27ブレス<<< オレはぷるんとコロコロ転がす!
『アナ! 聞こえてる!』
「サクラコ? どしたん?
おっちゃんとこでたっぷり買い出しできたぞ」
シルヴィアのところを出発していくらか経った頃、トレーラーの無線機から聞こえる声。
『それはよかったけど!
どしたんじゃないわ!
何日も連絡しないで心配してたんだから!
無線にも出ないし!
シルヴィアから無事なのは聞いてたけど、連絡くらい入れなさいよね!
このバカ!』
「うぇ〜ん。
サクラコがバカって言ったあ」
『だったら反省しさない!』
「ごめんなさい。
ちゃんと連絡します」
『約束よ!
それでね、クインが朝からいなくなっちゃったのよ。
ホバーバイクが1台ないんだけどね。
ノアがレーダーを確認したんだけどテルースに向かってるみたいなの』
『アナ艦長。走行速度から正午に到着すると予想されますにゃ』
『管制応答装置って識別信号で居場所が特定できて便利ね。
出かける前に二人で話してたででしょ?
なにか聞いてない?』
またよく分かんない言葉が出てきた。
とにかく戦艦の機能とノアちゃんを便利に使えてるみたい?
「うんにゃ。
なんにも聞いてないと思うけど?
でも心配だな?」
あれ? そういや覚悟がどうとか言ってたっけ?
『でしょ?
あの子ったらヴァルキューレの元皇女で軍人に追われてたじゃない。
レイナともずっとぎくしゃくしたままだったし』
「そっか。
そしたら行ってみるよ。
いまから向かえばオレの方が早くつくと思う。
たぶんオレたちがよく使うエアロックから進入するだろうからさ」
『危ないことがあるかもしれないから気をつけてね。
わたしたちも向かうから』
「いや、とりあえず連絡待っててくれるか?
行き違いになっても困るだろ?」
『でも!』
「まあ大丈夫だって。
じゃあそういうことでよろしく!
オレのサクラコはおとなしくみんなと待っててな」
『アナのバカー!』
ザザッとノイズを残しながらぷつんと通信が切れた。
「サクラコがバカって言ったあ。
ぐすっ」
通信が切れたマイクに向かって一応文句。
「なんでみんなしてバカバカ言うんだよう。
ふぇ〜ん」
誰もいないのに無意識に肩と頭をふりふりつの口する。
ガコンとギアを切り替えてハンドルを回すと大きく旋回する。
整備されてない道を外れて荒野のガタガタのせいででかい車体と胸が大きくゆれる。
下手くそなギアチェンジで加速する。
ちょっとスピード出しますか!
道に戻る時に荒れたでこぼこで車体がバウンドする。
はい。
この時に積んでいた荷物が少し、ほんのちょびっと、ううん、かなり落ちました。
全部じゃないよ?
上に積んでいた分だけだよ?
後でサクラコにめちゃくちゃ怒られました。
一応、落ちてないか色々終わったところで見に行ったけどしっかりなくなってた。
たぶんどっかのシェルターが持っていっちゃったんだと思う。
涙が止まりませんでした。
だってシルヴィアが教えてくれたマッシュルームエリクサーの稼ぎで買ったものなんだもん。
運送係の双子かわいいキャリーとネシティの運転技術ってちゃんとすごいんだな。
反省します。
もう二度と運転しません。
ごめんなさい。
そんなわけでカントリーテルースのいつものエアロック。
エアロックはメインやサブが何ヶ所かあるけど規模が違ったりする。
他のカントリーと交易をしてるテルースはメインエアロックの出入りが多い。
オレたちシェルターのやつらや訳ありアウトサイダーは規模の小さいエアロックで出入りする。
もちろん自由に出入りできるわけじゃなくて検閲がある。
けど、サブエアロックは賄賂を使えば簡単に通れたりする。
うちはテルースとの取り引きを認められてるから通行証がちゃんとあるけどな。
ていうかオレって検閲管のヒトたちにどういうわけか人気があるから顔パスだったりする。
「今日もジャンク屋か?」
「もちろん♪ おっちゃんグミ食べるか?」
「今日もアナは元気だな。
もらうよ」
「手を出して?
こぼさないようにな♪」
「お、おう」
運転席から身を乗り出して無意識におっちゃんの手にオレの手を優しく添える。
ツーサイドアップの髪がおっちゃんの手にサラリと落ちる。
ポーチの収納からグミの袋を取り出すとおっちゃんの手のひらにぷるんとしたグミをコロコロ転がす。
大きな胸もぷるんとゆれる。
「おっちゃん、仕事がんばってな♪」
無意識ににっこり笑顔。
「気をつけて行けよ〜♡」
「あんがと〜♪」
おっちゃんが上機嫌に手を振って見送ってくれた。
他の検閲官がうらやましそうに見てる。
そんなにグミが嬉しいんかな?
もしかして通行証なくても通れちゃうんじゃない?
いつも確認されないし。
こんな賄賂でいいんなら楽勝♪
少し入ったところでトレーラーを停める。
ここは一本道だ。
クインは訳ありっぽいから一番検閲が緩いこのサブエアロックを必ず利用するだろう。
サクラコとノアちゃんから聞いた話の通りならもうすぐここを通るはず。
燃料がもったいないからエンジンを切る。
運転席に座ったままサイドミラー越しに様子を見てたら?
もんのすごい勢いでホバーバイクが検閲所を通り抜けてる。
続いて追いかける四輪自動車がスロープでバウンドしてる。
ホバーバイクはオレが乗ってるトレーラーをあっという間に追い越していった。
すれ違いざまに見えた姿は。
「クイン!」
四輪自動車には見覚えのある女軍人三人が乗ってる。
「また追いかけられてんのか!」
慌ててキーを回してエンジンをふかす。
ギアチェンジが下手ですぐにスピードが乗らない。
「遅い! こんなんじゃダメだ!」
キーを抜いてトレーラーから降りる。
「ドラゴンソウル! リベレイション!」
ビキニタイプのアーマードスーツに覆われてない素肌から硬質のとげとげした物質が生えていく。
クリムゾンレッドの長髪の間から金色のつのがメキメキと2本伸びていく。
金色の瞳も変質して銀河のように輝く。
胸がぷるんとでかくなる。
「ドラゴンギアカグツチ! コネクト!
ふみゃん!?
深紅の翼!」
腕や脚、各部の装甲がオレのサイズに合わせて稼働していく。
オレと繋がる感じがやっぱり気持ちいい。
肩と背中部分のごつごつから炎が翼のように吹き上がる。
ドラゴンギアがカッコよく変形して炎の制御をしっかりサポートしてくれる。
全速力で走りながら飛び上がる。
「姫様!
お待ちください!」
「やだ! 待たない!」
郊外に向かうクインのホバーバイク。
ほぼ並走して追いかける四輪自動車。
こっちの方向は……
「どうしてもお待ちいただけないなら実力行使あるのみです!」
「か弱い乙女に乱暴はやめて!」
ボーラガンで拘束具が音を立てて撃ち出される。
アクロバットな操縦とハンドルだけ握って体を倒立するようにして避けるクイン。
すっげぇ。
か弱い乙女?
どこが?
クインてばなんかすごくない?
「我ら反乱軍の中でもっともお強いお方がなにをおっしゃいます!
戦ったら我らなど瞬殺でしょう!
まるでドラゴンににらまれたカエルの気分です!
あなた様に勝てるものがいるとは想像できません!」
「化け物みたいに言わないで!
わたしはドラゴンじゃないし、さすがにドラゴンには勝てないよ!」
「ドラゴンを生身で倒せるんじゃないですか!?」
「できないって!」
「なに?
クインてそんなに強いの?
そういや最初に会った時の身のこなしはすごかったもんな?」
炎翼を羽ばたかせて2台の間に入って水平飛行。
「アナ!?
ちょうどいいとこにきてくれたね!
わたしを助けて!」
「姫様って言ってたし仲間じゃないの?」
「仲間だけど仲間じゃないの!」
「先日の化け物女が飛んでる!?」
「化け物じゃないよ!?
お前らなんでクインを追いかけてるの?」
「姫様のためにヴァルキューレを取り戻したいのです!」
「我らのカントリーを我らの手に!」
「女帝を名乗るイーラなど奸賊!
我らの皇帝が行方知らずのいま、正当な継承者はクイン皇女なのです!」
「あんなこと言ってるけど?」
「それはそうなんだけど違うの!
こいつらわたしを旗印に戦争したいのよ!
わたしはか弱き戦争反対派!
反乱軍として事を起こすのは嫌なの!
もううるさい!」
ホバーバイクを背面飛行にして一回転するバレルロール。
石を拾うと一番口数が多かった女軍人に投げつけるクイン。
女軍人のおでこに当たって気絶した。
えー。
ホバーバイクで走りながらそんなことするの?
クインてば確かに強そう。
「どこがか弱いんです!?」
「全部!
きゃあ!?」
四輪自動車が体当たりすると重量の差で弾かれるホバーバイク。
クインはクインでハンドルを握ったまま体を飛び上がらせて、もう一人の顔面に蹴りを入れてまた気絶させてる。
オレの手助けいらないんじゃないの?
「お姫様相手に容赦ないなあ。
ていうかクインも激しすぎ。
さすが戦闘民族」
ボーラガンやらカーチェイスやら激しくする理由が分かったよ。
小柄な女の子になんてことすんだと思ったけど納得。
あの時はアーレがいたから逃げに徹してたのかな?
そんなカーチェイスも終わりの時がきた。
「ほわ? なにね?」
「きゃあああ!?」
「危ない!」
正面に現れた女の子をぎりぎり避ける2台。
それぞれ派手に小屋と納屋に激突して停車した。
☆次回<<< オレの胸にほっぺたすりすり!




