聖母
――― 聖母 ―――
事件後 手のひらを返すように ネディアを見捨てる悪魔達
わかりきっていたと 沈み込むように座り込む居場所さえ
今の自分にはどこにも無い
ネディア「あんな奴にしてやられた」
普段の魔力はそのままにして 表に出す力だけを無理矢理
押さえ込んでいるようだ
ネディア「・・・」
自分の魔力に右に出る者はいない
ただ魔力以外は何をしても無力に等しい
クエリオはそれを狙ったのだ
彼は独自でオリジナルの術を作り それで対抗したのだ
しかしその術は無理矢理アレンジした結果 術者に大きな悪影響を
受ける為 自ら禁呪として使用しないようにした
どうやらそれを破ってまで世界を守ったらしい
ネディア「これからどうしよう」
どこに居ても受け入れて貰えない自分
この世界に要らないのは自分
わかっているから壊したかったのに
今はそれも叶わず 途方に暮れる
悪魔女「やっと見つけたわ こんな所にいたのね」
ネディア「やばい!?見つかった!!」
直ぐに逃げようとしたがあっさり捕まる
悪魔女「来て こっち」
有無を言わさずネディアを引っ張る謎の女性
ネディア「ちょ・・・なっ・・・」
言葉にならず 文句も言えず なすがままに連れて行かれた
そこは女性ならではの家
ネディア「あんた何だよ!」
いい加減頭に来たネディアは 繋がれた手を勢いつけて振りほどく
ネディア「いったい何のつもりだよ 恩を着せて 力が戻ったら
利用する・・・どうせそんな考えなんだろ?」
悪魔女「そうね でも今の貴方に興味は無いわ」
ネディア「なら・・・なんの為にここに」
悪魔女「面白そうだからよ」
ネディア「はぁ?」
悪魔女「聞いたのよ 貴方が悪魔戦争しに行って力を削られ戻って来たって」
ネディア「それを笑いに来たのか?」
悪魔女「そんな暇があるなら あんな場所からわざわざ連れて来ない
わよ」
ネディア「・・・ホントになんなの・・・」
意味のわからない奴は初めてだ
こういう時どう対処すればいいか困る
悪魔女「面白そうだから貴方をここで飼うのよ」
ネディア「俺はペットじゃない」
悪魔女「じゃぁ貴方 この先どう生きていくつもり?」
ネディア「君に心配されなくても俺は孤独で生きていける」
悪魔女「確かに貴方は人形 食べなくても飲まなくても
住む場所さえ無くても生きる事は出来るわ」
人差し指を振りながら知的に喋りる
悪魔女「でもね・・・そんなの死んでいるのと変わらないわよ 貴方」
ネディア「生憎 自分を生き物だと思っていないんでね」
皮肉に言い放つ
するとネディアの頬にパシン!と軽い痛みが入る
悪魔女「そんなだから貴方をダメにするのよ」
ネディア「君 何をしたかわかってるの?元の力が戻ったら真っ先に
殺してやる!」
怒りに満ちた目で睨む
悪魔女「ええ いくらでも憎みなさい 少なからずともそれは生きる
希望になるのだから」
ネディア「っ」
そう 今の自分では目の前の敵ですら傷つける事が出来ない
わかって放たれた言葉
どんな攻撃より痛い一撃だった
悪魔女「そうそう 名乗るのが遅れたわね 私はマリアよ」
マリア 悪魔の世界では結構有名だったりする
魔性とも言えるその美貌と無邪気な心から聖母マリアと呼ばれているが
真相は幾多の男性を誘惑する性格だった
それからはマリアと共に過ごす日々が多かった
どんなに逃げても 見つけて戻されて・・・
一緒にいるのに側にはいなくて つかず離れずの状態・・・
今までに無い人の付き合い方だった
諦めからか その性格と知った上か そこから逃げる事はやめて家に
居る事が多くなった
悪魔達「ネディアはどこだ!」
悪魔達「ここにいるのはわかっているんだぞ!」
マリア「ここを誰の家と思って来たのかしら?」
悪魔達「ここにネディアがいると聞いたもので」
悪魔達「マリア様知らないですか?」
マリア「知らないわ そもそも何故ここにいるとかの情報が?」
悪魔達「この辺りでネディアの声を聞いたという者がいたので」
悪魔達「かくまっていても得にはなりません 一応確かめてもらっても
いいですか?」
マリア「あなた達を納得させるにはそれしかないでしょうけど・・・
これでも女性の部屋 あまり荒らされても困るのよ」
悪魔達「しかしそれではかくまっていると認めざるを」
マリア「だから ちゃんと元の位置にしっかり戻せるならいいわ」
悪魔達「よし 探すぞ」
悪魔達「は!」
悪魔達「すみませんマリア様 お時間とらせました」
しばらくした後 隅々探した結果 見つからなかった悪魔達は
これ以上探しても無理だと判断しマリア家を後にする
マリア「いいえ・・・ でも ちゃんと元の位置にしっかり戻してと
言ったはずよ」
悪魔達「え?ちゃんと元の位置に戻したはずですが?」
マリア「全然ダメよ ここも ここも それにここも・・・ 全部ずれているじゃない!」
悪魔達「そうは言っても殆ど元の位置じゃないですか!」
悪魔達「そうですよ!数センチ違うだけでそんな!」
マリア「元に戻す そういう約束よね?」
顔は笑顔 でも恐怖すら感じさせる笑顔だ
悪魔達「ひぃっ!?」
マリア「さぁちゃんと戻しなさいね ちゃあんと」
うふふと笑いながら悪魔達が数センチを戻す監視をし続けた
マリア「はぁっ・・・まったく全然ダメね」
悪魔達がこれ以上は無理ですと慌てて出て行った後
マリアは呆れるように部屋を見渡す
ネディア「大して気にしてないくせによく言うよ」
マリア「あら 約束は約束よ?」
ネディア「マリアちゃんってイジメの天才だよね・・・」
マリア「ああでも言わないと 次々来られても迷惑なのよ」
ネディア「まぁ隠れるくらいなら構わないけど 荒らされるのは
マリアちゃんの家だからね・・・」
マリア「後片付けするのはこっちなのよ 大変なんだから」
何かいい方法がないか考え込むネディア
ネディア「そうだ!俺の部屋を取り戻そう」
うんうんと頷きながらマリアに提案する
ネディア「元々俺が原因なんだし 自分の部屋ならいくら荒らされても
マリアちゃん困らないし 魔界支配者の継承もあそこにあるし」
魔界支配者の継承 王者の椅子として存在し魔界を指揮できる代物
使う人によっては悪逆非道な使い方も出来る為ネディアが守っていた
ネディア「ついでにマリアちゃんにあげるよ 魔界支配者の継承」
マリア「・・・それは嬉しいんだけど・・・いいの?私 貰った途端
裏切るかもしれないわよ?」
ネディア「裏切る気がある人はそんな事言わないよ それに
マリアちゃんという人をよく知ったからね」
マリア「一応信用してくれているのね」
ネディア「今 俺には力が無いからアレは使えないんだよ それに
マリアちゃんになら任せられるから ヘタな使い方はしないって」
マリア「そこまで言われると逆にねじ曲げたくなるわね」
ネディア「はっはっは そんなマリアちゃんが好きだよ」
ひねくれた性格なマリアを笑顔で返すネディア
その後二人はネディア家へと向かった
マリア「6・・・うーん・・・8?それぐらいはいる気配ね」
ネディア「外に3 中に5くらいか・・・中の人数を1人残らず外に
追い出す 全員追い出した後 外の連中も適当にここから引き離す
距離が開いたら合図を出す その合図で中に入って継承の椅子に
座ってくれればいい」
簡単な作戦をマリアに伝える
マリア「わかったわ くれぐれも気をつけてね 今の貴方は力が
弱まっているんだから」
ネディア「まさかそんな心配されるとはね・・・でも・・・ありがとう」
少し驚いた顔をするが 直ぐにいつもの無表情に戻り 体をわずか
10センチに縮めた
マリア家に進入して来た時もコレで天井にいたくらいの極小サイズ
進入するならこの姿が一番である
ネディア「外の敵の位置確認 やっぱり3人か・・・」
それぞれの位置を確認した後家の中へと入った
ネディア「久しぶりに自分の家に帰って来たけど・・・」
辺りを見回し
ネディア「ご丁寧に勝手に改装してくれて良い度胸だね・・・」
イライラしながら中の様子を探る
ネディア「・・・よし・・・始めるか・・・」
見残しがないよう隅々まで見て回り 作戦を開始した
悪魔「な!ネ ネディア!?」
突然目の前に現れ(元のサイズに戻ってそう見える)驚く悪魔
ネディア「返して貰うよ 俺の家」
そう言うと次の場所へと飛ぶ
その後を追いかける悪魔
ネディア「よし・・・追い掛けて来てる」
追い掛けているのをしっかり確認して次の悪魔の元へと急ぐ
ネディア「奴等に誘導が目的と知られる訳にはいかない
あくまでつかず離れずだ」
又小さくなると外へと出る
悪魔「くそ・・・どこへ行った・・・」
見失い辺りを見渡す
悪魔「ん?外か!?」
急いで外へ向かう悪魔
ネディア「気づいたか ここからは素早くしないと奴が家へと戻って
しまう その前に中にいる悪魔を全員外へ追い出さないと・・・」
急いで次の悪魔の元へ行き2度3度と同じ繰り返しをする
こうして全員の悪魔が外へと向かわせる事に成功した
悪魔達「あっちだ」
ネディア「くそ もう見つかったか!?しかもこんなにいたとは」
悪魔達「貴様を追いやるにはこの人数がちょうどいいのさ」
悪魔達「まぁ今のお前にこの人数は多いかと思うが念の為な」
この状況に初めて知ったと思う事で罠にかけたネディア
どうやらまだ全員が外にいるとは気づいていないようだ
「これでいい」
そう思うネディアは別働隊の悪魔達の所へと向かう
数時間後
空に炎が揚がる
マリア「合図ね さぁ急がないと怒られちゃうかしら?」
くすくすと笑い「それもいいわね」と思うが しっかり言われた事を
実行するマリア
マリア「所で継承の椅子の場所 すぐわかる所なのかしら・・・」
あまりぐずぐずしていられないのは理解しているが 右も左もわからない場所だ
それなりに時間を要する
すると目立つようにこっちとかかれた紙がずらっと並んで見えて来た
マリア「・・・遠隔操作かしら?でもおかげで場所がわかったわ」
道がわかれば早い
継承の椅子は見事マリアのものになった
悪魔達が戻って来た
マリアが継承の椅子に座っているのを見ると
「何故?」という顔でとても驚いている
悪魔達「まさかあのネディアは!?」
ネディアに力が無い今「様」と呼ぶ者はとうにいない
マリア「私が作ったおとりよ どう?イイ出来具合でしょう?」
「ネディアと立てた作戦」とは言わない
そんな事を言おうものなら面倒事が後へとやって来るだろう
マリアだって平和な日々を暮らしたい
そこまで考えあえて言わなかった
マリア「何か不満かしら?」
にっこり笑うがその笑みは恐怖に見える
悪魔達「し・・・失礼しましたー」
そそくさと逃げていく悪魔達
マリア「・・・あは・・・あはははは」
似合わないシリアスなムードの緊張が解けた今 大きく笑い出して
しまう
ネディア「・・・?どうしたの?笑って」
そんなマリアの姿を見て不思議に思うネディア
マリア「だってこんな簡単に行くんだもの 少しは考えないのかしら」
ネディア「まぁ悪魔は基本 本能の塊みたいな奴等だからね」
マリア「それでこの椅子どう使うのよ ただの椅子みたいじゃない」
見た目は豪華だが何か不思議な力が秘められている訳でもない
ネディア「ただの椅子だよ 変なカードと一緒で 持つだけで偉くなれちゃう代物」
マリア「なんだつまらない」
椅子をぞんざいに蹴飛ばしそこに座る
ネディア「悪魔界初の女王様の誕生だね」