんないけどさ?
近くまでいけるんだな?
それならあとはオレにまかせろ!」
「オレにまかせろってなにするつもり!?」
「まあなんとかなるって!
キャリー! ネシティ! 聞こえてるか!?」
『聞こえてる!』
『どうかしたの〜?』
「作戦変更!
すぐにオレたちを迎えにきてくれ!
宇宙へいくぞ!
ケイオスのカケラを壊してアビスをふさぐ!」
「それならわたしもいくわ!」
「オフィもですよ!」
「アーレも!」
割りかし近い場所でヴァルキューレ軍と戦ってるサクラコたちの声。
ちゃんと聞いてるし!
「もちろんわたしもいく!
お母様のやろうとしていることを止めたい!」
クインの鼻息が荒い。
「そうだな!
みんなでいこう!」
親指を立てて応えると胸がぷるんとゆれる。
「そんなことさせるかあああ!」
「しまたね!」
シャオちゃんを振り切って、一足跳びに突進してくる怒りの形相のイーラ。
ちょっとちょっと!
オレいま油断しまくってたんだけど!?
とんでもない龍気の拳がオレの鼻先に!?
「強襲鋼弾!」
メキメキと鋼の筋肉が盛り上がったコンパクトな拳打の連弾!
イーラのみぞおちに強烈な肩の体当たり!
突然の横合いの攻撃で突進は止めたけど、びくともしないイーラにしがみついて踏ん張ってる。
無精髭をすっかり剃ってキランと歯を見せる傭兵団スクラッパーのマテリアルドラゴンがなんかアピールしてる。
「おっさん!
誰だっけ!?」
「イッシュだ!?
デートの約束したろ!」
「「「「「「男とデートの約束!?」」」」」」
「してない!」
「勝手に借りた仮を返すからな!
デートしろよ!
そんで俺の女になれ!」
「なんない!
しないから!」
勝手に?
フレイムクリスタルキャニオンで劣勢だったこいつらのところにミサイルをぶん殴った時のことかな?
あれで逃げられたんか?
「邪魔すんじゃねぇ!」
激おこでイッシュを殴って振り解くイーラの前に銀灰色のボディが美しいお姉様が立ちふさがる。
「イーラ様の想いははじめて聞きましたけどねぇ?
あたしもアビスにはいって欲しくないんですがねぇ」
「フラム!? テメェも邪魔しやがるのか!」
「アナの女になったからねぇ。
若い力ってなあいいもんさ!」
フラムの硬さでイーラの拳を受け止めて、殴り合いが始まる。
「アナちゃんいくね!」
「シャオちゃん! フラム! イーラをよろしく!」
「まかせるね!」
「いってきな!」
「俺は!?」
「おっさんもついでによろしく!」
「おう!」
「みんないくぞ!」
「もちろんよ!」
「はいですよ!」
「早くいこう!」
「にゃんにゃんにゃ!」
「ルミナの民を置いていくことはできません。
わたくしはここに残ります」
気持ちよく返ってくるみんなの返事の中でレイナ一人だけ違う声。
「分かった!
あんまり無茶するんじゃないぞ!」
ちょうどいいとこに空挺艦がやってきた。
運転席でキャリーが手を振ってる。
後部ハッチから乗り込む。
もう戦争どころじゃないからミサイルも撃たれない。
飛び立つ空挺艦。
開いたままのハッチから見える黒い光がまた太くなってアビスが大きくなってる。
上から見ると深そうに見える穴が空いてる。
逃げ遅れた軍人たちが吸い込まれて、オレたちの焼け崩れたシェルターが飲み込まれた。
サクラコの瞳が潤んでる。
シルヴィアのシェルターにもそのうち届いちゃいそうだ。
そんなことになったらシルヴィアも泣いちゃう。
なんとしてでもなんとかしなきゃ。
「ノア。
宇宙へいけるか?」
艦橋の艦長席から2.5頭身の白猫ノアちゃんに聞いてみる。
『残念ですがいけにゃいですにゃ。
宇宙空間に到達するためにはノアのシャトルパーツをドッキングする必要がありますにゃ』
「それどこにあるの?」
『存じ上げませんにゃ』
「そっか。
とりあえずいけるとこまでいく!
みんな!
ちょっといきがかりで宇宙の近くまでいくことになった!
ほんとごめんな!
悪いけどオレに付き合って!」
艦内のみんなに声をかける。
きっとスピーカーを通して聞いてくれてる。
「アナ、ケイオスの衛星を捕捉したよ!
モニターに出します!」
情報担当のコノちゃんがコンソールを操作するとモニターに映る衛星兵器。
コノちゃん、難しいこといろいろよくできるな?
「あれが大量破壊兵器ケイオスのアビス発生装置の一つなのね。
あんなのが宇宙のあちこちにあるんだってお母様から聞いたことがあるの」
「おっかねぇな。
大昔のやつはなんであんなもん作ったんだよな?
サクラコは勇者だか悪魔だか魔法の力を使うためって言ってたよな?」
「よくあるお伽話よ。
そんなの知るわけないじゃない。
異世界の力なんて結局手に入ったのかしら?」
「オフィたちドラゴンみたいな力なんですよ?」
「あったら便利だけどなんでも壊しちゃうような力じゃダメじゃん」
「イーラもお母様もなにかのために欲する心を制御できなかった。
わたしも力を欲しいと思っちゃったし」
「クインの気持ちは分かるよ。
オレもオレの女たちを守るために力はあった方がいいと思ってる。
だけど力だけじゃダメなんだ」
「アナ! 見て!」
コノちゃんの大声が艦橋に響く。
「さっきよりも黒い光が太くなってるんですよ!」
「地上のアビスも大きくなってるわね!」
それぞれモニターに映る光景に息を飲むみんな。
「アナ、高速飛行でここまできたけど、これ以上高度が上がらないよ!」
「ノアちゃん精いっぱい〜」
『キャリー操舵手とネシティ操舵手のおっしゃる通り限界高度到達ですにゃ』
二人とも操舵手って言われてにんまりしてるし。
「それでアナ?
どうするつもり?
もしかしてミサイルで攻撃するとか?」
『申し訳にゃいですにゃ。
ただいま装備中のミサイルでは届かにゃいですにゃ。
適正装備の換装が必要ですにゃ』
「たぶん大丈夫!
オレに考えがあるんだ♪
そんじゃあいってくる!
みんなあとはよろしく!」
艦長席を飛び降りて駆け出す。
考えって言ってもそんなに複雑なことじゃないけど。
「あんたバカ!?」
通路を駆けながらそんなに思いっきり言わなくてもいいじゃん。
「なんで二人ともついてくるんだよお。
サクラコがバカって言ったあ。
くすん」
「当たり前でしょ!?
衛星まで飛んでいくなんて無茶もいいとこでしょ!?」
「アナらしくて単純なんですよ」
「外はとんでもなく寒くかったり暑かったり空気もないし、宇宙線とかすごいのよ!」
「オレたちなら大丈夫!」
「大丈夫なわけあるか!」
「でもさ?
ドラゴンギアを脳波リンクした時にさ?
宇宙でも活動できる機能があるなんて情報が脳みそにインストールされたと思うんだ?
サクラコはなかった?」
「え?
……そういえばそんなことあった!
おバカなアナに言われるまで忘れてたわ!」
「サクラコがバカって言ったあ。
くすん。
でもオレの方が覚えてたな!」
「なんか悔しい!」
到着したエアロックに響く声。
「二人はここまで!
オレ、一人でいっちゃうな!」
「わたしもいくわよ!」
「オフィもなんですよ!」
「ええ!? 危ないからオレ一人でいいよ!」
「わたしの癒やしが必要になるかもでしょ!」
「オフィの水晶の力もなんですよ!」
「待って!
わたしもいく!
ドラゴンギアのポーチも着けてきたわ!」
閉めようとしたエアロックの扉に手をかけて入ってきた。
「クインも!?
まだドラゴン化したこともないし脳波リンクもしてないだろ!?」
「脳波リンクの準備ならばっちりしてあるから見てて!」
「待った!」
制止を聞かずにデバイスのコンソールをタップするクイン。
「はや!?」
クインの体ががくがくと震えてる
「ひう! ふうぅ〜〜〜!」
「あらまあ。
やっちゃったわね」
「お顔が真っ赤なんですよ」
「ア、アナ〜。こ、こんなの……」
「全身マッサージみたいで気持ちいいだろ?」
潤んだ瞳で呼吸の荒いクインの背中をさする。
「へあ!」
がくがく震えていまにも気を失っちゃいそう。
「ま、負けてたまるか〜!」
「おお! 耐えてる!」
へにゃんとした声だけど。
なんとか持ち直したみたい。
「そんなんでいけるのか?」
「うん……いく……
いっちゃうに……決まってるよう」
はあはあびくんてしてるけど気合いはたっぷりみたい。
エアロックのブザーが鳴る。
「そんじゃあ四人でいっちゃうか!」
「「「「ドラゴンソウル! リベレイション!」」」」
オレたち三人はいつもの感じで変身。
ごつごつした赤い鱗の炎龍のオレ。
クリーム色の毛皮に包まれた一角獣のサクラコ。
キラキラと幻想的な青水晶のオフィリア。
ビキニタイプのアーマードスーツを着たクインの変身は?
キラキラと輝くサイドポニーテールの青味がかったプラチナブロンドから青い炎が噴き出す。
背中と肩、両脚からも青い炎が燃え上がる。
濃青色の瞳も変質して銀河のように輝く。
輝いてゆらめく青い炎が神秘的だ。
「うわ! わたし、燃えてる!」
「なんのタイプだ?」
「青い炎だけなんて見たことないんですよ?」
「まるで精霊か神様みたいね?」
「のんびりしてる場合じゃないな!
ドラゴンギアカグツチ! コネクト!」
「ドラゴンギアパナセア! コネクト!」
「ドラゴンギアビブラ! コネクト!」
「ドラゴンギアアマテラス! コネクト!」
赤色、クリーム、水色、青色のギア。
腰と背中、おしりの上に装着しているギアポーチから補助アーマーが展開して腕、脚、頭に一瞬で装着された。
気持ちよくてぶるっとする。
みんなで口にだけつけるタイプの酸素シリンダーを追加で装備する。
短時間だけど十分持つはず。
「「「「モードユニバース」」」」
四人のギアが稼働する。
「アナの言う通りなんですよ。
たしかに宇宙空間でも活動できるようにソウルが膜を張るように体を守ってくれるんですよ」
「へへ♪ だろ♪」
艦外に通じる扉を開く。
ケイオスの衛星兵器がはっきり肉眼で見える。
いまぶっ壊してやるからな!
☆次回<<< オレの体が熱くじんじんする!




