0004.扉が開かれて
3学期の終業式 今年度の最後の日 外は微妙な曇り空
学級委員なんてやるんじゃなかったと ほとほと後悔している
今年度の始まりの頃の学級会 誰もそんなのやりたがらない
気まぐれなのか良心なのか そんな中で思わず手を挙げてしまった
日々のクラス運営 遠足・学園祭・体育祭 その他諸々のイベント
さらには教師の雑用やら何やら ほとんど便利屋ではないか
おかげで教師と同級生にはそれなりに 好意的には見てもらえてはいたようだが
最後のホームルームが終わってクラスは解散 だけど学級委員はまだ仕事
担任に呼ばれて職員室で 荷物運びやら備品整理やら
気がつけばもう昼過ぎ 何も食べてないので腹も減る
疲れて教室に戻ると 同級生の女の子たちが何人か残ってる
おしゃべりしていた彼女たちが 扉のところにいるぼくに気づくと
戻ってくるのを待ってたよ そう言って駆け寄ってくる
ぼくに何か用事でも? いいからちょっとこっちにきて
彼女たちは強引にぼくの腕を引っ張って 空き教室に連れていく
いやあのお腹がとても空いていて 早くお昼ごはんを食べたいんだけど
そんなのよりももっと お腹がいっぱいになるものを見せてあげるから
それって見るだけなの? 食べられるものが欲しいんだけど
いろいろお世話になったから みんなでちょっとしたお礼がしたくて
1年間いろいろありがとう おかげで楽しいクラスだったよ
だからとりあえず これに着替えてくれる? 外で待っているからね
彼女たちはそう言って 何かが入った紙袋を手渡して 空き教室を出ていった
紙袋の中を見てみると 薄いグレー色の礼服らしきものが入ってる
なぜここでタキシードに着替えるの? お礼がしたいって言ってたけど?
いろいろ疑問があるけれど ここで断ってしまうと ノリが悪いとか言われそう
とりあえず話に乗ってあげようか
空腹がなかなか辛いけれど これも学級委員の仕事だろうか
あまり気が進まないけれど とりあえず着替えて 扉の外に声をかける
彼女たちが再び部屋に入ってきて あ結構似合うじゃん とか調子のいいこと言っている
髪の毛もちょっと整えようか とか言って何かの缶をシャカシャカし始める
これは一体何なのと 聞くぼくの腕をまた引っ張って
まあいいからこっちに来てよと 楽しそうな顔して強引につれていく
校舎の端の大講堂につづく 広くて長い渡り廊下
ぼくたちの他にはもう誰もいなくなっていて 静まり返った校舎の中を足音が響いていく
外を見れば雲が切れて 青空がのぞいてる
まだ少し肌寒いけど 心地よい風が頬を撫でながら抜けていく
装飾された琥珀色の 大きな扉が開かれる
ぼくはなぜか花束を手渡され その中に招き入れられる
見上げる高い天井とその左右には 大きなガラス窓が並んでいて
早春の眩しい日の光が差し込んでくる
その真ん中でバニラ色の日の光に照らされて 真っ白なドレスを着たきみがいた
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