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15ブレス<<< オレの炎はプレゼント!


「えー! ほんとにいいのか!?」


無意識に拳を軽く握って口元に添える。

シルヴィアのブラウスをつまんでちょんちょん引っ張る。

申し訳なくて困った顔になっちゃう。


「貸しを作ったままだと気持ち悪いのよ。

だから遠慮しなくていいのよ。

(だからそのあざとい攻撃力はなんなの?)」


「ほんとに?」


そのまま小首をかしげる。


「うっ!

(これで無自覚なんだからサクラコたちも大変よね)

……いいのよ。

日頃わたしを助けてくれる礼よ。

礼は言わないわ。

ありがとう。

わたしはレアもので稼いでお小遣いもしっかりあるから心配しないで。

頼みたいもの好きなだけ頼んでいいのよ」


「礼は言わないんだな♪

オレうれしい♪

そんな澄ました顔のシルヴィアがかわいい♪」


「い、いいから好きなの選んで」

「そっか、じゃあ……

なんにしよっかなあ♪」


メニューを開いてウキウキ眺める。

嬉しくてうっかり足をパタパタしちゃう。

でもメニューよりもシルヴィアに視線がいっちゃうんだな♪

目が合うと視線をそらすシルヴィア。

つれないなあ?

早くオレのこと好きになってくんないかなあ?


オレたちはいまカントリーの中心地、商店街にあるオシャレなカフェにいる。

シルヴィアが言うにはテルース、このカントリー特産のベリーをたっぷり使ったスイーツが有名らしくてカップルや女の子のグループでいっぱいだ。


「(胸が思いっきりテーブルに乗ってる……)

ところで。

なんであなたはわたしの隣に座ってるのかしら?

向かいに座ればいいじゃないの」


「え? だってシルヴィアの隣がいいもん」

「だからってそんなにくっつかなくてもいいんじゃない?」

「えー。やだあ。

大好きなシルヴィアの近くにいたいもん」


テーブルに上半身を寝そべって手を伸ばす。

シルヴィアに視線を送りながらつの口する。


「……店員呼ぶわよ?」


テーブルに置かれたオシャレなハンドベルを鳴らすシルヴィアの顔がなんだか赤い。


「え!? まだ決めてないってば!」


「ご注文をどうぞ〜♪」


さっそくやってきたかわいいメイド服のかわいい女の子がニコニコ聞いてくる。


「んと、んと、なんにしよう!?」

「わたしは……ミックスベリーとマスカルポーネのタルト。

それとルミナティーをお願いします。

アナは?」


「え! これもおいしそう!

こっちも!

ん〜と、ん〜と。

どうしようシルヴィア!

オレあんまり字が読めないし、こんなん食べたことないから決めらんないよ〜!」


だばーっと涙が出る。

シルヴィアにすがりつく。

オレたちみたいなのは字が読めないやつらばっかりだ。

シルヴィアやサクラコ、オフィリアはしっかり読める。


「(くっ!? かわいい! 服のせいかすっかり女の子してるわね)

そうね。

それはそうよね

わたしが悪かったわ。

それじゃあわたしと同じケーキと……これとそれ。

ああ、これとこれ……これ。

あとこのパスタもお願いします。

ドリンクは紅茶? それとも甘いのにする?」


「オレ、シュワシュワして酸っぱくて甘いのがいい!」

「レモンスカッシュをください。

以上で」


「ご注文を繰り返します。

(めっちゃ食べるなあ。だからこんなに立派なのかな? 細いのにうらやましい)

ミックスベリーと……」


たくさん頼んだせいかちょっとうろたえながら繰り返してる。


「こんなにたくさんいいの!?」

「だってあなたいっぱい食べるわよね?」

「わ〜い♪

シルヴィア、あんがと〜♪」


にこにこ笑顔でシルヴィアの腕をとって肩にほほを押し付ける。


「い、いちいちしがみつかないの!

(ほんとに無自覚なの!?)」


「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

「は〜い♪」


腕にしがみついたまま笑顔で答える。


「ふふ♪

とってもかわいいオレっ娘彼女さんですね♪

うらやましいです♪」


一言残して立ち去るかわいいメイドさん。


「うは〜♪

聞いたシルヴィア!

とってもかわいい彼女さんだって!」


「ま、まだ彼女じゃないわよ。

アナの女になったわけじゃないんだから。

この後どうする?

特に考えてないけど」


「んー。

オレ、シルヴィアと一緒ならどこでもいい!」

「そう? まあ慌てて決めなくてもいいわね。

ところでこないだ見つけたギアはどう?

すごい性能だったし、やっぱりロストテクノロジーの遺物よね?

整備の子になにも聞かれてないの?」


「ギア?

そういやカグツチの整備お願いするの忘れてた。

オフィリアにも色々と聞かれてるんだよな。

帰ったら調べてもらうよ」


「そう。脳波リンクした時、すごい辛そうだったけど体に痛いところとかない?」

「え? あー、うん。あん時ね。

(気持ち良すぎて死ぬかと思った)

体はなんともないよ。

どっちかっていうと調子がいいくらい?」


「それなら良かったわ。

あのシェルターはなんなのかしらね?

できればもう一度行ってみたいところだけど、ヴァルキューレの監視が厳しくなってそうだし難しいかしら」


「そういや下に続く階段とかもあったよな?

ほとぼり冷めたくらいに行ってみてもいいかもな!」


「お待たせしました〜♪」


テーブルにどっさり並ぶスイーツとパスタ。


「ごゆっくりどうぞ〜♪」


「シルヴィア……」

「なに?」


「目の前がキラキラ輝いてるんだけど!」

「アナ、あなたよだれがすごいわよ?」

「え? 垂れてる!」


慌てて手でふきふき。


「ほんとアナはおバカさんね」

「シルヴィアがバカって言ったあ。

くすん。

む〜。

シルヴィア、ちょっと目を閉じてくんない?」


「え? なんで?」

「助けたお礼をしてくれるんだろ?

目を閉じて♪」


「しょ、しょうがないわね。

変なことしないでよ?」


変なことって……ちゅ〜とか?

目をつむってるシルヴィアの唇がケーキよりもおいしそう。


「楽しいこと♪」


ポシェットからゴソゴソと取り出してテーブルに置く。


「目を開けていいよ♪」


そっと目を開けるシルヴィアの目の前で親指と中指をパチンと弾くと人差し指に燃える炎。

ドライフラワーが入ったキャンドルに火を灯す。

こないだサクラコにあげたブレスレットと一緒に買ったんだよな。

ほかの客もケーキに蝋燭だったしこれくらいいいだろ?


「ハッピーバースデー♪

シルヴィア〜♪」


「あ……今日はわたしの……

よく覚えてたわね?

すっかり忘れてたわ」


「へへ♪ デートの約束できて良かったよ♪

誕生日おめでとな♪

オレと同じ14歳♪」


「ありがとう……」


はにかむシルヴィアの瞳に涙。


「泣くほど嬉しかったか?」

「うん……誕生日なんてずっとなかったから」

「オレたちのシェルターは必ずお祝いやってんだ♪

みんなほんとの誕生日なんて知らないけど♪

食いもんはいつものオートミールだしプレゼントはないけどな♪」


「あなたたちのシェルターは楽しそうね?」

「もちろん!

そういやシルヴィアんとこのシェルターの話は聞いことないな?

どんなとこなの?」


「……そんなことよりキャンドルを消していい?

お腹空いたでしょ?」


「おお! そっか!

じゃあ、ふ〜してふ〜って」

「うん」


顔を赤らめながらぷるんとした唇をつんと突き出すシルヴィア。

おいしそうな吐息が炎を食べる。


「おめでとうシルヴィア!」

「ありがとうアナ。

礼は言わないわ」


「そうだな♪

それじゃあいただきま〜す♪

うっま〜!」


オレってガサツだし?

そんなに空気を読まないし?

ばくばくほっぺたいっぱいに放り込む。


「|ほんなにはわひいふふひて《こんなにかわいい服着て》」

「アナ、リスじゃないんだから。

なに言ってるか分からないわ」


ごっくんとほっぺたにたまったスイーツを飲み込む。


「シルヴィアとスイーツ食べて幸せだ!

こんなんならカントリーの市民になるのも悪くないな!」


「声が大きい。

市民じゃないと分かったら追い出されるわよ。

ほら、口のまわりが生クリームだらけ。

拭いてあげるからこっち向いて?」


オレの口元にハンカチを向けるシルヴィアの唇にドキドキする。

次の瞬間……


うっかりシルヴィアの唇を奪ってた。


「な!?」

「へへ〜♪

おいしい♪」


無意識にぺろっと舌を出してウインクする。


「あなたは! 〜〜〜!」


シルヴィアの顔が真っ赤っか。

あ!

ほっぺに生クリームをつけちゃった!


ぺろんと舐めとる。


「ちょっ!?」

「へへ♪ おいし♪」


目をぱちくりするシルヴィアもかわいいな♪


「あんたたちねえ!

黙って見てればイチャイチャしすぎよ!」

「まったく。アナのあざとさがここまで酷いとは思いませんでした」


「へ? なんでここにいるの?」


オレたちの座るうしろの席。

つい立てから乗り上げる勢いでがばっと顔をだすサクラコと立ち上がるレイナ。


あれ?

サクラコってばなんでそんなにほっぺた膨らまして目に涙をためてるの?

レイナまでどうしようもないって顔でそんなにため息ついてるの?

シルヴィアもめちゃくちゃ慌てふためているんだけど?

オレ、なんか悪いことした?



☆次回<<< オレ、やわこいの好き!

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