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29ブレス<<< オレはぷるんと胸を張る!

「言ってる意味が分からない。

死んだものが異世界にいると?」


「だから生きてるって言ってるでしょう?」


クインとイーラがそれぞれいぶかしげな視線を交わしてる。


「小さいクイン。

当時、戦の最中にあて指揮官だったイーラは遠征中に出産したね」


「え? 赤ちゃんが産まれるのに戦争に行ったの?

ほんとに?」


戦場はすっごいびっくりなんだけど。

それってさすがに辛くない?

ヒトによっては出産前日まで働くこともあるけどさ。


「わたしたちヴァルキューレの女は戦うことに喜びを感じるのよ♪

生と死が共存する最前線で我が子が産まれるなんて素敵なことじゃない♪」


「わたしもヴァルキューレの民だけど全然理解できない」

「最近の若い子はヴァルキューレの精神を忘れてしまって嘆かわしいわ」


心から信じられないものを見るようなクインに対して、とても残念そうに頭を振るイーラ。

傭兵のおっさんイッシュが狂信的って言ってたのも納得。

だけどそんなことに捉われてるヒトたちってなんだかかわいそうじゃないか?


「我が子を抱くイーラはそれはもう喜んでたね。

お祝いに駆けつけたうちも嬉しかたよ。

だけどね。

イーラが指揮する一個師団が出撃したのち、偶発的に起こたアビスの出現で前線基地がなくなたよ。

イーラの娘もアビスに飲み込まれたね。

イーラは嘆き悲しんだね。

うちもとてもとても悲しかたね。

帰てしまたこと後悔したね。

女帝だた大きいクインは戦略上その事実を隠したね。

飲み込まれたものは公式的に病死にしたね」


「まさか……アビスに落ちた先で生きてると思ってるの!?」


「わたしの部下たちが娘を守ってくれてるわ♪

強い女の子たちですもの♪

まだ名もないわたしの娘♪

顔を見たらきっと素敵な名前をつけてあげるわ♪

でももう名前をもらってるかしら?

そしたら困っちゃうわね?

あの子のために大穴を、次元の扉をケイオスで開けるのよ♪

そうすればあの子に会いに行けるわ♪」


「そのために軍事クーデターを起こしてルミナを支配したの!?

小さいわたしに稽古をつけてる間もそんな計画を立てていたの!?」


「そんなことないわ。

だってケイオスについての情報なんて知らなかったもの。

その話を大きいクインから聞いた時は嬉しくて嬉しくてたまらなかったわ♪

だけど肝心の場所を教えてくれなかったのよ。

そういう時は戦いで支配して奪い取るものでしょ?

わたしたちヴァルキューレは♪」

「狂ってる……」


「あら♪ 信じてるだけよ♪

大きいクインの居場所もケイオスの場所もわからないのなら今度はここ、テルースかしらね?

支配した後に素敵な情報が見つかるといいんだけど♪」


「そんなにアビスの大穴に入りたいのか?

世界のどこかにあるっていう大穴から行けばいいんじゃないの?」


「どこかにあるはずなのに誰も知らないのよね?」


「そうなの?

それならユグドラシルフォレストのあたりでアビスが連続で発生してるって話を聞いたけど?

うまくすればそこから行けるんじゃない?

戦争するよりも一人で勝手に行けばいいじゃんか!」


腰に手を当ててほっぺたぱんぱんにしてユグドラシルフォレストの方向にビシッと指を差す。

ちょっと大きな声だったかもしんない。

色々難しくて分からないけどクインが悲しそうに怒っているのはしっかり分かった。

シャオちゃんも切ない顔をしてる。

そしてずっと明るく話してるようにしているイーラも……なんだか心配だ。

オレ、怒ってるのかもしんない。


「元気なお嬢さんね♪

アナ……

そう……アナスタシアね。

見れば見るほど……」


「イーラ! 黙るね!」


「「アナスタシア?」」

「オレのこと?」

「アナには関係ないね!」


「ふふ♪

シャオお姉様、そんなに心配しないで♪

アナ、アビスの情報をありがとうね♪

あなた、話を聞きながらわたしのことも心配してくれたでしょう?」


「え? そんなこと言ったっけ?」

「氣の流れで分かるわよ♪」


え? そんなこと分かるの?


「とても嬉しかったわ♪

小さいクイン、いまのあなたにわたしが止められるかしら?」


「それは……」


子どもをあやすような優しい目つきのイーラに悔しそうに目を伏せるクイン。

こいつそんなに強いのか?

たしかに強そう。


「わたしはもう行くわね?

久しぶりに会えて嬉しかったわ♪

そうね?

わたしはまだるっこしいのは嫌いよ♪

あなたたちのところにルミナのお姫様もいるのよね♪

あの子の大事な民も、ヴァルキューレのお仲間もテルースにいるのよね?

うふふ♪

アナ、次は戦場で会いましょう♪

楽しみにしてるわね♪」


手をひらひらと振りながら背を向けて歩いていく。

停めてあった高そうな車に乗って行っちゃった。


「戦場で会おうってどういうことだよ?」


「わたし……」


ぺたんと地べたにおしりをつくクインが悔しそうに唇を噛んでる。


「クイン、大丈夫か?」


クインの正面に膝をついて震える肩を抱き寄せる。

しばらく抱きしめていたら寝息を立て始めた。

ここんとこずっと寝れてなかったのかもしれない。


「なあ、シャオちゃん。

オレってイーラに勝てると思うか?」

「やてみないと分からないね。

でもきと勝てないね」


「そっか。

いま戦っておけばよかったかな?

オレ分かんね」

「なんでもかんでも力技は良くないね。

話すの大事ね」


「そうだな。

シャオちゃん。

あのお姉様って見た目20代前半だったけど?

ほんとはもっと年上だろ?」

「そうね。

それがどうかしたか?」


「だってシャオちゃんてお姉様って言われてたじゃん。

イーラもそうだけどシャオちゃんてほんとは歳いくつなの?

ふみゃ!?

痛った〜い!」


後頭部に頭突きされた!


「レディに年齢を聞くのは失礼ね!

アナちゃんもいまの見た目のままいたかたりするか?

龍気を操れば若いままいられるね?」


「龍気ってそんなことできるの!?

それでそんなに若造りしてるんだ。

ふみゃ!?

痛った〜い!」


また後頭部に頭突きされた!


「若造りじゃなくて若いね!

うちはアナより年若い頃からこの姿を維持してるね!」

「オレより若い頃って言うけど見た目年齢の割に胸でかいじゃん」

「これも龍気のおかげね」

マジか。

化け物だな」

「うしゃ〜!

化け物ないね! うちは天才ね!」


黒髪ウェーブな長髪が龍気にあおられてゆらゆらと蛇のように蠢いてる。

これ以上なんか言うとほんとに殺されそう。


「シャオちゃんは天才天才。

よかたな!」


クインを抱きかかえて立ち上がりシャオちゃんの頭をぽんぽんする。


「わ〜い♪

て、なんだかいいかげんに扱われた気がするね」


うんまあそう。

クインを小屋のベッドに寝かせてやる。

四輪自動車ランドローバーが激突したせいで小屋の屋根と壁に穴が空いてるけど。

扉もそのうち壊れそう。


三人の女軍人は起こしてやったら帰った。

ていうかシャオちゃんに説教されて帰った。

小屋と納屋の修理費用を払わせるためにクレジットカードをしっかりスキャンしてた。

三人とも教え子なんだって。

きっとひどい修行をさせられたんだろう。

ひどく怖がってたなあ。

オレ、その気持ちがよく分かる。


背もたれのない椅子に座る。

空いた屋根からカントリードームの高い天井を眺める。

小鳥が羽ばたいて飛んでいる。

外気では羽ばたくことのできない生き物。


さっきまでと違ってゆるっとした時間が過ぎてゆく。

すっかり寝入ったクインの寝息がかわいい。


なんだかいろんな話を聞いた。

戦争。

生と死。

生きる方法。

縛られた生き方。


「なんだか籠の鳥みたいだな。

みんな宇宙ソラへ羽ばたければいいのにな」

「アナちゃんお茶淹れるよ」

「ん、あんがと」


急須からお茶を注ぐシャオちゃん。

小さな丸テーブルに小さな茶杯が二つ置かれた。

ちらっと聞いた話だとお茶セットは一点物で値段がつかないものらしい。

なんでそんなの持ってるの?


鮮やかな緑色。

ふくよかな茶葉の香りが鼻に心地いい。

さっそくごくり。

さわやかな甘味と熱さがちょうどよくうまい。

緑茶の女王と言われてるやつ。

きっと高い。


「シャオちゃんが淹れてくれるお茶おいしい」


「それはよかたね。

宇宙ソラとは大きく出たね?

まるで詩人ね?」

「いやまあなんとなく?

カントリーとか戦争とかなくなればって思ってさ?」


そうなんだよ。

カントリーなんて区分けがあるからいけないのかもしれない。


「ふえ? カントリーをなくすね?

それはまた……

アナちゃん。

アナちゃんならできると思うか?」


テーブルの向こうでシャオちゃんの黒い瞳がオレを射抜くように見つめてる。


「ならってどういうことだよ?

オレはオレの女たちを守れればいいなって思っただけ。

とりあえずオレの女たち100人はいるしな!」


「百が万になたらどうね?」

「なにを言いたいの?」


「どうね?」


……


「10000人だろうとオレの女だったら守る!」


「言うと思たね。

アナちゃん、一人でか?」

「ん? 一人じゃ無理だろ?

オレとオレの女たちとだな!」


ぷるぷるぷるんと胸を張る!


「そね♪ きっとアナちゃんならできるようになるね♪

ささやかに畑を耕して生きる道もあるけどね♪

畑でとれた白菜の漬物食べるね♪」


小皿を差し出すシャオちゃんの瞳が嬉しそうに輝いてる。

ほころぶ口元に運ばれる茶杯。


シャオちゃんは昔からなにかを問いかけるようなことを聞いてくる。

不思議とオレを試すようなこと。


「シャオちゃんはオレの女になってくれないの?」

「うちに勝てないうちはまだね♪

弟子は弟子ね♪」


「えー! 一生勝てる気しないんだけど!」

「そんなこと言てるようじゃ一生弟子ね♪」


「いた! アナ!」


バタンと小屋の扉が開いて、そのまま扉が倒れた。


「壊れた!」

「あれ? サクラコ?

なんできたの?」


ずずっと二人で茶をすする。


「なにをのんびりお茶飲んでるのよ!

クインはどうしたの!」



☆次回<<< オレはみんなの顔を見ながら話したい!

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