人間
――― 人間 ―――
人間界に来たけれど人との関わりをしようとする気配すら無い
人間界にいるという約束だけなのでマリアとの約束は通っているが
これでは結局同じ事では無いだろうか?
ただ悪い方向にも行かないので 悪魔界にいるよりはマシな方だろう
何処かに留まる事無く 毎日ふらふらしている
途方もない年月を人間界で過ごし 人も見渡す景色も変わり果てた
人は変わってもする事は変わらず 毎日忙しく動き回っている
自然は消え 加工物ばかりの有り様だ
ネディア「・・・あ」
いつも通りふらふらとあてもなく うろついていた
人だ
人間界に居れば別に珍しい事ではない
外にいれば四六時中嫌と言うほど目に入る
でもこうして近くで会うのは幾億年ぶりだろう
向こうもネディアに気づき 軽く会釈する
人間「こんにちは」
ネディア「・・・どうも・・・」
ぶっきらぼうは相変わらずだ
人間「この辺の人じゃないよね?」
ネディア「・・・何で?」
人間「見れば解るよ 君の足 人の物じゃない」
ネディアの足は人の物とは思えない足
足下を見る余裕の無い今の世の中 気づけた人間
ただ者ではない感じがする
ネディア「ふーん・・・」
その人間をまじまじ見る
外側だけでなく内側 中身の部分を
「悪魔憑き」
どうやらこの人間 悪魔に取り憑かれている
しかもその悪魔と上手く共存していると表現すればいいのか
人間自身は気づいていないだろうが
悪魔がその人間に荷担している
そうでなければネディア自身を見る事さえ出来ない
人が苦手なネディアは魔法で自分を見えないようにしている
ネディア「わざわざ隠す事なんて必要ないからね 察しの通り俺は
人じゃない 悪魔だよ」
人間「・・・へ~・・・」
しばらくお互い見合う
人間「こんな所で何してたの?」
ネディア「何で?」
人間「身寄りも無いなら飼わせてくれないか?」
ネディア「は!?」
人間「悪魔って人と契約出来る話 あれってやっぱり噂なだけ?」
ネディア「ああ・・・」
そう言うことか
この人間は俺と契約を交わし 自分の手元に置きたいらしい
悪魔憑きの人間が悪魔を飼うか
笑わせてくれる
中の悪魔が俺の魔力に惹かれたのかもしれない
ネディア「まぁいいよ 暇だし あんたの下についてやるよ」
面白い
良いだろう
人間がその悪魔に喰われるか 人間が悪魔を包み込むか
見届けてやろうじゃないか
不敵な笑みを浮かべ
その人間と契約を交わす
ネディア「自己紹介が遅れたね 俺はネディア」
人間「俺は白金 皐月」
お互い握手をした後 ネディアは皐月の家に向う事にした
皐月「狭いし散らかってるけれど」
通されたのはリビング
散らかっているというよりは物がなさ過ぎるようにも見える
ネディア「一人だとこんなもんだよ」
自分も似たようなものだと親近感がわく
皐月「ネディアはどんな悪魔なの?」
ネディア「どんなって・・・例えば?」
性格なのか人柄なのか何について質問されているのかわからず 困る
皐月「例えか~・・・イメージでは悪魔は皆怖いとか
化け物みたいな容姿とかいろいろ噂はあるけれど
実際見ると人と変わらないよね」
ネディア「まぁ実際人間と大差ない方が多いよ」
皐月「ずっと気になっていたけれどネディアはどうしてその足に?」
興味津々という目で見る
ネディア「自分の信じていた物が突然失った事に悲観してね」
どこか悲しそうな顔をする
ネディア「ちょっと暴走してこうなった」
皐月「そういう事ってそっちの世界じゃ良くある話?」
ネディア「まぁ人間じゃ理解しにくい話だよね・・・契約した主人だ
かいつまんでだけど話すよ」
そう言うと自分の過去の話をした
自分には身を寄せる相手がいた事
その相手が急変し 当時は助けるすべが無く一時的に人間に預けた事
しかしその後相手を訪ねるが
記憶がなくなり新しく作り替えられてしまった事
ネディア「あの時は本当に生きている心地がしなかったよ」
皐月「悪魔という種族でも感情は人と殆ど変わらないのかぁ」
ネディア「こうして人間の世界に潜伏出来ちゃうくらいだからね」
皐月「それもそうか・・・」
言われて納得してしまう
皐月「君に興味ばかり抱いてしまって すっかり伝え忘れていたよ」
ネディア「?」
皐月「この家の中は自由に使って貰って構わないから」
両手を大きく広げそう言う
皐月「まぁ自由にしすぎて散らかしたままにはしないでよ?自分で片付けてね」
ネディア「それは問題ない」
マリアの時でも散らかす事なんて
いやそれよりも動く事も少なかった気がする
皐月「で?何で自由に使っていいって言ったにも関わらず
隅の方から動かないの?」
ネディア「ここが一番落ち着くんだよ」
皐月「何か猫みたいだよ?」
マリアちゃん元気かな・・・
幾億経っても気にする事が無かったのに
今になってふとよぎる
きっと今の状況が
マリアと一緒に生活していた状況と変わらないから
思い出したのかもしれない
ネディア「何か家に来てそうそうなんだけど俺帰る」
皐月「え?」
ネディア「帰るって言っても一時的 契約してるからね
ちゃんと戻るから」
皐月「もしかして天使や悪魔だけの世界かい!?」
嬉々とした声を出しキラキラした目でネディアを見る
ネディア「ダメだよ」
皐月「何で」
皐月が言おうとする前に止める
何を言うかはその表情でお見通しのようだ
ネディア「人と干渉は出来ないんだよ」
皐月「何か方法は無い?」
どうしても行きたい願望が強すぎる
「はぁ」とため息をつき
ネディア「直ぐ帰るからね」
皐月「ありがとうネディア」
ネディア「俺の側を絶対離れないでね 何があっても」
皐月「解っている」
「うん」と頷く
お荷物を抱えネディアは一度人間界を離れた
マリア「ネディア」
ネディア「あれ?マリアちゃん?」
マリアの所に行くにしても守る者がある為
転送 ワープと呼ばれ
自由に行き来出来る魔法だ
ネディア「何でマリアちゃんがここに?」
マリアがいるのに驚いた訳ではない
マリアがいる場所に驚いてしまった
だってここは悪魔界だ
てっきり上に行くのだと思っていた
マリア「あ~ 彼なら別れたわよ」
ネディア「えーっ!!」
あまりに驚愕な一言
マリア「もうずいぶん前よ やっと私に惚れたのはいいけれど
相変わらずあの頑固さは崩れないし 何かと仕事のオヤジ」
ネディア「ちゃんと俺が前もって忠告したけどその通りになったのか」
マリア「いいのよ 貰う物は貰ったから」
ふふんと胸を張って威張る
皐月「誰?」
マリア「あら人間じゃない 何~?この子と今一緒にいるの?」
ネディア「なかなか良い人間に出会えたよ 彼女はマリアちゃん」
マリア「どうも ネディアの唯一の友達・・・とでも言えばいいかしら?」
皐月「何だ 友達いるんじゃない」
皐月が「ふ」と笑う
ネディア「俺としては妹的存在と見てたけど?」
マリア「見えない 見えない」
全力で否定する
皐月「仲が良い事はいいじゃないか」
ネディア「・・・」
ちらっと皐月を見る
ネディア「これからも大事な人を失う事しか無いだろう・・・でもね
そこで終わらせたら俺の幸せは終わりになる そんなの生きていても
死んでいるのと変わらない そう思えるようになったのは
マリアちゃんのおかげだよ」
マリア「そうよ 私これからも貴方の力で利用しまくるんだから」
意地悪に言う
ネディア「だからその気がある人はそう言わないの」
皐月「え?本気そうに聞こえたけれど?」
ネディア「本気だよ?」
マリア「本気よ?」
声を揃えて言う
ネディア「そういう子だってわかっているからいいんだよ」
マリア「ねー?」
皐月「・・・本当に仲が良いよね・・・いっそ付き合っちゃえばいいのに」
小声でそんな事を言う
マリア「バカな事言わないで頂戴!こんな子供みたいな容姿で年寄りの
年齢なんか恋愛対象外よ 外!」
皐月「す・・・すみません・・・」
おもいっきり怒られて驚きながら謝る
ネディア「そうだよ皐月 俺マリアちゃんは許しても女の子は基本
苦手なんだよ」
皐月「何でまた女の子だけ?」
ネディア「女の子は・・・女の子を利用するからだよ」
皐月「はぁ?」
マリア「簡単に言えばこう」
マリアがネディアの腕を掴んで自分の胸に押しつける
皐月「成る程」
ネディア「・・・」
マリア「私だからこの程度で許されているけれど これがもし何も知らない人なら」
ネディア「力の限り突き飛ばしてやる」
目の色が怒りの色だ
ネディア「マリアちゃんそろそろ放して・・・マリアちゃんでも嫌なのは嫌」
マリア「慣れなさい」
数秒もしないうちにネディアはギブアップを宣言
しかしマリアは聞く耳持たずと腕を放す事をしない
次第にネディアが青ざめていく
皐月「あの・・・そろそろ本当に放してあげた方が・・・」
皐月もいたたまれずに止めに入る
マリア「甘いのよ」
とは言うが放してあげる
ネディア「そろそろ帰るよ 長く居続けても迷惑だろうし」
マリア「そう?何にもおもてなし出来なくて悪いわね」
ネディア「いいよ 最初から期待してないし」
マリア「又・・・来なさいよ?」
マリアなりに次も会おうと言っている
ネディア「今度は人間界の手土産でも持ってくるよ」
マリア「そう?期待しているわ」
そんなやりとりを済ませた後
来た時と同じようにワープで帰った
*「・・・フフフ・・・自ら弱点を増やしているとは・・・
これは逆襲のチャンスですね・・・」
誰かがよからぬ企みをしていたが気づく者はいなかった