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空白の世界  作者: キサラギ フレシオ
13/14

救済

―――   救済   ―――


クエリオ「そうだ・・・これを心臓に一番近い場所に張れ」


謎の札をマリアに渡す


マリア「何これ?」

クエリオ「それは奴の魔力に耐える体にする札 今の奴は見境無しに

強大な魔力を晒している 至近距離なら即死だぞ その為の準備に

すぎない」

マリア「さすがはあの魔力を封印しただけはあるわ 準備がいい事」

クエリオ「では進もう」


クエリオが歩みだす マリアも手を繋がれたまま進んだ



うおおぉぉぉおお

何かのうめき声が近くから・・・遠くから

苦しむような・・・痛むような

世界全体に伝えるかのように響き渡る


マリア「これが・・・」

クエリオ「奴だな・・・さて・・・どこにいるか」


見渡す景色に風景はなく 地面もなく ふわふわと浮いている感覚だ


マリア「本当になんなのこの世界」


クエリオが一歩一歩歩くたび

クエリオの姿が遠くなったり近くなったりしているように見える

しかし繋いでいる自分達の手に目をやると 直ぐに元の距離に

戻ったりとして 脳が気持ち悪さを訴える


クエリオ「何て説明すればいいか・・・ここは世界であって世界でない

空間であって地上 そして世界に認められてない世界だ」

マリア「はぁ?」

クエリオ「そういう世界と考える方が無難だと思うぞ

そして目に見える景色は全て錯覚に過ぎない 更に追加するなら

歩く度に自分の位置が変わる だから迷ったら最後なのだ」

マリア「・・・はぁ・・・」


なんとなく理解すると クエリオと繋いでいる手を

しっかり持ちなおす


クエリオ「もぉ質問は無いか?奴を探す話を進めるぞ」

マリア「どうぞ」

クエリオ「湊!湊!」


名前を叫ぶように呼ぶと誰かが現れた


湊「お久しぶりです クエリオさん」

クエリオ「奴の所へと案内してくれ あと・・・さんづけはいらぬ」

湊「・・・わかりました」

マリア「誰よ?」

クエリオ「奴の一番初めの友達・・・らしい」

湊「初めまして ええっと・・・訳あってこの世界の住人になった

湊です よろしくお願いします」

マリア「よろしく」

湊「ではついて来てください」


進む度に湊の姿が消える錯覚を感じる

たった一歩の歩みが混乱へと導く

しかしクエリオは表情変える事なく進んで行っているので

マリアはクエリオに身を任せ目を閉じ この頭痛をどこかに振り払う

事に専念した



ビシャァッ

水のような液体が散らばる音

だが直ぐに気化してしまう


「ぐあぉおおぁあああああ」


来た時よりも近くに聞こえる



マリア「・・・うっ」

気持ち悪さが再び起き上がる

しかしこの気持ち悪さは漂う魔力によって引き起こされているもの

クエリオから貰った札がなければこうは済まないだろう


湊「この距離が限界です」

クエリオ「わかった ・・・大丈夫か?マリア」

マリア「・・・ええ・・・あれが・・・」


ネディアをみる

それをネディアと呼んでもいいかと思わせるくらいの酷い状態だ

まるで黒い塊と化している


しかしあそこから声がはっきりと聞こえる

あれがネディアなのだろう


クエリオ「これが奴の魔力暴走だ 本来なら一日あの状態を奴は

毎年ここで発散させる」


マリアは言葉が出なかった

この光景が あのネディアの姿が そして何よりも

自分では何もしてあげられない事が


マリア「これをどうするのよ?」

クエリオ「私は死神と同時に時間を操れる それを利用して奴の

暴走時間だけを早める」

マリア「わかったわ 私は何をしていればいいの?」

クエリオ「私の服を掴んでいろ この術を使うためには両手が必要だ

絶対に離れるな 何度も言うが連れ戻す自信は無い」

マリア「わかったわ」

クエリオ「あと・・・私が『いい』と言うまで絶対に奴に近づくな

何があってもだ」


今回ばかりはクエリオの意見を素直に受け入れた

今はただ早くこの状況を終わらせたかった


クエリオが札を持ち 杖を構える

呪文を唱え 宙に札を放った


ぶつぶつと聞き取れない

クエリオの体からは軋むような骨が砕けるような音が

あちこちから聞こえる

「ぐぅっ」と呻くが 手と呪文は止めない


マリア「ねぇ・・・大丈夫なの?」

クエリオ「・・・」


話す余裕はない

呪文を間違えてしまえば・・・手が止まってしまえば・・・

全てが水の泡だ

だからクエリオの表情で確認するしかない様子

クエリオは微かに笑うと

黒い塊・・・ネディアに視線を戻し術に集中した


数分・・・いや数時間かもしれない

ネディアと思われる黒い塊がゆっくりと身を起こした


クエリオ「・・・ふー」

落ち着き自分に付着した大量の汗を拭う

クエリオ「・・・さてここからどう近づくか・・・」


マリアをちらりと見る

あまり近づけたくはない


マリア「どうするのよ?」

クエリオ「ふむ・・・」


腕を組み考える


「ぅあ・・・っく・・・あ・・・れ・・・」

ネディアが声を発する

まだ黒い塊のまま


クエリオ「・・・よさ・・・そうだな・・・近づくぞ」

マリア「ネディア!」

ネディア「あー?・・・マリアちゃん?それにおっさんも」

クエリオ「おっさんはやめろ」


いつものネディアだ

マリアは少し涙目になって喜んだ


ネディア「ここ・・・え?」


自分に置かれている状況を瞬時に把握する


ネディア「何で二人してここにいるの?」


簡単に入り込む世界ではない

ましてや自分が魔力放出の場に困って自分が作り出した

無空間であって幻想の世界


クエリオ「何で~?じゃない いいからいくぞ」

ネディア「はぁ?」

マリア「どうでもいいからその黒い体なんとかしなさいよ」

ネディア「これは保護色みたいなもので時間がたたないと戻らない」


目をぐるりと動かす


ネディア「一日が経ってない・・・もしかして皐月に?」

マリア「あなたが必要なの」

ネディア「???」



* * *



皐月?「くそっ!ババァようやく来たかてめぇ 俺様を解放しろっ!」

マリア「バ・・・ババァ・・・」

ぴくぴくっとこめかみが動く

ネディア「・・・成る程悪魔憑き・・・か」

マリア「こっちで勝手に処理するわけにはいかないし 私も貴方なりに

最善の方法を考えたら貴方を頼るしかなかったのよ」

ネディア「わかった・・・ありがとう」


よしよしとマリアの頭を撫でる


ネディア「それにしてもよりによって俺のマリアちゃんをババァ呼ばわりとは」

マリア「貴方が許してくれるならあのまま殺したい・・・」

ネディア「気持ちはわかるけれど おっさん協力しろよ」

クエリオ「何故私が・・・」

ネディア「悪いけれどあんたが力貸してくれないといい方向に持っていけない」

クエリオ「ふん・・・こんな時だけ人に頼るな しかも頼む体制でもないしな」


そう言うと空へ飛び立とうとする


皐月?「くくくってめぇも人に頼むなんてなぁ しかしその堅物ジジィが

相手じゃ無理だろ」

クエリオ「ジ・・・ジジィ・・・」

額に青筋を立てる

クエリオ「・・・いいだろうネディア 主に協力してやろう 私もあ奴を殴りたい」

ネディア「引き剥がせるか?」

クエリオ「ふん・・・誰に物を聞いている 出来るに決まっている」

ネディア「任せる」

クエリオ「しかし私だけでは無理だ 奴の心を引き出すことが必要だぞ?」

ネディア「・・・そうか・・・わかった」

「あら・・・協力すると意外に仲良しさんなのね・・・」とマリアは思うが口にはしない


ネディア「しゅじーーーん!本当に殺すぞ!!」

一際大きい声で叫ぶ

皐月の体に電流が走ったかのようにびくっと震える

皐月?「ち・・・くしょ・・・ぅ・・・」

ぐらりと意識を元の持ち主に持っていかれる

クエリオはそれを逃さない すばやい動きで手荷物札を皐月に貼り付ける


クエリオ「今だ!奴を引っ張れ!」

ネディア「言われなくても!」

皐月を悪魔から引き剥がすように体を引っ張る

皐月?「ぎゃやあぁぁぁああああ・・・」

体を引き裂かれるような痛みで皐月と悪魔の声がハモって聞こえた


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