20ブレス<<< オレ、指がぞわぞわする!
「うそ……これって……
ほんとにあったんだ」
フレイムクリスタルキャニオンの底の底。
オレとシルヴィアが一緒に見つけたシェルター。
レイナやシルヴィアが言うには軍事施設。
見上げて呆然とするクイン。
こないだみたいにヴァルキューレに見つからないように慎重にここまできた。
2台のトレーラーは迷彩シートに隠して峡谷の入り口に置いたまま。
アストロスーツに身を包んだオレの女たち全員深紅の翼で谷の底まで運んだ。
みんな怖がりながらもおとなしくしてくれてる。
すっごい疲れたけどみんなのためだからがんばった!
で、最後に小柄なクインと小さなアーレを抱えてきたんだけど。
「どしたんクイン?」
「アナ……なんでこんなもの見つけちゃったの!?
レイナ! あなたはこれを知ってるのよね!
もしかしてあなたがこれのことを教えたの!?」
「なんでって言われてもなあ?
落っこちた時に偶然な?」
「教えるもなにもわたくしとてまさかこんなものが本当にあるとは!」
「偶然……てことは……あれもほんとに存在するんだ……
なんてこと……」
「あれ? クインもレイナもこれがなにか知ってるのか?」
「……」
「わたくしが知る限り、初期の大戦で猛威を振るった強襲揚陸艦の一つであると思われます。
恐ろしいほどの武力を秘めている、現在では失われたロストテクノロジーで創造された戦艦です」
「キョウシュウ?
なにそれ?」
「戦う船のことじゃないかしら?」
「サクラコも知ってるの?」
「知らないわよ。
だけど水晶の上に建造されてる建物にしか見えないわよ?」
「大部分が水晶の中に隠れているのかと。
実は……ヴァルキューレがわたくしをしつこく探す理由がこれのことなんです。
ルミナにはこれに関する文献をもとに研究する組織がありました。
どこから知ったのかヴァルキューレは武力を拡大するための兵器を求めてコンタクトしてきたのです。
もしかしたら……ルミナの領有地を侵して開戦したのはこのためだったのではとも、いまでは思っています。
敗戦した当時、それについて偶然にも知ることができたわたくしたちは関係文献をすべて処分したのです。
ですのでこれを知るものはわたくしと一部のものだけ。
恐らくそのせいで皆さんのシェルターを巻き込んでしまうことに……」
節目がちに目をそらすレイナ。
「偶然じゃないわよ……
ううん、そんなことはもういいの!
レイナ! これはともかくもう一つのことは知らないの!?」
「もう一つ?
なんのことでしょう?」
「イーラのやつにも聞いてないの!?」
「だからなんのことですか!
憎っくきヴァルキューレの元皇女に現女帝のなにを教えろと言うのです!」
「ーーー!
知らないならもういいわ!」
「よくありません!
なにかあるのならばはっきり言いなさい!」
「だからもういいの!
アナ、ごめんなさい変なこと言って……
いまのは忘れてくれない?
それにみんな疲れてるわよね?
早く中に入りましょう」
一人、まだ機能していないエアロックに入っていくクイン。
いつもはキラキラ笑顔のクインがひどく疲れた顔をしていた。
アーレもとても心配そうだ。
「レイナ、よく分からないけどちょっと待ってやってくれないか?」
「ちょっともなにも……分かりました」
先頭に立ってみんなを振り返る。
「みんな!
みんなオレの女だ!
不安に思うこともいっぱいあると思う!
オレはみんなが安心して生きていけるようになんとかしたい!
しばらくの間、ここがオレたちのホームだ!
みんなで力を合わせて楽しくがんばろう♪」
ニッカリ笑顔で両手を振りながら声を出す。
両手を振ってぴょんぴょん飛び上がるたび胸がぷるぷるする。
「アナの笑顔があれば百人力だから!」
「大丈夫だよ〜」
「そうそう、なんとかなるよね!」
「みんなでがんばろ〜♪」
キャリーやネシティをはじめにみんなが笑顔で応えてくれる。
「よっし!
厨房もあるだろうからさっそくご飯を作る!
みんなお腹すいたろ!
待っててね!」
「わたくしも手伝いますわ」
「よろしく頼むわ!」
厨房担当、スタイルむちむちのクイネラが元気に声をかけてくれた。
レシピを伝授したレイナとはすっかり仲良しだ。
「アーレもみんなを手伝ってくれな♪」
「アーレ、わかった!」
頭をなでなでしながら抱きかかえるとほっぺにちゅ〜してくれた♪
「サクラコ、オフィリア、みんなを頼む。
オレはクインを見てくる」
「いいわ。
なんだか知らないけどアナの元気を分けてくるといいわ」
「こっちはまかせてくださいなんですよ」
戦う船。
兵器って言ってたしこんなもので寝泊まりしてもいいんかな?
シェルターの代わりにここで暮らすのか?
危なくない?
そうは言っても宿なしのオレたちが生きてくにはしょうがないよなあ。
でもでも谷の上まで遠いし、第一ここはヴァルキューレの領有地。
オレたちが仲良くしているカントリー、テルースは遠い。
食糧だって確保しないといけないしなあ。
問題山積みじゃね?
なんてことを考えながら先を行くクインを後ろからお姫様抱っこする。
「きゃあ!? アナ!?」
「一人で思い詰めるな。
なんでもいいからオレに話してみないか?
心がスッキリするぞ」
無意識に白い歯を見せながらウインクする。
「うひ! イケメンか!
あざとかわいいかと思えばかっこいいんだから。
強いし優しいし、みんながアナのこと大好きになるに決まってるわね。
わたしもドキドキしちゃうじゃない!」
「クインがうれしいならいくらでもドキドキをあげるよ」
無意識に薄く瞳を半目に閉じて見つめる。
体を引き寄せて唇が触れるくらいに耳元で囁く。
「ひゃん!
むむむ〜。
可愛さと綺麗さが共存する美形が醸し出す安心感と包容力。
無自覚に有無を言わせずヒトを惹きつける魅力。
女系国家ヴァルキューレなんていう元皇女のわたしだから分かる。
まるで女帝のようなカリスマ性の片鱗を感じる。
こりゃ落ちるわ。
ていうかわたし落ちちゃった。
ちっこいけどわたしのほうがお姉さんなのに。
心と体がおかしくなっちゃいそう。
14歳でこれかあ。
末恐ろしいわね」
「なにを、ぶつぶつ言ってるんだ?
オレが全部受け止めてやるからはっきり言っていいんだぞ?」
「……いいわ。
みんなのいないところで……
そうね……外に連れてって」
「うは♪
ここ綺麗だな♪」
少し離れたところまで足をのばした。
炎の水晶に反射して谷の底に差し込む光がまるでスポットライトのよう。
無機質な水晶の地面にキラキラとあたたかみを感じさせてくれる。
クインをお姫様抱っこからおろして二人で座る。
ぐぅ
「腹減ったのか?」
「やだ! わたしったら、は、恥ずかしい」
「あは♪
腹が減ったら音くらい鳴るだろ。
いろんなグミあるけど食べるか?」
「食べる♪」
ギアポーチには少しだけど収納スペースがある。
クインの手のひらにあるだけのせた。
「わわ! 多すぎだよ!
これじゃ食べられないよ!」
両手が塞がってるから口には運べない。
そりゃそうだ。
「じゃあ口開けて?」
「え? じゃ、じゃあ……
あ〜ん」
うは♪ オレを見つめて開いた口と唇がかわいい♪
ピーチグミを一つつまんで口に放り込むとくにくにしてゴックン。
「もう一つ♪」
続けていくつめかを口に放り込む。
「おいしいね♪」
クインのキラキラの笑顔が戻ってる。
やっぱりクインの笑顔は魅力的だ。
元皇女って言うけどやっぱすごいんだな。
レイナも貧乏って言ってたけどお姫様的?な気品みたいなのあるし。
オレみたいなのとは違うなあ。
「もう一個食べるか?」
「うん♪」
「次はホワイトグミな♪」
つまんで口に放り込もうとしたら?
ぱっくん。
オレの指ごとくわえるクインの唇。
れろん。
指に感じるあったかい感触。
「ふみゃ!?
な、なにすんだ!?」
「ふふ♪」
指を咥えたまま挑発するような瞳。
艶めましく指に感じる感触がぞわぞわ気持ちいい。
ドキドキしちゃうんだけど!?
ちゅぱっと音を立てて唇が指から離れるとホワイトグミをごっくん飲み込むクイン。
挑発的な瞳が蠱惑的な瞳に潤んでる。
「おいし♪
アナは自分が攻撃されると弱いんだ♪
困ってる様子がとってもかわいい♪
わたしのつばをつけといたからね♪」
「どういうこと?」
「わたしもアナの女にして欲しいってこと♪
いいかな?」
「もちろん!」
「ふふ♪
アナの女になったからには話さないわけにはいかないわね。
わたしは……アビスと呼ばれる世界の大穴を開けた、アナザーフォールを起こして世界の破滅を招いた国の末裔なの」
☆次回<<< ……もうそろそろ……限界だよう




