第一章 登場人物紹介&あらすじ
登場人物紹介
◆シルス・グリセウス(主人公)
職業:テルティウス地区合同庁舎 市民安全課 第2係 主任
年齢:28歳
特徴:灰色の髪と瞳を持つ、一見すると地味な公務員。定時退勤を何よりも愛し、面倒事を極端に嫌う省エネ系男子。
実は学生時代に「伝説級の魔法使い」と呼ばれた実力者だが、その魔法を使うには長時間かつ非常に恥ずかしい儀式が必要なため、現在は封印中。
主な仕事はスライムの被害報告書を延々と処理すること。毎日山のような書類と格闘し、最近では胃薬が手放せなくなってきた。
「残業? それ、法律で禁止されてないの?」が口癖。
◆フェリクラ・ミヌタ(ヒロイン)
職業:キウィタス魔術相談所 受付係
年齢:24歳
特徴:栗色の髪を肩まで伸ばした、真面目で一生懸命な女性。マニュアル通りの対応を心がけるあまり、やや融通が利かない面も。
魔力効率が悪く、簡易鑑定魔法を数回使うだけで魔力切れを起こしてしまう。そのため、ポケットには常に「ブドウ糖キャンディ」を常備。
方向音痴で、勤務先の庁舎内でもたまに迷子になる。毎朝の魔力循環促進儀式では、手足の動きがワンテンポ遅れてよろけるのがお約束。
物語が進むにつれ、シルスの真の実力と彼の抱える秘密を知り、特別な感情を抱くように。
「あの、すみません。この書類、印鑑が3ミリずれています」
◆クラウディア・リグーラ
職業:テルティウス地区合同庁舎 設備管理課 技術員
年齢:32歳
特徴:ショートカットの黒髪に、作業着姿が定番の技術屋女子。口は悪いが腕は確か。
老朽化した魔力インフラの保守管理を担当。測定器と工具を常に腰に下げ、天井裏を這い回る姿は庁舎名物。
魔法を「ただのエネルギー供給システム」と割り切る現実主義者。シルスとは責任の押し付け合いから始まる腐れ縁だが、問題解決のためなら協力を惜しまない。
「はぁ? また魔力漏れ? あんたんとこの書類仕事のせいで、こっちは修理が追いつかないんだよ」
◆ルキウス・フォルムナ
職業:市民安全課 課長
年齢:47歳
特徴:中肉中背で、いつも胃薬を携帯している典型的な中間管理職。髪は薄め。
「まあ、よしなに頼む」が口癖で、面倒な案件はすべてシルスに丸投げ。しかし問題が起きると責任追及だけは厳しい。
魔法の才能は皆無で、毎朝の儀式では一人だけおかしな動きになっているが、本人は気づいていない。
部下に仕事を押し付ける際、なぜか罪悪感から胃薬を差し出す謎の習慣がある。
「シルス君、君にしか頼めない仕事なんだ。ああ、胃薬いる?」
◆ガイウス・オペラリウス
職業:オペラリウス清掃社 代表
年齢:38歳
特徴:がっしりとした体格に、日焼けした肌。現場一筋の職人気質。
市からスライム駆除を請け負う清掃業者。魔法は使えないが、長年の経験と勘、そして最新の清掃用具でスライムと戦う。
無口でぶっきらぼうだが、困っている人を見過ごせない性格。バールさばきは芸術的で、どんな扉も3秒で開けてしまう。
息子のために「おもちゃが光る魔法」を習得したいと密かに思っており、時々シルスに儀式のコツを聞いてくる。
「……任せとけ」(バールを構えながら)
第一章での関係性
物語開始時は、それぞれが自分の仕事に追われる日々を送っていた5人。
しかし、スライムの異常発生という事件をきっかけに、否応なく協力することに。
当初は責任の押し付け合いや、立場の違いからくる対立もあったが、共に危機を乗り越える中で、次第に信頼関係を築いていく。
特にシルスとフェリクラの関係は、単なる書類のやり取りをする間柄から、互いの秘密を共有し、支え合う特別な存在へと変化。
第一章のラストでは、増えた残業に追われるシルスに、フェリクラがそっと差し入れを渡すシーンが印象的。
「シルスさん、これ……少し高級なブドウ糖キャンディです。お疲れ様でした」
第一章あらすじ 〜都市型スライムと伝説級の面倒事〜
物語は、省エネを信条とする公務員シルス・グリセウスが、定時退勤間際に上司から厄介な仕事を押し付けられる場面から始まる。
当初はただの迷惑事でしかなかった「都市型スライム」の異常発生は、やがて都市機能を麻痺させるほどの「災害」へと発展。責任のなすりつけ合いが横行する中、シルスは同僚のフェリクラやクラウディア、清掃業者のガイウスらと協力し、原因究明に乗り出すことを余儀なくされる。
調査の末、彼らは市の誰もが存在を知らなかった地下の古代魔力施設と、その暴走するコアを発見。タイムリミットが迫る絶望的な状況下で、シルスは周囲に秘密にしていた「伝説級の魔法」を、その恥ずかしい儀式と共に独りで敢行し、危機を回避する。
事件は「原因不明」として処理され、彼の活躍が公になることはなかったが、膨大な事後処理に追われる彼の元に、秘密を共有するフェリクラとのささやかな絆が芽生えるのだった。
第一章の重要な転換点
◆都市機能の麻痺(エピソード003)
スライム問題が単なる迷惑から、路面電車を止めるほどの「災害」へと発展し、物語が大きく動き出すきっかけとなった。
◆即席調査隊の結成(エピソード006)
部署も立場も違う4人が、それぞれの思惑を抱えながらも協力し、未知の地下施設へ足を踏み入れた点。
◆コアの発見(エピソード007)
シルスとフェリクラが協力して隠し通路を見つけ、スライム異常発生の直接的な原因である暴走するコアを発見した場面。
◆伝説級魔法の行使(エピソード009)
シルスが仲間を守るため、そして面倒事を終わらせるために、封印していた「恥ずかしい儀式魔法」を独りで実行し、危機を回避したクライマックス。
◆ささやかな報酬(エピソード012)
事件解決後、手柄も立てず、増えた残業に追われるシルス。だが、唯一彼の秘密と苦労を理解するフェリクラからの差し入れに、心の救いを見出す。
どうも、シルスです。
なんで俺がこんなところで挨拶してるのかって? 知るか。作者に言えよ。
まあいい。第一章を読んでくれてありがとう。おかげで俺の残業時間が減った……わけないだろ。むしろ増えてる。なんでだ。
で、第二章の話なんだが……正直、言いたくない。
だってさ、せっかくスライム騒動が収まって、平和な日常が戻ってきたと思ったら、今度は本省から「特別監査官」とかいうのがやってくるんだぜ? しかも、その監査官が超絶美人で、超絶有能で、超絶面倒くさいときた。
名前はリヴィア・コルネリア。「王都中央監察局」とかいう、聞いただけで頭が痛くなる部署のエリート様だ。
彼女の口癖は「この処理、3秒短縮できますね」。
……3秒? 3秒短縮して何になるってんだよ。
しかも最悪なことに、彼女、こっちの事情も何も知らないくせに、冷たい目で俺を見下してくるんだよな。「グリセウスさん、これが定時退勤にこだわる公務員の仕事ぶりですか」とか言いながら、俺の処理した書類の山を一枚一枚チェックしやがる。
やめろ。その視線やめろ。
おまけに、なぜか貴族魔法使いまで現れた。ゼノン・ヴァレリウス、22歳。名門魔法家系の御曹司で、フリーの魔術研究者らしい。儀式魔法を「芸術」とか言っちゃうタイプ。
「ほう、グリセウスか。君の"隠遁した一族の術"とやらを、我がヴァレリウス流と比べてやろうではないか」
誰が相手するか。
そんなこんなで、第二章は俺の胃がさらに痛くなる展開が待ってる。スライムより厄介な人間関係、増え続ける書類、そして相変わらず定時で帰れない日々……。
ああ、でも一つだけいいことがある。
フェリクラが時々、差し入れのブドウ糖キャンディを持ってきてくれるんだ。
「シルス、これ……新しい味が出たので」
そう言って、ちょっと照れたような笑顔を見せる彼女を見ると、まあ、もうちょっと頑張ってもいいかなって思える。
……いや、やっぱり定時で帰りたい。
というわけで、第二章「監査官様は3秒も待てない(仮)」も、よろしく頼む。
俺の残業が増えないことを祈りながら。
シルス・グリセウス(定時退勤を夢見る男)